出水探偵事務所の受難

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第一章・蝶銃擬羽

2話 その協力者、明日辺利昰

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「受けてよかったんですか?出水さん」
 伊座実が事務所に来た翌日の朝、琵琶持がそう聞いてきた。
「いやいや、どうせ受けなきゃ金を賞金稼ぎに横取りされるしねぇ…今受けてさっさと終わらして金貰って部屋でくつろぐ。結局コレが最善よ」
「ホッホッホ。成る程」
 琵琶持はそう笑うと、早速ネットで情報を調べ始めた。
「ふむふむ、やはりこの事件は不透明なところが多いですね。通説も消去法で決まったに過ぎてないようです。闇は調べますか?」
「いいよ。闇サイトなんか調べても出てくるのはガセばっかりだし…ガセを聞き出すのに一千万はもう懲り懲り」
「では…いつも通り足で探すんですか?」
「まぁそうね」

 まず出水一行が向かったのは最寄りの戸部警察署である。自動扉をくぐった二人は、自分達を見て何かコソコソと喋っている警官達を尻目に署の奥へと歩いていく。
「いいのですか?彼女にまた迷惑をかけて」
「いいんだよ。暇なあいつに仕事をあげるんだから感謝して欲しいくらいだ」
 情報整理課。大層な名前だが、実態は茶髪の女がネットサーフィンに興じる為の部屋に付いている名前にすぎない。
「入るぞ利昰」
 入ると、そこには畳が敷かれた和室が広がっていた。
 茶髪の女、明日辺利昰は壁に寄りかかりながら最新のゲーム機をいじっている。
「露沙、なんであんたは、ノック、ってもんを、しないのさっ!これでも、私っ、やべっやられる!あ、えーと22歳のピチピチの乙女なんですけど⁈お!よーし!撃墜ィ!ざまぁ!あ!ちょっと!何すんのさ!」
 出水が明日辺のゲーム機を何も言わずに取り上げたので明日辺が抗議の声をあげる。
「人の話も聞かずにゲームしまくるの辞めなさいよ…」
「は?じゃ大体、人の部屋にノックもせずに乗り込むそっちはどうなのよ⁈」
「は?仕事もせずに税金を貪り食うのもいい加減にしろよこの白豚がぁ‼︎」
「あぁ⁈アンタ今白豚っつった!言っちゃいけないこと言った!」
 見かねた琵琶持が仲裁に入るまで2分間、二人の口喧嘩は続いた。
 二人が冷静になると、ようやく探偵事務所と『能力情報管』の取引が始まる。
「アンタに依頼したいのはコレだ」
 出水は事務所で調べた調書を明日辺の前に置く。それを受け取って見るや否や、明日辺は眉間に皺を寄せた。
「あーコレ覚えてるわ。見るからに能力者臭い事件だったわね。そういえば確かこの事件が起きた街にでっかい教会があってね、めちゃくちゃ綺麗らしくて、いつか行ってみたいと思ってたわぁ…あ、言っとくけど、この事件の真相は知らないわよ?」
「本当?忘れてるだけじゃなくて?」
「とにかく知らないことは知らないの。あーでも…」
明日辺は思いついたように押し入れの中を探り始め、やがて一枚の書類を出水に見せた。
「怪しいって空気があったのはこの半グレ組織と修行僧達の身内だけね」
「何何…」
 半グレか。ヤクザ、極道とは違い仁義もなく、金と欲の為に働く奴ら…。出水は眉を寄せた。
「事件当時、周辺でこのだっさい名前の半グレチームの構成員の姿が確認できたわ」
「わかった。んじゃまずこのださい名前の半グレ組織、鴑羅権頭(ドラゴンズ)を当たってみるわ」
「ふーん。体に気をつけなさいよ?そいつらレイプとか平気でする連中らしいけど…」
「おーこわ…そうなったら殺しちゃうかも」
 出水はコートの内側に潜ませている武器をそっと撫でつつ、そう言った。
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