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第四章・失律聖剣
10話 ギレム教団
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「この街の何がそんなにヤバいのよ」
「よくあるパニック映画の雰囲気と同じだ。人がみな何かに乗っ取られてて不気味になってる街って感じ」
出水はそう言いながら目玉だけをキョロキョロと動かした。
「何人かが私たちを尾行している。リブラ…本から何かを出す能力ってこの世界でも使えるのか?」
「…わかった。やってみよう」
そう言うと、リブラは懐から絵本を出し、ページをめくり、そこから何匹かの蜻蛉を出した。
「影で尾行している奴らがどんな奴らなのか探ってきてくれ」
そのリブラの命令に頷いた蜻蛉達は細かい羽音を立てながら軽やかに空を舞った。
「取り敢えず街を出るぞ」
街を出た先にあるのは開けた草原なので、追っ手は隠れながら追尾することができない。それがわかっている追っ手は自分たちを追うことをどうも中断したようだった。
「お…帰ってきたぞ」
リブラの手の甲に蜻蛉が三匹留まった。それを耳まで近づけたリブラは蜻蛉に向かって相槌を打ったり、「そうかそうか」などと言っている。
「俺たちを追ってきたのは全員女性…普通とは全く違う感じの殺気を放っていたそうだ」
「…それって恐らく話に出てた惚れさせる男のやつだよね」
「その可能性が高いだろうな。なんとかしてその男とコンタクトを取りたいところだ…」
「それならさ、一回追ってきた女性達を狙うべきじゃない?」
明日辺がそう提案する。
「その女達は話の男を探してるんでしょ?なら、どの辺りにいるとかいないとか分かるんじゃない?」
夜、出水一味はミースの街で一番大きな酒場に来ていた。
「ったくなんで俺がこんな地味な格好を…」
リブラは、自らが着ている服の黒と茶色のコーディネートにそう不平を漏らした。
「しょうがないでしょ。アンタの服は目立ちすぎる。むしろ着替えるのが遅かったレベルよ」
「…行くぞ『あー最近出会いがないなー』」
出水は大声でそう言った。
「そうね。私男が欲しいわー」
明日辺もそのように続く。すると三人の元に、一人の女が駆け寄ってきた。店の中の男達は一斉にその女と視線を合わせないように、そっぽを向いた。
「ちょっと聞こえたんですけど、出会いを求めているんですか?」
女の容姿は修道女といった風で、目を引くのは頭のバンドにデカデカと刺繍された『Guillem』という文字である。
「私の主人様はそれはそれは素晴らしい方でして…会って頂ければその魅力を『身をもって体感できる』と思いますよ」
「へぇ~そんな素晴らしい御仁がいるとは…で、どうやったら会えるんで?」
「簡単ですよぉ。このミースで一番大きな市長の屋敷に『ギレム』様がいらっしゃるので、そこに行けば良いだけです。案内しましょうか?」
「…お願いしよう」
「わかりました…それでは行きましょう」
その提案に従い、出水達三人が立ち上がる。が、修道女はリブラの方を見ながらこう言った。
「『野郎』に用はないので、そこでお待ちください」
そのあまりの剣幕にリブラは何も言えずに酒場の席に座り直した。
そして、修道女、出水、明日辺の三人は酒場の扉を開け、外に出た。
「うわ…」
出水は思わずそう声を漏らした。そこには、何十人もの『Guillem』印の修道女達がたむろしていた。
「あの…これは…?」
明日辺がおずおずと尋ねる。
「私の仲間ですが何か?みんなここに集まっているだけですよ」
嘘つけ。二人は同時にそう思った。これは明らかに私たちを無理やり連れていくための布陣だ。元から私達に許される返答は『YES』の一択だけ。『NO』と言うと無理にでも連れて行かれるだろう。
「よくあるパニック映画の雰囲気と同じだ。人がみな何かに乗っ取られてて不気味になってる街って感じ」
出水はそう言いながら目玉だけをキョロキョロと動かした。
「何人かが私たちを尾行している。リブラ…本から何かを出す能力ってこの世界でも使えるのか?」
「…わかった。やってみよう」
そう言うと、リブラは懐から絵本を出し、ページをめくり、そこから何匹かの蜻蛉を出した。
「影で尾行している奴らがどんな奴らなのか探ってきてくれ」
そのリブラの命令に頷いた蜻蛉達は細かい羽音を立てながら軽やかに空を舞った。
「取り敢えず街を出るぞ」
街を出た先にあるのは開けた草原なので、追っ手は隠れながら追尾することができない。それがわかっている追っ手は自分たちを追うことをどうも中断したようだった。
「お…帰ってきたぞ」
リブラの手の甲に蜻蛉が三匹留まった。それを耳まで近づけたリブラは蜻蛉に向かって相槌を打ったり、「そうかそうか」などと言っている。
「俺たちを追ってきたのは全員女性…普通とは全く違う感じの殺気を放っていたそうだ」
「…それって恐らく話に出てた惚れさせる男のやつだよね」
「その可能性が高いだろうな。なんとかしてその男とコンタクトを取りたいところだ…」
「それならさ、一回追ってきた女性達を狙うべきじゃない?」
明日辺がそう提案する。
「その女達は話の男を探してるんでしょ?なら、どの辺りにいるとかいないとか分かるんじゃない?」
夜、出水一味はミースの街で一番大きな酒場に来ていた。
「ったくなんで俺がこんな地味な格好を…」
リブラは、自らが着ている服の黒と茶色のコーディネートにそう不平を漏らした。
「しょうがないでしょ。アンタの服は目立ちすぎる。むしろ着替えるのが遅かったレベルよ」
「…行くぞ『あー最近出会いがないなー』」
出水は大声でそう言った。
「そうね。私男が欲しいわー」
明日辺もそのように続く。すると三人の元に、一人の女が駆け寄ってきた。店の中の男達は一斉にその女と視線を合わせないように、そっぽを向いた。
「ちょっと聞こえたんですけど、出会いを求めているんですか?」
女の容姿は修道女といった風で、目を引くのは頭のバンドにデカデカと刺繍された『Guillem』という文字である。
「私の主人様はそれはそれは素晴らしい方でして…会って頂ければその魅力を『身をもって体感できる』と思いますよ」
「へぇ~そんな素晴らしい御仁がいるとは…で、どうやったら会えるんで?」
「簡単ですよぉ。このミースで一番大きな市長の屋敷に『ギレム』様がいらっしゃるので、そこに行けば良いだけです。案内しましょうか?」
「…お願いしよう」
「わかりました…それでは行きましょう」
その提案に従い、出水達三人が立ち上がる。が、修道女はリブラの方を見ながらこう言った。
「『野郎』に用はないので、そこでお待ちください」
そのあまりの剣幕にリブラは何も言えずに酒場の席に座り直した。
そして、修道女、出水、明日辺の三人は酒場の扉を開け、外に出た。
「うわ…」
出水は思わずそう声を漏らした。そこには、何十人もの『Guillem』印の修道女達がたむろしていた。
「あの…これは…?」
明日辺がおずおずと尋ねる。
「私の仲間ですが何か?みんなここに集まっているだけですよ」
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