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第一章この章の後半を読んではいけない。
第8話 彼と彼女のオープニング8
しおりを挟む「ッチ、何だよマスターマスターって本当にマスターって思ってるのかよ僕の事」
一人で森へ出て来た。
本当ならナフィと一緒に来るはずだったのに。
なぜ怒ってしまったのだろう。
「ちょっとはあいつも分かってくれたかな?」
僕はナフィの事なんて本当は何も知らなかった。
異変が起きる前なんてあんな風に怒らなかった。
でも今は違うナフィは怒っている。
僕が彼女を知っていればあんな風にならずに済んだのだろうか?
互いに知り合わなきゃいけないのに。
長年を共に過ごし互いを知ったとしても仲違いは起こることだってあるのに。
僕は見かけやマスターと言った喋りかけ方で判断してた。
「あいつなんて・・・・・・舐めやがって」
僕は甘えていた。
彼女の僕を慕う心に。
「あああ!今はもう良い!」
僕が自分勝手に怒っていることなんて最初からわかっていた筈だ。
それでもあんな事で反撃して、怒って。
「今は剣術とか魔法とかのスキル調べなくちゃ」
何も知ろうともしてなかったのかもしれない。
知ったか振りをしてたのかも知れない。
「まずは簡単なのから。えーっと、フレイム!」
周りの状況の変化について行けずナフィの事を蔑ろにしていたんだ。
自分好きさに。
そんな様じゃあ僕は最低だ。
大事にするべき仲間との関係を蔑ろにするなど。
自分の事しか考えて無いなど。
「この魔法を剣を使いながらっ、出来たね」
彼女があの時起こしてくれなかったら僕は多分、作られた日常の上に永遠に立たされていたのだろう。
ナフィは僕を助けてくれたのかもしれない。
フレイムを剣に載せた時に後ろの方でガサッという音がした。
「ナフィ、そこに居るんでしょ」
「ナフィ?」
「ガルルルル、グルルルル」
「ちょっ! 狼じゃん」
考えが甘かったか。
ナフィなら逸れるのが心配で付いてくるんじゃないか、なんて思っていた。
「ガルゥ!」
そう一度吠えて襲い掛かってきた狼、こいつは1匹だった。
狼が腕に噛み付く。しかし、鎧が歯を通さない。
正確には生身の部分を噛まれてもこの程度のモンスターでは傷一つすらつけれない。
こいつの噛み付く攻撃は痛く感じた。
でも、こいつは僕を殺そうとしてるのに僕を傷つけれない。
「目を閉じて、呪文を詠唱しながら指先に集中すれば魔法は発動する」
ナフィは僕を殺そうとしただろうか?
「ライトニング!」
狼は簡単な雷系魔法で吹き飛んだ。
「簡単な魔法の詠唱も可能かこれなら戦える」
彼女は僕を傷つけようと思っていただろうか?
「違う」
僕は彼女を殺す為に噛み付いたのだろうか?
「違う」
傷つける為に噛み付いたのだろうか?
「違う」
本当に謝らないといけない方なんてない。
でも僕が今一番に何がしたい?
「僕は」
だから気付いた方が行かなきゃ。
「探しに行かなきゃ」
やってしまった事なんて後で後悔しても無駄だけど。
「ナフィはきっとあの場所に居る」
次の行動に活かすためには必要な事だと思う。
「走れ!。
もし、ナフィがあの時と同じなら、きっとあの場所に居る。
きっとあの時の事を覚えている。
もし覚えていなくても色んな所を走り回れば見つけられるはずだ。
走る息がすぐ上がってしんどい、でもそんな事考えてる暇があったら走ろう。
昔、僕がここである友人と喧嘩した時あの子はあの場所に居た。
もちろんその時僕はナフィを連れていた。
探し出して謝れば許してくれるだろう。
そんな考えも一種の甘えかもしれない。
だけどこんな簡単な事で傷つけてしまった僕はどうしょうもない。
こんな簡単に喧嘩してちゃこの先どうなるか分からない。
未熟な所が多い僕だけに許してくれるか心配だ。
昔、喧嘩した時もこんな感じだっただろうか。
僕が友人を見つけた場所。
その場所は。
「やっぱりここだったんだねナフィ」
じーっと水面を見つめ何も答えないナフィが居た。
「市場の噴水、懐かしいよね」
「・・・・・・そうですねぇ」
やっと口を開いてくれた。
「なんか、その、さっきはごめん怒っちゃって」
ゼェゼェと吐く息を整えてゆく。
「・・・・・・」
ナフィは顔を向けてくれない。
「僕もあんまり積極的に人に関わらなかったりするから良く分からなかったんだ」
「私も何だか良く分からないので。その、ごめんなさい」
「ナフィやっぱり指を噛んだことまだ怒ってる?」
「マスターこそ私が出過ぎた真似をして怒ってるんじゃないですか?」
「もう怒ってないよ」
「そうですか、優しいんですねマスターは」
そう言った瞬間、立ち上がったナフィがギュッと僕を抱きしめた。
「もう、怒ってどこかに行っちゃやですよ、マスター」
その時、ナフィは少し泣いていた。
「絶対にどこにも行かない。ナフィもどこにも行かないでね」
「マスターの為ならもちろんですよ」
ナフィと別れていた時間なんて少しの時間だったけど。
その少しの時間だけで彼女の存在の大きさを知った。
まだ彼女との時間はこれから過ごすであろう時間のほんの少しだけ似すぎないのだろう。
だがしかし、一秒一秒大切にして行く事は間違いじゃない。
そんな決意が固まった気がした。
「そう言えばマスター私の事を淫乱ピンクって言ってましたけど」
「いや、あれはあの時に終わった話だから」
「ちょっとだけそう言うこと期待にしてたりして」
「何でそうなるんだ!」
これはこれでナフィの良さと認めるしかないのだ。
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