出水探偵事務所の受難

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第四章・失律聖剣

12話 屋敷襲撃

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現在、屋敷は司祭が出した戒厳令(緊急事態につき屋敷中を警備せよとの命令)により、ピリッとした鋭い緊張感に覆われていた。ここで起こす行動全てをギレムに捧げる気でいる修道女達は、文字通り血眼になってフロア全体を探している。
 出水達は現在、警備から逃れるため、屋敷の庭に身を隠していた。
「…ゲームみたいに入り込めるような穴も無さそうだけど、どうするの?出水」
「いい案がある。なかなかバイオレンスだが、コレくらいしか思い浮かばない…いいか?」
「…私とあんたのどちらかが死ななければ良いわ」
「よし、じゃあ話す」

 狙うなら夜…ということで、数時間後、日が完全に沈んだのを見計らって出水達二人は動き始めた。

「よし」
 そう呟くと、明日辺は熱で赤くなった鉄の棒(屋敷の塀から取った)を屋敷の近くに生えている木々に向かって槍のように投げた。案の定すぐに木々は燃え始め、それはやがて大火となって他の木々に火を伝染させていく。
 それから明日辺は側に積んである鉄の棒を更に熱しては投げ、熱しては投げを繰り返し、更に火の勢いを凄まじくさせていった。
 すると、屋敷の中からわらわらと修道女が火消しのためにバケツを抱えて出てきた。だが火はもう既に誰にも消せないレベルにまで燃え上がっている。あとは…『出水が手薄になった屋敷の中を探るだけ』だ。

 出水は屋敷から人がいなくなるのを見計らうと、すぐさま屋敷に紛れ込んだ。
 …火の勢いは強い。そのまま修道女どもはずっと火消しに走ればいいんだが、そうも行かないだろう。修道女の人数とチームの練度からして…この屋敷の警備体制が戻るまで30分というところか。それまでにめぼしい情報を盗み出さなければならない。
 出水はサッと明日辺に教えられた場所まで直行した。
「…司祭室か」
 目的の場所のドアには、そう書かれたパネルが貼り付けてあった。
 目的の場所に、一人留まっている者がいると聞いていたが…恐らくここのトップ、司祭だろう。
 出水は明日辺に切ってもらった鉄の棒をしっかりと握ると、意を決してドアを開けた。

 瞬間、出水の目の前に槍の切先が飛んできた。が、出水は『One more time』で培った動体視力でそれを難なく手で弾いて防いだ。
「な…‼︎」
 出水は無言で部屋に踏み込むと、自分に槍をついた女を見すえた。その女は外行き用の服に身を包んでおり、長いマントが目を引いた。
「見るたびに思うんだが…修道女の服…なんていうのかは知らないが、なかなか扇情的じゃないか?」
「は?」
「はい隙」
 そう呟くと同時に、出水は司祭の鳩尾に、深く鉄の棒をぶち込んだ。
「がッ…‼︎」
 そして、もう一撃、司祭の側頭部に鉄の棒を弾くように当てた。結果、司祭は糸が切れたように地面に白目を剥いて突っ伏してしまった。
「悪いな。すぐに出ていくから…」
 準備しておいた縄で気絶した司祭を縛ると、出水は適当にそう謝った。
 それから部屋の中を探索をするや否や、出水は壁を見て思わずドン引きした。そこには、ギレムの様々な似顔絵を集めて作られたギレムの顔があった。
「…漫画のストーカーみたいだな」
 似顔絵の一つ一つが精巧かつ違和感なく作られている。この絵を描いた者は、現実世界なら名の売れた絵描きになっていたかもしれない。
「…お」
 出水はドアの近くで寝ている司祭の寝所と思われる部屋を発見した。
 入ってみると、そこは、先ほどの部屋より更にギレムの顔に溢れた部屋であった。枕、布団、ベッドなど布が使われているものにはギレムの顔の刺繍が、壁にはギレムの似顔絵のポスターが、テーブルやコップには、ギレムの顔が所狭しと彫られている。
 それから出水は、ラックに掛けられている外套のポケットや、側にある棚などを手当たり次第に探していった。が、めぼしい情報は無かった。
「ないとなれば…やはりここか」
 そう言って試しにベッドの上の枕を退けてみると、そこには数々のギレムの似顔絵と、数枚の書類があった。
 書類には、ギレムの場所に関する情報が事細かに記されていた。
「…よし覚えた」
 そう呟くと出水は、そそくさと部屋から出ようとした。が、ドアがある後ろを振り向くと、そこには倒したはずの司祭が仁王立ちしていた。
「…あれを耐えるのか!」
「『信仰』の力さえ有れば、何でも耐えれますよ…‼︎ギレム教団最高司祭、キュバリエ、参らせてもらう…‼︎」
 キュバリエは、持った槍をサッと構えると、一瞬のうちに踏み込み頭を突いてきた。が、出水はそれを難なく手に持った棍棒でいなし、その勢いのまま左肘をキュバリエの腹に突き込んだ。
「がっ…」
「はい隙」
 そう呟くと、出水はキュバリエの緩んだ手から槍を奪い、そのままキュバリエの横っ腹にぶち当てた。
「あ…がっ…!」
「じゃあな。お前みたいな執念がある奴はすごいよ」
 そう言って、今度こそ出水はそこから去っていった。
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