60 / 65
第四章・失律聖剣
13話 屋敷襲撃 その2
しおりを挟む
ギレムの居場所…と言っても、いるかも、な場所であるが、その情報は入手した…‼︎後するのはここからの脱出だけだ‼︎
屋敷の中で数人とすれ違ったが、皆血相を変えて水を運んでいる。私を気にする余裕などないようだ。
そして出水は、易々と屋敷の外にでることが出来た。その時、出水の近くに一匹の猫が近寄ってきた。
「リブラ…しっかりやってくれたようだな…‼︎」
そう言いながら、猫の首輪の内側に折りたたまれている地図を取り出した。この猫は、リブラがこの世界とは違う『猫が普通に言葉を喋れる世界』の絵本から取り出したモブ猫であり、そのため現実世界の猫とは比べ物にならないほど知能が高い。
リブラはこのモブ猫の何十体かをこの世界に降ろし、『出水露沙と明日辺利昰の脱出の手助けをしてくれ』と頼み込んでいる。そして今、出水の目の前にいる猫は、二人がここから脱出可能な道を見つけた猫、となっている。
「…いい子だ。よし、サッサと行くぞ‼︎」
モブ猫に連れられた先にはもう既に明日辺がいた。モブ猫にここで待っていてと言われたのだろう。
「…情報は⁈」
「もちろんゲットだ」
それから、出水は明日辺に情報を全て口頭で伝えながら燃え盛る木々の中を走り抜けて行った。
ギレム教団のアジトとなっている屋敷がある場所は小高い山の上の密林の中である。今、出水達は、広大な屋敷の庭の中の隠れたルートを進んでいる。
「…おい、火の沈下もだいぶ終わったみたいだぞ。火の付け方が甘かったんじゃないんか?」
「文句言わないでよ。…奴ら、ギレム教団のとんでもない統率力の高さがなせる技よ…あ、ちょっと、猫が止まったわ」
猫が止まった…ということは、進行方向上に『障害がいる』ということだ。そして、猫の鋭敏な感覚の通り、出水達の死角からギレム教団の修道女三人が歩いてきた。出水達は枯れ木に隠れているため、その視界には映っていない。そして、その修道女達が歩き去っていくと、猫はまた歩み始めた。
「…ほんと便利ね。確かに欲しいわ」
「だな」
それから出水達は燃え残る草むらや焦げた枯れ木の合間を縫って、歩いて行った。途中何度か修道女と出会しそうになったが、猫のお陰でそれは全て回避できた。そして、ついに出水達は庭の外に通じる場所へ着いた。そこは、木々と外とこちらを分ける十メートルはある壁があった。
猫は出水達をチラッと見ると、ササっと壁の近くに生えた木に登って行った。
「うへー…登れってさ」
そう言うと、明日辺は木に手をかけ、なんとか、といった感じで木を登り始めた。
「早くしてくれ…後がつかえてる」
「わかってるわよ…」
そして、二人は木の太い幹に登り終わった。今猫と二人がいる木は、ちょうど壁の高さと同じくらいである。
つまり、ここから壁に飛び移れば簡単に脱出できるというわけだ。
猫と出水と明日辺は次々と壁に跳び移り、難なく壁の上に立つことができた。
「…猫がいなけりゃこんな奥の奥まで進めなかったな」
「そうね。よし、さっさと下に降りて帰りましょ…ちょっと待って…熱反応が…これは、あの部屋にいた…‼︎」
瞬間、出水達がいる城塞の壁の上に、燃えている巨大な鳥が舞い降りた。その鳥の足に掴まれているのは司祭である。
「…不死鳥か」
「あら、知っているのね。…まぁ現実世界じゃ不死鳥はポピュラーか…起きなさい、ほら」
「う…うぐっ…がはっ…」
そして、司祭は鳥の足の下でサッと目を開けた。
「…足を…退けなさい‼︎」
「あら、怖い怖い…」
そう言うと、不死鳥はやれやれといった風に跳び、そばに移った。キュバリエは立ち上がって自分の背中にある槍を構えると、こちらを向いた。
「出水露沙…そしてその一派ね。貴方達は確実に殺させてもらいます」
「…面倒だな。明日辺、戦えそうか?」
「なんとか…ってところよ。そういうアンタはどうなの?」
「100パーで倒せるわ」
「そう。じゃ、私も行くしかないじゃない」
動き出しは、出水が早かった。出水の手の鉄パイプがキュバリエに飛ぶ。が、キュバリエはそれをスウェーバックで避け、返しに鋭い突きを見舞った。出水はそれに難なく対応した…が、避けた時、思わず足を滑らせ、そこに置かれるように放たれていた不死鳥の火球が出水にヒット、そしてその隙を突かれ、出水は自らの脳をキュバリエの槍で貫かれた。
が、出水はこの一連の流れを見ていたため、出水の『One more time』が発動し、時間が巻き戻った。そしてその結果、出水は前に出るようなことはせず、相手の出方を伺うように一歩下がった。
この勝負において、厄介なのは不死鳥だ。キュバリエ一人なら問題なく倒せるが、キュバリエと合わせるように放たれるコンビネーションが厄介にも程がある。
出水はどう出るか、次の手をどうするか考えながら相手の様子を伺った。
一方の不死鳥、ルインは、出水と明日辺を難なく倒せるだけの実力はある。では何故キュバリエを前衛に立たせているのか?それは、自身の力の加減が難しいからである。前に捕まえたサーヴァロの実力はルインと拮抗しており、全力を出してようやく捕獲ができた。だが、今ここで本気を出してしまえば、物語を進める重要なピースの一つである『キュバリエ』と、生け捕りしか許されない『出水』と『明日辺』を黒焦げの燃えカスにしてしまう。
…キュバリエを連れてきたのは失敗だったかしら。いや、あの修道女の中で一番強いのはキュバリエ。ここはピースを失うリスクを背負ってでもキュバリエに任せるべきだわ。
ルインはそのように結論づけた。
屋敷の中で数人とすれ違ったが、皆血相を変えて水を運んでいる。私を気にする余裕などないようだ。
そして出水は、易々と屋敷の外にでることが出来た。その時、出水の近くに一匹の猫が近寄ってきた。
「リブラ…しっかりやってくれたようだな…‼︎」
そう言いながら、猫の首輪の内側に折りたたまれている地図を取り出した。この猫は、リブラがこの世界とは違う『猫が普通に言葉を喋れる世界』の絵本から取り出したモブ猫であり、そのため現実世界の猫とは比べ物にならないほど知能が高い。
リブラはこのモブ猫の何十体かをこの世界に降ろし、『出水露沙と明日辺利昰の脱出の手助けをしてくれ』と頼み込んでいる。そして今、出水の目の前にいる猫は、二人がここから脱出可能な道を見つけた猫、となっている。
「…いい子だ。よし、サッサと行くぞ‼︎」
モブ猫に連れられた先にはもう既に明日辺がいた。モブ猫にここで待っていてと言われたのだろう。
「…情報は⁈」
「もちろんゲットだ」
それから、出水は明日辺に情報を全て口頭で伝えながら燃え盛る木々の中を走り抜けて行った。
ギレム教団のアジトとなっている屋敷がある場所は小高い山の上の密林の中である。今、出水達は、広大な屋敷の庭の中の隠れたルートを進んでいる。
「…おい、火の沈下もだいぶ終わったみたいだぞ。火の付け方が甘かったんじゃないんか?」
「文句言わないでよ。…奴ら、ギレム教団のとんでもない統率力の高さがなせる技よ…あ、ちょっと、猫が止まったわ」
猫が止まった…ということは、進行方向上に『障害がいる』ということだ。そして、猫の鋭敏な感覚の通り、出水達の死角からギレム教団の修道女三人が歩いてきた。出水達は枯れ木に隠れているため、その視界には映っていない。そして、その修道女達が歩き去っていくと、猫はまた歩み始めた。
「…ほんと便利ね。確かに欲しいわ」
「だな」
それから出水達は燃え残る草むらや焦げた枯れ木の合間を縫って、歩いて行った。途中何度か修道女と出会しそうになったが、猫のお陰でそれは全て回避できた。そして、ついに出水達は庭の外に通じる場所へ着いた。そこは、木々と外とこちらを分ける十メートルはある壁があった。
猫は出水達をチラッと見ると、ササっと壁の近くに生えた木に登って行った。
「うへー…登れってさ」
そう言うと、明日辺は木に手をかけ、なんとか、といった感じで木を登り始めた。
「早くしてくれ…後がつかえてる」
「わかってるわよ…」
そして、二人は木の太い幹に登り終わった。今猫と二人がいる木は、ちょうど壁の高さと同じくらいである。
つまり、ここから壁に飛び移れば簡単に脱出できるというわけだ。
猫と出水と明日辺は次々と壁に跳び移り、難なく壁の上に立つことができた。
「…猫がいなけりゃこんな奥の奥まで進めなかったな」
「そうね。よし、さっさと下に降りて帰りましょ…ちょっと待って…熱反応が…これは、あの部屋にいた…‼︎」
瞬間、出水達がいる城塞の壁の上に、燃えている巨大な鳥が舞い降りた。その鳥の足に掴まれているのは司祭である。
「…不死鳥か」
「あら、知っているのね。…まぁ現実世界じゃ不死鳥はポピュラーか…起きなさい、ほら」
「う…うぐっ…がはっ…」
そして、司祭は鳥の足の下でサッと目を開けた。
「…足を…退けなさい‼︎」
「あら、怖い怖い…」
そう言うと、不死鳥はやれやれといった風に跳び、そばに移った。キュバリエは立ち上がって自分の背中にある槍を構えると、こちらを向いた。
「出水露沙…そしてその一派ね。貴方達は確実に殺させてもらいます」
「…面倒だな。明日辺、戦えそうか?」
「なんとか…ってところよ。そういうアンタはどうなの?」
「100パーで倒せるわ」
「そう。じゃ、私も行くしかないじゃない」
動き出しは、出水が早かった。出水の手の鉄パイプがキュバリエに飛ぶ。が、キュバリエはそれをスウェーバックで避け、返しに鋭い突きを見舞った。出水はそれに難なく対応した…が、避けた時、思わず足を滑らせ、そこに置かれるように放たれていた不死鳥の火球が出水にヒット、そしてその隙を突かれ、出水は自らの脳をキュバリエの槍で貫かれた。
が、出水はこの一連の流れを見ていたため、出水の『One more time』が発動し、時間が巻き戻った。そしてその結果、出水は前に出るようなことはせず、相手の出方を伺うように一歩下がった。
この勝負において、厄介なのは不死鳥だ。キュバリエ一人なら問題なく倒せるが、キュバリエと合わせるように放たれるコンビネーションが厄介にも程がある。
出水はどう出るか、次の手をどうするか考えながら相手の様子を伺った。
一方の不死鳥、ルインは、出水と明日辺を難なく倒せるだけの実力はある。では何故キュバリエを前衛に立たせているのか?それは、自身の力の加減が難しいからである。前に捕まえたサーヴァロの実力はルインと拮抗しており、全力を出してようやく捕獲ができた。だが、今ここで本気を出してしまえば、物語を進める重要なピースの一つである『キュバリエ』と、生け捕りしか許されない『出水』と『明日辺』を黒焦げの燃えカスにしてしまう。
…キュバリエを連れてきたのは失敗だったかしら。いや、あの修道女の中で一番強いのはキュバリエ。ここはピースを失うリスクを背負ってでもキュバリエに任せるべきだわ。
ルインはそのように結論づけた。
0
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
百合ランジェリーカフェにようこそ!
楠富 つかさ
青春
主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?
ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!!
※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。
表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。
クラス転移したけど、皆さん勘違いしてません?
青いウーパーと山椒魚
ファンタジー
加藤あいは高校2年生。
最近ネット小説にハマりまくっているごく普通の高校生である。
普通に過ごしていたら異世界転移に巻き込まれた?
しかも弱いからと森に捨てられた。
いやちょっとまてよ?
皆さん勘違いしてません?
これはあいの不思議な日常を書いた物語である。
本編完結しました!
相変わらず話ごちゃごちゃしていると思いますが、楽しんでいただけると嬉しいです!
1話は1000字くらいなのでササッと読めるはず…
アガルタ・クライシス ―接点―
来栖とむ
SF
神話や物語で語られる異世界は、空想上の世界ではなかった。
九州で発見され盗難された古代の石板には、異世界につながる何かが記されていた。
同時に発見された古い指輪に偶然触れた瞬間、平凡な高校生・結衣は不思議な力に目覚める。
不審な動きをする他国の艦船と怪しい組織。そんな中、異世界からの来訪者が現れる。政府の秘密組織も行動を開始する。
古代から権力者たちによって秘密にされてきた異世界との関係。地球とアガルタ、二つの世界を巻き込む陰謀の渦中で、古代の謎が解き明かされていく。
JKメイドはご主人様のオモチャ 命令ひとつで脱がされて、触られて、好きにされて――
のぞみ
恋愛
「今日から、お前は俺のメイドだ。ベッドの上でもな」
高校二年生の蒼井ひなたは、借金に追われた家族の代わりに、ある大富豪の家で住み込みメイドとして働くことに。
そこは、まるでおとぎ話に出てきそうな大きな洋館。
でも、そこで待っていたのは、同じ高校に通うちょっと有名な男の子――完璧だけど性格が超ドSな御曹司、天城 蓮だった。
昼間は生徒会長、夜は…ご主人様?
しかも、彼の命令はちょっと普通じゃない。
「掃除だけじゃダメだろ? ご主人様の癒しも、メイドの大事な仕事だろ?」
手を握られるたび、耳元で囁かれるたび、心臓がバクバクする。
なのに、ひなたの体はどんどん反応してしまって…。
怒ったり照れたりしながらも、次第に蓮に惹かれていくひなた。
だけど、彼にはまだ知られていない秘密があって――
「…ほんとは、ずっと前から、私…」
ただのメイドなんかじゃ終わりたくない。
恋と欲望が交差する、ちょっぴり危険な主従ラブストーリー。
わたしの下着 母の私をBBA~と呼ぶことのある息子がまさか...
MisakiNonagase
青春
39才の母・真知子は息子が私の下着を持ち出していることに気づいた。
ネットで同様の事象がないか調べると、案外多いようだ。
さて、真知子は息子を問い詰める? それとも気づかないふりを続けてあげるか?
そのほかに外伝も綴りました。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる