出水探偵事務所の受難

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第三章・我校引線

18話 真相

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目の前の家は私の家だが、何かしっくりこないな。そんなことを考えながら時墺は家の門をくぐった。
「ただいまー」
 そう言ってみるが、中からの返事はない。また、居間で震えているのか私の家族は。そう思い、居間を覗いてみる。
 しかしそこには『何もなかった』。テレビも、エアコンも、冷蔵庫も。家電という家電、家具という家具がそこにはなかった。
「は?え?」
 殺風景がすぎる部屋を見て困惑した後、ふと時墺は二階の自分の部屋へと向かった。自分の部屋は元のままだった。
「あれ…これ」
 時墺は机の上に置いてある一枚の紙を手に取った。それを見て時墺は、遂に記憶が戻った。

「多分、琵琶持と幸田はここに来るぞ」
 狩野は出水にそう言った。
「俺の家に日記があってだな、それを読んだら俺の実情がわかって協力を求めてくる筈だ」
「そうか…」
 狩野の話を聞いても出水は自らの爪をいじり続けているままの状態だった。
「そんなこと、琵琶持なら普通に突き止めるぞ。幸田もいるし。まぁ、もうすぐ夜になる。今日中には来ないと思うが」
「そうなのか?お前のことを心配じゃないのか琵琶持は?」
「してるだろ。でも、私のことを誰よりも信頼してるから、私が『殺されること』はない。って思ってるよ。あのジジイは」
 出水のこの答えに、狩野はなんとも言えない表情で応じた。

 それから、出水達二人が揃って、ある作業を終えた数十分後、突然アジトのドアが開くと、何と時墺が部屋に入ってきた。
「え?」
「は?」
「『切断』」
 時墺がそう呟くと同時に、麻酔銃を持っていた出水の手の甲に、何本もの『線』が走って鮮血が噴き上がった。
「『俺』をぶっ潰す為にそいつと組んじゃったか…露沙ちゃん」
「この目で見るまで信じたくなかったぞ。鈴!」

 鏡の柱がした、と言ったのは『時墺鈴の記憶の改竄』だけであり、実際にしたのは『時墺鈴とその契約者以外の全人類の記憶の改竄』である。これによって時墺鈴の能力の術中に嵌り契約者となった時墺家、そして学園、引いてはその地域の人々全員の記憶は改竄されずに残ったのだ。
 そして現在、時墺鈴の記憶が抜けていることを確信した狩野によって、時墺の暴虐の一部始終が出水に伝わった。
 それによって出水は、何ヶ月か前に起きた連続殺人事件とその顛末を思い出すことができたのだ。
 その顛末は、同級生や教師に対する拷問殺人は当たり前、果てはクラスメイトに殺しを命令させることまでしていた時墺鈴という犯罪者が賞金稼ぎチーム『リコリス』によって生捕りにされ、鏡の柱に引き渡された。というものである。

 がしかし、鏡の柱は何を思ったか、記憶の改竄を行いまっさらな状態に戻った殺人鬼を野に放ったらしい。
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