転生の果てに

北丘 淳士

文字の大きさ
36 / 39
リネール

三分

しおりを挟む
 エルドビスは四人を引き連れて転移した。ちょうど王の前の剣と盾が動いている時だった。
 眠りに入った王の前に剣が立ち、その前を盾が防御の構えを見せる。
「バッチリだ!」
 謁見の間は意外と狭い。予定通り、リネール以外の四人は耳を押さえた。リネールが駆け、超音速の突きを盾に放つ。防御に最大の攻撃を当てる作戦だった。
 だが、リネールの拳が盾に触れた瞬間、リネールの姿が突如として消えた。
「リネール!!」
 初っ端から攻撃の切り札を失ってしまった。
「あの盾に触れてはダメだ!」
 オルスタが指示を飛ばす。
 ランドナが問う。
「どうする!?」
「あの盾を掻い潜って触れることは出来ないか!?」
 大柄な盾の動きは遅い。ランドナとエルドビスが走り、盾の向きを攪乱させる。盾の背後では剣を持った女性が突きの構えを見せている。エルドビスが盾に向かいフェイントを入れた時、反対側からランドナが盾の足元を狙う。
 その動きに合わせ、剣が突きを繰り出した。ランドナが盾の足に触れた瞬間、彼の背後に盾の幻影が浮かび上がった。だが幻影が浮かび上がるや、剣の突きはランドナを貫いた。的確に心臓を狙った一撃だった。ランドナは貫かれ、浮かび上がった幻影も消える。

 リネールは遥か上空三〇〇〇メートルに飛ばされていた。体の硬直がまだ元に戻らない。そのまま時速二〇〇キロで落下していく。
 何で私はこんなところに!
 着地まで一分弱。そこから三十秒で硬直が戻るが、どこに向かえば良いのかも分からない。
 明らかに作戦ミスだ……!
 落下していくリネールの目に飛び込んできた物があった。遠くに石が積まれたピラミッドと、顔が人、体がライオンのスフィンクスだった。
 なぜこの世界にピラミッドが!!
 落ちていく時間のもどかしさも意識の外に飛び出していた。
 何故だ! この世界は異世界ではなかったのか!?

「駄目だ、被害が甚大だ!」
 オルスタは止むを得ず、手を叩いた。

 時間は突入前に戻っていた。
 四人はエルドビスに触れた。
「時間だ、行こう!」
 再び王の前に五人は現れた。オルスタは指示を飛ばす。
「リネール! 金色の盾であの盾を壊してくれ!」
 リネールは駆けた。そして盾を構える大柄な男の前で金色の盾を展開する。分厚い金属の盾が砕け散った。
「そのまま、盾を攻撃だ!」
 リネールは超音速の拳を大柄の男に見舞おうとした。破裂音に備え、他の三人は耳を塞ぎ、アメルダだけはリネールの硬直を解くために彼に向かって駆ける。盾はリネールの一撃を食らい、胸に風穴が空いた。
 よしっ!
 牙城の一角を崩せた。剣の女性がその剣でリネールを突く。リネールは全身を金属と化し、その突きに耐えようとした。だが剣はリネールの身体を易々と貫通し、心臓を貫いた。剣は刺さったままだ。
 このままでは、アメルダに直してもらっても動けない!
 それを見ていたオルスタは次の指示を出す。
「エルドビス、ランドナ! 剣の身体に触れるんだ!」
 リネールの背後から二人が飛び出し、剣の身体を狙う。だが剣は三股に分かれ、左右から狙う二人を貫いた。
「くそっ! 今回もダメか!」
 オルスタは再び手を叩いた。

 時間は突入前に戻っていた。
 四人はエルドビスに触れた。
「時間だ、行こう!」
「待ってくれ!」
 オルスタはエルドビスを止めた。転移の準備を始めていた彼は問う。
「……何かあったのか?」
「剣が手強い! ちょっと考えさせてくれ」
「別の日にするか?」
「いや、少しずつ流れがこちらに来ている。やってみよう!」
「剣が私に刺さるように指示してくれる?」
 アメルダは、そう申し出た。
「大丈夫なのか? エルドビスの方がまだ可能性はあるが……」
「剣を使えないようにすれば良いんでしょう?」
「ああ、それが一番の策だ。だがどうやって!」
「私、ここ最近の訓練で自分の本当の能力というものが分かってきた気がするの。だから大丈夫!」
「……分かった、それでいこう」
「ラーサニア、気をつけて」
「うん、大丈夫」
 再び王の前に五人は現れた。オルスタは指示を飛ばす。
「リネール! 金色の盾であの盾を壊してくれ!」
 リネールは駆けた。そして盾を構える大柄な男の前で金色の盾を展開する。分厚い金属の盾が砕け散った。
「そのまま、盾を攻撃だ!」
 リネールは超音速の拳を大柄の男に見舞おうとした。破裂音に備え、他の三人は耳を塞ぎ、アメルダだけはリネールの硬直を解くために彼に向かって駆ける。盾はリネールの一撃を食らい、胸に風穴が空いた。
 牙城の一角を崩す。剣の女性がその剣でリネールを貫こうとしていた。
「こっちよ!!」
 リネールの後ろから飛び出したアメルダは、剣の矛先を誘導した。剣はアメルダを狙う。伸びた剣はアメルダの心臓を貫いたかと思われた。だがアメルダは咄嗟に上半身を捻り、肩にその刃を受けた。痛みに耐えながらもアメルダはその刃を掴む。
 そしていつもとは逆のイメージをした。触れたものの時を加速させる。見る見るうちに錆びつき、剣が朽ちていった。
「エルドビス、今だ!」
 リネールの背後で待機していたエルドビスは駆けて、剣に触れた。そして剣と共に転移する。
 アメルダは刺さっていた錆びた剣を抜き取り、自分の傷を回復していく。その痛みに気を失いそうになるも耐えた。
 オルスタは呟く。
「漸く王とご対面だ」
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

つまらなかった乙女ゲームに転生しちゃったので、サクッと終わらすことにしました

蒼羽咲
ファンタジー
つまらなかった乙女ゲームに転生⁈ 絵に惚れ込み、一目惚れキャラのためにハードまで買ったが内容が超つまらなかった残念な乙女ゲームに転生してしまった。 絵は超好みだ。内容はご都合主義の聖女なお花畑主人公。攻略イケメンも顔は良いがちょろい対象ばかり。てこたぁ逆にめちゃくちゃ住み心地のいい場所になるのでは⁈と気づき、テンションが一気に上がる!! 聖女など面倒な事はする気はない!サクッと攻略終わらせてぐーたら生活をGETするぞ! ご都合主義ならチョロい!と、野望を胸に動き出す!! +++++ ・重複投稿・土曜配信 (たま~に水曜…不定期更新)

コンバット

サクラ近衛将監
ファンタジー
 藤堂 忍は、10歳の頃に難病に指定されているALS(amyotrophic lateral sclerosis:筋萎縮性側索硬化症)を発症した。  ALSは発症してから平均3年半で死に至るが、遅いケースでは10年以上にわたり闘病する場合もある。  忍は、不屈の闘志で最後まで運命に抗った。  担当医師の見立てでは、精々5年以内という余命期間を大幅に延長し、12年間の壮絶な闘病生活の果てについに力尽きて亡くなった。  その陰で家族の献身的な助力があったことは間違いないが、何よりも忍自身の生きようとする意志の力が大いに働いていたのである。  その超人的な精神の強靭さゆえに忍の生き様は、天上界の神々の心も揺り動かしていた。  かくして天上界でも類稀な神々の総意に依り、忍の魂は異なる世界への転生という形で蘇ることが許されたのである。  この物語は、地球世界に生を受けながらも、その生を満喫できないまま死に至った一人の若い女性の魂が、神々の助力により異世界で新たな生を受け、神々の加護を受けつつ新たな人生を歩む姿を描いたものである。  しかしながら、神々の意向とは裏腹に、転生した魂は、新たな闘いの場に身を投じることになった。  この物語は「カクヨム様」にも同時投稿します。  一応不定期なのですが、土曜の午後8時に投稿するよう努力いたします。

神は激怒した

まる
ファンタジー
おのれえええぇえぇぇぇ……人間どもめぇ。 めっちゃ面倒な事ばっかりして余計な仕事を増やしてくる人間に神様がキレました。 ふわっとした設定ですのでご了承下さいm(_ _)m 世界の設定やら背景はふわふわですので、ん?と思う部分が出てくるかもしれませんがいい感じに個人で補完していただけると幸いです。

男爵家の厄介者は賢者と呼ばれる

暇野無学
ファンタジー
魔法もスキルも授からなかったが、他人の魔法は俺のもの。な~んちゃって。 授けの儀で授かったのは魔法やスキルじゃなかった。神父様には読めなかったが、俺には馴染みの文字だが魔法とは違う。転移した世界は優しくない世界、殺される前に授かったものを利用して逃げ出す算段をする。魔法でないものを利用して魔法を使い熟し、やがては無敵の魔法使いになる。

ユーヤのお気楽異世界転移

暇野無学
ファンタジー
 死因は神様の当て逃げです!  地震による事故で死亡したのだが、原因は神社の扁額が当たっての即死。問題の神様は気まずさから俺を輪廻の輪から外し、異世界の神に俺をゆだねた。異世界への移住を渋る俺に、神様特典付きで異世界へ招待されたが・・・ この神様が超適当な健忘症タイプときた。

【完結】乙女ゲーム開始前に消える病弱モブ令嬢に転生しました

佐倉穂波
恋愛
 転生したルイシャは、自分が若くして死んでしまう乙女ゲームのモブ令嬢で事を知る。  確かに、まともに起き上がることすら困難なこの体は、いつ死んでもおかしくない状態だった。 (そんな……死にたくないっ!)  乙女ゲームの記憶が正しければ、あと数年で死んでしまうルイシャは、「生きる」ために努力することにした。 2023.9.3 投稿分の改稿終了。 2023.9.4 表紙を作ってみました。 2023.9.15 完結。 2023.9.23 後日談を投稿しました。

クラス転移したけど、皆さん勘違いしてません?

青いウーパーと山椒魚
ファンタジー
加藤あいは高校2年生。 最近ネット小説にハマりまくっているごく普通の高校生である。 普通に過ごしていたら異世界転移に巻き込まれた? しかも弱いからと森に捨てられた。 いやちょっとまてよ? 皆さん勘違いしてません? これはあいの不思議な日常を書いた物語である。 本編完結しました! 相変わらず話ごちゃごちゃしていると思いますが、楽しんでいただけると嬉しいです! 1話は1000字くらいなのでササッと読めるはず…

処理中です...