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第一章・蝶銃擬羽
5話 シンキングタイムその2
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「考えられる線はありますか?」
「あぁ、考えられるのは二つ、一つ目は自らを透過して、扉をもすり抜けられる能力者。二つ目は何かを遠隔操作できる能力者ってとこだろ」
「ふむ?どう言うことですかな?」
出水は昨日のうちに見ておいた監視カメラの映像をスマホで琵琶持に見せた。
「ほら、悲鳴を聞いた伊座実が寺に入るまで、襖がピクリとも動いてないだろ?出入り口はここだけで窓もありもしない寺だ。そしてスナイパーの存在もありえないときた。寺の外壁に銃痕がないからな」
「確かにそうですな」
琵琶持はポリポリと顎をかきながら殺害現場の寺内部を見た。
「すり抜けだったら私たち、詰んでませんかね」
「あぁ、詰んでる。物質と自分を透明化、そしてすり抜け可能。強いにも程がある能力だ。そうとなったらあの『クソ柱』頼みになるな」
「と、なると私たちがすべきは遠隔操作系の能力者の線を当たるしかないですね」
それから色々と調べてみると、寺内部の隅に小さなダクトを発見した。大きさ的には身を細めた猫でも通れないレベルの小ささで、外側には鉄格子がついている。あそこを監視カメラに映らないような何かを通らせ、寺内部の修行僧を銃殺したというのが、ほんの仮説に過ぎないが、考えられる真相だ。
「もしもし、利昰?」
「何?露沙」
出水は探偵事務所で椅子に座り、机に足を投げ出しながら電話を明日辺にかけている。
「お願いあんだけど」
「もしかして、凶器取ってこいってお願い?」
「そ」
「絶対ヤダ」
明日辺の嫌がってる顔が目に浮かぶな。そんなことを思いながら出水は頼み込んだ。
「マジでお願い。報酬の2割利昰にあげるから」
そう言った瞬間、画面の向こうの明日辺が息を呑むのが聞こえてきた。
「…3割じゃないと受けないわ」
馬鹿が。食いつきやがった。出水は平成を装いつつも内心は明日辺のがめつさに笑っていた。
「わかった。3割払うからさっさと取ってきてちょうだい」
「わかったわ」
電話を消すと同時に出水は大笑いした。
「あいかわらずがめついなぁ明日辺は…」
翌日、出水の手元にはスコーピオンVz61というサブマシンガンがあった。
「銃床を折り畳めば世界最小クラスのサブマシンガン、か。琵琶持、私の後ろで見てろよ」
出水は黒い手袋をつけた後、自前のライターを使い琶持の目の前でサブマシンガンの端を炙り始めた。
「警察がすることは『対人間』用の捜査だ。するとして分解する事くらいなもんだ。異変を見つけようとしても見つけられないのは、このサブマシンガンを命がない『無機物』として扱ったからだ」
「つまり?」
「このサブマシンガンは生物だよ。能力者によって生み出された、な」
端を炙った結果、サブマシンガンは何処からか甲高い叫び声を発し、木が折れるような音を出しながらパックリと銃底から銃身の上まで裂けた。やがて二つに裂けたサブマシンガンに厚さ一ミリほどの膜が生え、サブマシンガンだった物は、両翼にサブマシンガンの模様がある蝶へと変貌した。
「綺麗な蝶ですね」
「油断するには少し早いぞ」
蝶は事務所内で羽ばたき、宙を舞った。瞬間、蝶は空中で静止したままに元のサブマシンガンへ変形し、同時に何発もの銃弾を、銃声もなく出水に向かって発砲した。だが出水は銃弾が放たれる1秒前、既に手を動かしていた。
銃弾を真正面から受けるのは、この鋼糸で何重にも編まれて作られた手袋でも危険だ。だから、横から素早く、そっと弾き飛ばす。放たれた弾丸達は出水の両腕の中指、人差し指、薬指の腹に軌道を変えられ、壁に着弾した。すべての弾が発射された後、空中のサブマシンガンは諦めたように床に落ちた。そして出水は琵琶持の方を振り返った。
「つまり、犯人はこの銃を小さい蝶に化けさせてダクトを通らせ、乱射事件を引き起こしたんだ」
「あれ?それだとおかしくないですか?なぜ犯人はこのサブマシンガンを再度蝶に化けさせ回収しなかったのでしょう?」
「うーん、多分なんらかの制限だろ。『クソ柱』はパワーバランスを崩さないように、すべての能力にはある程度の制限をつける。とか言ってたしな。その制限に縛られて回収できなかったんじゃないか?まぁ問題は能力の概要を把握したところで犯人の素性がわからないことなんだが」
そう出水が嘆くと、琵琶持はニヤッと口を緩ませた。
「いえ、犯人に関してはもう目星はつきましたよ」
琵琶持は出水に先ほどスマホで撮ったと思われる蝶の写真を見せた。
「確か、能力は能力者の性格が如実に現れた性質を持つことが多いのですよね?」
蝶の羽の端に十字架がある。つまり、信心深い奴が犯人臭い。事件に関与していそうな信心深い奴といえば、だ。明日辺が言っていたステンドガラスで有名なあの教会…!
「明日、教会に行くぞ」
「かしこまりました出水さん。と、その前に」
「なんだ?琵琶持」
「部屋中の銃痕、どうするんですか?」
部屋は弾によって穴だらけになっていた。
「あぁ、考えられるのは二つ、一つ目は自らを透過して、扉をもすり抜けられる能力者。二つ目は何かを遠隔操作できる能力者ってとこだろ」
「ふむ?どう言うことですかな?」
出水は昨日のうちに見ておいた監視カメラの映像をスマホで琵琶持に見せた。
「ほら、悲鳴を聞いた伊座実が寺に入るまで、襖がピクリとも動いてないだろ?出入り口はここだけで窓もありもしない寺だ。そしてスナイパーの存在もありえないときた。寺の外壁に銃痕がないからな」
「確かにそうですな」
琵琶持はポリポリと顎をかきながら殺害現場の寺内部を見た。
「すり抜けだったら私たち、詰んでませんかね」
「あぁ、詰んでる。物質と自分を透明化、そしてすり抜け可能。強いにも程がある能力だ。そうとなったらあの『クソ柱』頼みになるな」
「と、なると私たちがすべきは遠隔操作系の能力者の線を当たるしかないですね」
それから色々と調べてみると、寺内部の隅に小さなダクトを発見した。大きさ的には身を細めた猫でも通れないレベルの小ささで、外側には鉄格子がついている。あそこを監視カメラに映らないような何かを通らせ、寺内部の修行僧を銃殺したというのが、ほんの仮説に過ぎないが、考えられる真相だ。
「もしもし、利昰?」
「何?露沙」
出水は探偵事務所で椅子に座り、机に足を投げ出しながら電話を明日辺にかけている。
「お願いあんだけど」
「もしかして、凶器取ってこいってお願い?」
「そ」
「絶対ヤダ」
明日辺の嫌がってる顔が目に浮かぶな。そんなことを思いながら出水は頼み込んだ。
「マジでお願い。報酬の2割利昰にあげるから」
そう言った瞬間、画面の向こうの明日辺が息を呑むのが聞こえてきた。
「…3割じゃないと受けないわ」
馬鹿が。食いつきやがった。出水は平成を装いつつも内心は明日辺のがめつさに笑っていた。
「わかった。3割払うからさっさと取ってきてちょうだい」
「わかったわ」
電話を消すと同時に出水は大笑いした。
「あいかわらずがめついなぁ明日辺は…」
翌日、出水の手元にはスコーピオンVz61というサブマシンガンがあった。
「銃床を折り畳めば世界最小クラスのサブマシンガン、か。琵琶持、私の後ろで見てろよ」
出水は黒い手袋をつけた後、自前のライターを使い琶持の目の前でサブマシンガンの端を炙り始めた。
「警察がすることは『対人間』用の捜査だ。するとして分解する事くらいなもんだ。異変を見つけようとしても見つけられないのは、このサブマシンガンを命がない『無機物』として扱ったからだ」
「つまり?」
「このサブマシンガンは生物だよ。能力者によって生み出された、な」
端を炙った結果、サブマシンガンは何処からか甲高い叫び声を発し、木が折れるような音を出しながらパックリと銃底から銃身の上まで裂けた。やがて二つに裂けたサブマシンガンに厚さ一ミリほどの膜が生え、サブマシンガンだった物は、両翼にサブマシンガンの模様がある蝶へと変貌した。
「綺麗な蝶ですね」
「油断するには少し早いぞ」
蝶は事務所内で羽ばたき、宙を舞った。瞬間、蝶は空中で静止したままに元のサブマシンガンへ変形し、同時に何発もの銃弾を、銃声もなく出水に向かって発砲した。だが出水は銃弾が放たれる1秒前、既に手を動かしていた。
銃弾を真正面から受けるのは、この鋼糸で何重にも編まれて作られた手袋でも危険だ。だから、横から素早く、そっと弾き飛ばす。放たれた弾丸達は出水の両腕の中指、人差し指、薬指の腹に軌道を変えられ、壁に着弾した。すべての弾が発射された後、空中のサブマシンガンは諦めたように床に落ちた。そして出水は琵琶持の方を振り返った。
「つまり、犯人はこの銃を小さい蝶に化けさせてダクトを通らせ、乱射事件を引き起こしたんだ」
「あれ?それだとおかしくないですか?なぜ犯人はこのサブマシンガンを再度蝶に化けさせ回収しなかったのでしょう?」
「うーん、多分なんらかの制限だろ。『クソ柱』はパワーバランスを崩さないように、すべての能力にはある程度の制限をつける。とか言ってたしな。その制限に縛られて回収できなかったんじゃないか?まぁ問題は能力の概要を把握したところで犯人の素性がわからないことなんだが」
そう出水が嘆くと、琵琶持はニヤッと口を緩ませた。
「いえ、犯人に関してはもう目星はつきましたよ」
琵琶持は出水に先ほどスマホで撮ったと思われる蝶の写真を見せた。
「確か、能力は能力者の性格が如実に現れた性質を持つことが多いのですよね?」
蝶の羽の端に十字架がある。つまり、信心深い奴が犯人臭い。事件に関与していそうな信心深い奴といえば、だ。明日辺が言っていたステンドガラスで有名なあの教会…!
「明日、教会に行くぞ」
「かしこまりました出水さん。と、その前に」
「なんだ?琵琶持」
「部屋中の銃痕、どうするんですか?」
部屋は弾によって穴だらけになっていた。
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