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五章

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アネシーは自室に戻らず医務室へと向かった。そしてラディウスにマリエから受け取った手紙を渡した。

「アネシー侍女長、どうだった?」

「はい、十週目で三ヶ月目と言われました」

「つわりが落ち着くまでは体調も不安定になる。 だからお腹の赤ちゃんの為にも無理はしない様に」

「はい、分かりました。 失礼致します」

 アネシーは自室に戻ってふと等身鏡の前に立ち止まって鏡に映る自分を見ながらそっと手をお腹に当てた。

「ここに私とオウラの赤ちゃんが……」

 エコー写真はバレないように机の引き出しの一番奥に隠すことにした。アネシーは自室を出てそのまま洗濯物を取り込む為に中庭に出た。

 外で動いてる時は吐き気はなく、室内で動くと急に吐き気がしてくる。その為にサグイスに呼ばれない時は外掃除を主にすることにした。

 そして外の空気を吸ってからアネシーの体調は少しだけ良くなったのであった。アネシーは体調が良い時は一日動けるが少しでも体調が優れないと一日医務室のベッドの上で横になっている。

「アネシー、気分はどうた?」

「いえ、すみません。 まだ良くなりません」

「今はこれを飲みなさい」
 アネシーはベッドから起き上がってラディウスから受け取ったコップの中身を少しだけ飲んだ。 水を飲んで胃の気持ち悪さが一瞬無くなったように感じた。

「これは、レモン水ですね?」

「そうじゃ、知っておったか」

「はい、前にオウラがレモン水を作ってくださったことがあって」

 すると医務室の扉を開けて誰かが入って来た。医務室に来たのはドルークとエリールだった。

「ドルーク、エリール、どうかしましたか」

 そしてエリール、ドルークと話を始めた。

「あの、アネシー侍女長様、言われたことを全て終わりました」

「他にやることがあれば指示をください、師匠」

「私は体調が良くありません。 なのでドルークとエリールはサグイス様のお側に居るように」

「でもサグイス様の側は師匠が居ないとサグイス様がお怒りになります」

「それでも二人はサグイス様のお側に。 サグイス様に何か言われたら『アネシーからの指示』だと伝えるように。 分かったのならすぐにサグイス様の所へ行きなさい」

「はい、アネシー侍女長様」

「はい、師匠」

 二人は医務室から出ていった。  すると静まり返った医務室にラディウスの声が響く。

「アネシー、あの二人にサグイス様を任せるのか?」

「ドルークとエリールには私が王国に来てから今までの知ってる知識を全て教えました。 近いうちにドルークはサグイス様を仕える事が出来るでしょう。 そしてエリールはサグイス様の未来の王妃様を仕える様に教育をしましたので大丈夫かと」

「アネシー、そなたはそこまでの事を考えて二人を教育したのか」

 アネシーは「あの子たちは優秀ですから」と言い微笑んだ。
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