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金策 アン クリストファ
しおりを挟む街のガードに聞いたらアンの居場所はすぐにわかった。
王城まで行って、門番に話をするとアンはすぐに出てきた。そしてアンに招き入れられ、城の庭を歩きながら話をすることになった。
「まだ冒険者なのか。いいかげん職業に就いたらどうなんだ」
いつまでも働きもしないでみたいな口ぶりだった。
「俺は魔剣士ですよ。なぜか変な称号になってるんです」
「ははっ、お前はいつも面白いことを言うな」
「いや別に、そんなつもりないですけど」
俺は信じてもらうために、適当にスキルを使ってエフェクトを出す。それを見てアンは驚いていた。目を白黒させている。それだけ珍しいことなのだ。
「剣士か。確かに私にも勝てる職業になったな。まあいい。それで今日は何の用だ。ガードにでもなりたくなったか」
「ガードの給与はどんなもんです」
「最初はローカルガードからだから、10万ゴールドくらいだろう」
「ローカルってのはなんですか」
「地方の街を守るガードだ。王都を守るのがシティーガード、王城で王族を守るのがロイヤルガードだ。当然、最初は地方の都市に派遣される」
「それじゃあ興味ないですね。大金を稼ぎたいんですよ」
「ふん、それじゃあ何の用で来たんだ。まさか王城で盗みでも働くために下見にでも来たんじゃないだろうな」
なるほど、思わぬところからアイデアが出た。確かに、それだってゲームのシステムとして用意された立派な金策だろう。しかし牢獄にとらわれるというデメリットは大きい。
「そんな金目のものが城の中にはありますか」
「見せてやろう。驚くなよ」
城の中に招き入れられると、様々な宝物品が展示されていた。
展示の中には、フレアやアブソリュートマジックバリアの魔法書などまであった。他にも鎧や武器などがガラスケースに入って展示されている。
「これだけじゃない。宝物庫の中には最強の魔剣であるレッドドラゴンブラッドソードまであるんだぞ。たまに展示品が変わるから見に来るといい。まあ私がいないときは、こんなところには入れてもらえないだろうがな」
「そんな情報までホイホイ喋っちゃまずいでしょう。一応ここの警備をやってるんですよね」
「ロイヤルガードは精鋭の集まりだ。泥棒ごときに遅れは取らない」
「泥棒が一対一の戦いを挑むとも思えませんけどね。気が付いたらなくなってますよ」
やはりアンはどこか抜けている。
そのあとは庭で姫様に出くわして、アンと共にお茶に誘われた。最近では酒場からもなくなっているミルクティーを飲ませてもらった。姫様に気に入られたのか、いつでも遊びにいらしてくださいねの言質までいただいた。
たいして美しい姫様ではなかったが、気品だけは感じられる。
姫様が身に着けているもの一つでも、俺の悩みは解消してしまいそうだ。税金を取られた覚えはないが、一体どうやって金を集めているのか。商売用のコンパニオン使用料とかだろうか。
アンにクリストファの屋敷を聞いたら、あそこに見えるのがコピネル家だと、城から見下ろせる一つの建物を指さした。
かなり大きな屋敷で驚いた。
俺はその場を辞して、クリストファの屋敷を目指した。呼び鈴を鳴らすと執事の人が取り次いでくれて、クリストファが現れた。
「久しぶりじゃないか。よく来てくれたね。さあ、入ってくれたまえ」
俺は屋敷の応接室に通された。砦で見たのとは違って、誕生会などで壁に飾る紙でできた花の白いやつみたいなのが首元に付いたようなシャツを着ている。そしてタイツとハーフパンツのようなピチピチの服だ。そして昔の不良が着ていた長ランみたいな緑色の上着を着ていた。
俺はさっそく要件を切り出した。
「金を稼ぎたいんだ。何かいい方法は知らないか」
「生憎、僕はご先祖様の残してくれた店やら何やらを引き継いでいるだけで、商才があるわけではないんだ。それに僕も今はお金が必要でね。貸せるような状況にもないよ」
「噂でも何でもいいぜ。何かないか」
「それは、もちろん思いつくものがないわけじゃない。例えばトレジャーハントなんかだね。洞窟の奥に眠る財宝なんてものがあれば一生遊んで暮らせるさ」
「探索のスキルが上がらないんだよな」
「確かにそれも必要だろうね。だけどそれだけじゃなくて、観察力や知恵も必要になるのがトレジャーハントさ」
本かなにかで読んだ知識をそのまま喋っているような気もするが、そういうこともあるかもしれない。隠し扉の類はセルッカの洞窟では見つけられなかった。
しかし、あれは初心者用の洞窟だ。もしかしたら、王都周辺の洞窟には、隠し扉の要素などがあるのかもしれない。
「盗賊などが洞窟を根城にするのはよくあることさ。当然、盗賊たちの隠し宝物庫なんかも、洞窟の中にあることになるだろう。まあ、見つけられないように手を尽くしてあるけどね」
レアなお宝なんかはオークションにかければ売ることもできるそうだ。確かに、冒険者相手では駄目だが、NPCの中には王家や貴族など金を持ってる連中がいくらでもいる。
「だけどそこら辺の盗賊に、それほど価値のあるものを集められるのかね」
「大海賊や、大盗賊の話なんていくらでもあるじゃないか。この世界には、まだまだ見つかってない財宝やお宝が山のように存在するよ。僕の曾祖父もダンジョンの中で財宝を見つけて商売を始めたんだ」
まあまあの収穫と言ったところだろうか。コピネル家を辞した俺は、二度と入る気はなかったスラムに行って買い物をすることにした。昼間ならまだ安全である。しかしセルッカのスラム街など比べ物にならないほど景色がすさんでいる。王城で盗みを働くとしたら道具が必要だなと思って、雑貨屋で鍵開け用のピッキングセットを買いに来たのだ。そしてそれを冒険者鞄の中に入れておく。
同時に消音のポーションや周りの人間の緊張感に反応するアラートオーブなどの、便利なアイテムも買った。それに警報装置を無効化する方法も教えてもらう。
スラム街の商人は、同業者であるとみれば懇切丁寧に教えてくれた。盗み用の道具を買っただけでお仲間と見なされるらしかった。
ギルドハウスに帰ると、ベッドの上でいろいろ考えを巡らせる。そんなことをしているうちに寝てしまった。
目を覚ますと、ニヨニヨと笑っているクレアの顔が目に入った。
「おい、クレア」
「なによ」
「起こしに来たんなら、ちゃんと任務を果たせよ。晩飯に呼びに来たんだろ」
「あ、あのねえ。ぎりぎりまで寝かせてあげようっていう、私の親心がわからないの」
人の寝顔を眺めていたくせに、よくそんなことが言えたものだ。俺はベッドから起きて、外に出ると夜のために花を何本か摘んでからテーブルに着いた。
「今日はどこに行ってたのよ」
「ちょっと知り合いのところにな」
「いつの間にそんな知り合いを作ったわけ」
「まあ、色々あるんだよ」
クレアが変な詮索をしてくるが、適当に流した。チュートリアルの頃の知り合いだとも言えない。そういえば、こいつらは勇者として呼ばれてきたつもりでいるのだろうか。俺にしてみればチュートリアルもあったし、原因が俺にありそうだし、ゲームのつもりでいる。
まあゲームだと思わない理由もないか。そんなことはどうでもいい。
今日の夜はやらなければならないことがあるのだ。晩飯を食べたら俺は早めに寝床に入った。
次の日の朝は、リビングのテーブルに積まれた枕の山にみんなが驚いている声で起こされた。昨日の夜に俺がみんなの部屋から盗み出したのだ。
「朝起きたら枕が一輪の花になってるんだもん。驚いたよ」
「勝手に入ってくるのは無作法。でも凄い」
ワカナとリカが驚きをあらわにした。
「俺にはさ、盗賊としての才能もあるよな。ワカナなんかいびきかいてて、起きる気配すらなかったぞ。枕を抜かれても、全く変わりなかったぜ」
「女性の部屋に入るなって、あれほど言ったのにまだわからないのね。ガードに突き出すわよ」
「そうよ。そんなことはやめなさいよ。貴方は私たちのことをなんだと思ってるの」
クレアとアイリは本気で怒っている。
「だけど必要なことなんだよ。俺は近々、王城あたりに盗みに入るからな」
「馬鹿ね。そんなことやめなさいよ。捕まったらどうするつもりなの」
「ゆうくんは、パパとママから人の道に反するなって教わらなかったのかしら」
「あくまでも、これはゲームなんだよ。用意されている以上は、遊び方なんて自由だろ。俺が牢屋に捕まったら、ちゃんと助けに来いよ。あとアイリ、ゆうくんて呼ぶな。母親を思い出して気分悪くなる」
「そんな人の道に反すること、私がさせないわ」
「騎士道ごっこはやめてくれ。なんでゲームで遊んでて人の道から外れるようなことがあるんだ」
「ゆうくんはお尻でも叩いて躾けないとわからないのよ」
まさかこんなくだらない理由で反対されるとは思わなかった。
その日は、クレアたちには王立図書館に情報収集に行かせ、俺は家に残り、自分のチェストを相手にピッキングの練習を一日中していた。夜になって帰ってきたクレアたちに、一日の成果を尋ねる。
「氷結の洞窟に盗賊が住み着いたという情報もあったわね。だけどある時を境に、ぱったりと見かけなくなったそうよ。あと砂漠の地下迷宮にも古代の財宝があるという記述を見つけたわ」
そうアイリが報告した。さすがに学業優秀だっただけのことはある。
この世界の本はかなり重要なことが書かれている気がしたので、財宝に関する情報を一日探らせていたのだ。その結果、王都周りのダンジョンや地下遺跡などの情報は揃った。
出現するモンスターやダンジョンの位置も、リカにが同時に探っていたので、既に氷結の洞窟については情報がある。
「他に報告は」
「サキュバスクイーンのドレスが40万ゴールドで売れた。他のアイテムも入れて、82万ゴールドの収入になった」
あんなものを買う奴がいることに驚いた。だけどかなりのレアだったしわからなくもない。
「その金は錬金と裁縫に全てつぎ込んでくれ。それと鍛冶の材料も買っといてくれ。とにかくスキルレベルを上げよう。売れないものが出来たら捨ててもいい」
今は装備も揃っているし、めぼしい売りもないから先行投資でいいだろう。
「メシの種一つととノミの種を二つ植えたわ。明日には結果が出るはずよ」
報告はそれで終わったので、晩飯にした。
そして今日も早めに俺は眠りについた。
深夜に起きだして、俺は道具をそろえた。もちろん今日も窃盗の練習である。猛烈に反対していたクレアも、どうせ心配しているだけなのだ。実力を示せば何も言わなくなるだろう。
そう思って俺は、クレアとアイリの部屋の扉を開けた。
素早く中に入り、お目当てのチェストの位置を確認する。クレアもアイリもぐっすりと寝ている。ダイアだけが起きたが、特に反応はない。
今宵の魔剣は血に飢えておるぞ、下手なことはするでないとか考えながらダイアを睨んで、俺はチェストにとりかかった。まずは消音ポーションを鍵穴の周りにかける。
次に仕事道具を並べて、その中からピッキング用の道具を取り鍵穴に差し込む。
五分ほどかかって何とか鍵の開いた感触がした。最も安いチェストなので俺でも開けることが出来るのだ。俺は静かにチェストの蓋を開いた。
あとは花を一輪入れて閉めれば仕事は終わりだ。しかし、チェストの中身はほとんど何も入っていない。手を突っ込んでみると、布切れのような感触があった。
何だろうと引っ張り出したら、アイリの下着が入っていた。
途端に恐怖から手が震える。とんでもないものを見てしまったと我に返って、それをチェストの中に戻した。チェストの中にはブラと高校の制服も入っていた。
首から下げているアラートオーブが青から赤に変わっているが、これは俺の感情に反応しているのだろう。俺は全てを元通りにして、静かに蓋を閉める。
なんとか蓋を閉め終えて、俺は止めていた息を吐き出した。
それにしても、黒い下着をつけているから大人だと思って、俺のことをガキだガキだと言っているのだろうか。すっかり恐怖で自信を無くした俺はアイリの寝顔を覗き込む。
ちゃんと寝ているなと確認したところで、アイリと目が合った。
俺はそのまま動けずに固まってしまった。
「また枕を盗みに来たのね」
「――――そ、そそそそうなんだよね。はは、み、見つかっちゃったな」
「これで貴方は犯罪者になって牢獄行きよ」
「――――」
「犯罪は、割に合わないとわかったでしょう。さっさと出ていきなさい。これで貴方の負けなんだから、二度と盗みはやめなさいよ」
俺は仕方なく部屋から出て、自分の部屋に戻った。
本当に危ないところだった。殺されずに済んだのは運がよかっただけだ。確かに、とんでもないリスクがあるなと考えながら、俺は二度目の眠りに落ちていった。
翌日はモーレットなしで初めてのダンジョンに挑む。キングパイアのようなギミックを持ったボスがいたら、俺たちは何もできずにロストすることになる。
まずは森の中で見つけた氷結の洞窟に潜ることにした。ダンジョンの入り口から吹き出てくる風は、かなり冷たい。中に降りて進ん行くと、しばらくはハイオーク程度のモンスターが出る。
周りの壁が凍りついているゾーンに入ると、アイスゴーレムとイエティ、アイスタートルが出た。
アイスランス、フロストノヴァ、ブリザードと嫌な魔法ばかり使ってくる。フロストノヴァはただの移動阻害範囲魔法でたいした威力はない。しかし魔法を使われるとクレアの防御力が意味をなさないためダメージは大きい。
しかも広範囲魔法であるブリザードは、アイリたち後衛が食らうと三割ほどのダメージを受ける。だからダメージをタンク出来ない彼女たちが二回ほど攻撃を受けると回復が必要になる。オーバーヒールになっても全体回復魔法を使うしかない。
「アイリも回復魔法を使ってくれ。攻撃はアイスゴーレムだけでいい。ワカナはマジックバリアだ。リカは亀のブリザードを食らわないようにしてくれ」
俺の言葉にアイリは素直に頷いた。ワカナとリカもわかったと返した。
ダンジョンは短く、昼前には突き当りの通路に行き当ってしまった。ダンジョンの奥は神殿のような作りになっていて、氷漬けの柱などが等間隔で並んでいる。
「隠し通路みたいなものはなかったよな。どうなってんだ」
「壁が霜に覆われてるもの、あったとしても見つからないわ」
とアイリが言った。
「MPが余ってるんだし、ユウサクが炎の魔法で溶かしなさいよ」
仕方がないので俺はクレアの言う通り、壁にファイアアローを放つ。そうしたら、エフェクトの範囲の霜がきれいに溶けてなくなった。どうやら正解のように思える。
まずは両脇に柱の並んだ通路から、氷を溶かしていくことにした。
何時間もかけて溶かしてみたはいいものの、特に隠し通路のありそうな気配がない。
「あそこだけ、壁に掘られたレリーフのパターンが違うよ。それに他よりも氷始めるのが早いし」
確かに、ワカナの言う通り一ヶ所だけすでに氷が付き始めていた。
「俺が調べてみるから、待っててくれ」
壁を調べると、かすかに隙間があって冷気が漏れてきていた。アイリにファイアストームで壁を焼いてもらうと、その壁は少しだけぐらつき始めた。剣で隙間をいじっていると壁の一部が外れて倒れてくる。倒れた壁は粉々に砕けてしまった。
先は隠し部屋になっていて、一段高くなったところにアイスクイーンというボスモンスターが鎖でつながれていた。
俺たちが部屋に入ると、クールダウンタイムのないブリザードを連発してきた。凍結のデバフアイコンが現れ、ワカナが持てる限りの範囲回復魔法をすべて使って、リカの煙玉で敵からのターゲットを切り俺たちはなんとか難を逃れた。
凍結のデバフのせいで、足元が凍りついて走ることもできなくなった。これではボスまでたどり着くこともできない。
「これじゃ近づけないね」
「あきらめましょうよ」
「諦めよすぎよ。もうちょっと考えましょう」
簡単に諦めようとするアイリにクレアが言った。
「まて、これはだな大人数で倒そうとするから、ダメージがばらけて範囲回復が必要になるんだ。俺が一人で突っ込んでいくから、ワカナだけが中に入って回復してくれ。ワカナはアイリが回復して、回復が必要ないときは部屋から出ていればいい」
「私たちは何をすればいいのよ」
とクレアが言った。
「見学しながらワカナにポーションでも投げててくれ」
俺は一人で部屋に入る。数歩も進むと、アイスクイーンはブリザードを連発してきた。しかし俺の魔法抵抗は124もある。半分はフルレジストして、残りの半分もレジストでダメージは半減している。
俺が斬りかかると、アイスクイーンは暴れ始めた。口から吹雪を吐き出してくるが、俺は構わずに斬り続けた。後ろからしっかりと回復も入っている。
「私の封印を解きに来たのか、おろかな人間どもめ……!」
という、訳の分からない言葉を残して、アイスクイーンは地面に倒れ光と共に消えていった。俺がアイスクイーンを倒し終わった時に、アイスクイーンの足をを繋ぎ止めていた鎖が砕け散っていた。特にシステムメッセージは出ていないので一般ボスであるようだった。
封印を解くとは何のことだろうと思っていたら、今度は足を縛られていないアイスクイーンが現れた。ワカナの回復魔法はクールダウンタイムに入っている。
俺は焦ったが、今度のアイスクイーンはアイスランスを連発してきただけだった。しかも、助けに来たアイリの魔法を一通り食らったころには、光となって消えている。
最初のアイスクイーンが落としたのは、攻撃力81のアイスソードと攻撃力28のクリティカルアイスナイフだけだった。アイスソードは一応魔剣の部類に入るのか俺のスキルで力を開放すると、ブリザードの魔法が放たれた。当然知力の低い俺が使ったブリザードなどに威力はないだろう。
二回目のアイスクイーンは、祝福された強化ストーン1個、フルヒールの魔法書、それにクリスタルスタッフだ。あとは23000ゴールドと、今までの普通のボスと変わらない。
クリスタルスタッフはMP回復+8のみと微妙な性能だった。見た目だけは青白くて悪くない。俺はそのアイテムをワカナに渡した。使ってもいいし、使わなくてもいいくらいのものだ。
クリティカルアイスナイフは『まれに凍結させる』の他に詠唱阻害とクリティカルダメージ+10%が付いていた。短剣において、この効果はかなり貴重なものであると思われる。
「最初の一体だけは、何かストーリーのあるような感じだったな。その次は普通のボスって感じだった。強さもなんか一回り弱かったしさ」
「盗賊たちに縛り付けられていたのよ。周りに凍り付いた骨があるじゃない。これがきっと盗賊だわ。本の記述には雪女の子供をさらった後に、盗賊たちは消息が知れなくなったとあったのよ。さらったはいいもののやられてしまったのね」
そういってアイリは壁の一部を指示した。そしてこう続けた。
「さらった雪女をここに繋いでいたのなら、宝物庫も近くにあるはずだわ。ここの壁なんか怪しいんじゃないかしら」
確かに壁の一部が外れかかったまま凍りつけられている。俺が魔法で溶かすと、その壁の一部は倒れて砕け散った。中には宝箱が一つだけ置かれた小さな部屋だった。
俺はその宝箱に探索の魔法、アンロックを使った。このスキルはチェストなどには反応しなかったスキルだ。スキルのエフェクトが現れても宝箱は開かないので、俺はMPに物を言わせて何度もアンロックのスキルを使う。
しばらくして、俺の探索がLv2に進化し、宝箱も開いた。新たに罠感知と魔眼のスキルが解放される。
宝箱の中身は50万ゴールドと、魔法耐性のリング二個、スパルトイ召喚のネックレス、それと祝福されたメシの種一個だった。
リングは俺が装備しよう。両方装備したら俺の魔法耐性は144になった。
できれば後衛も魔法抵抗を100にしたいが、それは到底無理そうだ。
「これが盗人の末路よ。よく見ておきなさい」
アイリが落ちていた骸骨を差し出してきたので、俺はそれを叩き落とした。
「よくそんなもの触れるな」
「このゲームも意外と面白いかもしれないわね」
下調べしてから、ダンジョンの謎を解き明かすというのがアイリは気に入ったらしい。
俺はこんな寒いところさっさと出たかったので、帰ろうと提案した。
確かにトレジャーハントでも稼げるが、額が微妙すぎる。ロストの危険もあって、下調べ込みで二日かけて一人10万ゴールドでは割に合わない。
スパルトイは竜が召還するという骸骨兵士だった。たいして強くないし使い道もわからない。ワカナが欲しがったのでやってしまった。
その後、ワカナはスパルトイを服の仕立てのマネキン代わりに使っていた。
氷結の洞窟から出た俺たちは、王都の酒場に向かった。値段は高いが、王都の酒場はまだ普通の料理を出してくれる。さすがに、晩飯くらいはまともなものが食べたいと言われ、ここで食べることになったのだ。
これからは、ここに通わされるのだろうか。5人で2万ゴールドもかかった。それでもみんなの機嫌がよくなったので、仕方のない出費だと思うことにした。
ギルドハウスに帰ってきて、軽い報告だけをすることにした。
クレアが植えたメシの実はカレーライスになった。ノミの竹はミルクティーとブラックコーヒーになった。どれもそれほど高価ではないし、高値で売れる感じではない。
そして祝福されたメシの実を植えたとクレアが言った。
それだけでこの日は寝ることにした。
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