出水探偵事務所の受難

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第四章・失律聖剣

9話 バーニング・フェニックス その2

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人型になったルインの姿は、燃えるように赤いフワッとしたドレスを身に纏った、赤いメッシュが入った長髪の美女だった。
「『フレアケイン』」
 ルインがそう唱えると、その右手に炎の棒のようなものが出現し、それを振りながら、更にこう唱えた。
「『プロミネンス・プロヴィデンス』‼︎」
 瞬間、ルインの足元を中心にして、炎を纏った衝撃波が連続して巻き起こった。
 それを見たサーヴァロは、自身の剣を地面に突き立て、開いた両手を前方に突き出し、こう唱えた。
「『圧しろ』」
 すると、サーヴァロの目前に迫っていた炎が掻き消えた。
「…!凄まじい能力…!」
「おだてるなよ…」
 ルインの後ろからそのような声が響いた。
「は⁈」
「遅い」
 次の瞬間、ルインの首が宙を舞った。が、それにもかかわらずルインの体は倒れなかった。
「…まさか」
「『オーバープロミネンス』‼︎」
 ルインの頭がそう叫んだ瞬間、すぐにその頭自身が大爆発を起こした。

「…あーいたたた…頭痛がひどい…」
 サーヴァロはそう呟きながら眼前の焼け野原と化した光景を眺めた。サーヴァロは今、空中をフワフワと浮いている。
「これじゃあ千日手だ…うむ、逃げるか。『須郷、こっちに来い』」
「え?おおおっと!」
 地上から二人の戦いを観戦していた須郷は、一瞬で空中のサーヴァロの元まで引き寄せられた。
「恐らくあいつはアレでも死なない…一旦引くぞ」
「…了解っす…。相変わらず人使いが悪い…」
 が、二人が逃げ出す前に、二人の退路は凄まじい火柱に塞がれた。そしてそこからまたルインが現れた。
「逃すわけないじゃない…アレも避けれるとは凄いわねサーヴァロ…」
「俺が嫌いな女を三人言ってやる」
 サーヴァロは唐突にそう言った。
「一つ、ケバケバしい女…二つ、馴れ馴れしい女…その中でも名前を知った瞬間に馴れ馴れしく名前を呼んでくるヤツ…三つ、しつこい女…。面白いことに全部お前に当てはまってる」
「…それがどうしたの」
「ただの感想だ。死んでくれたら助かるんだがどうだ?」
「死ねないから無理ね」
「ハァ…須郷、今からお前を遠くに飛ばす。俺はこのクズ女をあと五十回は殺せそうだが、それが限界になるだろう」
「『だから、後で俺をなんとかして助けろ』っすか」
「そうだ」
「…人使いが本当に悪い…!わかりましたよ。契約内容はしっかり果たします」
「『行け』」
 そして、須郷は流れ星並のスピードで遠くに飛ばされて行った。
「優しいじゃないサーヴァロ」
「俺の名を気安く呼ぶな売女が」

「…おお、これが絵本の街か」
 そこは中世的な街並みだが、どこかメルヘンチックな雰囲気が漂ういかにも絵本の街というような場所だった。出水一行はそんな街に調査に向かっていた。その目的は『主要登場人物』の居所をつかむことと、『2ndシーズン』のきっかけを探ることにあった。
「この街の名前は『ミース』。旅人やら商人やらが訪れる活気のある街だ。情報も自然に集まってくる筈だ」
「わかったわ」
 それから三人は旅人のふりをしつつ、町民達から情報を集めていった。

 数時間後、三人は集めた情報を交換しあった。すると、泥棒に入られた、や、誰々の奥さんが昨日亡くなったとか、そんな現実世界でもあるような話の中に、一際目立つものがあった。それが…
「女の子が見たら誰でも惚れちゃう男の話よ」
 明日辺が話を続ける。
「そいつを見た女の子はみんな一目惚れしてその男についていっちゃうんだって。これは魔法か何かで悪さしてるんじゃないかしら」
「…その『設定』、アリだ。『シーズン2』の序章に来そうな気がする」
「…二人とも、少し静かに」
 出水が自分の唇に指をゆっくりと当てる。
「今、六人くらいが私たちの方をじっと見ていた」
 そして、二人にとりあえず酒場を出るように促した。
「どうもこの街は何か嫌なもの広がっている感じがする。警戒は怠るな」
 出水がそう二人に呟いた。

「あぁ…もうやめてくれぇ…」
 所変わって、ミースのある路地の中で男は震えながら泣いていた。
「ギレムさまー?ギレムさまー?」
 路地の外からそう女性たちが呼ぶ声が幾重にも重なって聞こえてくる。
「やめてくれぇ…僕を探さないでくれぇ…‼︎」
 チリ一つついていないボロ布を羽織ったギレムは、路地の隅でそうやってうずくまることしかできなかった。
「みーつけた‼︎」
「え⁈」
 そこには、目を爛々と輝かせた女が立っていた。
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