エッチなデイリークエストをクリアしないと死んでしまうってどういうことですか?

浅葱さらみ

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第四章

25

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 翌朝、ホームルームが終わった後。

「猪狩……先生」

 廊下に出たところで一条院に袖を引っ張られた。

「なにかようかな、一条院……さん」

 振り返ると、恥ずかしそうにしていた昨日とは違ってキリっとした眼差しで僕の目を見つめてきた。
 なんか、こっちが恥ずかしくなって目をそらしちゃったよ。

「昨日、私、独自に色々と探ってみたんですけど、これを見てください」

 一条院が示したスマホには黒い背景に古代ギリシャみたいな円柱と西洋風の仮面が並び、トリマルキオの饗宴と大きく書かれた文字の下に明後日土曜日の9時に開演と書かれたポスターだかフライヤーみたいな画像が映し出されていた。

「トリマルキオの饗宴きょうえん……って、なにこれ?」
「トリマルキオの饗宴とは、帝政ローマ時代の古典喜劇『サテュリコン』に出てくる退廃的なうたげの事です。この画像は一部の女子の間で流れているんですけど、どうやら学内で行う秘密のパーティーらしいんです。だけど、これだけじゃ何処で開催されるのかまったく分からない」
「学内って、夜にやるのは無理じゃないの?」
「そうなんですけど、昨日聞いた話では心配いらないって言われました」
「え? 主催者に会ったの?」
「いえ、参加者の一人から話を聞いて、今日、主催者に近い人に会わせてもらえることに。どう思います?」
「確かに何か怪しい感じがするけど、危なくないか?」
「だから、猪狩先生に隠れて見張って貰おうかと」

 一条院は真っ直ぐこちらを見つめたまま言ってきた。
 これは断ったら余計面倒なことになりそう……。

「分かったけど、こちらの都合もあるから……」
「じゃあ、よろしく」

 彼女はこちらの言う事など耳を貸さずに、とっとと教室へ引っ込んだ。
 ああ、こりゃ行かないと不味いなぁ。
 古代ローマの退廃的大宴会をモチーフにしているみたいだし、酒池肉林な乱交パーティーってことか?
 もし、一人で行動させたら、ライバルに食われちゃうかもしれないし。
 ムカつくところは有るけど、やっぱ可愛いくて、僕の事を思いながらオナニーしてるかもしれない子だもん!

 その後、僕は一時間目が終わったころ合いで一年A組を訪れた。
 ちょうど、教室から出て来た男子生徒に僕は声を掛ける。

「あの、今日って西都くんは来てる?」
「いえ、お休みですけど」
「田鍋と屋代も居ない?」
「はい」

 教室の中を覗き込んでも、確かに彼らの姿は見当たらない。
 やはり、西都はこのまま逃げ切るつもりなんだろう。
 となると、やはり残りのライバルたちを何とかする方にかじを取るべきか?
 それともポイントを稼ぐことに集中すべきなのか?
 どうしたもんかと悩みつつ、雑用や授業をこなし、4時間目は国語の授業をやりに2-Eに赴いた。

「それでは、この前の小テストを返し……ん?」

 いつものように授業を始めようとしたところで、袖を引っ張られる。
 横を見ると引っ張っていたのは歌乃ちゃんだった。

「雄介、放課後は文芸部に来るぉ?」
「たぶん、行くと思うけど」
「ウタハがくりゅから、遅刻すんなぉ?」

 ウタハって誰? と聞き返す暇もなく、歌乃ちゃんは自分の机に引き返していった。
 あまり部活に来ていなかった幽霊部員とかかな?
 などと、想像を膨らませつつ授業は滞りなく過ぎていく。

「早いけど、今日はこれで終わります」

 さてと、とりあえず怪しい食堂のイケメンでもストーカーしてライバルだという証拠を見つけるかなぁ。
 そんなことを考えつつ、食堂へ向おうとしたところで、今日三度目の袖引っ張り。

「あの、猪狩先生」
「ん? 芳川よしかわさん?」

 振り返ってみると、そこに居たのは普段と違ってどこか顔色も悪くて強張った表情をしている真尋ちゃん。

「あの、お時間ありますか?」
「大丈夫だけど、どうかしたの?」
「ご相談したいことがあるのですが……」

 人目のないところで話したいという真尋ちゃんについていくと、やがて中央棟にある空き教室に到着した。
 中に通されると、真尋ちゃんは廊下をキョロキョロ確認してからそっと戸を閉めた。

「ここなら、お昼休みに誰も来ませんから」
「それで、相談って何かな?」
「うっうぅぅ……」

 僕がたずねると、突然、顔を両手で覆って泣き出した真尋ちゃん。

「ど、どうしたの真尋ちゃん?」
「ううぅぅ……猪狩先生!」

 予想外の事態にキョドリつつも、なだめようと彼女に近付いた僕はいきなり抱き着かれた。
 柔らかな彼女の肉体から震えによる振動が伝わってくる。

「うぅうぇっ! ううぅ……ひっくっ!」

 しばらく頭を撫でてあげていると、段々と落ち着いてきた。

「泣いてばかりじゃ分からないよ真尋ちゃん。一体どうしたの?」
「昨日の放課後、蛭田に……うぅ……ひっくっ!」
「蛭田?」
「実習生の……」
「ああ……! あのチャラ男のこと? あいつに何かされたの?」
「レイプされました……」

 その言葉を聞いた瞬間、僕は脳天をハンマーでかち割られたかのような衝撃が貫いた。
 そして、チャラ男に対する怒りよりも、昨夜のバレー部の件に関わっている自分はほぼ同類なんじゃないかという想念が、彼女に対する罪悪感としてじわじわと僕の心を埋めていく。

「猪狩先生?」
「あっ! ごめん……ショックが大きすぎて」

 腫らした目で見上げてくる真尋ちゃんの顔を僕は直視できずに反らしてしまう。

「ごめんなさい。迷惑ですよね……うぅひっ! ひぅうぅ……」

 真尋ちゃんは僕から離れて、また顔を両手で覆ってメソメソと泣き出した。
 僕はたまらず彼女を抱き寄せる。

「そんなことない! でも……なんで僕に相談したの?」
「それは……猪狩先生のこと好きだから」
「え?」
「ごめんなさい。迷惑ですよね」
「そんなことない! 真尋ちゃんみたいに素敵な子に好きって言われて迷惑なんて絶対ない!」
「優しいんですね猪狩先生。先生になら私の初めてをあげても良かったのに」
「な、何を言い出すの?」

 顔を赤く染めて、恥ずかしそうに上目遣いで見つめてくる真尋ちゃん。
 何だか、妙な違和感を覚えるけど、アレかな? 僕のフェロモンで発情してしまったのだろうか?

「忘れさせて欲しいんです猪狩先生……だから」
「だから?」
「私を抱いてくれませんか?」
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