裏庭ダンジョン

塔ノ沢渓一

文字の大きさ
56 / 59

北海道ダンジョン

しおりを挟む




「それで愚連隊は高エネルギー結晶を手に入れたいらしいんやわ。でも裏ルートでそんなもんを買う金はないやろ。それで困ってる言うてたわ」

 こいつらは愚連隊に妨害でもされて北海道に来ることになったのかと思っていたら、あんな奴らと取引までしているらしい。

「一人であんな奴らと取引してんのか」
「一人で行くほどアホちゃうわ。ほら、覚えてるか。可愛げのない陥没がおったやろ。あれを連れて行ってん。アレがいたら、向こうも手を出せば無事ではすまされへんからな」
「覚えてるに決まってるだろ。人をなんだと思ってんだよ。七瀬を連れて行ってるわけだな」
「せや、あいつら探協のカードも持っとらんからいいカモやったわ」

「それで、あいつら結晶は手に入れられそうなのか」
「まず無理やな。でも中国の方からコンタクトがあったんや言うとったわ。向こうの出した条件は、相手の用意した人間をひとり仲間に入れてくれいうことらしかったわ」
「そんな話に乗ったら、島ごと乗っ取られるんじゃないのか」
「だから、そんな話は断った言うとったわ。気が変わるかもしれへんけどな」

 きな臭い話である。
 そうまでしても宝物が欲しいのだろうが、警戒を高めさせただけだ。
 それにしても余計なことをしてくれたものである。

 放っておけば、いずれは墜落してくれたものを、これではエネルギーも節約するだろうし、早めに売ってしまおうと考える可能性までも出てきた。
 中国は宝物のエネルギー切れについて、すでに知っていたのだろう。
 向こうには再チャージが必要になった宝物があるのかもしれない。

 そこまで知られてしまったとなると、墜落の可能性はかなり低くなった。
 しかもエネルギーが切れるようなことがあれば、中国の手に渡る可能性もないとは言えない。

「なにがあったんか知らんけど、伊藤のことをやたらと褒めてたで」
「褒められるようなことはした覚えはないな」
「あいつには気概がある言うてたわ。それで北海道には小銭を稼ぎに来たんかいな」

 北海道に人が集まっているのは、食料品で金を稼ごうとする奴が増えたせいだろう。
 俺は山本にそんなところだと答えた。
 今はそんなものでしか稼げなくなっているのだ。

「ダンジョンも景気が悪くなってきたな」
「北海道はまだマシな方なんよ。滋賀なんてルーキーしかおらんから、稼ぎにもならんわ」

 そんなことを話してたら、大きなビニール袋を持った蘭華がやってきた。
 こっちでは喫茶店しかないから、この時間になると料理は自分で作るしかないので蘭華に頼んであったのだ。

「なんや、誰かと思ったら伊藤に寄生しとる虫かいな。押しかけ女房気取りで鬱陶しいやつやで」
「あら、ごあいさつですこと。薄汚れてると、余計ブスに見えるわね」

 いきなり蘭華と山本は、俺の目の前でバチバチとやり始めた。
 空気が悪いから帰ると言って、山本は帰って行った。
 借りたペンションはキッチンと家具がついているもので、角では灯油ストーブが燃えている。

「なにを話してたのよ」
「別に近況を聞いただけだよ。水はペットボトルしかないのか」
「そうよ。洗い物が少ないものしか作れないから、焼きそばでいいわよね」
「なんでもいいよ」

 他のメンツはまだ来ていないので、今日は札幌にでも泊って、明日の朝にでもこちらに来るのだろうか。

「酷いところね。近くの町から持ってくるお弁当と、麺類のようなものしか売ってなかったわ」
「いや普通にしてるけどさ、いつの間にそこまで山本と仲が悪くなったんだよ」
「べつに普通のあいさつしただけじゃない」

 そんな普通があってたまるかと思うが、見た所、蘭華に機嫌が悪そうな感じはない。
 蘭華の作った焼きそばを食べて、その日は眠りについた。
 朝の冷え込みはかなりのもので、開発工事を請け負っている業者の声で目が覚めた。

 蘭華を誘って、唯一の喫茶店であるプレハブで朝ご飯を食べていたら有坂さんたちが店内に入ってきた。
 軽食を出してくれる店だから、朝早いのに凄い混みようだ。

 皆が集まったら、さっそく入ってみようという話になって、更衣室なんてものもないから借りたペンションに戻って着替える。
 そして東京にあるものよりも大きなトンネルをくぐって下に降りると、いきなり広い平地が広がっていた。

 入って早々船橋のチームが管理している街があって、その中では各チームが一つの鍋を囲んで朝ご飯を作っていた。
 ここは東京で言えば三層に当たる階層からのスタートだ。
 俺は頭の中の地図を開いて方角を確かめた。

 5分も歩かないうちにオークが現れるが、そいつらは問題なく倒す。
 地上にいた時のように群れになっていないから、これなら普通の探索者たちにも倒せるだろう。
 そして、入り口からそれほど離れないうちに、加護の石塔が立ち並び始める。

 そこにあったのは東京のガーゴイルゾーンにあるような低位のものばかりだ。
 加護の種類が多く、契約すれば魔法を授けてくれるようなものまであるが、魔弾やマジックシールドのような、今となっては使い道のないものだった。

 初心者には良さそうだが、いきなりこんなところに来たらオークに踏みつぶされる。
 特に問題もなくオークゾーンを抜けたが、オークの鼻息を聞いていると、その辺り一帯にいる敵がすべて一斉に押し寄せてきたら、俺たちでも勝てないのだろうなという事を意識させられた。

 試しにオークの魔弾を受けてみたが、そよ風くらいの威力にしか感じられない。
 それでも討伐作戦の時のような数が押し寄せてくれば、脅威を感じるほどになるのだ。
 オークゾーンを抜けたら、大きくて頑丈そうな顎をした巨大トカゲが現れた。

 アゴと呼ばれているモンスターだそうだが、確かに強烈な武器を持っている。
 相原の魔弾を食らって怒り狂ったアゴが、ぶ厚いタワーシールドに突っ込むが、棍棒のようなアゴが砕けて、何もできないうちに蘭華に斬り捨てられた。

 チーターのように個体で狩りをするのではなく、犬やハイエナのように群れで狩りをする個体だってあってもおかしくはない。
 そんなことを考えていたら、ゴブリンの最上位と呼べるような個体が出てきた。

 コボルトやゴブリンも群れで狩りをすると言えなくもない。
 それらの雑魚を蹴散らしながらどんどん進んでいくと、大きな石が転がっている荒地のような場所に出る。
 そこからは敵が複数種類で出てくるようだった。

 そこで出てきたのは王冠のようなものをかぶったコボルトと、さっきまでのゴブリンだ。
 コボルトの王冠も最上位という意味合いだろうか。
 ゴブリンとコボルトに魔法で焼かれていたら、だんだんと痛覚がマヒしてきた。

 体力が200も削れないような魔法を、これでもかというくらい休みなく放ってくる。
 魔装のおかげで神経まで焼かれなくなったのか、なぜか前に魔法を受けた時よりも痛みを感じた。

「二人ともちょっと焦げ臭いわよ」

 さっきから魔法に焼かれているのは、俺と相原の二人だけである。
 戦ってる最中に魔法を放り込んでくるから、どうしても炎から逃れられない。

 蘭華などは俺たちから距離をとっているので、今さら魔法などを食らうこともなく上手いこと立ち回っていた。
 桜の回復が飛んで来るから、たちどころに火傷は直り、休む間もなく戦う羽目になる。

 さながら無間地獄にいるような気分になっていたら、やっとコボルトが出てくる地帯を離れたようだった。
 次に出てきたのは暗黒カマキリと岩でできたイノシシのような敵だった。

 ダンジョンが繋がっている階層だけあって、東京で見た敵も混じるようだ。
 カマキリよりもイノシシの方が強烈で、相原がタックルで吹き飛ばされて地面を転がった。
 そこに魔法の効かないカマキリが突っ込んでくるのだから、本気で手ごわい。

 俺が魔剣の陰に隠れるようにして攻撃を受けていたら、蘭華が後ろからカマキリを始末してくれた。
 イノシシの方は俺が自由に動けるようになったら、手こずるような敵ではなかった。
 魔剣の一撃で頭を砕いておしまいだ。

 下見のつもりだったが、相原の魔光受量値には余裕があったので、さらに先に向かって進むことにした。
 そのまま進んでいると、浅い水たまりのようなものがどこまでも続いているゾーンへと入った。

しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

ダンジョンを拾ったので、スキル〈ホームセンター〉で好き勝手リフォームします

ランド犬
ファンタジー
 異世界に転移した佐々木悠人は、召喚でも勇者でもなかった。ただ迷い込んだ先で見つけたのは、王都を望む郊外にひっそりと口を開けるダンジョン。足を踏み入れた瞬間、発動したスキルは ――〈ホームセンター〉 壁を張り替え、部屋を増やし、畑や牧場、カフェまで作れる不可思議な力だった。 気ままに始めたリフォームは、もふもふなネコミミ獣人の少女との出会いをきっかけに、思わぬ変化を呼び始める。 拡張され続けるダンジョンの先で、悠人が作り上げる“住める迷宮”とは――?

クラス転移したら種族が変化してたけどとりあえず生きる

アルカス
ファンタジー
16歳になったばかりの高校2年の主人公。 でも、主人公は昔から体が弱くなかなか学校に通えなかった。 でも学校には、行っても俺に声をかけてくれる親友はいた。 その日も体の調子が良くなり、親友と久しぶりの学校に行きHRが終わり先生が出ていったとき、クラスが眩しい光に包まれた。 そして僕は一人、違う場所に飛ばされいた。

この子、貴方の子供です。私とは寝てない? いいえ、貴方と妹の子です。

サイコちゃん
恋愛
貧乏暮らしをしていたエルティアナは赤ん坊を連れて、オーガスト伯爵の屋敷を訪ねた。その赤ん坊をオーガストの子供だと言い張るが、彼は身に覚えがない。するとエルティアナはこの赤ん坊は妹メルティアナとオーガストの子供だと告げる。当時、妹は第一王子の婚約者であり、現在はこの国の王妃である。ようやく事態を理解したオーガストは動揺し、彼女を追い返そうとするが――

最遅で最強のレベルアップ~経験値1000分の1の大器晩成型探索者は勤続10年目10度目のレベルアップで覚醒しました!~

ある中管理職
ファンタジー
 勤続10年目10度目のレベルアップ。  人よりも貰える経験値が極端に少なく、年に1回程度しかレベルアップしない32歳の主人公宮下要は10年掛かりようやくレベル10に到達した。  すると、ハズレスキル【大器晩成】が覚醒。  なんと1回のレベルアップのステータス上昇が通常の1000倍に。  チートスキル【ステータス上昇1000】を得た宮下はこれをきっかけに、今まで出会う事すら想像してこなかったモンスターを討伐。  探索者としての知名度や地位を一気に上げ、勤めていた店は討伐したレアモンスターの肉と素材の販売で大繁盛。  万年Fランクの【永遠の新米おじさん】と言われた宮下の成り上がり劇が今幕を開ける。

「クビにされた俺、幸運スキルでスローライフ満喫中」

チャチャ
ファンタジー
突然、蒼牙の刃から追放された冒険者・ハルト。 だが、彼にはS級スキル【幸運】があった――。 魔物がレアアイテムを落とすのも、偶然宝箱が見つかるのも、すべて彼のスキルのおかげ。 だが、仲間は誰一人そのことに気づかず、無能呼ばわりしていた。 追放されたハルトは、肩の荷が下りたとばかりに、自分のためだけの旅を始める。 訪れる村で出会う人々。偶然拾う伝説級の装備。 そして助けた少女は、実は王国の姫!? 「もう面倒ごとはごめんだ」 そう思っていたハルトだったが、幸運のスキルが運命を引き寄せていく――。

異世界召喚は7回目…って、いい加減にしろよ‼︎

アノマロカリス
ファンタジー
『おぉ、勇者達よ! 良くぞ来てくれた‼︎』 見知らぬ城の中、床には魔法陣、王族の服装は中世の時代を感じさせる衣装… 俺こと不知火 朔夜(しらぬい さくや)は、クラスメートの4人と一緒に異世界に召喚された。 突然の事で戸惑うクラスメート達… だが俺はうんざりした顔で深い溜息を吐いた。 「またか…」 王族達の話では、定番中の定番の魔王が世界を支配しているから倒してくれという話だ。 そして儀式により…イケメンの正義は【勇者】を、ギャルっぽい美紅は【聖戦士】を、クラス委員長の真美は【聖女】を、秀才の悠斗は【賢者】になった。 そして俺はというと…? 『おぉ、伝承にある通り…異世界から召喚された者には、素晴らしい加護が与えられた!』 「それよりも不知火君は何を得たんだ?」 イケメンの正義は爽やかな笑顔で聞いてきた。 俺は儀式の札を見ると、【アンノウン】と書かれていた。 その場にいた者達は、俺の加護を見ると… 「正体不明で気味が悪い」とか、「得体が知れない」とか好き放題言っていた。 『ふむ…朔夜殿だけ分からずじまいか。だが、異世界から来た者達よ、期待しておるぞ!』 王族も前の4人が上位のジョブを引いた物だから、俺の事はどうでも良いらしい。 まぁ、その方が気楽で良い。 そして正義は、リーダーとして皆に言った。 「魔王を倒して元の世界に帰ろう!」 正義の言葉に3人は頷いたが、俺は正義に言った。 「魔王を倒すという志は立派だが、まずは魔物と戦って勝利をしてから言え!」 「僕達には素晴らしい加護の恩恵があるから…」 「肩書きがどんなに立派でも、魔物を前にしたら思う様には動けないんだ。現実を知れ!」 「何よ偉そうに…アンタだったら出来るというの?」 「良いか…殴り合いの喧嘩もしたことがない奴が、いきなり魔物に勝てる訳が無いんだ。お前達は、ゲーム感覚でいるみたいだが現実はそんなに甘く無いぞ!」 「ずいぶん知ったような口を聞くね。不知火は経験があるのか?」 「あるよ、異世界召喚は今回が初めてでは無いからな…」 俺は右手を上げると、頭上から光に照らされて黄金の甲冑と二振の聖剣を手にした。 「その…鎧と剣は?」 「これが証拠だ。この鎧と剣は、今迄の世界を救った報酬として貰った。」 「今迄って…今回が2回目では無いのか?」 「今回で7回目だ!マジでいい加減にして欲しいよ。」 俺はうんざりしながら答えた。 そう…今回の異世界召喚で7回目なのだ。 いずれの世界も救って来た。 そして今度の世界は…? 6月22日 HOTランキングで6位になりました! 6月23日 HOTランキングで4位になりました! 昼過ぎには3位になっていました.°(ಗдಗ。)°. 6月24日 HOTランキングで2位になりました! 皆様、応援有り難う御座いますm(_ _)m

転生したら最強種の竜人かよ~目立ちたくないので種族隠して学院へ通います~

ゆる弥
ファンタジー
強さをひた隠しにして学院の入学試験を受けるが、強すぎて隠し通せておらず、逆に目立ってしまう。 コイツは何かがおかしい。 本人は気が付かず隠しているが、周りは気付き始める。 目立ちたくないのに国の最高戦力に祭り上げられてしまう可哀想な男の話。

処理中です...