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第一章・蝶銃擬羽
3話 チンピラをぶっ倒せ!
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「本当にやるのですか?」
「あぁ。これが一番手っ取り早い」
「そういうものですかねぇ…では私はここで待っていますよ」
半グレ達のアジトであるクラブに乗り込もうとしている出水を、琵琶持は車の中から心配そうに眺めた。
そんな心配そうな視線をものともせず、出水は車から離れていった。
クラブの中は正直言って気持ち悪いとしか言いようがなかった。そこら中にあるスピーカーから放たれる轟音については言わずもがな、自分と同い年くらいの若者達が酒に酔いながら笑い合っている姿を見ているとイライラしてくる。出水はまずモヒカンのタトゥーまみれの男に声をかけることにした。
「おい、そこのお前」
「なぁに?お!美人じゃねぇの!なぁなぁ、酒奢るからアフター行かない?」
「っさいわねーアンタに股を開くつもりはないわ。それよりドラゴンズとかいう半グレの頭は誰なの?」
出水がそう言った瞬間、クラブにいた全ての人間の動きが止まった。皆がジリジリと出水を囲い出し、奥の方から金髪ロン毛のアクセサリーをジャラジャラと付けた男が出てきた。
「どうもー。俺がドラゴンズのリーダー明智良吾でーす。アンタぁ俺に何の用事で?」
「…随分展開が早いな。…私の名前は出水。二ヶ月前の銃乱射事件、アンタらドラゴンズが関与してないか、調べに来た」
「へー。しらネェなぁ?お前ら知ってるか?」
周りの野郎どもが笑いながら知らないと喚き出すが、出水は至って冷静に話しを続ける。
「悪いな。私は警察じゃなくて探偵でね。任意が無理なら体に聞くしかないが、OK?」
「こちらのセリフって奴だ」
明智が舌舐めずりをし、出水の肩を掴もうとした。が出水はそれをスッと避けた。明智から離れた出水はすかさず軽口を叩く。
「そう言えばドラゴンズって球団の名前みたいだよな」
「…コイツを捕まえろ」
出水の煽りに明智は逆上し始め、周りの野郎どもが出水を捕まえようと次々に襲ってくる。が、出水はその全てを避けた。出水は夏場にも関わらず厚手のトレンチコートを着用しており体面積はとても大きくなっているのだが、半グレ達は何故か出水の服の端すら掴めずにいる。混戦入り混じる状況だが、出水はさながら蝶のようにクラブ内を舞い続けている。
「おいおい。頑張れよ。頑張らないとこちらから喝を入れるぞ」
明智が瞬きをした瞬間、何も握られていなかったはずの出水の手にはトンファーがあった。
「これで…一人目ェ‼︎」
鳩尾にトンファーの先端が深々と突き刺され、半グレの一人が倒れた。
「こんのクソアマァ!」
モヒカンをたなびかせながら、先程出水に言い寄ってきた男がナイフを持った腕を突き出すが、出水はそれを避けざま、そいつの側頭部にトンファーの腹をぶち当てた。
出水が2人目を倒すのと同時に、明智がカラッとした声で叫んだ。
「わーった。降参。降参するよ」
そう言うと、明智は両腕を上げた。
「うちの衆じゃアンタに勝てそうもねぇわ」
明智が降伏宣言を行っているその真後ろの半開きのドアの内側では、構成員のうちの一人、水島が拳銃を握りしめていた。現在、水島と出水は、明智を挟んで対角線状にいる。
「俺の腰のくびれの右側を狙え。そこから奴を狙い撃て。俺の腰のくびれの右側を狙え。そこから奴を狙い撃て」
先程支持された言葉を復唱しながら水島は引き金に力を込め始めた。
「アンタにゃ勝てない勝てない。拳銃を『撃て』たってなぁ?」
合図だ。水島の脳から指に電流が走り、一気に手が握られる。そして銃声と共に放たれた右回りの弾丸は、圧倒的速度で出水の腹へと飛んで行く。が、どうしてか出水は数瞬前から筋肉を稼働させトンファーを上から振り下ろし始めていた。結果、銃弾は鉄製のトンファーの腹にぶち当たり、地面へと叩き落とされた。
「は?」
明智は驚愕5割、困惑5割の声を発した。
「ったく、拳銃とかそんなカッケーもんは君たちには似合わないでしょーが」
そう言うと、出水はトンファーと共に拳を明智の腹に突き込み、明智の気を失った。
「あと、は、と」
射撃手がいると思われる掃除用具置き場に向かって、出水はどこからか取り出した拳銃を発砲した。途端に周りから悲鳴が上がる。
「っさい!これは麻酔弾だ死にはしない!」
出水はトンファーを側の机に置き、携帯を取り出した。
「琵琶持、取り敢えず完了した。頭を運ぶの手伝って」
「あぁ。これが一番手っ取り早い」
「そういうものですかねぇ…では私はここで待っていますよ」
半グレ達のアジトであるクラブに乗り込もうとしている出水を、琵琶持は車の中から心配そうに眺めた。
そんな心配そうな視線をものともせず、出水は車から離れていった。
クラブの中は正直言って気持ち悪いとしか言いようがなかった。そこら中にあるスピーカーから放たれる轟音については言わずもがな、自分と同い年くらいの若者達が酒に酔いながら笑い合っている姿を見ているとイライラしてくる。出水はまずモヒカンのタトゥーまみれの男に声をかけることにした。
「おい、そこのお前」
「なぁに?お!美人じゃねぇの!なぁなぁ、酒奢るからアフター行かない?」
「っさいわねーアンタに股を開くつもりはないわ。それよりドラゴンズとかいう半グレの頭は誰なの?」
出水がそう言った瞬間、クラブにいた全ての人間の動きが止まった。皆がジリジリと出水を囲い出し、奥の方から金髪ロン毛のアクセサリーをジャラジャラと付けた男が出てきた。
「どうもー。俺がドラゴンズのリーダー明智良吾でーす。アンタぁ俺に何の用事で?」
「…随分展開が早いな。…私の名前は出水。二ヶ月前の銃乱射事件、アンタらドラゴンズが関与してないか、調べに来た」
「へー。しらネェなぁ?お前ら知ってるか?」
周りの野郎どもが笑いながら知らないと喚き出すが、出水は至って冷静に話しを続ける。
「悪いな。私は警察じゃなくて探偵でね。任意が無理なら体に聞くしかないが、OK?」
「こちらのセリフって奴だ」
明智が舌舐めずりをし、出水の肩を掴もうとした。が出水はそれをスッと避けた。明智から離れた出水はすかさず軽口を叩く。
「そう言えばドラゴンズって球団の名前みたいだよな」
「…コイツを捕まえろ」
出水の煽りに明智は逆上し始め、周りの野郎どもが出水を捕まえようと次々に襲ってくる。が、出水はその全てを避けた。出水は夏場にも関わらず厚手のトレンチコートを着用しており体面積はとても大きくなっているのだが、半グレ達は何故か出水の服の端すら掴めずにいる。混戦入り混じる状況だが、出水はさながら蝶のようにクラブ内を舞い続けている。
「おいおい。頑張れよ。頑張らないとこちらから喝を入れるぞ」
明智が瞬きをした瞬間、何も握られていなかったはずの出水の手にはトンファーがあった。
「これで…一人目ェ‼︎」
鳩尾にトンファーの先端が深々と突き刺され、半グレの一人が倒れた。
「こんのクソアマァ!」
モヒカンをたなびかせながら、先程出水に言い寄ってきた男がナイフを持った腕を突き出すが、出水はそれを避けざま、そいつの側頭部にトンファーの腹をぶち当てた。
出水が2人目を倒すのと同時に、明智がカラッとした声で叫んだ。
「わーった。降参。降参するよ」
そう言うと、明智は両腕を上げた。
「うちの衆じゃアンタに勝てそうもねぇわ」
明智が降伏宣言を行っているその真後ろの半開きのドアの内側では、構成員のうちの一人、水島が拳銃を握りしめていた。現在、水島と出水は、明智を挟んで対角線状にいる。
「俺の腰のくびれの右側を狙え。そこから奴を狙い撃て。俺の腰のくびれの右側を狙え。そこから奴を狙い撃て」
先程支持された言葉を復唱しながら水島は引き金に力を込め始めた。
「アンタにゃ勝てない勝てない。拳銃を『撃て』たってなぁ?」
合図だ。水島の脳から指に電流が走り、一気に手が握られる。そして銃声と共に放たれた右回りの弾丸は、圧倒的速度で出水の腹へと飛んで行く。が、どうしてか出水は数瞬前から筋肉を稼働させトンファーを上から振り下ろし始めていた。結果、銃弾は鉄製のトンファーの腹にぶち当たり、地面へと叩き落とされた。
「は?」
明智は驚愕5割、困惑5割の声を発した。
「ったく、拳銃とかそんなカッケーもんは君たちには似合わないでしょーが」
そう言うと、出水はトンファーと共に拳を明智の腹に突き込み、明智の気を失った。
「あと、は、と」
射撃手がいると思われる掃除用具置き場に向かって、出水はどこからか取り出した拳銃を発砲した。途端に周りから悲鳴が上がる。
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