エッチなデイリークエストをクリアしないと死んでしまうってどういうことですか?

浅葱さらみ

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第三章

17

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「何やってんだよ!」

 縛り上げられて、床に寝っ転がる一条院の方を見て僕は叫んだ。
 その前に後頭部を椅子で殴りつけてやった男は床に転がりうめき声をあげている。

「それは、こっちのセリフだよ! どうして、一緒に出てこなかったの?」
「まだ、決定的な状況じゃなかった。それに」
「それに?」

 透明になるかもしれないなんて言えるわけないじゃないか!
 あのまま透明人間を解除しないでレイプされたら、助けるのも難しかったかもしれない。
 一条院から引きはがした隙に、僕が奴を襲ったみたいに頭を殴られてたかもしれないし。

「ともかく、先生を呼んで来るから彼女のそばについててくれ」

 僕は手早く、そこらに転がっている結束バンドを使って犯人を縛り上げてから倉庫を飛び出した。
 廊下に出てすぐの階段を駆け下りていると、下から登ってきた学園長とばったり出くわした。

「どうしたんだね猪狩君?」
「あっ学園長! 実は用務員の男が生徒を襲って」
「それは大変だ! 急いで現場へ連れて行ってくれ」
「でも、他の先生にも伝えた方が!」
「その犯人はどうしたんだね?」
「簀巻きにして倉庫に襲われた生徒と彼女の友人とで残されてます」
「馬鹿もん! だったら、生徒を連絡によこせばよかったじゃないか! もし、犯人が逃げたらどうするつもりだね!」
「すみません、つい、友人が付いていた方が良いかと」
「ともかく急いで案内してくれたまえ」

 こうして、学園長を連れて引き返した後、デリケートな問題だからと人目の多い職員室ではなく学園長室へ。

 部屋は倉庫と一緒くらいの広さだったが、革製のゆったりしたソファやビクトリア朝風の高そうな机など、いたるところ豪華さに満ち溢れていた。

「後は私に任せてもらえるかな? 授業に出られる気分でなかったら早退したらどうかね?」
「いえ、大丈夫です」
「僕も、はい」
「あと、分かっていると思うが……」
「一切口外は致しません。変に噂が立つと逆に紫苑が傷つくから」
「ありがとう」

 こんな問題ごとでも、やはり学園長ともなるとテキパキと処理していけるんだなぁと感心してしまう。
 学園長に一筆書いてもらった紙を手に、僕らは2-Cの教室へと戻る。
 ちょうど午後一の授業が2-Cなのだ。

「ねぇ、ちょっと聞きたいんだけど」
「何だよ?」
「どうして、あの場所が分かったの?」
「昨日の昼休みに偶然、あいつ、あの用務員を倉庫で見かけたんだ」
「ふーん」

 何だかとても疑ってる目で僕を見てきてるけど、どうしよう?
 これ以上喋ってもボロが出そうだし……。
 本当の事を話したって、信じてくれないだろ?
 いや、透明人間を間近で目撃したんだから……。
 でも、例え信じたところで余計混乱するような?

「ともかく! あまり氷室伊の事を話題にするのは良くないよ」
「そんなことは言われなくたって分かってるわ。そんなことよりまず、なんで猪狩先生は紫苑を探していたのかしら?」

 やっぱ、そう来たか。
 彼女が納得いく答えなんて言いようがないし、困ったなぁ~。
 しかし、時間が僕に味方してくれたようだ。

「ほらっ! もう、教室の前だから……」
「チッ」

 うわっ?! この女! 僕をガン見しながら舌打ちしてきたよ。
 しかし、教室の戸を潜った瞬間に一条院は普段通りの優等生顔に戻っていた。

「すみません美波先生。猪狩先生と一緒に学園長の手伝いをお願いされていて遅れました。これが学園長に書いて頂いた遅延証明書になります」
「そ、そうなんだ? じゃあ、席に座ってね」

 ビビり顔で応対する美波先生ェ。
 しかし、生徒たちは学級委員長が授業に遅れたのが気になるようで。

「なんで猪狩といっしょなの?」「もしかしてデキてる!」「いやいや、美波先生から略奪返ししたかったんじゃね?」

 まぁ、そんなざわめきも一条院のひとにらみで速攻霧散しちゃったんだけどね。
 そんな感じで後は何事もなく授業は進んでいったのだけど、それは終わりのチャイムがなるまでの間に過ぎなかった。

「猪狩先生、次の時間は予定入ってないですよね?」
「えっ、なんで知ってるの?」
「授業中に他クラスから時間割を聞き出しておいたので」

 それって、僕の授業中さぼってたという事なんじゃ?
 しかし、僕が何か言い返す前に彼女の言葉が先に口に出される。

「美波先生、ちょっと、猪狩先生をお借りしますね」
「は、はい! どうぞご自由に?」

 何で最後疑問形?! つうか、そんなことよりも!
 僕は一条院に腕を掴まれ強引に教室から引っ張り出されてしまった。
 あの胸が当たってますよお嬢さん!
 そのまま階段を上って、屋上に繋がる踊り場まで連れてこられてしまった。

「あの、ここ立ち入り禁止って書いてあったけど?」
「授業中いろいろ考えてたんですけど」

 あっ、僕の言葉は無視なのね。

「あの男が目の前で透明になったことに、全然驚いていませんでしたよね猪狩先生?」
「えっ?! 透明って何のこと?」
「そこしらばっくれます?」
「無理かぁ……」
「もしかして、あなたもあの男の仲間?!」

 一条院は顔を強張らせて、僕から距離を取った。
 どうしよう? もちろんなかまじゃないけれど、ライバルでもあり同じような目的を持った……やっぱ仲間なのか?

「いやいや、違う違う! 僕は連中を止めようとしてただけだから!」

 本当はレイプ現場を余さず撮影して、後から脅迫するつもりだったんだけど。
 だって、氷室伊に正体がバレない方が良いじゃんよ?

「キャー! 近寄らないでっ!!」
「わかったわかった! だから大声出すの止めてください!」

 あれ? 僕が素直に距離を取ったら、なんだかがっかりしたような顔をしてるぞ?

「もう、しょうがない」

 一条院はそう吐き捨てるように言ってから、僕の方へと近づいてきた。

「ひっ?! 今度はな……ふごっ?!」

 近づいてきた彼女は僕の目をしかと見つめながら、サッカーボールキックの要領で僕のタマタマに痛烈な一撃を加えて来たのだ!

「うっがっ……死ぬっ?!」

 僕が崩れ落ちるように床に丸まった直後、彼女は背後に回り込んできて僕の首筋に取り出したカッターナイフを突きつけてきた。

「死にたくなければ、正直に答えなさい?」
「ほんとに死んだらどうするつもりなんだよ?」
「うちの財閥を舐めないでくれるかしら? 死体の一つや二つ、どうとでも処理できるから」

 いや流石にそんな漫画みたいな展開なんてねぇ……しかし、ハッタリじゃなかったらどうしよう?!
 僕を抱え込むような形で背中におっぱいを当てながら、薄ら笑いする一条院さま。
 怖い怖い怖い!

「わかったから! 全部言うから!! 命だけはご勘弁を!!!」

 こうして女子高生に脅された僕がすべてゲロってしまったのは言うまでもない。
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