出水探偵事務所の受難

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第三章・我校引線

1話 その悩める若人、時墺鈴

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 横浜は世界有数の港街としてよく知られている。それ故に多くの物品が運ばれる拠点となっており、街は昼も夜も関係なく賑わっている。だが、運ばれる物は単なる物品だけでは無い。
 今宵、横浜には、ある能力者の手下達が降り立っていた。その者達は、主人にこう伝えられていた。『連絡が途切れた場合、私を助けに来い』と。

 女の名前は、時墺鈴。女子高生である。現在彼女は家でだらだらと時間を潰していた。
「つまらないな」
 そう、何故かつまらないのだ。オンラインゲームで相手を叩きのめしても、格闘ゲームで即死コンボを決めても。
負けても特に何も感じない。今、画面の奥の敵は、絶賛死体撃ち中だが、この煽りを見ても特に何も思わない。以前の私なら悔しいと思って再戦を申し出ていただろう。
 時墺は隅にゲーム機を置くと、部屋の天井をぼーっと見つめた。この後何をしようかと考えを巡らすが、特に何も思い浮かばない。宿題も終わらせたし、やることは何もない。
「寝るか」
 現在午後7時だが、時墺は床についた。

 時墺はうんざりしていた。全てにおいて違和感がある。例えば今、朝起きてきて一階に降りた時、食卓には私以上のしっかり者の妹、冴がいるのだが、私を見るなり飲み物を取りに冷蔵庫のほうに行ってしまった。以前は仲良くしていた筈だが…。そして妹だけでなく父、そして母に至るまで私によそよそしい気がする。
「これ、ここに置いとくから」
 ご飯を食べ終わった鈴は、食器を台所に置いた。
「わか…ったわ」
 母がそうやって変に仰々しく返事をしたため、鈴の頭は混乱するばかりだった。

 時墺が通っている学校は、最先端の超進学校である。生徒が『学校に行きたい!』と思えるような学校づくりを目指してできた学園なだけあって、学園には売店、食堂、アリーナ、図書室、植物園、などの設備がとても充実している。ちなみに学校の名前は国立紫陽花高等学校と言う。

 そして現在、時墺は植物園の芝生に寝転がりながら、ガラスの天井を眺めていた。
「はぁ…意味がわからない」
 時計台を見ると午後5時を回っていた。
 クラスメイト達も、何か私に対して変だった。私が近づくと、近づいた距離だけ離れていき、先生に質問をしに行けば何故か怯えて震え出したり…全く意味がわからない。
 時墺が、帰ろうと立ち上がり、なんとなく後ろを見ると、何者かと目が合った。
「は?」
 目が合ったことに気がついた何者かは、すぐに走り去ってしまった。
「えぇ…」
 明らかにおかしい。今の私の『日常』は…!

 おかしくなったのは確か、先週の金曜日からだ。金曜日までは普通に過ごせていて、この違和感は感じなかった筈だ!時墺は1人、部屋で悶々としていた。原因だ。原因を突き止めなければ私のこの違和感を拭い去ることはできない。
 そう思った鈴は、自分の家に帰宅すると、自分の部屋には行かずにそのまま冴の部屋へと押し入った。冴は鈴の顔を見ると、みるみる内に怯えた表情へと変貌していった。
「冴…なんで私にそんなによそよそしいのよ」
「来ないで!」
「は?」
 冴は涙を流しながらそう言った。
「もう嫌なの!姉ちゃんと関わって人が亡くなるのは‼︎」
「人が亡くなる?どういうこと?話して」
 鈴は嫌がる冴の手を掴んで、更にそう聞いたが、妹はその手を振り払い、こう言った。
「あんたなんか…あんたなんか消えちゃえばいいのに‼︎」
流石の鈴もこれには傷ついた。
「消ちゃえ?私が?私が…?私に言っているの冴?」
「ひぐっ…うわー‼︎」
 冴は叫びながら部屋を出て、転がり落ちるように家の外へ出ていってしまった。
「なんなの…」
 鈴は部屋の中で1人、そう呟いた。
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