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第三章・我校引線
22話 出水露沙VS時墺鈴 【青春大爆発】
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一方、アルトネの煙幕によって、2人の位置を完全に見失ってしまった出水は、木を登っていた。
「アルトネ…奴の馬鹿でかい服装の中にはおっかない武器やら何やらが詰まっているに違いないとしてだな…」
考えられるアルトネの能力は、煙幕を出したことから、イルデーニャで戦ったマックスの糸ように、触れたら位置がバレる系統、もしくは毒ガス系統か。どちらにせよ触れるのは避けたい所だ。
樹上でこのように思考を巡らせた出水だったが、肝心の打開策は思い浮かばず、表情は曇るばかりだった。
「おーい、露沙ちゃん」
その声の先にいたのは時墺だった。
「鈴…!」
「樹上戦と行こうか。行っとくけど、私は強いわよ?」
「投降しろ。いや…投降してくれ!私は鈴とは戦いたくない」
「…なら、どうして早く行動しなかった?気づいてたでしょ?俺が黒幕だって」
図星だった。記憶を改竄される前の時墺が黒幕だというのは、幸田から話を聞いた時に確信はしていた。でも、信じたくなかった。だから目を背けてしまったのだ。出水は、苦虫を噛み潰したような苦しい表情を時墺に見せた。
樹上での戦いの特徴は、足場が極端に少ないため、移動が制限されることである。だが、時墺は身体中に生やした鋏の刃を木に刺しながらの移動が可能なため、一瞬で出水の喉元まで『鋏装甲』で覆われた左腕を伸ばすことに至った。
それを『One more time』で避けた出水は腕に仕込んであるフック付きのワイヤーを、鞭のようにしならせて更に上にある枝に巻き付けた。そしてワイヤーの端をしっかりと掴むと、出水はターザンのように宙を舞った。
「逃すか!」
そう叫びながら時墺は素早く木々の間を走る。
が、それを予期していた出水は側の木を蹴り上げて方向を転換し、ワイヤーに捕まったまま時墺に鋭い蹴りを入れ込んだ。しかし、時墺は、腕の鎧でそれを難なくガードし、出水を遠くへ突き放した。出水はなんとか側の枝に捕まり、その上によじのぼった。
目の前にいる、いかつい鎧を腕に纏ったかつての友は、手加減して倒せるほど弱くなかった。それを今悟った出水は決めきれなかった覚悟を、ようやく決めた。出水は今立っている枝から、ガスが充満していない地面に落ちて受け身を取ると、コートを脱いだ。
「来いよ」
そう時墺に言うと、出水はワイヤーと麻酔銃を煙の向こうに投げ捨て、更に言葉をつづけた。
「お前との、短い思い出の最後はここで決める」
すると、煙の向こうから時墺が姿を表した。
「そうね。フィナーレといこうかしら」
両者は煙の結界の内側で睨み合った。
「アルトネ!お前の手出しは許さないわ。俺がやる」
時墺はそう言うと、手の装甲を変形させ、鋭い剣を作り出した。そしてそれをもう一個作り、組み合わせ、1メートル強はある、おおきな鋏を作り出した。
「絶対断裂具『螽斯』」
『螽斯』をゆっくり構えると、時墺の周りの空気が殺気に満ちた。そして一気に出水に襲いかかった。
鋏の身が身体に擦りそうになるが、出水はそれをなんとか躱し続ける。
「ハッ‼︎」
鋏をかわした、と思ったがそれは、片方の刃だった。出水はもう一方の刃を避け損ねて、右腕に掠らせてしまった。鋏の留め金が緩く設定されているのか、鋏の刃がグルグルとよく回っている。
「ギリギリとは流石ね露沙。『切れろ』」
その瞬間、出水の右腕から血が噴き出た。
「クソが…!」
「まだまだだよ露沙。こんなものじゃ済まさない」
時墺は鋏を振り上げ、それを一気に出水に向かって振り下ろした。なんとかこれを避けた出水だったが、振り下ろされて地面に突き刺さった鋏の持ち手部分に飛び乗った時墺の、飛び膝蹴りをまともに食らってしまった。
「がっ…!」
「まだまだァ‼︎」
時墺は出水に三日月蹴りをし、次に肩をぶつけ、そして転がった時墺の身体を、サッカーよろしく蹴り上げた。
「ぐぶぁぁあっ‼︎」
どんな人間にも、攻撃をする際は『本当にここでいいのか』、『ダメだったらどうしよう』などという、ほんの僅かな躊躇が生まれる。だが時墺の場合それが無い。だからとにかく早い攻撃を連続で行うことができる。
そんな攻撃の連続にボロボロにされた出水は、口元に伝う血を拭って目の前の敵を睨みつけた。
「甘いよ。甘い。露沙は本当に甘いね。そんなんで探偵業してたの?」
「してたさ、てめぇみたいな極悪人を追い詰めるためにな」
「極悪…?俺が?君ら普通の人はいつもそう言うわよね。露沙は、一生この欲を解放せずに俺に生きろと?そんなの俺には到底無理だよ。あのまま誰も殺さずに生きてたら、俺ァ鬱になって自分の首括って死んでたわ。殺さずにはいられないのよ。俺は」
時墺の言っていることは純度百パーセントの本音であった。これに対して、出水は息も切れ切れにこう返した。
「『弱肉強食』『多勢に無勢』。私たち多数派はお前みたいな少数派の意見なぞ聞かない。いや、聞けない。それがこの世界だ。多くの少数派は、多数派に染め上がることで生きてきたんだ。だからお前も…」
出水はそう言った後さらに次の言葉をつなげようとした。が、やめた。そして手を開き、上に掲げた。
「いや、そんなのはどうでもいい。お前が勝つか、私が勝つか。それだけでいいだろ時墺。少数派の代表がお前なら私に勝って見せろ」
出水がそう語った瞬間、どこからか刀が飛んできて、出水の手に収まった。
「手にピッタリとはさすがだな琵琶持…さて、こんどこそ最終ラウンドだ時墺!」
「アルトネ…奴の馬鹿でかい服装の中にはおっかない武器やら何やらが詰まっているに違いないとしてだな…」
考えられるアルトネの能力は、煙幕を出したことから、イルデーニャで戦ったマックスの糸ように、触れたら位置がバレる系統、もしくは毒ガス系統か。どちらにせよ触れるのは避けたい所だ。
樹上でこのように思考を巡らせた出水だったが、肝心の打開策は思い浮かばず、表情は曇るばかりだった。
「おーい、露沙ちゃん」
その声の先にいたのは時墺だった。
「鈴…!」
「樹上戦と行こうか。行っとくけど、私は強いわよ?」
「投降しろ。いや…投降してくれ!私は鈴とは戦いたくない」
「…なら、どうして早く行動しなかった?気づいてたでしょ?俺が黒幕だって」
図星だった。記憶を改竄される前の時墺が黒幕だというのは、幸田から話を聞いた時に確信はしていた。でも、信じたくなかった。だから目を背けてしまったのだ。出水は、苦虫を噛み潰したような苦しい表情を時墺に見せた。
樹上での戦いの特徴は、足場が極端に少ないため、移動が制限されることである。だが、時墺は身体中に生やした鋏の刃を木に刺しながらの移動が可能なため、一瞬で出水の喉元まで『鋏装甲』で覆われた左腕を伸ばすことに至った。
それを『One more time』で避けた出水は腕に仕込んであるフック付きのワイヤーを、鞭のようにしならせて更に上にある枝に巻き付けた。そしてワイヤーの端をしっかりと掴むと、出水はターザンのように宙を舞った。
「逃すか!」
そう叫びながら時墺は素早く木々の間を走る。
が、それを予期していた出水は側の木を蹴り上げて方向を転換し、ワイヤーに捕まったまま時墺に鋭い蹴りを入れ込んだ。しかし、時墺は、腕の鎧でそれを難なくガードし、出水を遠くへ突き放した。出水はなんとか側の枝に捕まり、その上によじのぼった。
目の前にいる、いかつい鎧を腕に纏ったかつての友は、手加減して倒せるほど弱くなかった。それを今悟った出水は決めきれなかった覚悟を、ようやく決めた。出水は今立っている枝から、ガスが充満していない地面に落ちて受け身を取ると、コートを脱いだ。
「来いよ」
そう時墺に言うと、出水はワイヤーと麻酔銃を煙の向こうに投げ捨て、更に言葉をつづけた。
「お前との、短い思い出の最後はここで決める」
すると、煙の向こうから時墺が姿を表した。
「そうね。フィナーレといこうかしら」
両者は煙の結界の内側で睨み合った。
「アルトネ!お前の手出しは許さないわ。俺がやる」
時墺はそう言うと、手の装甲を変形させ、鋭い剣を作り出した。そしてそれをもう一個作り、組み合わせ、1メートル強はある、おおきな鋏を作り出した。
「絶対断裂具『螽斯』」
『螽斯』をゆっくり構えると、時墺の周りの空気が殺気に満ちた。そして一気に出水に襲いかかった。
鋏の身が身体に擦りそうになるが、出水はそれをなんとか躱し続ける。
「ハッ‼︎」
鋏をかわした、と思ったがそれは、片方の刃だった。出水はもう一方の刃を避け損ねて、右腕に掠らせてしまった。鋏の留め金が緩く設定されているのか、鋏の刃がグルグルとよく回っている。
「ギリギリとは流石ね露沙。『切れろ』」
その瞬間、出水の右腕から血が噴き出た。
「クソが…!」
「まだまだだよ露沙。こんなものじゃ済まさない」
時墺は鋏を振り上げ、それを一気に出水に向かって振り下ろした。なんとかこれを避けた出水だったが、振り下ろされて地面に突き刺さった鋏の持ち手部分に飛び乗った時墺の、飛び膝蹴りをまともに食らってしまった。
「がっ…!」
「まだまだァ‼︎」
時墺は出水に三日月蹴りをし、次に肩をぶつけ、そして転がった時墺の身体を、サッカーよろしく蹴り上げた。
「ぐぶぁぁあっ‼︎」
どんな人間にも、攻撃をする際は『本当にここでいいのか』、『ダメだったらどうしよう』などという、ほんの僅かな躊躇が生まれる。だが時墺の場合それが無い。だからとにかく早い攻撃を連続で行うことができる。
そんな攻撃の連続にボロボロにされた出水は、口元に伝う血を拭って目の前の敵を睨みつけた。
「甘いよ。甘い。露沙は本当に甘いね。そんなんで探偵業してたの?」
「してたさ、てめぇみたいな極悪人を追い詰めるためにな」
「極悪…?俺が?君ら普通の人はいつもそう言うわよね。露沙は、一生この欲を解放せずに俺に生きろと?そんなの俺には到底無理だよ。あのまま誰も殺さずに生きてたら、俺ァ鬱になって自分の首括って死んでたわ。殺さずにはいられないのよ。俺は」
時墺の言っていることは純度百パーセントの本音であった。これに対して、出水は息も切れ切れにこう返した。
「『弱肉強食』『多勢に無勢』。私たち多数派はお前みたいな少数派の意見なぞ聞かない。いや、聞けない。それがこの世界だ。多くの少数派は、多数派に染め上がることで生きてきたんだ。だからお前も…」
出水はそう言った後さらに次の言葉をつなげようとした。が、やめた。そして手を開き、上に掲げた。
「いや、そんなのはどうでもいい。お前が勝つか、私が勝つか。それだけでいいだろ時墺。少数派の代表がお前なら私に勝って見せろ」
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