出水探偵事務所の受難

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第二章・異国騒音

3話 ぶち壊された休暇

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 なんとなくトイレに立ってたら、『誰か』がいた。身体から電気のような物がほとばしっているため、確実に能力者なのは間違いない。出水はケーブルを締め上げながら考えた。殺すか…?この状況なら正当防衛だ。
「シィィ‼︎」
 雷獣はそう唸ると出水の腹に肘を勢いよく打った。全く予期していなかった攻撃に出水の手がほんの少しだけ緩み、それを見逃さなかった雷獣はすぐさまケーブルから脱出した。
「…充電ケーブルか。絶縁体で締め上げられるとは…お前、私の能力を知っているのか?」
「電気系の能力者によく効くのは絶縁体って、相場が決まってんだよ」
 コイツ…能力の事を知っている。つまりこの女は賞金稼ぎの可能性が高いというわけだ。…殺すか。そう思い、雷獣はゆらゆらと殺意を放ち始めた。

 雷獣の能力の名は、渾名と同じく『雷獣』である。雷獣の『サンダーフォーム』は自身の身体から電気生命体として脱け出した姿を指し、その姿で出せる最高速度は雷の速度と同一である。
「シイィイイイイィィ‼︎」
 プロボクサーのジャブより、何十倍も早い右腕を雷獣は繰り出し、勿論出水はそれに反応できるわけもなく死亡した。
 だが出水は攻撃を『見ていた』。致命傷となる攻撃の視認により出水の能力、『One more time』が発動、時間は雷獣が攻撃をする直前まで戻り、なんとか出水は雷獣の攻撃を避けることに成功した。
「な、なんだと‼︎」
 自らの渾身の攻撃をかわされ、雷獣は狼狽する。一方の出水は攻撃の速さに戦慄していた。
 この前食らった『フェアリーズ』の弾丸より、格段に早い!こんな攻撃食らい続けたら数分で頭がパンクしてしまう。ここは一旦逃げるしかない。出水は雷獣が狼狽している隙を突き、窓に向かって体を丸めて突進し、窓ガラスを破った。結果、出水は、地上20メートルに自らの体を放り出すことに成功した。
「パジャマ姿でこんなミッションインポッシブルみたいなことを…!」
 そう悪態を吐いていはいるものの、出水の頭は至極冷静に真下のベランダの手すりに手をかけ、すぐにその内に身を隠した。
 出水が窓を蹴破って部屋に侵入した時、部屋のベッドの上では、裸の男女が絡み合ったままポカンとした表情をしていた。
「お取り込み中失礼。えーと、…ではお幸せに」
 そう呟きながら部屋の扉を開けて廊下を突っ切り、出水は冷や汗を流し始めた。
「窓ガラスを破った音が奴に聞こえないわけはないし…マジに早くなんとかしないと死ぬ!」
 今私がいるのは六階。アイツのスピードを考えると私に追いつくのは時間の問題だ。そう焦りながら非常階段の扉を飛び込むようにして開け、出水は落ちるように階段を降っていった。しかし、焦っていたことが災いし、出水は階段を登っている女に気づかずにぶつかってしまった。
「いたっ何をするんだ!」
 酔っている女がそう叫んだ時、出水の頭に一つのアイデアが浮かんだ。

「今私に会ったことを誰かに話したら殺す」
 雷獣は、ベッドの上で抱き合う2人のカップルにそう言うと、側のコンセントに触れた。電気生命体の雷獣は、みるみる内にそこに入り込んだ。
 雷獣は思い出していた。自分が鏡の柱に手配される原因となった事件を。
 あの時、ビル内にいる奴ら全員をコンセントを介して殺してやった。でも今、私がこの島で殺すのは奴と出水だけ。コンセントを介するのは私の腕ではなく目にする。
 雷獣はこのホテルの全てのコンセントのケーブル内を介して、電子機器の全てに、『根』を張った。後は根から目を生やして出水を探す。
 六階、クリア。五階、クリア。四階、クリア。三階、クリア。二階、クリア。一階、クリア。…く、クリア?いない⁈奴がこの部屋から出て行って30秒ほどしか経っていない。隠れる時間など毛程も与えなかった筈だ!もう一度探せ!照明、エアコン、その全てについている目で…!

 どうか気づかないでくれ…!私と背格好が似ていたあの女に、チップを弾んで『服を交換させてもらった事に』。幸いにも女と出水が着ていた服は、両方とも脱ぎ着しやすい前開きの服だったので、取り替えはすぐに完了した。あとはパーカーのフードを被ればいい。出水はホテルの玄関口を内心汗だくでくぐった。
 あの女に有り金全部溶かしてしまったので、今私は無一文。残りの金は私の部屋…今戻ったら確実な死が待っているだろう。
 出水は絶望的な表情をしながら、ふらふらと街に出た。
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