裏庭ダンジョン

塔ノ沢渓一

文字の大きさ
29 / 59

オーガ

しおりを挟む




 俺がオーガに魔剣を叩き付ける。
 何で出来ているのか、オーガは手に持った棍棒でそれを受け止めた。
 飛び上がった蘭華に斬りつけられて、オーガは肩から炭になった血を吹きだした。

 飛び越すときに蘭華はオーガの首にチェーンソードを巻き付けている。
 チェンソードは切っ先をぶつけるか、もしくは巻き付けて引っ張り切断する武器である。
 その巻き付けたチェーンソードを、オーガは素手で掴む。

 まずいと思った時には、蘭華はチェーンソードの柄を手放していた。
 武器は失ったがそれで正解だ。
 いつまでも持っていたら、地面に叩きつけられていただろう。

 有坂さんのマジックアローがオーガの胴体に三本刺さる。
 俺は殴られそうになって、いったん距離をとった。
 体勢を立て直してアイスランスをオーガの顔面に向けて放ち、それを相手が棍棒で受けたところで、胴体に向かって魔剣を振るった。

 棍棒を持っていない左腕でカウンター気味に殴られるが、砕けた顎は剣と魔法の力によってダメージを回復する。
 オーガは足と胴体が離れて地面に転がった。
 俺の首が吹き飛ばなかったのはレベルのおかげだろう。

 もう少しレベルを上げておけば良かったと、少し後悔したくらいには強い相手だった。
 倒したと思ったら次は二体でやってくる。

「私が引き付けよう」

 有坂さんがマジックアローを放ち、ヘイトを自分に向けて一体を引きはがした。
 そのまま有坂さんが鬼ごっこをしているうちに、俺と蘭華で一体を倒す。
 蘭華がダメージを与えることよりも、隙を作ることに専念してくれたおかげで、俺の魔剣がオーガの頭を潰した。

 そして有坂さんが連れてきた残り一体を、三人で倒した。

「助かりました」

「私がダンジョン教室で受けた授業も、そう馬鹿にしたものじゃないだろ。自分が相手より優れている部分を探して利用するんだそうだよ。今の場合、オーガより足が速いことを利用したわけだね」

 蘭華も有坂さんも動きがよくなってきたなと感慨深い。
 予想外の強敵が出て来たのに、臆することがないのもありがたかった。
 まだ有坂さんは敵にまともなダメージを与えられる魔法が一つしかないし、蘭華は攻撃力が全く足りてないのに、出来ることでしっかりと貢献している。

 ちゃんとした武器と魔法さえあれば、確実に戦力になる動きだ。
 もう少しオーガで足止めされるだろうが、それを越えたら宝物庫だ。
 宝物庫の周りだからなのか、歩いていたらまた高エネルギー結晶体を発見した。

 二人に見せても、もはやそれほどの驚きは無いようだった。
 一番先行しているからこその利益である。
 以前に俺が見つけた奴も、小さいながら売らずにまだとっておいてある。

 まだ買いたいものも売りに出ていないからと、俺が預かることになった。
 その後もオーガの討伐を続けて、50体ほど倒したところで魔光受量値が帰るべき数値になってしまった。
 ここまで来てしまうと、帰り道もかなり長い。

 走って帰ることになるのだが、障害物が多くて大変だ。
 蘭華は革の服が蒸れると言って愚痴っている。
 一層へ通じる坂道を上り、ハイゴブリンの地帯に出ると、そこで狩りをしているチームに出くわした。

 いきなり現れた俺たちに驚いたようだったが、俺の顔を確認すると軽く挨拶してきた。
 もうここまで進んだチームがいることに驚きである。
 装備がよくなってダンジョンに居るだけで受ける魔光は誤差レベルになり、休憩で体力とマナを回復しながら敵を倒している。

 見ていると、魔弾やマジックシールドの展開が異様に速い。
 たぶん俺の想像もつかないほどスキルレベルが上がっているのだろう。
 今ハイゴブリンをやっているチームには、ヒールの魔法さえあるようだった。

 先行していたチームの中には、高エネルギー結晶体を見つけたことでダンジョンに来なくなったチームもある。
 だから前線組が入れ替わることも珍しくない。
 最近ではアイテムや装備が安くなり、第二次ダンジョンブームと言われるほど探索者が増えている。

 ダンジョンを出て更衣室で着替えを済ませる。
 外に出ると、取材やらインタビューなどを色々と求められるが、すべて断ってホテルに帰った。
 最も深くまで踏破した探索者として、有名になりすぎた。

 海外で軍隊を使って攻略競争しているような状況だと、命を狙われはしないかと心配になってくる。
 一番最初に新しい地帯に入るのは大きな優位性があるのだ。
 当然ながら海外でも、二層に入ったという話は聞こえてこない。

 休憩もなく敵を倒しているのだから当然なのだが、麒麟を手に入れた奴ならもっと奥に行っていてもおかしくない。
 そいつの情報がないってことは、かなり大きな組織に極秘にされているという事だ。
 やはりあいつは一般の探索者ではない。



 次の日は協会に呼び出された。
 あの京野のチームも全員が揃って来ていた。
 ある程度の実績がある全員が呼び出されたはずだが、集まったのは50人程度だ。

 また犯罪者でも捕まえさせられるのかと思ったら、北海道のオーク狩りだそうである。
 それを聞いた途端に半分ほどが帰ってしまった。
 結局はまた俺のチームと京野の赤ツメトロくらいしか残らない。

 自衛隊の12パーティー規模のチームも参加するそうだ。

「今残っていただいた方々が東京班という事になります。自衛隊班がサポートしますし、危険はないように配慮します。回復クリスタルについても、協会から配布されます」

 自衛隊所属のパーティーは、そっちだけで組んでやるようだ。。
 しかしそうなると、東京班のメインとなるのは、京野が率いている女しかいないチームである。

「オークなんて倒せるのかしらね」
「俺たちなら余裕だろうけど周りの奴らはどうだろうな」

 レベル20くらいで霊力一万もあればソロでも倒せるはずだ。
 しかし、そのラインを越えている奴がここに居るとも思えない。
 なんせ蘭華や有坂さんが最近になって越えたラインである。

 チームとしては俺の霊力が4万あるから問題ない。
 周りはどんなもんだろうと思って、手近にいた奴に聞いてみる。

「はっ、はい。チームふなっしぃ、リーダーの小田です。レベル14、霊力5千です」

 こんな見たこともないヤツまで俺のことを知っている。
 どんなうわさが広まっているのか知らないが、小田はあきらかに緊張で言動がおかしくなっていた。
 聞いてもいないことまでペラペラと話し始めた。

 船橋のチームという事だが、探索者登録した頃の相原くらいのレベルである。
 まあ4人もいるから、一匹くらいなら倒せないこともないだろう。
 それにしても、地名をチーム名に入れるのは流行っているのだろうか。

 ならば赤ツメトロは赤羽かどこかのチームだったのだろうか。
 今では女性だけのチームというのが受けて、かなりの大所帯になったそうである。
 日本中に支部があり、手厚い支援が受けられるそうだ。

 京野に聞いてみると、平均レベルは高くないが、霊力は高めだった。

「な、なあ。アンタ、あの講習会で誰かを血だるまにしてたか?」
「いや、全く心当たりがない。というか、お前はあの場にいただろ」
「そ、そうだよな。なんかそういう噂が広まってるんだよ」

 自分から話しかけてこないと思ったら、そんな噂を信じていたようだ。
 京野と話していたら、自衛隊の人に呼ばれた。
 ついていくと会議室のような部屋に案内される。

「自衛隊のチームからも伊藤さんの噂は上がっています。出来れば今回の討伐作戦で伊藤さんのチームを中心に作戦を立てたいのですが」

「三人しかいないチームですよ」
「それでもソロで自衛隊所属のチームよりも奥まで行っていますよね」
「あの奥にはゴーレムみたいな簡単に倒せる奴がいるんですよ」

「それはいい情報を聞きました。後で報告させてください。現地ではどうしても強いパーティーの力が必要になる場面もあるかと思います。そのために必要なんです。請け負ってもらえませんか」

 まあ端っこを割り振られて、ろくにオークを倒せないというのよりはいいだろうか。
 でも突撃してくれなんて言われても困りものだ。
 今までの行動から見ても、オークの行動パターンはかなり複雑なものだ。

「砦を攻めることになりますよね。いったいどうやって攻めるつもりですか」

「詳しいことはまだ決まっていませんが、砦を作っているのは地球の木です。ですから今のところナパーム弾で焼き払えばいいだろうという事になっています。ナパームなら生木だったとしても燃やせますからね。特に障害になるとも考えていません」

 確かに地球の木であれば、ファイアーボールでも簡単に灰にできるかもしれない。
 しかし、更地になったらなったで敵が集まりすぎて危険という事も考えられる。

しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

ダンジョンを拾ったので、スキル〈ホームセンター〉で好き勝手リフォームします

ランド犬
ファンタジー
 異世界に転移した佐々木悠人は、召喚でも勇者でもなかった。ただ迷い込んだ先で見つけたのは、王都を望む郊外にひっそりと口を開けるダンジョン。足を踏み入れた瞬間、発動したスキルは ――〈ホームセンター〉 壁を張り替え、部屋を増やし、畑や牧場、カフェまで作れる不可思議な力だった。 気ままに始めたリフォームは、もふもふなネコミミ獣人の少女との出会いをきっかけに、思わぬ変化を呼び始める。 拡張され続けるダンジョンの先で、悠人が作り上げる“住める迷宮”とは――?

この子、貴方の子供です。私とは寝てない? いいえ、貴方と妹の子です。

サイコちゃん
恋愛
貧乏暮らしをしていたエルティアナは赤ん坊を連れて、オーガスト伯爵の屋敷を訪ねた。その赤ん坊をオーガストの子供だと言い張るが、彼は身に覚えがない。するとエルティアナはこの赤ん坊は妹メルティアナとオーガストの子供だと告げる。当時、妹は第一王子の婚約者であり、現在はこの国の王妃である。ようやく事態を理解したオーガストは動揺し、彼女を追い返そうとするが――

クラス転移したら種族が変化してたけどとりあえず生きる

アルカス
ファンタジー
16歳になったばかりの高校2年の主人公。 でも、主人公は昔から体が弱くなかなか学校に通えなかった。 でも学校には、行っても俺に声をかけてくれる親友はいた。 その日も体の調子が良くなり、親友と久しぶりの学校に行きHRが終わり先生が出ていったとき、クラスが眩しい光に包まれた。 そして僕は一人、違う場所に飛ばされいた。

最遅で最強のレベルアップ~経験値1000分の1の大器晩成型探索者は勤続10年目10度目のレベルアップで覚醒しました!~

ある中管理職
ファンタジー
 勤続10年目10度目のレベルアップ。  人よりも貰える経験値が極端に少なく、年に1回程度しかレベルアップしない32歳の主人公宮下要は10年掛かりようやくレベル10に到達した。  すると、ハズレスキル【大器晩成】が覚醒。  なんと1回のレベルアップのステータス上昇が通常の1000倍に。  チートスキル【ステータス上昇1000】を得た宮下はこれをきっかけに、今まで出会う事すら想像してこなかったモンスターを討伐。  探索者としての知名度や地位を一気に上げ、勤めていた店は討伐したレアモンスターの肉と素材の販売で大繁盛。  万年Fランクの【永遠の新米おじさん】と言われた宮下の成り上がり劇が今幕を開ける。

「クビにされた俺、幸運スキルでスローライフ満喫中」

チャチャ
ファンタジー
突然、蒼牙の刃から追放された冒険者・ハルト。 だが、彼にはS級スキル【幸運】があった――。 魔物がレアアイテムを落とすのも、偶然宝箱が見つかるのも、すべて彼のスキルのおかげ。 だが、仲間は誰一人そのことに気づかず、無能呼ばわりしていた。 追放されたハルトは、肩の荷が下りたとばかりに、自分のためだけの旅を始める。 訪れる村で出会う人々。偶然拾う伝説級の装備。 そして助けた少女は、実は王国の姫!? 「もう面倒ごとはごめんだ」 そう思っていたハルトだったが、幸運のスキルが運命を引き寄せていく――。

異世界召喚は7回目…って、いい加減にしろよ‼︎

アノマロカリス
ファンタジー
『おぉ、勇者達よ! 良くぞ来てくれた‼︎』 見知らぬ城の中、床には魔法陣、王族の服装は中世の時代を感じさせる衣装… 俺こと不知火 朔夜(しらぬい さくや)は、クラスメートの4人と一緒に異世界に召喚された。 突然の事で戸惑うクラスメート達… だが俺はうんざりした顔で深い溜息を吐いた。 「またか…」 王族達の話では、定番中の定番の魔王が世界を支配しているから倒してくれという話だ。 そして儀式により…イケメンの正義は【勇者】を、ギャルっぽい美紅は【聖戦士】を、クラス委員長の真美は【聖女】を、秀才の悠斗は【賢者】になった。 そして俺はというと…? 『おぉ、伝承にある通り…異世界から召喚された者には、素晴らしい加護が与えられた!』 「それよりも不知火君は何を得たんだ?」 イケメンの正義は爽やかな笑顔で聞いてきた。 俺は儀式の札を見ると、【アンノウン】と書かれていた。 その場にいた者達は、俺の加護を見ると… 「正体不明で気味が悪い」とか、「得体が知れない」とか好き放題言っていた。 『ふむ…朔夜殿だけ分からずじまいか。だが、異世界から来た者達よ、期待しておるぞ!』 王族も前の4人が上位のジョブを引いた物だから、俺の事はどうでも良いらしい。 まぁ、その方が気楽で良い。 そして正義は、リーダーとして皆に言った。 「魔王を倒して元の世界に帰ろう!」 正義の言葉に3人は頷いたが、俺は正義に言った。 「魔王を倒すという志は立派だが、まずは魔物と戦って勝利をしてから言え!」 「僕達には素晴らしい加護の恩恵があるから…」 「肩書きがどんなに立派でも、魔物を前にしたら思う様には動けないんだ。現実を知れ!」 「何よ偉そうに…アンタだったら出来るというの?」 「良いか…殴り合いの喧嘩もしたことがない奴が、いきなり魔物に勝てる訳が無いんだ。お前達は、ゲーム感覚でいるみたいだが現実はそんなに甘く無いぞ!」 「ずいぶん知ったような口を聞くね。不知火は経験があるのか?」 「あるよ、異世界召喚は今回が初めてでは無いからな…」 俺は右手を上げると、頭上から光に照らされて黄金の甲冑と二振の聖剣を手にした。 「その…鎧と剣は?」 「これが証拠だ。この鎧と剣は、今迄の世界を救った報酬として貰った。」 「今迄って…今回が2回目では無いのか?」 「今回で7回目だ!マジでいい加減にして欲しいよ。」 俺はうんざりしながら答えた。 そう…今回の異世界召喚で7回目なのだ。 いずれの世界も救って来た。 そして今度の世界は…? 6月22日 HOTランキングで6位になりました! 6月23日 HOTランキングで4位になりました! 昼過ぎには3位になっていました.°(ಗдಗ。)°. 6月24日 HOTランキングで2位になりました! 皆様、応援有り難う御座いますm(_ _)m

転生したら最強種の竜人かよ~目立ちたくないので種族隠して学院へ通います~

ゆる弥
ファンタジー
強さをひた隠しにして学院の入学試験を受けるが、強すぎて隠し通せておらず、逆に目立ってしまう。 コイツは何かがおかしい。 本人は気が付かず隠しているが、周りは気付き始める。 目立ちたくないのに国の最高戦力に祭り上げられてしまう可哀想な男の話。

処理中です...