40 / 65
第三章・我校引線
17話 狩野照哉の悩める校長生活
しおりを挟む
「フー…ようやく行ったか」
刺客である男、須郷智昭は、幸田が出て行くのを見と退けると、ハイキックを喰らった顎をさすりながらこともなげに立ち上がった。
「よし!これであの嫌な上司様ともお別れだな!」
実は、須郷智昭は自分の上司である、能力者の失脚を望んでいた。
須郷の仕事は、ダークから能力を授かった能力者と接触して契約を果たし、様々な尻拭いをすることである。だが、今の上司の能力者は言っていることが横暴すぎるし、いささか残酷すぎる。
そのため須郷は兎に角早く上司に死んで欲しかった。だが、契約者が能力者に仇なすと、契約者は問答無用で死ぬことになっている。なので須郷はわざと、自分の能力を事細かに話した後に幸田に倒されたのである。
「はーっ、上司の体調不良が本当だったようで助かった。契約も一緒に弱まってくれていたお陰でようやく一息つける…」
須郷はソファに刺さっている鋏を引き抜きつつ、そこに座った。
「出水露沙…俺の暮らしのためにも、あのクソを倒してくれよ」
そう独り言を呟くと須郷は、上司から言い渡された残業によって平均睡眠時間が3時間を切っている身体を、労わるようにして寝てしまった。
「契約者⁈」
「はい。なんかベラベラと自分語りしてくれて助かりましたよ」
探偵事務所に戻ってきた幸田は早速琵琶持に情報を伝達していた。
「それじゃ親玉は絶対、そいつと似たような能力じゃないですか!」
『ダーク』から能力を授けられた者は一般的に『闇能力者』、闇能力者と契約した者は『契約者』とそれぞれ呼ばれている。契約を交わすと、契約者は闇能力者の能力の一部が使えるようになり、その代わり闇能力者の言うことをなんでも聞かなくてはならなくなる。
因みに須郷の場合は、『主人に対しての服従』である。
琵琶持はこの情報を聞いて気分が高揚した。
「それじゃ早くあなたが言ってきたノートを見せてください!」
幸田は、ノートの一ページ目を勢いよく捲った。
「これは…」
ノートの正体は、最初の数ページが破り取られている狩野の日記だった。
そこには、狩野の苦悩と、悍ましい日々が綴られていた。
6月15日、契約により、能力者のことを話すと文字通り全校生徒の『首が飛ぶ』ようになった。これからは奴のことをAと呼ぶ。前のページは破らなければならない。
6月21日、Aのことを話そうとした生徒がバラバラになって死んだ。生徒の両親は携帯の向こうで嘆き悲しんでいたが、なんとか口外しないように頼み込んだ。だが、その日のうちにAから、生徒の両親を殺したとの連絡が来た。頭が割れそうなほどに気持ちが悪い。
7月5日、Aによる脅迫で全校集会が開かれた。Aは間引きと称してその場で30人を無残に殺した。体育館内は絶叫と悲鳴と嗚咽に溢れた。私は何もできなかった。多分私は、悪夢を見ているのだろう。悪夢だ。悪夢だ。
7月12日、今日、Aは兄弟を呼び出したらしい。Aは電話の向こうでそのことを楽しそうに語った。「まず弟を、兄の目の前で『声を上げるのを耐えたら解放する』と言って拷問にかけたんだよね。そしたらものすごいことに耐えたのよ。だから俺は今度は兄に同じことを言って拷問にかけた。それを7回繰り返した時に、どっちから折れたと思う?」
Aは10秒ほど間を開けて、結果を話した。
「兄だよ。兄が折れた。歯と、両腕両足の爪を全部抜いて目玉一個くり抜いて、水責め30回。そして最後に性器を切り落とそうとしたところで落ちた。あ!因みに、それを兄弟の担任の女の先生にやらせたんだよ」
「こ、これは」
幸田は顔面蒼白だった。何日にもわたってAとやらに繰り返された暴虐の記録は、見る者全てを戦慄させるほど凄惨極まるものだった。
「…見てなかったんですかこれを?」
「まぁ、厳重に隠されてたんで、どんなものか楽しみに…と思ったんですがコレは…」
「ヤバいですね」
琵琶持の顔は、幸田ほどに蒼白では無いものの、引き攣っていた。
「過去に何度かこのような者と相対してきましたが、これはその中でもトップクラスです。全く…反吐が出る‼︎」
「でも…コレで狩野が敵じゃ無いと判明しました」
「そうですね…ここには書かれていませんが、これで狩野が私たちに刺客を送ったのも、出水さんを誘拐したのもAの指示である、と推測できますね」
「はい。なんとかして狩野と協力して『A』を倒したいところです。と、いうことで、ここの別荘に行ってみましょう!」
幸田はそう琵琶持に言った。
「というか…時墺が見当たらないんですが…どこにいるのでしょうか」
「時墺さんは今、家に帰っていますよ。流石に家族に顔を見せないと、ということで」
刺客である男、須郷智昭は、幸田が出て行くのを見と退けると、ハイキックを喰らった顎をさすりながらこともなげに立ち上がった。
「よし!これであの嫌な上司様ともお別れだな!」
実は、須郷智昭は自分の上司である、能力者の失脚を望んでいた。
須郷の仕事は、ダークから能力を授かった能力者と接触して契約を果たし、様々な尻拭いをすることである。だが、今の上司の能力者は言っていることが横暴すぎるし、いささか残酷すぎる。
そのため須郷は兎に角早く上司に死んで欲しかった。だが、契約者が能力者に仇なすと、契約者は問答無用で死ぬことになっている。なので須郷はわざと、自分の能力を事細かに話した後に幸田に倒されたのである。
「はーっ、上司の体調不良が本当だったようで助かった。契約も一緒に弱まってくれていたお陰でようやく一息つける…」
須郷はソファに刺さっている鋏を引き抜きつつ、そこに座った。
「出水露沙…俺の暮らしのためにも、あのクソを倒してくれよ」
そう独り言を呟くと須郷は、上司から言い渡された残業によって平均睡眠時間が3時間を切っている身体を、労わるようにして寝てしまった。
「契約者⁈」
「はい。なんかベラベラと自分語りしてくれて助かりましたよ」
探偵事務所に戻ってきた幸田は早速琵琶持に情報を伝達していた。
「それじゃ親玉は絶対、そいつと似たような能力じゃないですか!」
『ダーク』から能力を授けられた者は一般的に『闇能力者』、闇能力者と契約した者は『契約者』とそれぞれ呼ばれている。契約を交わすと、契約者は闇能力者の能力の一部が使えるようになり、その代わり闇能力者の言うことをなんでも聞かなくてはならなくなる。
因みに須郷の場合は、『主人に対しての服従』である。
琵琶持はこの情報を聞いて気分が高揚した。
「それじゃ早くあなたが言ってきたノートを見せてください!」
幸田は、ノートの一ページ目を勢いよく捲った。
「これは…」
ノートの正体は、最初の数ページが破り取られている狩野の日記だった。
そこには、狩野の苦悩と、悍ましい日々が綴られていた。
6月15日、契約により、能力者のことを話すと文字通り全校生徒の『首が飛ぶ』ようになった。これからは奴のことをAと呼ぶ。前のページは破らなければならない。
6月21日、Aのことを話そうとした生徒がバラバラになって死んだ。生徒の両親は携帯の向こうで嘆き悲しんでいたが、なんとか口外しないように頼み込んだ。だが、その日のうちにAから、生徒の両親を殺したとの連絡が来た。頭が割れそうなほどに気持ちが悪い。
7月5日、Aによる脅迫で全校集会が開かれた。Aは間引きと称してその場で30人を無残に殺した。体育館内は絶叫と悲鳴と嗚咽に溢れた。私は何もできなかった。多分私は、悪夢を見ているのだろう。悪夢だ。悪夢だ。
7月12日、今日、Aは兄弟を呼び出したらしい。Aは電話の向こうでそのことを楽しそうに語った。「まず弟を、兄の目の前で『声を上げるのを耐えたら解放する』と言って拷問にかけたんだよね。そしたらものすごいことに耐えたのよ。だから俺は今度は兄に同じことを言って拷問にかけた。それを7回繰り返した時に、どっちから折れたと思う?」
Aは10秒ほど間を開けて、結果を話した。
「兄だよ。兄が折れた。歯と、両腕両足の爪を全部抜いて目玉一個くり抜いて、水責め30回。そして最後に性器を切り落とそうとしたところで落ちた。あ!因みに、それを兄弟の担任の女の先生にやらせたんだよ」
「こ、これは」
幸田は顔面蒼白だった。何日にもわたってAとやらに繰り返された暴虐の記録は、見る者全てを戦慄させるほど凄惨極まるものだった。
「…見てなかったんですかこれを?」
「まぁ、厳重に隠されてたんで、どんなものか楽しみに…と思ったんですがコレは…」
「ヤバいですね」
琵琶持の顔は、幸田ほどに蒼白では無いものの、引き攣っていた。
「過去に何度かこのような者と相対してきましたが、これはその中でもトップクラスです。全く…反吐が出る‼︎」
「でも…コレで狩野が敵じゃ無いと判明しました」
「そうですね…ここには書かれていませんが、これで狩野が私たちに刺客を送ったのも、出水さんを誘拐したのもAの指示である、と推測できますね」
「はい。なんとかして狩野と協力して『A』を倒したいところです。と、いうことで、ここの別荘に行ってみましょう!」
幸田はそう琵琶持に言った。
「というか…時墺が見当たらないんですが…どこにいるのでしょうか」
「時墺さんは今、家に帰っていますよ。流石に家族に顔を見せないと、ということで」
0
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
百合ランジェリーカフェにようこそ!
楠富 つかさ
青春
主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?
ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!!
※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。
表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。
セーラー服美人女子高生 ライバル同士の一騎討ち
ヒロワークス
ライト文芸
女子高の2年生まで校内一の美女でスポーツも万能だった立花美帆。しかし、3年生になってすぐ、同じ学年に、美帆と並ぶほどの美女でスポーツも万能な逢沢真凛が転校してきた。
クラスは、隣りだったが、春のスポーツ大会と夏の水泳大会でライバル関係が芽生える。
それに加えて、美帆と真凛は、隣りの男子校の俊介に恋をし、どちらが俊介と付き合えるかを競う恋敵でもあった。
そして、秋の体育祭では、美帆と真凛が走り高跳びや100メートル走、騎馬戦で対決!
その結果、放課後の体育館で一騎討ちをすることに。
クラス転移したけど、皆さん勘違いしてません?
青いウーパーと山椒魚
ファンタジー
加藤あいは高校2年生。
最近ネット小説にハマりまくっているごく普通の高校生である。
普通に過ごしていたら異世界転移に巻き込まれた?
しかも弱いからと森に捨てられた。
いやちょっとまてよ?
皆さん勘違いしてません?
これはあいの不思議な日常を書いた物語である。
本編完結しました!
相変わらず話ごちゃごちゃしていると思いますが、楽しんでいただけると嬉しいです!
1話は1000字くらいなのでササッと読めるはず…
アガルタ・クライシス ―接点―
来栖とむ
SF
神話や物語で語られる異世界は、空想上の世界ではなかった。
九州で発見され盗難された古代の石板には、異世界につながる何かが記されていた。
同時に発見された古い指輪に偶然触れた瞬間、平凡な高校生・結衣は不思議な力に目覚める。
不審な動きをする他国の艦船と怪しい組織。そんな中、異世界からの来訪者が現れる。政府の秘密組織も行動を開始する。
古代から権力者たちによって秘密にされてきた異世界との関係。地球とアガルタ、二つの世界を巻き込む陰謀の渦中で、古代の謎が解き明かされていく。
JKメイドはご主人様のオモチャ 命令ひとつで脱がされて、触られて、好きにされて――
のぞみ
恋愛
「今日から、お前は俺のメイドだ。ベッドの上でもな」
高校二年生の蒼井ひなたは、借金に追われた家族の代わりに、ある大富豪の家で住み込みメイドとして働くことに。
そこは、まるでおとぎ話に出てきそうな大きな洋館。
でも、そこで待っていたのは、同じ高校に通うちょっと有名な男の子――完璧だけど性格が超ドSな御曹司、天城 蓮だった。
昼間は生徒会長、夜は…ご主人様?
しかも、彼の命令はちょっと普通じゃない。
「掃除だけじゃダメだろ? ご主人様の癒しも、メイドの大事な仕事だろ?」
手を握られるたび、耳元で囁かれるたび、心臓がバクバクする。
なのに、ひなたの体はどんどん反応してしまって…。
怒ったり照れたりしながらも、次第に蓮に惹かれていくひなた。
だけど、彼にはまだ知られていない秘密があって――
「…ほんとは、ずっと前から、私…」
ただのメイドなんかじゃ終わりたくない。
恋と欲望が交差する、ちょっぴり危険な主従ラブストーリー。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる