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幼稚園の写真
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A子さんの息子は4歳児で、幼稚園の年少クラスに通っている。
A子さんは、ママ友達と、幼稚園のロビーに張り出された写真を見ていた。
10月に開催された運動会の写真だった。
感染症対策の名残から、クラス別の開催となった。
年少クラスは、お遊戯とかけっこ、記念撮影などのプログラムだった。
A子さんも自分の子や、友人の子が映る写真を楽しく眺めていた。
全ての写真を見終わると、A子さんはふと違和感を覚えた。
見覚えのない子が時々写っているのである。
一人薄茶色に着古した体操着を着ている子がいる。
お遊戯でもかけっこの写真でも端に写り込んでいる。
幼稚園の写真は、一人1枚はメインの被写体になっている写真が用意される。「自分の子どもが写っていない」と騒ぎになるからだ。
だが、その着古した体操着の子は、メインで写っている写真が存在しなかった。
「ねえ、この子のお母さん知ってる?」
A子さんはママ友達に聞いた。
「私も思った。分かんないの」
ママ友達は口々にそう言った。
集合写真を今一度見た。
その子は、列の端に笑顔で立っていた。
皆が真っ白な体操着を着ている中、一人薄茶色に変色した体操着を着ているので容易に気が付いた。
なぜか、その子だけがカメラの焦点が合っていないように、うっすらとぼやけている。
A子さんは、ママ友達と子ども達を一人一人数えた。
数え終わって、A子さんの手は震え、ママ友達は黙り込んでしまった。
人数が合わないのだ。
年少クラスの人数より、一人多いのである。
A子さんは、写真を持って職員室へ行った。
古株の幼稚園の先生に、人数が合わないが、誰の子だろうと聞いた。
先生は、写真を見て悲し気な顔をした。
「出ましたか。この子は、時々運動会の写真に写り込むんです。かつての園児だった子ですよ」
「どういうことですか?」
「私が若い新人の頃に、年少クラスに通っていた子です。運動会の練習が大好きで、運動会をいつも楽しみにしていたんです。親が育児放棄気味で……いつも汚れた体操着を着ていたのです。親が出かけて、一人で外遊びさせていた時、交通事故で亡くなったんです」
先生は続けた。
「この子は、幼稚園が好きでしたから……家よりも好きだったんでしょうね。運動会の時期になると、あの格好のまま、写真に写り込むことがあるんです」
A子さんは、ママ友達とその子に献花をした。
この子が好きであろう幼稚園で、ささやかな供養をして、冥福を祈ったそうだ。
A子さんは、ママ友達と、幼稚園のロビーに張り出された写真を見ていた。
10月に開催された運動会の写真だった。
感染症対策の名残から、クラス別の開催となった。
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A子さんも自分の子や、友人の子が映る写真を楽しく眺めていた。
全ての写真を見終わると、A子さんはふと違和感を覚えた。
見覚えのない子が時々写っているのである。
一人薄茶色に着古した体操着を着ている子がいる。
お遊戯でもかけっこの写真でも端に写り込んでいる。
幼稚園の写真は、一人1枚はメインの被写体になっている写真が用意される。「自分の子どもが写っていない」と騒ぎになるからだ。
だが、その着古した体操着の子は、メインで写っている写真が存在しなかった。
「ねえ、この子のお母さん知ってる?」
A子さんはママ友達に聞いた。
「私も思った。分かんないの」
ママ友達は口々にそう言った。
集合写真を今一度見た。
その子は、列の端に笑顔で立っていた。
皆が真っ白な体操着を着ている中、一人薄茶色に変色した体操着を着ているので容易に気が付いた。
なぜか、その子だけがカメラの焦点が合っていないように、うっすらとぼやけている。
A子さんは、ママ友達と子ども達を一人一人数えた。
数え終わって、A子さんの手は震え、ママ友達は黙り込んでしまった。
人数が合わないのだ。
年少クラスの人数より、一人多いのである。
A子さんは、写真を持って職員室へ行った。
古株の幼稚園の先生に、人数が合わないが、誰の子だろうと聞いた。
先生は、写真を見て悲し気な顔をした。
「出ましたか。この子は、時々運動会の写真に写り込むんです。かつての園児だった子ですよ」
「どういうことですか?」
「私が若い新人の頃に、年少クラスに通っていた子です。運動会の練習が大好きで、運動会をいつも楽しみにしていたんです。親が育児放棄気味で……いつも汚れた体操着を着ていたのです。親が出かけて、一人で外遊びさせていた時、交通事故で亡くなったんです」
先生は続けた。
「この子は、幼稚園が好きでしたから……家よりも好きだったんでしょうね。運動会の時期になると、あの格好のまま、写真に写り込むことがあるんです」
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