エッチなデイリークエストをクリアしないと死んでしまうってどういうことですか?

浅葱さらみ

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第二章

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 陽が上り二日目の朝、今日は部活の朝練で早くに家を出た妹とは別に一人で登校する。
 電車が学園の最寄り駅に近付くにつれて聖アフの制服が増えていく。
 あの生徒たち、なんかコソコソ僕の方を見て話している様な?
 あれれ? 隣の車両に移っていっちゃったよ。
 もしかして、何とはなしに聖アフの制服が目につくとガン見していたからか?

「ヤバいヤバい、これじゃ痴漢と間違われてもしょうがないか」

 心の中でそう呟きつつ、視線を反対側に向けるとまたもや聖アフの制服が目に飛び込んできた。

「あれは……」

 扉付近に佇む長い黒髪の生徒、その背中にピッタリと張り付いている中年サラリーマン。
 都心とは反対方向の列車でそれほど混み合っては居なかったけれど、逆に出入りの激しい扉付近は人が多くて僕の座っている位置からは良く見えない。
 何となく、不穏な空気を感じた僕は席を立ち扉付近へと近づくことにした。

「あっ! 君は」

 突然声を上げた僕に対して、周囲がビクッと反応する。
 女生徒に張り付いていたオッサンも顔を強張らせながら、その場から離れようと一歩後ろに引き下がった。

「ちょっと、オッサン!」

 僕がオッサンに手を伸ばそうとしたところで、脇から袖口を掴まれる。

「え?」

 振り返ると、僕の袖を掴んできた女生徒が涙目になりながらフルフルと首を横に振っていた。

「君は確か、玖瑠美の友達だよね? えっと名前は……」

 彼女は応える代わりに、生徒手帳を取り出して開いて見せてくる。

「1ーD・二階堂汐里にかいどうしおりちゃん……?」

 センター分けの和風美人は僕から視線をそらしつつコクコクと頷く。
 あれか、咲良なんか比べられないくらいのガチの恥ずかしがり屋なんだろか?
 いつの間にやら痴漢のオッサンは姿を消し、その後も彼女との会話の糸口を探そうとするも、元来コミュ障の僕ではどうしようもなく、ついには言葉が見つからなくなる。
 駅に着くと、彼女はコクっとお辞儀をしてトイレに入っていってしまった。

「一緒に歩くのも恥ずかしいのかな?」

 しばし唖然としつつも、どうせ彼女は対象じゃないしと気持ちを切り替えて、僕は一人学園への道を急ぐのだった。


 学園に到着し、美波先生とクラスへ向かう。

「今日から朝のホームルームは猪狩くんがやってね」
「は、はぁ」

 なんか信頼しているから任せてくれているというより、楽したいから押し付けられた感が……。
 まぁ、今日は大した連絡事項も無いし僕がやっても問題ないだろう。
 と、滞りなく朝の会は進んでいったのだけど。

「それではホームルームを終わりたいと思います」
「猪狩先生ちょっと!」
「何ですか一条院さん?」
「キス写真。昨日の約束忘れたわけじゃないですよね?」
「「「ヒューヒュー!」」」

 腕を組んで不敵な笑みを見せる一条院と囃し立てるクラスメイト。
 僕はやれやれと首を振りつつ、ポケットからスマホを取り出した。

「どうぞ一条院さん、確かめたら?」

 彼女に前へ出てくるように促し、僕は変更した待ち受け画面を差し出した。

「うわっ……マジでキスしてるし」

 クールな彼女が口元を僅かに歪めて画面に見入っている。
 ふっ……、こっちの捏造技術なめんなよっ?
 元になった咲良の画像に合わせるために、僕は何度も白壁の前で写真を取り直したんだぞ!
 まったく宇津井の奴、簡単にできるとか言っときながら、何度もリテイク喰らわしやがって!
 まぁ、その分この山下公園からみなとみらいをバックにした超絶クオリティのキス写真が完成したのだけどな。
 もちろん、Exif情報もちゃんと書き換え済みなのだ!

「えっ! 見せて見せて!」「わたしもっ!」「うわっ! えっぐぅ?!」

 生徒たちがこぞって写真を見ようと教卓に集まってくる。
 つか、美波先生まで食い入るように見ているじゃないか!

「ねぇねぇ、見えないよう! エアドロで頂戴よ?」「ムリムリこれアンドロイドだから」「うわっダサ」「メールすれば?」「メアド知られちゃうじゃんキモッ!」「私がメッセで一旦受け取るよ」

 何だか聞き捨てならない発言がチラホラとあったが、どうやら一条院がキス写真を受け取ってから、みんなに配るようだ……って?!

「おいおい! 勝手に拡散するなよ!」
「別にキスくらいで騒ぐことないじゃないですか先生……それより」
「なんだよ?」

 一条院は僕のネクタイを掴んでググっと顔を寄せてきた。

「負けを受け入れますんで、どうぞ、私の身体……好きにして良いですよ?」
「キャー!」「神楽やめなよー!」「そんなダメーッ!!」

 またも動物園化する2-Cのホームルーム。
 クッソ、こんな小娘にドキドキさせられて言葉に詰まっちゃったよ。
 はやく、なんか言い返さないと淫行教育実習生のレッテルを貼られてしまうかもしんないぞ?!

「そ、そんな淫行まがいなんか出来るわけないじゃないかっ!」

 いやまぁ、結局は淫行が目的だけど、表立ってヤルわけにはいかないからね……。
 しかし、一条院の返答は僕の予想の斜めを行くものだった。

「はぁ? 好きにしていいとは言ったけど、別にエッチしてくださいとは言ってないですよ猪狩先生ぇ~?」
「はい?」
「ギャハハハッ! 神楽ちゃんに騙されてやんの!」「超うける――!!」「別にエロいことじゃなくても良いんだもんねぇ?」

 そっか、身体を好きにと言っても何か運動させたりとか物を運ばせたりとかお手伝いとかでも良いのか!
 もし訴えられたら負けるような行為をすれば、相手が同意していたとしてもやるのは良くないという理屈か?

「はいはい分かった降参だよ。これで良いかな一条院さん?」

 一条院は目を細めて僕をあざ笑うかのような微笑みを見せると、クルっと踵を返して席に戻っていった。

「こんどこそホームルームを終わりますっ!」

 誰も聞いちゃいねぇ……。
 ガヤガヤと騒がしい教室を後にして、僕は職員室に戻ることにした。
 ってか、美波先生すでに消えてるし!

「さて、さっさとこんなところとはおさらばしよう!」

 と、廊下に出て2-Cの黒板側の扉を閉めようとしたところで、僕はちょっとしたことに気が付いた。
 スマホ片手にワーキャーしている女子共の中でひとり、短髪モデル系のクール女子――氷室伊紫苑だけが我関せずといった風に頬杖をついていたのだ。
 何なんだろう? なんか気になるんだよな~。
 なんか思ったよりガキっぽい連中の中で一人だけ大人びて見えて、二十歳過ぎてると言われても納得しちゃう落ち着きがある。
 でも、どこか物憂げな表情は何とかしてあげたくなっちゃうような庇護欲を掻き立てられずにいられないものがあるのだ。

「まぁ、そのうちなんとか……」

 合意の上でワカラセてやりたい!
 と、昨日バカにされたことを思い出して下半身を熱くしながら僕は階段へと向かうのだった。
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