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第三章・我校引線
16話 出水と幸田の探り
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窓ガラスが風に当たり、ガタガタと音を鳴らしている。出水はその音で目が覚めた。
そして両手と両足が椅子に括り付けられているため、逃れることはできそうになさそうだ。ということを一瞬で出水は把握した。
「起きたか」
目の前に座っていた狩野がそう言う。
「よし…これでも飲め」
狩野は水が入ったペットボトルを出水に渡そうとした。
「おっと…手が塞がっているから飲めないな。私としたことが」
天然を披露した狩野は、そばの棚からストローを取り出し、それをペットボトルに挿した。
「これで飲めるな」
出水の眼光の鋭さを全く意に会することなく、狩野はストローつきペットボトルを出水の口に近づける。
「安心しろ。殺せるならもうとっくに殺している。今は前とは状況が変わったのだ。私は君を殺すつもりはないし、琵琶持を殺すつもりもない」
その言葉に対して出水はこう吐き捨てた。
「いや飲まねーよ。あんたと私の心の距離を考えろ。その距離を一歩づつ確実に埋めてもらわないと、私はあんたと親しくお喋りしたり、言うことを聞いたりするつもりはない」
「そうかい」
狩野はペットボトルを側の机に置くと、ため息をついた。
「まぁ、信じられない気持ちもわかるが、聞いて欲しい。私は君の味方だ」
「何を言うかと思えば…洗脳か?」
「口を挟むな。そうだな…私の能力は瞬間移動できる能力だ」
そう言った狩野が指をパチンと鳴らすと、狩野の姿が消えた。そして、すぐにドアを開けて部屋に入ってきた。
「…だが、瞬間移動、と言ってもそれは限定的だ。私の場合は『登録』した『ドア』の外側にしか行けない。そして、登録できる数はたったの10個だ…」
そこで狩野はもう一回指を鳴らした。10秒ほど経った後に、またドアを開けて現れた狩野の手には、アロハシャツが握られていた。
「今、ハワイの別荘から取ってきた」
「…マジか?」
「そうだ」
狩野の目には嘘偽りはなさそうだった。
能力者にとって、能力とは自分の内面の発露でもある。それを明かすとなると、それ相応の羞恥心が出る。例えると一糸纏わぬ姿で外に出るのと同じくらいの、である。これは抗いきれない能力者の本能として、常に能力者を縛っている。
狩野がそれを素直に喋った意図は、もちろん自分を信用させるためである。出水はそれを理解した。そして何よりも探偵の勘が話を聞いたほうがいいと言っている。
「まぁ、話くらいは聞いてやるよ」
出水は渋々そう言った。
「ええと…何処かに何か…」
幸田が今漁っているのは、狩野の家にある書斎である。慣れた手つきで窓に小さな穴を開け、鍵を開けて侵入したのだ。
そして書斎を漁っているうち、幸田は狩野が持っていると思われる別荘の資料を見つけた。
「お、これは…別荘か。スペインにアメリカのニューヨークときた。お、日本にもある」
これはいい情報になる。先程、琵琶持さんから聞いた、出水の誘拐。出水が何処にいるか、という話になったら、この山奥にある別荘に連れ込まれてるというのが妥当だろう。だが、妥当というだけであってそこらの廃ビルの可能性もある。そう考えを巡らせた幸田は頭をかきつつ、その考えをなくした。
「ま、そこを考えんのは本業の琵琶持さんだわな。俺は記者らしく行くか」
そして色々と調べているうちに、別荘の資料が入っていた引き出しの違和感に幸田は気がついた。ほんの少し、ほんの少しだけ、引き出しの底が『高い』。
「二重底か。馬鹿供が不倫の証拠をこういうのによく隠してたなぁ」
底の端を強く押すと、もう片方の端が少しだけ持ち上がる。幸田はそこを掴んで二重底を取った。
そこには、一冊のノートがあった。幸田は早速そのノートを開いた。
「『私は人質を取られているため、詳しくは書けないが、奴について書こうと思う』…?取り敢えずこれは重要そうだ。琵琶持さんに持ってこう」
そして、なんとなく幸田が後ろを振り向いた瞬間、目の前に刃があった。
「なっ‼︎」
幸田は迫り来る刃をなんとか避けた。
「む…運がいいな。まさか避けられるとは」
黒いスーツにベストを合わせた格好をした男は、鋏をもう一度構え直した。
「っ誰だお前‼︎」
「刺客って奴だ。お前はこれから『知りすぎる』からなぁ…」
刺客は狭い部屋の中で、手に持った赤い裁ち鋏を幸田に向けて動かし始めた。
「ぬ、ちょっ!おっ!」
「避けるなよ。上司にどやされちまうじゃないか」
刺客は心底だるそうに目を細めた。
そして両手と両足が椅子に括り付けられているため、逃れることはできそうになさそうだ。ということを一瞬で出水は把握した。
「起きたか」
目の前に座っていた狩野がそう言う。
「よし…これでも飲め」
狩野は水が入ったペットボトルを出水に渡そうとした。
「おっと…手が塞がっているから飲めないな。私としたことが」
天然を披露した狩野は、そばの棚からストローを取り出し、それをペットボトルに挿した。
「これで飲めるな」
出水の眼光の鋭さを全く意に会することなく、狩野はストローつきペットボトルを出水の口に近づける。
「安心しろ。殺せるならもうとっくに殺している。今は前とは状況が変わったのだ。私は君を殺すつもりはないし、琵琶持を殺すつもりもない」
その言葉に対して出水はこう吐き捨てた。
「いや飲まねーよ。あんたと私の心の距離を考えろ。その距離を一歩づつ確実に埋めてもらわないと、私はあんたと親しくお喋りしたり、言うことを聞いたりするつもりはない」
「そうかい」
狩野はペットボトルを側の机に置くと、ため息をついた。
「まぁ、信じられない気持ちもわかるが、聞いて欲しい。私は君の味方だ」
「何を言うかと思えば…洗脳か?」
「口を挟むな。そうだな…私の能力は瞬間移動できる能力だ」
そう言った狩野が指をパチンと鳴らすと、狩野の姿が消えた。そして、すぐにドアを開けて部屋に入ってきた。
「…だが、瞬間移動、と言ってもそれは限定的だ。私の場合は『登録』した『ドア』の外側にしか行けない。そして、登録できる数はたったの10個だ…」
そこで狩野はもう一回指を鳴らした。10秒ほど経った後に、またドアを開けて現れた狩野の手には、アロハシャツが握られていた。
「今、ハワイの別荘から取ってきた」
「…マジか?」
「そうだ」
狩野の目には嘘偽りはなさそうだった。
能力者にとって、能力とは自分の内面の発露でもある。それを明かすとなると、それ相応の羞恥心が出る。例えると一糸纏わぬ姿で外に出るのと同じくらいの、である。これは抗いきれない能力者の本能として、常に能力者を縛っている。
狩野がそれを素直に喋った意図は、もちろん自分を信用させるためである。出水はそれを理解した。そして何よりも探偵の勘が話を聞いたほうがいいと言っている。
「まぁ、話くらいは聞いてやるよ」
出水は渋々そう言った。
「ええと…何処かに何か…」
幸田が今漁っているのは、狩野の家にある書斎である。慣れた手つきで窓に小さな穴を開け、鍵を開けて侵入したのだ。
そして書斎を漁っているうち、幸田は狩野が持っていると思われる別荘の資料を見つけた。
「お、これは…別荘か。スペインにアメリカのニューヨークときた。お、日本にもある」
これはいい情報になる。先程、琵琶持さんから聞いた、出水の誘拐。出水が何処にいるか、という話になったら、この山奥にある別荘に連れ込まれてるというのが妥当だろう。だが、妥当というだけであってそこらの廃ビルの可能性もある。そう考えを巡らせた幸田は頭をかきつつ、その考えをなくした。
「ま、そこを考えんのは本業の琵琶持さんだわな。俺は記者らしく行くか」
そして色々と調べているうちに、別荘の資料が入っていた引き出しの違和感に幸田は気がついた。ほんの少し、ほんの少しだけ、引き出しの底が『高い』。
「二重底か。馬鹿供が不倫の証拠をこういうのによく隠してたなぁ」
底の端を強く押すと、もう片方の端が少しだけ持ち上がる。幸田はそこを掴んで二重底を取った。
そこには、一冊のノートがあった。幸田は早速そのノートを開いた。
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そして、なんとなく幸田が後ろを振り向いた瞬間、目の前に刃があった。
「なっ‼︎」
幸田は迫り来る刃をなんとか避けた。
「む…運がいいな。まさか避けられるとは」
黒いスーツにベストを合わせた格好をした男は、鋏をもう一度構え直した。
「っ誰だお前‼︎」
「刺客って奴だ。お前はこれから『知りすぎる』からなぁ…」
刺客は狭い部屋の中で、手に持った赤い裁ち鋏を幸田に向けて動かし始めた。
「ぬ、ちょっ!おっ!」
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刺客は心底だるそうに目を細めた。
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