あなたを瞳にうつす

色無 音恋

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「今日はありがとう。」

 そろそろ時刻は18時になるところ。
 私たちは時間を忘れて遊んでいた。
 しかし、私の家には門限があるため早めに解散することになったのだ。

「歩都里も楽しんでたみたいで良かったよ!」

 満足したと言うような表情を浮かべた智は私を優しく見る。

「さて、俺たちはご飯行こうか。歩都里ちゃんはコイツと帰ってねー?」


 蓮さんは隣に立っていた直登を引っ張り私の前へ連れてくる。
 彼は真顔でされるがままだった。


「え、直登は2人と一緒じゃなくていいの?」

「あの雰囲気を眺める度胸はさすがにない。」

「…そうだね。」


 腕を組んでニコニコ…。
 智は幸せそうだし、蓮さんなんて智にデレデレ…。

 私にもコレを眺める度胸はなかったわ。
 見ていられる根性すらなかったよ。


「じゃあ、よろしくお願いします。」


 私は軽く頭を下げ手から直登を見た。


「そんな畏まることでもないだろ。…ほら、行くぞ。」


「うん。」


 ふと、濃紺の夜空を見上げた。
 最近は夜になるのが早いなぁなんて思ったりしながら歩く。
 17時までは明るいのに18時ぐらいになるともう真っ暗。

 端っこで光る街灯が寂しそうに立っている。


「明日も…こんな風に話しかけてもいいか?」


「…うん。いいよ。」


「そうか。なら遠慮なく接するから。」


「私も…その、話しかけに行っても…。」


「あぁ。逆に話しかけろよ。待ってるから。」



 それは、今日みたいに貴方のことを名前で呼んで楽しくお喋りをしてもいいと言う事。

 ちょっとだけ前に進んだ関係。


 クラスメイトの中で一番気になる人____それが彼だった。


 今は…今は、私の事一番好きな人。


 諦める___そんな事を考えなくても良いのかも…。


 私は彼が好き。


 それでいいんだ。
 ただただ、好きなんだ。


 “好き”という感情が心の中にスっと入ってきたような気がした。


 さっきよりは胸は痛くなかった。
 痛いのは痛いけど、心地よい痛みだと思う。



「直登。」


 立ち止まっていた私より少し先を歩いていた彼が振り返る。


「どうした?早く帰らないと暗くなるぞ。」


「うん。分かってるよ。」


「…。」


「…。」



「「あの(さ)…。」」



 私は真っ直ぐ前を見た。
 




「私、貴方か好き…。」



 自覚したのは今日だけれども、諦めようなんてことも考えていたけど、やっぱり好きなの。



 あなたを瞳にうつす。



 私の瞳にあなたはうつる。



 あなたの瞳には、誰がうつっているのだろうね?

 私はあなただけ。
 好きになったあなたをひたすら見つめる。



「直登が好きだよ。」



 この恋が実る恋ななら、私はキット幸せすぎて泣きたくなると思う。
 それほど彼の事か好きなのだから。
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