裏庭ダンジョン

塔ノ沢渓一

文字の大きさ
6 / 59

骸骨戦士

しおりを挟む


 丸一日寝込んで、やっと魔光受量値が二桁まで下がった。
 寝て起きたら魔装の値が36まで上がっている。
 やはりこの苦しみは、体が魔力のようなものに耐えられる体へと創りかえられているのだろう。

 寝ている間に、無断で地下空洞内に降りた民間人が、炭になっているのを調査団に発見されるという事件が起きていた。
 たぶん俺のジャンバーのように、魔力に当てられすぎると体が存在できなくなってしまうのだ。

 今、日本で起きていることは世界各地でも起こっている。
 そして地下空洞に降りようとする民間人は後を絶たない。
 俺が寝ている間にはついに政府も、調査団を作ったようである。

 地下空洞からの物資なしに、安全は守れないという意見が声高に主張されていることもあって、政府は決死隊の様な悲壮感のある調査団を作って送り込んだ。
 ダンジョン魔物にはダンジョンの武器しか通用しないことは皆の知るところだ。
 彼らはまるでゲームのようだという調査結果を残した。

 ネットにはスライムやゴブリンを倒したという報告が上がっていたようだが、最初期にダンジョンに降りた人たちは魔光によって寝込んでいるのか、報告の続きはない。
 俺が持ち帰った気味の悪い肉片は、ネットで調べてみたところ、肝臓という部位であることがわかった。

 つまり肝である。カエルの肝が何かに効くという記載は見つけられなかったので、たぶん精力か何かの象徴であると思われる。
 ドロップ品の肉片は薄い膜に覆われて、艶々と光っていた。

 俺はさっそく食べてみようと膜を破り取り出して、フライパンに放り込み火にかけた。
 なぜそんな無茶をするのかといえば、きっと魔力に耐えられる体を作るのに、必要な要素だと思うからだ。

 ネットではすでにスライムゼリーを食べた者もいて、体の調子がよくなったと書き込んでいるのを目にしたこともある。
 7つも焼いたらかなりの量だが、体調の悪かった間、ろくに食べられなかったのでちょうどいい。

 塩コショウで味付けして適当に食べたら、信じられない程に美味かった。
 油がもの凄く美味しくて、トロっとした触感がすっと消えて、体にしみこんでいくかのようだ。
 身体に黒いパワーがみなぎってきたので、たぶんマナを回復してくれるアイテムではないかという気がする。

 これは今食べてももったいなさそうなので、タッパーに移した。
 次にダンジョンに行くときに持っていくことにしよう。
 仕方がないので、かわりにそばがきを作って食べた。

 ネットでは素材の買取なんてものをやっている人も見かけるようになった。
 俺はまだ見たこともないが、そんなものが出ることもあるということだ。
 ゴブリンがよく布切れや、革の切れ端といった素材を落とすという話である。

 着ているものが、ほんの少しダメージを負っただけで崩れ去るというのも困りものだ。
 すぐ使いたいアイテムを入れておく場所がないし、どんな服も使い捨てになるから、もったいないにもほどがある。
 ダンジョン産の素材で作られた服の売りがあるのなら、ぜひとも買いたいところである。

 ネットで見かけるモンスターの情報は地域によってある程度のまとまりがあるのだが、裏庭のダンジョンに関しては、それらのどのダンジョンとも一致しない。
 カエルやウルフといったモンスターの情報は、海外からまばらに入ってくるといった程度で、国内情報は全くない。

 モンスターの種類から見れば、日本全国で4種類程度のダンジョンしかないようである。
 スライムとゴブリンが出てくるのは東京周辺にできたダンジョンだけで、名古屋周辺にできたダンジョンにはコウモリとアリしか出ない。
 そして九州はタコのような奴が出る。
 だから地上に現れた入り口は、その一帯にできたものと中でつながっているのだろう。

 どういうわけか俺の家の裏庭にあるダンジョンが繋がっていそうな入り口は、日本全国どこにもありそうにないのである。
 位置的にも浮いているので、本当に独立している可能性がある。
 そしてダンジョンの中で最も危険度が高そうなのが、北海道にできたオーク砦の下にあるダンジョンであろう。

 オーク砦の中では、ビルほどの大きさもあるトロールの存在が確認されたという。それだけで、その入り口の大きさからしてとんでもない。
 現在は自衛隊のヘリでも近づくことが出来ず、衛星写真からではダンジョン入り口の正確な大きさまではわかっていない。

 俺は魔光受量値が完全にゼロになるまで待ってから、食べ物と道具をザックに詰めてダンジョンに降りた。
 まずは目を馴らすために、ライトを消して動かずにじっとしている。
 しばらくその状態でいたら、光る石の欠片を手に持ってダンジョン探索を始めた。

 夏だというのに地下は少し肌寒いが、少し動いたら寒さは気にならなくなった。
 俺は抜き身のナイフ片手に、手当たり次第にイボガエルを倒しながら進んだ。
 今回はナイフがあるから、マジックシールドとナイフだけで簡単に始末できる。

 魔弾はマナの消費がないが、シールドの方は、作り出すシールドの大きさに合わせてマナが減る。
 身体全体を覆えるようなものを出せば14もマナが消費された。

 それにしても本当にゲームのようなシステムである。
 命がけでやってることは間違いないのに、なんとも引き締まらない。
 カエルを10匹と、オオカミを3匹ほど倒したところでレベルが6に上がった。

 今回はマジックシールドを使ったことで、二回ほどマナが尽きている。そのたびにカエルの肝を食べて回復している。3個も食べれば満タンになった。
 そして、今日はクリスタルを使うようなケガは一度もない。

 ここまでのドロップは回復クリスタル5個と肝6個、それにウルフからドロップした巻物である。
 休憩ついでに巻物を開けてみると、なんだかよくわからない文字が書き込まれていた。
 魔力を流すと魔法の巻物だという事が何となくわかる。そして、なんとなく使おうと意識しただけで巻物は効果を発揮した。

 ステータスにアイスダガーがプラスされている。
 本当にふざけているなと思いながら、三角の石を取り出して魔力を流してみた。
 どうやらこちらは剣術とオーラが習得できるようである。

 その場で両方とも習得しておいた。
 魔法の方は数字がついていなかったのに、剣術とオーラには熟練度のような数字がついていた。

 いったいいくつが習得レベルの上限なのかわからないが、俺の魔弾は既に4になっている。マナを消費しないのをいいことに、こればかり使っているからである。
 試しにアイスダガーと念じてみたら手裏剣サイズの氷の塊が打ち出された。
 消費マナは4である。

 実戦で使ってみると、ウルフのシールドを貫通してダメージを与えることができた。
 使い勝手としては、貫通力のある魔弾といったところだろうか。
 氷だからといって、相手が凍ったり動きが遅くなったりという事はない。

 その後は、カエルの肝を生で食べながらマナを補給しつつ敵を倒して、さらなる洞窟の奥を目指した。
 魔光受量値には気を付けているが、思ったよりも上がり方が穏やかで、4時間は経過しているのに200ちょっとというところである。

 さらなる敵を探して足早に移動していると、どういうわけか足元の岩が気になった。
 なんだろうか。岩から結晶のようなものが付き出ているのだが、もの凄く強い魔力が感じられるのだ。

 なんとなく価値があるものの様な気がして、俺はそれを地面から外すとザックの中に仕舞った。
 そして獲物探しに戻る。
 途中、オオカミが3匹ほど出た。
 しばらく進むと、足元が急にグラウンドみたいに整地された地面に変わった。

 そして骸骨剣士が、とつぜん暗闇の中から踊り出してきたのである。
 振り下ろされた剣をマジックシールドで受けるが、シールドは砕け散って俺の右手首に深々と剣が突き刺さった。

 俺は怯まずに前に出て、ナイフを頭蓋骨に突き刺している。
 剣術のスキルを習得して以来、ナイフの切れ味が上がっている。それにオーラのおかげで体が強化されているのもわかる。
 しかし、俺は骸骨野郎に腹を蹴られて地面の上を転がった。

 起き上がろうとすると、骸骨剣士が俺に向かって飛びかかってくるところだった。
 魔弾を放ってバランスを崩させ、なんとか脇に転がって振り下ろされた剣をかわした。
 ヤバすぎる相手だ。

 動きが早くて、攻撃に躊躇がない。
 しかも休みなく次々と攻撃を仕掛けてくる。
 無理にナイフで攻撃を受けたら、すっぽ抜けたナイフはどこかに飛んで行ってしまった。
 俺は回復クリスタルを砕き、逃げながらアイスダガーをマナが尽きるまで放った。

 それでどうにか骸骨剣士の動きを止めることに成功した。
 落ちたナイフを回収して、ドロップの盾を拾う。
 骸骨剣士は錆びた両手剣しか持っていなかったのに、ドロップは盾である。

 それにしても、もう少しリーチのある武器が欲しい。
 この骸骨剣士を倒していれば、いつかはまともな武器を落としそうな予感がある。
 そんなことを考えているうちに、今度は弓を持った骸骨戦士が現れた。

 俺は盾を構えて、新たに現れた骸骨に向かって突進する。
 相手は三本の矢を放った後に、ショートソードに持ち替えて、俺を迎え撃つ体制をとった。
 俺は構わず盾を構えたままタックルを食らわせて、逆手に持ったナイフを頭蓋骨に突き立てまくった。

 腹に燃えた火箸を突っ込まれたような感触を覚えるが、ポケットから取り出した回復クリスタルを噛み砕いて傷口を塞ぎ、さらにナイフで突きまくる。
 かくして俺は、両手剣を手に入れた。

 薄っぺらなくせにかなり重たいが、振れないこともないといったところだ。
 刃はボロボロで切れ味は全く期待できない。
 俺は盾を背中に背負って、両手で剣を持つ。
 乗ってきた俺は、さあ次の獲物はどいつだと、暗闇に向かって駆け出した。

 この時は気が付いてなかったが、この戦いでレベルアップをしたことから、かなり魔光受量値が増えていた。


しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

ダンジョンを拾ったので、スキル〈ホームセンター〉で好き勝手リフォームします

ランド犬
ファンタジー
 異世界に転移した佐々木悠人は、召喚でも勇者でもなかった。ただ迷い込んだ先で見つけたのは、王都を望む郊外にひっそりと口を開けるダンジョン。足を踏み入れた瞬間、発動したスキルは ――〈ホームセンター〉 壁を張り替え、部屋を増やし、畑や牧場、カフェまで作れる不可思議な力だった。 気ままに始めたリフォームは、もふもふなネコミミ獣人の少女との出会いをきっかけに、思わぬ変化を呼び始める。 拡張され続けるダンジョンの先で、悠人が作り上げる“住める迷宮”とは――?

クラス転移したら種族が変化してたけどとりあえず生きる

アルカス
ファンタジー
16歳になったばかりの高校2年の主人公。 でも、主人公は昔から体が弱くなかなか学校に通えなかった。 でも学校には、行っても俺に声をかけてくれる親友はいた。 その日も体の調子が良くなり、親友と久しぶりの学校に行きHRが終わり先生が出ていったとき、クラスが眩しい光に包まれた。 そして僕は一人、違う場所に飛ばされいた。

異世界召喚は7回目…って、いい加減にしろよ‼︎

アノマロカリス
ファンタジー
『おぉ、勇者達よ! 良くぞ来てくれた‼︎』 見知らぬ城の中、床には魔法陣、王族の服装は中世の時代を感じさせる衣装… 俺こと不知火 朔夜(しらぬい さくや)は、クラスメートの4人と一緒に異世界に召喚された。 突然の事で戸惑うクラスメート達… だが俺はうんざりした顔で深い溜息を吐いた。 「またか…」 王族達の話では、定番中の定番の魔王が世界を支配しているから倒してくれという話だ。 そして儀式により…イケメンの正義は【勇者】を、ギャルっぽい美紅は【聖戦士】を、クラス委員長の真美は【聖女】を、秀才の悠斗は【賢者】になった。 そして俺はというと…? 『おぉ、伝承にある通り…異世界から召喚された者には、素晴らしい加護が与えられた!』 「それよりも不知火君は何を得たんだ?」 イケメンの正義は爽やかな笑顔で聞いてきた。 俺は儀式の札を見ると、【アンノウン】と書かれていた。 その場にいた者達は、俺の加護を見ると… 「正体不明で気味が悪い」とか、「得体が知れない」とか好き放題言っていた。 『ふむ…朔夜殿だけ分からずじまいか。だが、異世界から来た者達よ、期待しておるぞ!』 王族も前の4人が上位のジョブを引いた物だから、俺の事はどうでも良いらしい。 まぁ、その方が気楽で良い。 そして正義は、リーダーとして皆に言った。 「魔王を倒して元の世界に帰ろう!」 正義の言葉に3人は頷いたが、俺は正義に言った。 「魔王を倒すという志は立派だが、まずは魔物と戦って勝利をしてから言え!」 「僕達には素晴らしい加護の恩恵があるから…」 「肩書きがどんなに立派でも、魔物を前にしたら思う様には動けないんだ。現実を知れ!」 「何よ偉そうに…アンタだったら出来るというの?」 「良いか…殴り合いの喧嘩もしたことがない奴が、いきなり魔物に勝てる訳が無いんだ。お前達は、ゲーム感覚でいるみたいだが現実はそんなに甘く無いぞ!」 「ずいぶん知ったような口を聞くね。不知火は経験があるのか?」 「あるよ、異世界召喚は今回が初めてでは無いからな…」 俺は右手を上げると、頭上から光に照らされて黄金の甲冑と二振の聖剣を手にした。 「その…鎧と剣は?」 「これが証拠だ。この鎧と剣は、今迄の世界を救った報酬として貰った。」 「今迄って…今回が2回目では無いのか?」 「今回で7回目だ!マジでいい加減にして欲しいよ。」 俺はうんざりしながら答えた。 そう…今回の異世界召喚で7回目なのだ。 いずれの世界も救って来た。 そして今度の世界は…? 6月22日 HOTランキングで6位になりました! 6月23日 HOTランキングで4位になりました! 昼過ぎには3位になっていました.°(ಗдಗ。)°. 6月24日 HOTランキングで2位になりました! 皆様、応援有り難う御座いますm(_ _)m

おっさん冒険者のおいしいダンジョン攻略

神崎あら
ファンタジー
冒険者歴20年以上のおっさんは、若い冒険者達のように地位や権威を得るためにダンジョンには行かない。 そう、おっさんは生活のためにダンジョンに行く。 これはそんなおっさんの冒険者ライフを描いた生活記である。

最遅で最強のレベルアップ~経験値1000分の1の大器晩成型探索者は勤続10年目10度目のレベルアップで覚醒しました!~

ある中管理職
ファンタジー
 勤続10年目10度目のレベルアップ。  人よりも貰える経験値が極端に少なく、年に1回程度しかレベルアップしない32歳の主人公宮下要は10年掛かりようやくレベル10に到達した。  すると、ハズレスキル【大器晩成】が覚醒。  なんと1回のレベルアップのステータス上昇が通常の1000倍に。  チートスキル【ステータス上昇1000】を得た宮下はこれをきっかけに、今まで出会う事すら想像してこなかったモンスターを討伐。  探索者としての知名度や地位を一気に上げ、勤めていた店は討伐したレアモンスターの肉と素材の販売で大繁盛。  万年Fランクの【永遠の新米おじさん】と言われた宮下の成り上がり劇が今幕を開ける。

莫大な遺産を相続したら異世界でスローライフを楽しむ

翔千
ファンタジー
小鳥遊 紅音は働く28歳OL 十八歳の時に両親を事故で亡くし、引き取り手がなく天涯孤独に。 高校卒業後就職し、仕事に明け暮れる日々。 そんなある日、1人の弁護士が紅音の元を訪ねて来た。 要件は、紅音の母方の曾祖叔父が亡くなったと言うものだった。 曾祖叔父は若い頃に単身外国で会社を立ち上げ生涯独身を貫いき、血縁者が紅音だけだと知り、曾祖叔父の遺産を一部を紅音に譲ると遺言を遺した。 その額なんと、50億円。 あまりの巨額に驚くがなんとか手続きを終える事が出来たが、巨額な遺産の事を何処からか聞きつけ、金の無心に来る輩が次々に紅音の元を訪れ、疲弊した紅音は、誰も知らない土地で一人暮らしをすると決意。 だが、引っ越しを決めた直後、突然、異世界に召喚されてしまった。 だが、持っていた遺産はそのまま異世界でも使えたので、遺産を使って、スローライフを楽しむことにしました。

【運命鑑定】で拾った訳あり美少女たち、SSS級に覚醒させたら俺への好感度がカンスト!? ~追放軍師、最強パーティ(全員嫁候補)と甘々ライフ~

月城 友麻
ファンタジー
『お前みたいな無能、最初から要らなかった』 恋人に裏切られ、仲間に陥れられ、家族に見捨てられた。 戦闘力ゼロの鑑定士レオンは、ある日全てを失った――――。 だが、絶望の底で覚醒したのは――未来が視える神スキル【運命鑑定】 導かれるまま向かった路地裏で出会ったのは、世界に見捨てられた四人の少女たち。 「……あんたも、どうせ私を利用するんでしょ」 「誰も本当の私なんて見てくれない」 「私の力は……人を傷つけるだけ」 「ボクは、誰かの『商品』なんかじゃない」 傷だらけで、誰にも才能を認められず、絶望していた彼女たち。 しかしレオンの【運命鑑定】は見抜いていた。 ――彼女たちの潜在能力は、全員SSS級。 「君たちを、大陸最強にプロデュースする」 「「「「……はぁ!?」」」」 落ちこぼれ軍師と、訳あり美少女たちの逆転劇が始まる。 俺を捨てた奴らが土下座してきても――もう遅い。 ◆爽快ざまぁ×美少女育成×成り上がりファンタジー、ここに開幕!

処理中です...