転生の果てに

北丘 淳士

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リネール

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 王はまだ眠っているかに見えた。だがゆっくりと目を開く。
「予測より早い!」
 剣を遠くに飛ばしたエルドビスが戻って来た。
 五人は王と対峙する。玉座からゆっくりと立ち上がった。
「攻撃の余裕を与えるな!」
 オルスタの声と共に、エルドビスとランドナが向かう。リネールも硬直が解け動き出した。
「私の住処を壊されては敵わんな」
 王は上に向けて手を広げた。すると立方体の空間に包まれた。その空間は灰色の中に白い液体が蠢いているようで、見ていると眩暈を起こす。
「リネール、攻撃だ!」
 指示を飛ばすオルスタに気づき、リネールが王に狙いを定める前に、王は動き出していた。
 両手を前に出し、黒い蕾のようなものが出ている。開き始めるそれはフラクタルのようで気味の悪さを感じた。
「統率者がいるようだな」
 その黒い花弁から黒いレーザーのように突起物が伸びるや、オルスタを貫いていた。金色の盾を作る反応が追い付かない。
「オルスタ!」リネールは瞬時に盾を作った。「ラーサニア、回復を!」
 アメルダはオルスタの元に駆け寄り、傷を回復させる。
 その様を王は目を見開いて呟く。
「何故この空間でも能力が使える……」
 空間の中で、エルドビスとランドナは攪乱の為、動き回っていた。
 エルドビスが叫ぶ。
「リネール、能力が使えない!」
 何度も試したのであろう。フラム能力者は空間の中で能力が使えなかった。
 恐らく、フラム限定で使えないのかもしれない。
 王からの攻撃を盾で防いでいたリネールは思惟する。
 この空間を破壊するしかない!
 オルスタの回復が終わり、アメルダは頷く。まだオルスタは起きなかった。
 リネールは咆哮と共に盾を巨大化させた。
「ぶっ壊してやる!!」
 限界まで巨大化した盾は空間に皹を入れ粉砕した。
「その盾、厄介だ!」
 王は黒い花弁を納め、両手から白く輝く光球を放った。その光球の勢いに押され、リネールは仰け反る。続けざまに光球を放った。そこにエルドビスが横に現れ、リネールごと転移した。
 転移先の彼我との距離は二〇メートル。いけると踏んだ。発火の勢いで王に駆ける。そして頭部に向けて超音速の突きを放つ。
 その拳はギリギリのところで躱された。
 なんだと!
「盾との戦いで見ている」
 硬直した体に手を当て、掌から刃が飛び出した。その刃はリネールを貫通する。
 王の鼓膜を破ることしか出来なかった。
 あの戦いを寝ながら見ていたのか? 剣と盾とは一体……?
 リネールの意識が薄れていく中で、すでに目が覚めていたオルスタは寝たまま、手を叩いた。

 時間はオルスタが目を覚ました時間に戻っていた。立方体の空間は破壊され、リネールが王に駆けようとしていた時だった。
「リネール、行くな!」
 なんとか声を捻り出したオルスタがリネールを留める。
「ループしている奴がいるな」
 両手を前に出し、今度は銀色の蕾が出現した。花開くその蕾は千々の花びらを振りまき、その花びらは刃となって、オルスタとアメルダを襲った。リネールは瞬時に盾を形成するも残った花びらがオルスタとアメルダに刺さり貫通する。花びらの直撃を受けた二人は喀血し力なく倒れる。
「俺たちの事を忘れてないかい?」
 ランドナを連れたエルドビスが王のすぐそばまで来ていた。ランドナが王と接触する。ランドナの背後に王の幻影が浮かび上がった。
「いけーっ、リネール!!」
 リネールはその幻影に向かって駆けた。そして超音速の突きを放つ。その拳は幻影を貫いた。幻影が吹き飛ぶと同時に王も吹き飛んだ。胸に大きな風穴が開き、王は倒れた。
 やった、王を倒した……。
 すぐにオルスタとアメルダの容体が気になった。硬直している間に、エルドビスが二人の下に駆ける。そしてリネールを見て親指を立てた。
 良かった……。
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