253 / 304
第8章
第389話 変態令息になりそうな悪役令息①(ちょい※)
しおりを挟む
受け損ねた魔法史のテストを受け、テスト勉強からようやく解放された。あれだけ執拗に繰り返された嫌がらせも、なくなった。
『キルナ、もう大丈夫だから』
クライスは寝るときにも、朝起きたときにも、おまじないをしながらそう教えてくれた。もしかしたら彼が何かしてくれたのかもしれない。それでも校舎に入ろうとすると足がすくみ、手は限界まで冷たくなった。そんな僕を見てクライスは手を繋いでくれた。
上靴をひっくり返して、何もないことを確かめる。
無視されないか、ドキドキしながら挨拶をする。
机に何も書いていないことがわかると、ようやく息が吸える。
「キルナ? 何かされたのか?」
「ううん。何も。だいじょぶ」
今日も何もなかった、大丈夫だった。を積み重ねると、少しずつ怖さは薄れ、もとの学園生活に戻っていった。痛い、苦しいと悲鳴を上げていた心が癒えていくのを感じる。あまり食べられなかったご飯も、美味しく感じられるようになった。
テスト後には、セントラが多忙のためきもだめし以降しばらくお休みになっていた補習も再開された。勉強はなんとか追いついたけれど、魔法の実技の方はまだまだで……毎日死ぬほど課題をもらい、部屋でもそれをこなすのに必死だった。
クライスは相変わらず、王宮の仕事、生徒会の仕事と忙しそうにしている。補習の後時間があれば僕も生徒会長補佐の仕事をしにいくけれど、ほぼ手伝える日はなく、二人でゆっくりできる時間はなかなか取れなかった。
そんな中、大きなイベントが発生した。『第一王子の誕生日パーティー』だ。ゲームでは大事なイベントだったと思うのだけど、なぜかユジンは呼ばれていないらしい。バタバタと公爵家に帰宅し着飾られ、第一王子御用達の馬車で迎えにきたクライスと共に王宮に行く。
家に帰ると久しぶりに会ったお父様は号泣しながら僕を抱きしめ、使用人たちが固まっていた。きもだめしの魔獣やら今回のいじめ騒動のことで、心配してくれていたみたい。
このパーティーには一年生の時にも参加したから、それほど緊張せずに済んだ。前回の誕生日パーティーではなんにも用意できなくて困った誕生日プレゼントも、今回は反省を生かしばっちり用意ができているから安心だ。
テアに頼んでお揃いのピアスを作ってもらった。円形で外側がゴールド、中央に艶やかな黒い魔宝石が配置されたシンプルながらかっこいいデザイン。(ただ、心配なのは、クライスはアクセサリーはつけない派らしいということ。これなら小さくて邪魔にならないしいいかなと思ったけれど、どうだろう? 気に入ってくれるといいな)
ダンスを二曲踊った後、ジーンの庭園が一望できるバルコニーで、彼にプレゼントを渡す。クライスは包みを開いてピアスを見るなり「一生大事にする」と言って、その場でつけてくれた。(ピアス穴が空いてないのにどうやってつけるのかなと思っていると、風魔法で簡単に開けていた)
便利な風魔法に感動し、「僕にもつけて」と頼むと、クライスは快く頷いたもののなかなかつけてくれない。位置を確認するように何度も耳たぶを触られ、次第に恥ずかしくなってくる。自分のは一瞬でつけたのに、どうしてこんなに時間がかかるの?
「んぁ…耳……くすぐったいよぉ」
「こら、動くな」
「だって……」
「じっとしていろ」
「ん……」
そう言われても……。そこばっかり触られるとゾクゾクするから早くしてほしい。でないとちょっと、最近ご無沙汰の僕の僕が……。
「早くぅ」
「ああ」
『キルナ、もう大丈夫だから』
クライスは寝るときにも、朝起きたときにも、おまじないをしながらそう教えてくれた。もしかしたら彼が何かしてくれたのかもしれない。それでも校舎に入ろうとすると足がすくみ、手は限界まで冷たくなった。そんな僕を見てクライスは手を繋いでくれた。
上靴をひっくり返して、何もないことを確かめる。
無視されないか、ドキドキしながら挨拶をする。
机に何も書いていないことがわかると、ようやく息が吸える。
「キルナ? 何かされたのか?」
「ううん。何も。だいじょぶ」
今日も何もなかった、大丈夫だった。を積み重ねると、少しずつ怖さは薄れ、もとの学園生活に戻っていった。痛い、苦しいと悲鳴を上げていた心が癒えていくのを感じる。あまり食べられなかったご飯も、美味しく感じられるようになった。
テスト後には、セントラが多忙のためきもだめし以降しばらくお休みになっていた補習も再開された。勉強はなんとか追いついたけれど、魔法の実技の方はまだまだで……毎日死ぬほど課題をもらい、部屋でもそれをこなすのに必死だった。
クライスは相変わらず、王宮の仕事、生徒会の仕事と忙しそうにしている。補習の後時間があれば僕も生徒会長補佐の仕事をしにいくけれど、ほぼ手伝える日はなく、二人でゆっくりできる時間はなかなか取れなかった。
そんな中、大きなイベントが発生した。『第一王子の誕生日パーティー』だ。ゲームでは大事なイベントだったと思うのだけど、なぜかユジンは呼ばれていないらしい。バタバタと公爵家に帰宅し着飾られ、第一王子御用達の馬車で迎えにきたクライスと共に王宮に行く。
家に帰ると久しぶりに会ったお父様は号泣しながら僕を抱きしめ、使用人たちが固まっていた。きもだめしの魔獣やら今回のいじめ騒動のことで、心配してくれていたみたい。
このパーティーには一年生の時にも参加したから、それほど緊張せずに済んだ。前回の誕生日パーティーではなんにも用意できなくて困った誕生日プレゼントも、今回は反省を生かしばっちり用意ができているから安心だ。
テアに頼んでお揃いのピアスを作ってもらった。円形で外側がゴールド、中央に艶やかな黒い魔宝石が配置されたシンプルながらかっこいいデザイン。(ただ、心配なのは、クライスはアクセサリーはつけない派らしいということ。これなら小さくて邪魔にならないしいいかなと思ったけれど、どうだろう? 気に入ってくれるといいな)
ダンスを二曲踊った後、ジーンの庭園が一望できるバルコニーで、彼にプレゼントを渡す。クライスは包みを開いてピアスを見るなり「一生大事にする」と言って、その場でつけてくれた。(ピアス穴が空いてないのにどうやってつけるのかなと思っていると、風魔法で簡単に開けていた)
便利な風魔法に感動し、「僕にもつけて」と頼むと、クライスは快く頷いたもののなかなかつけてくれない。位置を確認するように何度も耳たぶを触られ、次第に恥ずかしくなってくる。自分のは一瞬でつけたのに、どうしてこんなに時間がかかるの?
「んぁ…耳……くすぐったいよぉ」
「こら、動くな」
「だって……」
「じっとしていろ」
「ん……」
そう言われても……。そこばっかり触られるとゾクゾクするから早くしてほしい。でないとちょっと、最近ご無沙汰の僕の僕が……。
「早くぅ」
「ああ」
260
あなたにおすすめの小説
やっと退場できるはずだったβの悪役令息。ワンナイトしたらΩになりました。
毒島醜女
BL
目が覚めると、妻であるヒロインを虐げた挙句に彼女の運命の番である皇帝に断罪される最低最低なモラハラDV常習犯の悪役夫、イライ・ロザリンドに転生した。
そんな最期は絶対に避けたいイライはヒーローとヒロインの仲を結ばせつつ、ヒロインと円満に別れる為に策を練った。
彼の努力は実り、主人公たちは結ばれ、イライはお役御免となった。
「これでやっと安心して退場できる」
これまでの自分の努力を労うように酒場で飲んでいたイライは、いい薫りを漂わせる男と意気投合し、彼と一夜を共にしてしまう。
目が覚めると罪悪感に襲われ、すぐさま宿を去っていく。
「これじゃあ原作のイライと変わらないじゃん!」
その後体調不良を訴え、医師に診てもらうととんでもない事を言われたのだった。
「あなた……Ωになっていますよ」
「へ?」
そしてワンナイトをした男がまさかの国の英雄で、まさかまさか求愛し公開プロポーズまでして来て――
オメガバースの世界で運命に導かれる、強引な俺様α×頑張り屋な元悪役令息の元βのΩのラブストーリー。
なぜ処刑予定の悪役子息の俺が溺愛されている?
詩河とんぼ
BL
前世では過労死し、バース性があるBLゲームに転生した俺は、なる方が珍しいバットエンド以外は全て処刑されるというの世界の悪役子息・カイラントになっていた。処刑されるのはもちろん嫌だし、知識を付けてそれなりのところで働くか婿入りできたらいいな……と思っていたのだが、攻略対象者で王太子のアルスタから猛アプローチを受ける。……どうしてこうなった?
愛してやまなかった婚約者は俺に興味がない
了承
BL
卒業パーティー。
皇子は婚約者に破棄を告げ、左腕には新しい恋人を抱いていた。
青年はただ微笑み、一枚の紙を手渡す。
皇子が目を向けた、その瞬間——。
「この瞬間だと思った。」
すべてを愛で終わらせた、沈黙の恋の物語。
IFストーリーあり
誤字あれば報告お願いします!
悪役令息(Ω)に転生した俺、破滅回避のためΩ隠してαを装ってたら、冷徹α第一王子に婚約者にされて溺愛されてます!?
水凪しおん
BL
前世の記憶を持つ俺、リオネルは、BL小説の悪役令息に転生していた。
断罪される運命を回避するため、本来希少なΩである性を隠し、出来損ないのαとして目立たず生きてきた。
しかし、突然、原作のヒーローである冷徹な第一王子アシュレイの婚約者にされてしまう。
これは破滅フラグに違いないと絶望する俺だが、アシュレイの態度は原作とどこか違っていて……?
性悪なお嬢様に命令されて泣く泣く恋敵を殺りにいったらヤられました
まりも13
BL
フワフワとした酩酊状態が薄れ、僕は気がつくとパンパンパン、ズチュッと卑猥な音をたてて激しく誰かと交わっていた。
性悪なお嬢様の命令で恋敵を泣く泣く殺りに行ったら逆にヤラれちゃった、ちょっとアホな子の話です。
(ムーンライトノベルにも掲載しています)
悪役令息を改めたら皆の様子がおかしいです?
* ゆるゆ
BL
王太子から伴侶(予定)契約を破棄された瞬間、前世の記憶がよみがえって、悪役令息だと気づいたよ! しかし気づいたのが終了した後な件について。
悪役令息で断罪なんて絶対だめだ! 泣いちゃう!
せっかく前世を思い出したんだから、これからは心を入れ替えて、真面目にがんばっていこう! と思ったんだけど……あれ? 皆やさしい? 主人公はあっちだよー?
ユィリと皆の動画をつくりました!
インスタ @yuruyu0 絵も皆の小話もあがります。
Youtube @BL小説動画 アカウントがなくても、どなたでもご覧になれます。動画を作ったときに更新!
プロフのWebサイトから、両方に飛べるので、もしよかったら!
名前が * ゆるゆ になりましたー!
中身はいっしょなので(笑)これからもどうぞよろしくお願い致しますー!
ご感想欄 、うれしくてすぐ承認を押してしまい(笑)ネタバレ 配慮できないので、ご覧になる時は、お気をつけください!
殿下に婚約終了と言われたので城を出ようとしたら、何かおかしいんですが!?
krm
BL
「俺達の婚約は今日で終わりにする」
突然の婚約終了宣言。心がぐしゃぐしゃになった僕は、荷物を抱えて城を出る決意をした。
なのに、何故か殿下が追いかけてきて――いやいやいや、どういうこと!?
全力すれ違いラブコメファンタジーBL!
支部の企画投稿用に書いたショートショートです。前後編二話完結です。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる
本作については削除予定があるため、新規のレンタルはできません。
このユーザをミュートしますか?
※ミュートすると該当ユーザの「小説・投稿漫画・感想・コメント」が非表示になります。ミュートしたことは相手にはわかりません。またいつでもミュート解除できます。
※一部ミュート対象外の箇所がございます。ミュートの対象範囲についての詳細はヘルプにてご確認ください。
※ミュートしてもお気に入りやしおりは解除されません。既にお気に入りやしおりを使用している場合はすべて解除してからミュートを行うようにしてください。