そうだ、魔剣士になろう

塔ノ沢渓一

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泥棒退治

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 モーレットたちが毛皮取りをしている間、俺たちも何かしなければならなくなった。次の日にはアイリが呼び出されて、色々とものを運んだようで、山小屋の中で鍛冶や裁縫も出来るようにした様だった。
 クレアとアイリも一緒に釣りをして、錬金でお金を稼ぐつもりのようだった。朝の早いうちに湖が近くにある街へと馬車で行ってしまった。
 俺のスキルでは金稼ぎなんて無理だよなと思っていたら、タクマから連絡が入った。

「冗談じゃねえよ。あんな洞窟に何日も閉じ込められて、俺は気が狂いそうだ」
「でも魔法は揃ったんだろ。良かったじゃないか」
「クラスⅣは買取だったぜ。おかげで魔法は揃ったけどよ、金の方は全然稼げてねえよ」

 大手ギルドは意外にも世知辛いようだ。出た魔法書くらいタダで覚えさせてやればいいのに、ギルド員にも買い取らせるとはかなり厳しい。まあ前衛は装備の消費もあるから仕方ないのかもしれない。
 クラスⅣなんて十万近くするのだから、十日くらいじゃ金なんか稼げなかっただろう。

「しかも全員で洞窟なんかに行ってたから、ギルドハウスに泥棒が入りやがってよ。俺の貯めてた金まですべて持って行かれちまったよ」
「そりゃご愁傷さまだな」
 そう言いながらも俺はギクリとさせられた。俺たちも金こそ入れてないが、装備などはかなりギルドハウスのチェストに放り込んだままにしている。
「ふざけやがって。俺はもう生きてく気力をなくしたよ」
「ランクはいくつになったんだ」
「28だよ。そっちは」
「38だ」
「相変わらずお前はふざけてるな。先行組のトップだって30からは上がりにくいって言って、誰もまだそこまではいってないだろ。今はお前がトップなんじゃないのか」
「そうかもな。だけど秘密にしといてくれよ。これ以上騒がれるのは嫌だ」
「別にいいじゃないかよ。どっちにしろお前は有名人だ」
「色々話しかけられて大変なんだよ。今朝だって市場に行ったら、何を買いに来たんですか、今どこでやってるんですかって質問攻めにされたよ。アイリなんか街を歩けば人の流れが割れるぜ」

「ははは、そりゃサラシナさんは個人戦で優勝したからな。それより俺はもう真面目にやるのはヤメたぜ」
「奴隷商館に盗みにでも入ることにしたのか」
「それだ! それしかねーだろ!」
「いや、奴隷との契約は特殊なことをやるから俺たちじゃ無理だぜ」
「チッ、なるほどな。それよりも最近になって悪い噂の立つギルドが増えてきたんだ。盗みだとか詐欺だとかな。どうやってるのか、身元をうまく隠しながらやってる奴らがいるんだよ」
「仮面アイテムじゃないか。名前とか詳細なんかが表示されなくなるんだ。セルッカのスラム街で俺も仮面をつけたプレイヤーキラーに襲われたことがある」
「いっそのこと俺たちもPKをやってみるか」
「犯罪者になる奴が必要になるぞ。犯罪者になるとNPCとの取引もできなくなるから、コンパニオンを買うこともできなくなるんだ。引き受けてくれる奴はいないと思うぜ」
「じゃあ、やっぱり盗みだな。黒い噂の絶えないギルドを狙うんだ。いわば義賊だぜ。悪いことして私腹を肥やしてる奴らを成敗するんだ。大義はこっちにある。俺はこのまま黙って泣き寝入りなんてできねえよ」

 盗みをやってるギルドを狙うというのは悪くないかもしれない。それならこちらの良心も傷まないし、そういった行為は高くつくという牽制にもなる。だけど窃盗や犯罪システムのルールを知らない奴を狙うよりは、知ってる奴を相手にする方が難易度は格段に上がる。
 対策だって立てているに違いないのだから、俺たちのような素人にやれるかは疑問だ。
 しかし口うるさいのがいない今しか俺にはチャンスがない。

「お前のところに忍者のフクハラさんがいるだろ。彼女なら盗みぐらいわけないんじゃないのか」
「忍者は一方的に戦いを拒否できるけど、行動阻害を食らったら一発でおしまいだぜ。戦うこともできないからな。狭い室内ならなおさらだ。俺とお前で行った方が戦えるし便利だと思うぜ」
「そんなこと言ったって、俺のリザレクションなんて、ほとんど成功しないんだぞ」
「戦闘不能になるような事態なら、もうロストするしかねえよ。そのくらいのリスクはあるんだ」
「ふん、そのくらいわかってるよ。ロストがなんだ。俺は何としてもメエちゃんをものにするって決めたんだ。そのためなら悪魔にだって魂を売るぜ」
「復讐の話はどこ行ったんだ。目的が邪なものにすり変わってるじゃないか。アリスとクリスティーナに話はつけてあるのか」
「そんなのは後だ。まずは盗みに入ろうぜ。もう俺たちのギルドに入った奴らの場所は割れてるんだ」

 すぐにタクマがやってきたので、俺は必要のない荷物をギルドハウスに置いてタクマの案内に従った。剣をどれにしようか迷ったが、そもそも窓から侵入するのにレッサードラゴンブラッドソードは大きすぎて入らない。デストラクションを使って戦うわけにもいかないからオシリスの宝剣も意味がない。
 俺はアイスソードと詠唱阻害付きのクリティカルナイフだけを持ってきた。

 窃盗に入る場合、盗んでいるところさえ見られなければ大したペナルティタイムは発生しない。盗んだものをスラム以外で売ったりすれば、それもペナルティタイムを発生させる。またPKも、とどめまで刺さなければ短いペナルティタイムで済む。とどめまで刺してしまえば、相手のランクにも寄るが数週間のペナルティタイムが課され、そこでロストが発生すると牢獄でペナルティタイムの10倍の時間だけ過ごさなければならなくなる。

 仮面には名前とペナルティーを受けているかどうかを隠す効果があった。これは仮面でなくともマスクのようなものでもいい。しかし戦闘中に耐久がなくなって壊れたりするようなものでは正体を隠す役には立たない。
 まあ一度使うくらいならどんなものでもいいだろう。

「とりあえず目出し帽のようなものだけでも買うか」
「そ、そうだな」
「おい、ビビってるのかよ」
 タクマはすでに顔も青ざめて非常に頼りない。今からこんな状態で大丈夫なのだろうか。
「もし倒されたら牢獄行きだろ。どうやってペナルティタイムをやり過ごすんだ」
「盗んでるところを見られなきゃ、一つにつき数分のペナルティタイムだぞ。そんなものどうにでもなる。お前はマステレポートが使えるか」
「使えるぜ。テレポートスクロールもある。だけど窃盗のレベルが1なんだよな。あげてからの方がよくないか」
「俺の窃盗はレベル2だ。俺に任せておけばいい。見られてるのに盗むような真似だけはするなよ。盗んでる場面を見られると窃盗じゃなくて、強盗のペナルティーを受けるんだ。そうならないように気をつけろ。仕事が終わったら、何も考えずに、とにかく俺のギルドハウスに飛べよ。それと俺が魔剣の力を開放してブリザードを使ったら、その時も何も考えずにギルドハウスを目指せ」
「わ、わかった」

 タクマはビビりあがっていて、非常によろしくない。手筈さえ間違えなければなにも恐れる必要などないはずなのだ。飛び道具での攻撃を受けて戦闘状態にされれば、テレポートの類は使えなくなる。それだけが唯一の脅威と言ってもいいだろう。
 だけど昼間のギルドハウスに人員を残しておく余裕などあるわけがないのだから、こんなのは楽勝のはずだ。

「こんなちょろいヤマを前にビビりすぎだろ。そんな調子だと手順を間違うぜ」
「そんなこと言ったってな。お、俺はお前ほどランクも高くないしよ」
「ランクなんて関係ないだろ。基本的にペナルティータイム中は逃げることに専念するんだ。間違っても相手を倒そうとしたりするんじゃないぞ。盗賊と忍者に追われたら、背中だけは何がなんでも守れよ」

 俺たちは市場で目出し帽を二つ買った。冬を前にして二つしか在庫がないほどの不人気商品だ。こんなものを被っていれば賞金稼ぎに命を狙われることもあるんだから当然だ。
 盗みなんかするからこんなことになったんだと教訓を与えるために、天誅と紙に大きく書いたものも持った。

 俺たちは盗みを働いているという奴らの隠れ家――ギルドハウスの前までやってきた。まだ明るいから天眼のスキルは反応を示さない。アラートオーブも当然のことながら反応がない、かと思ったら、タクマに反応して真っ赤になっている。

「いいかげん腹を決めろ。取られたものを取り返すんだろ。これは戦争なんだ。何が起きたって最悪牢屋に入るだけだぜ。盗みだけなら数週間で出てこられる」
「だ、だけど盗みをやってる奴らの罪をかぶってさ、悪評が広まるかもしれないぜ。最近盗みを働いてたのは俺たちなんだってことになったらどうするんだ」
「今更、引き返すための口実ばかり考えるな。やると決めて腹を据えるんだよ。失敗を恐れても何も変わらないぞ。失敗する可能性を受け入れて最善を尽くすことだけ考えろ」
「かっこいいけど、コソ泥が標語にするには大げさだな」

 タクマが笑って言った。俺たちは目出し帽をかぶって準備を済ませる。多くののギルドハウスに囲まれた場所で、この時間帯の人通りは全くない。
 俺は消音ポーションを鍵穴の周りに振りかけて、ピッキングセットを差し込んだ。しかし手応えがまったくない。これはグレード4かそれ以上の鍵であるように思えた。

「まずいな。これはピッキングじゃ開かないぜ」
「どうするんだよ。出直すか」
「いや、窓をぶち破って入ろう」

 俺は窓に消音ポーションを掛けた。そして剣でガラス窓を叩き割った。消音ポーションのおかげでカラスが地面に落ちる音しかしない。俺たちは反対側の窓に回って、そちらの窓も消音ポーションをかけてから叩き割った。これは逃げ道を確保するためである。
 そのまま息をひそめて、人の足音がしないか確かめる。心臓の音がうるさくて周りの音が上手く聞き取れない。ならば足音なんか気にせずやるしかない。

 タクマに向かって頷くと、俺たちは割れた窓から中に入った。入った先はリビングだった。
 そこら辺のギルドハウスから盗み出したであろうチェストが乱雑に積み上げられている。よくこれだけ集めたものだと感心してしまうほどの量だった。
 他の部屋も確認してみたが、誰もいなかった。トラップも設置されていたが、俺の天眼によってすべて無効にする。

「お前の情報は正確だな」
「まあな。急に金遣いが荒くなって、周りを見下すような発言が増えたそうだぜ」

 常に周りを見下してるところがある俺には耳の痛い発言だった。
 チェストのグレードはどれも高くない。俺が開けると、タクマは金になりそうなものだけインベントリに移していた。チェストを開けていくと、一つだけ開かないチェストがある。このギルドハウスに付いていたものだろう。たぶんグレード4まで上げられている。

 各部屋にも開かないチェストが一つずつあった。俺はその四つのチェストをインベントリの中に収める。非常に重たくて動くのにも支障が出るようになった。
 そこで騒がしい声が割れた窓から聞こえてくる。

「おい、やばいぜ」

 俺はこっちだと、あらかじめ割っておいた反対側の窓から外に転がり出る。タクマは漁れていなかったチェストを欲張ってインベントリの中に入れたから、俺以上に動きが悪くなった。
 血だらけになって、血だらけのタクマを割れた窓から引っ張り出すのと、怒声が聞こえてきたのは同時だった。
 どうやらギルドハウスの持ち主が荒らされたリビングに気付いたらしい。

 通りの方に走ろうとするタクマを引き留めて、俺は天誅と書かれた紙を割れた窓から放り込んだ。そして通りの側とは反対にギルドハウスの裏に向かって移動する。
 裏の茂みに隠れてタクマにマステレポートの魔法を使わせた。やってきた奴らは表通りに通じる方へと探しに行っている。
 見つかることもなく、俺たちはその場から脱出した。

「やってやったぜ!」
「お前な、どうして最後に欲をかいたんだ。あれのせいでかなりぎりぎりだったぜ」
「上手く行ったんだしいいじゃねえかよ。それよりもお前の持ってきたチェストも開けてみようぜ」
「ゆうくん?」

 ギルドハウス前でニャコに声を掛けられた。俺たちはなんでもない風を装ってギルドハウスに入り、俺の部屋に入った。目出し帽をかぶっていたが、なんということはなくギルドハウスには入れた。
 よく確認すると真っ赤なデバフアイコンが視界の中に現れており、ペナルティータイム5時間と表示されていた。タクマの方は3時間だ。アイコンには泥棒と説明が表示されている。

「ゆうくん、泥棒ニャんてよくニャいと思うよ」
「ななな、なんのことかな」
 ニャコは何も言わずに睨んでくる。そう言えば犯罪者がいると警告表示が現れるのだ。これは目出し帽で顔を隠していても意味がない。
 俺はとっさに言い訳を考えた。
「ちょっと俺の友達がドジ踏んで犯罪者にさせられちゃったんだよ。そいつを匿っているんだ。別に悪いことしたわけじゃないよ」
「そうニャの」
「そうだよ。俺がそんなことするわけないだろ」

 ニャコはそれで引き下がった。これはギルドハウスの近くに来られただけでも犯罪者がいることがばれてしまう。このギルドハウスの周りはあまり建物がないのだ。
 だけど、だからこそあまり探されないだろうというのはある。俺たちが盗みをやったと知る者はいないのだから、今は大丈夫だろう。

「これが切れるまではギルドハウスの中にいるしかないな。お前も外には出られないぜ」
「まあいいさ。それより早く開けてみろよ」

 開けられなかったチェストボックスは結局のところ窃盗のレベルが上がるまで開けることは出来なかった。俺はひたすら6時間以上も鍵穴をいじることになった。
 窃盗のレベルが上がったのはMPにものを言わせて、暇があれば天眼のスキルを使っていたおかげだろう。窃盗のレベルが上がるとともにチェストの方も開いた。
 窃盗のレベル欄はMAXと表示されているので、これ以上上がることはないようだ。

 中から出てきたのは装備品やアクセサリー、スクロール、それに魔法書などだった。どれも金になりそうなものばかりだ。ゴールドもあるがロンダリングせずには使えないだろう。

「普通のアイテムと混ぜるなよ。これはスラムで売らないと足が付くんだ」
「へへへ、これだけあればかなりの金になりそうだな。さっそく売りに行こうぜ」

 真っ暗闇の深夜に、俺たちはスラム街に来ていた。ペナルティータイムは明けたので、視界の端に犯罪者のいる旨が表示されている。犯罪者になっていたからこそ分かるが、ペナルティータイム中は命を狙われているんじゃないかと疑心暗鬼になりやすい。かなり不安定な心理状態に陥る。

 クレアでも近くにいたら、俺は誰にも負けない自信があるが、相棒がタクマでは心細いことこの上なかった。誰にでも斬りかかる通り魔になるまでそんなに時間はいらないだろうと思われるほどだ。そんな心理状態になってる奴が近くにいるというだけでも、かなり嫌なものである。
 召喚組の中で最もランクが先行してる俺ですらそんな心理状態になるのだ。

「モーレットから聞いた話だとこの建物みたいだぜ」
「さっさと中に入るぞ」

 なにを焦っているのかタクマは犯罪者ギルドの建物にノックもしないで入って行った。仕方ないので俺もそれに続いた。
 中ではチンピラたちが酒を飲んで騒いでいる。それを見守るようにして座っているアリスとクリスティーナがいた。
 アリスだけは一応酒を飲んではいるが、酔っぱらうほどではない。

「こんなところに勝手に入ってくるとは、肝が据わってるね」
「今のボスはアンタらだよな」
「そうだ。それでアタシらに何の用があって来たんだい」
 二人を前にしたらタクマは急におどおどし始めたので、俺がアリスと話をするしかない。
「引き取ってもらいたいものがあるんだ」
「裏のある商品なんだろうね」
「まあな」
「アタシらと取引したいならスジを通してもらおうか。いくらボスの男であってもだ」

 急にクリスティーナが話に入ってきて言った。アリスと違ってクリスティーナは泥酔している。この酔っぱらいを相手にするのは嫌だなと思った。
 面倒なことを言われる予感しかしない。こんなところで時間を取らされるのは面倒だ。
 もし難題を吹っ掛けられたら、暗黒街は俺が治めてやろうかという気になってくる。こんな奴らを倒すくらいはわけないのだ。クレアたちが嫌というなら新しい仲間を集めたっていい。俺にはそれくらいのことが出来る。

「スジを通すってのは」
「アンタ、いい顔をするじゃないか」
 アリスが俺の顔を見て言った。しかしクリスティーナはそんなことお構いなしだ。
「誰か男をアタシらに差し出しな。それなしで取引は出来ないよ」
「それがルールなんだよ。今日は盗品を売りに来た奴はいないかと探しに来た奴らがいたんだ。そいつらもアタシらと取引している。アンタらと取引すれば、そいつらに嘘をつかなきゃいけなくなるんだ。いくらボスの男でもフェアな取引相手になってもらわなきゃ、かばえないんだよ」

 すまないねとアリスは付け加えた。
 この距離で見て初めて気が付いたが、二人はゴリラかなんかの獣人であるようだった。つまり人間の男を寄こせということだろう。男好きな奴らだ。
 コウタじゃダメなのかと尋ねたら、一度食った男はダメだと言われてしまった。それにコウタはすでに取引をしているという。そんな商売にまで手を広げているらしい。サブ職も錬金と鍛冶と裁縫をあげているとリカから聞いたことがある。コウタも頑張っているようだ。

「ど、どうするんだよ」
「連れてくるしかないな。ミサトさんでいいだろ」
 コウタのような雰囲気の顔だし、知り合いの中ではそれしか心当たりがなかった。
「あ、あの人は妻子持ちだぞ」
「だけどそれ以外に誰がいるんだ。お前が相手するか」
「チッ、こうなりゃ悪魔にだって魂を売るよ。だけど、どうやって呼び出すんだ」
「風俗をおごるとか、適当に理由をつければいい」

 俺たちは空き部屋を貸してもらって、そこにミサトをおびき寄せることにした。風俗で外れを引いたと思ってミサトには涙を呑んでもらうしかない。
 あえて風俗だとは言わずに、日ごろのお礼がしたいと言って呼び出すようにタクマに言った。そしたら来てくれるという手筈になった。

「ここまで悪に手を染めちまったら、もう真人間には戻れないかな」
「つまらないことを言うなよ。しょうがないだろ」
「自分のところのギルドマスターを売る日が来るとはな」

 しばらくしてミサトはやって来た。何があるのかなとか言ってるが、スラム街に呼ばれたのだから、そういうことを期待しているのは間違いない。

「どうして、ベッドに縛り付ける必要があるのかな」
「そういうプレイなんですよ」
「えっ、そういうプレイって、風俗とかそういうのは困るよ」

 困るよとか言いながら少し笑顔なのが、俺たちの良心を締め付ける。しかしコウタはそこまで悪い感じじゃなかったし、この人もコウタに似たところがあるから何とかなるだろう。確かに顔も似ているが、ここでいう似たところというのはSとMで言うところの、Mであるとかそういったことだ。
 俺たちは部屋の外に出て、アリスたちに捧げる生贄の用意が出来たことを告げる。

「いつ頃終わるんだ」
「朝まで終わりゃしないさね。盗品を売りたいなら、ヒゲ爺に言いな。小便通りの角の店にいるはずだ。どうせそんな用事なんだろ」

 アリスは小さく笑うと部屋に入って行った。それに続いてクリスティーナや他の連中まで入って行く。そのなかにはスラリとした綺麗どころの女もいるので、タクマは少しうらやましそうな顔をしていた。

「あんまり気にするな。世の中にはああいうのを好きな男もいるんだよ。日頃のお礼だと思っておけばいいんだ」
「あ、ああ。だけど朝までとなると地獄だな」
「それより早く売りに行こうぜ。盗品をいつまでも持ってるのはやばい」

 俺たちは言われた通り、細い路地の角の店で盗品を売り払った。俺たちが盗みに入った奴らはかなり荒稼ぎしていたらしく、すべて売り払うと500万近い額になった。これなら向こうも死に物狂いで探しているだろう。
 俺たちで200万ずつ分けて、残り100万はミサトへの口止め料プラス見舞金にすることにした。
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