出水探偵事務所の受難

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第二章・異国騒音

12話 復讐と感謝と飛行機の中

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「ん…」
 カストロが目覚め、なんとなく横を見ると、コップに並々と入った水が見えた。カストロはそれを掴み、喉を鳴らしながら飲んだ。
「お~ようやくお目覚めか」
「んぁ…出水か」
 出水は側のダンボールに腰掛けながら本を読んでいたところだった。
「この部屋には治療器具もあったから、応急処置だけしたわ。あんたを抱えてあのタラップを登れないし」
「そうか…」
 それからカストロは、ぽつりぽつりと自分のことを話し始めた。リラックスしていたのではなく、開き直っていたこと。そもそも勝てるとは思っていなかったこと。出水と会う前、自分でアルテミスを撃とうとしたこと。雷獣に逃げられたら自殺するつもりだったこと。自暴自棄だったこと。そして、最後にありがとう。と、カストロは言った。壁に寄りかかっているその男の目には涙があった。
「お前が手伝ってくれなきゃ、私の未来は突然来た雷獣に殺されるだけだったんだ。謝る必要はない」
 出水はそれだけ言うと席を外した。

「はぁ…‼︎あのクソ女め…!むざむざやられるとは、なんてことを…」
 男はレーダーから消え失せた雷獣の反応に対してそう呟いた。
「チッ…スラム街でぶらぶらしていたところを救ってやった恩を忘れ、強すぎる能力に奢って溺れ死んだカスめ。冷静になってさえいればどんな攻撃でさえ避け切れるはずなのに…!派遣したマックスの手も借りずに…」
 そう言うと男は頭に手を当て、ぐったりとソファにもたれかかった。
「いや、予定としては速いが、強大すぎる能力と頭の悪い持ち主が消えてくれたのは手間が省けてよかったか…」

 2日後、出水は飛行機の中にいた。雷獣討伐の報酬四割を手にして。カストロは全部譲ると言っていたが、流石にそれは嫌だったので、四割だけ貰った。あの後病院には行ったが、そこで医者に言われたのは、傷は「治る」が、「残る」だった。今はまだ包帯やら何やらで覆っているからわからないが「残る」らしい。
「はぁ…」
 まぁいいか。私の傷コレクションに特大の傷が増えただけだ。まぁ、経過を観察しないことには、何もいえない…か。
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