エッチなデイリークエストをクリアしないと死んでしまうってどういうことですか?

浅葱さらみ

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第七章

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 蜂須賀さんが護衛に付いて居ながら、何で歌乃ちゃんが捕らえられてるんだ?!
 予想外の展開に、僕の脳が追いつかない。

「さて、それじゃあ用済みの西都君にはご退場願おうか?」

 学園長がそう呟くと、未だペンキまみれの西都は風紀委員クラブの女生徒たちの手で部屋の外へと乱暴に投げ捨てられた。

「お待たせしたね猪狩君」
「何が目的なんだ?」
「君の女でここに来ているのは、有栖川君を除くと茨田君と牡丹山君だけか? 残りは美波先生と妹の玖瑠美君……まぁ、年増の美波先生は止しておこう」
「それが何だって言うんだよ!」

 いきなり僕のセックス相手を列挙して、情報通気取りか?
 しかし、蜂須賀さんは学園長の言わんとしていることが判ったようで。

「彼女たちを差し出せば、歌乃様を解放してくれますか?」
「何言ってんだよ蜂須賀さん! そんなこと出来る訳ないだろ?」
「いえ雄介殿、蜂須賀先輩の命令と有れば牡丹は従います」
「あんまヤリたくないけどねぇ~」
「そんな……」

 真顔で応える牡丹ちゃんと仕方ないとヘラヘラする鯨波。
 確かに彼女たちの性の常識は狂ってるけど、だからって……。

「ほほう! 有栖川家は教育が行き届いてるねぇ! その姿勢に免じて妹さんは免除してあげようか?」
「何言ってんだこの野郎!!」
「落ち着いてください雄介様」

 僕が一歩前に足を出した途端に、蜂須賀さんに後ろから羽交い絞めにされる。
 学園長はわざわざデスクからこちらに近づいてきて、ニタニタといやらしい笑顔を見せながら僕の顔を覗き込んできた。

「んーまだまだ子供だねぇ猪狩君。高々200ポイントじゃないか? 素直に従えば3位以内でフィニッシュ出来るかもしれないのに」
「はぁ? 何でそうなるんだ! ふざけたこと抜かしてんじゃねぇよ!!」
「雄介様落ち着いてください。学園長は協力関係を結ぼうと申し出ているのです」

 確かに西都が退場となった今、僕が3位以内に食い込む可能性は高くなったのかもしれない。
 けれども、だからと言って牡丹ちゃんと鯨波を寝取られるなんて選択肢は僕の中には存在しえない。
 このまま学園長の思惑通りにことが進むかに見えた……けれど。

「ううぅうみゅぅ~」
「あっ! 歌乃様!」
「歌乃ちゃん! 気が付いたんだね?!」

 それまで意識を失っていた歌乃ちゃんが、頭をブルブル振りながらジト目で僕らを見つめ返してきた。

「さっきからぁ聞いてたけどぉ~! 何で歌乃の下僕たちが勝手にしゃしゃってんだぉ?」
「おやおや、ご当主様はご機嫌ななめのようだ」
「うるさい徳大寺ぃ! 歌乃が人質になればそれでよい話なんじゃねぇの~?」
「ほほう、確かにその方が確実かもしれないね」
「いけません歌乃様!」
「下僕は黙ってろ蜂須賀ぁ~!」

 相変わらず気の抜けた怒号だけど、蜂須賀さんはシュンとしてしまった。
 まぁ、守るべき歌乃ちゃんを人質に取られた負い目があるからなのだろうけど。
 歌乃ちゃんは一喝した後、何を考えてるのか定かじゃないいつもの表情で学園長の方へと向き直った。

「その代わり、そっちも一人人質を差し出すんだぉ?」
「まるで戦国時代の人質外交だねぇ。よかろう、皆さん隣の部屋に来なさい」

 隣室に入ると、そこはラブホみたいな正にヤリ部屋。
 大きなキングサイズベッドとミニキッチンに、奥にはスケスケガラス張りのバスルームが見える。
 但し普通のラブホと違うのは、そこには十数名の女性が壁際に待機していたことだ。
 その内訳は10人の女生徒と養護教諭、購買の店員、食堂や清掃のおばちゃんたち……。
 風紀委員クラブも合わせると、ベッドを囲む三方の壁いっぱいに人垣が出来てるみたいな?

「さぁ、誰が良いんだい猪狩君? 好きな子をひとり選びたまえ」
「まだ僕は了承したわけじゃないぞ!」
「ゆうすけぇ~。それはダメだぉ」
「だって、歌乃ちゃん!」

――雄介、しっかりしろ! 学園長はお前のことなど眼中にない。奴は有栖川家から己を守ることを第一に考えているのだ。だから奴は、有栖川歌乃の安全を保障することが己の安全に繋がることを十分承知して事に及んでいるのだ。お前の女を寝取らせろなど、交渉の取っ掛かりに過ぎない。

「じゃあ、奴は歌乃ちゃんが折れることを予想して?」

――それは定かではないが、奴にとっては理想的な展開と言えるだろう。

 このまま僕が何もしない方が良いのかと諦めかけていたところで、久々にサクラが脳内に話しかけて来た。

――でもでも、ここで雄介くんが大逆転する手が有るのだぁ~!

「おい! 大変な時にふざけたこと抜かしてんじゃねぇよ!!」

――ふざけてなんかないもん! 私だって、あんなキモ親父とパコパコしたくないしぃ~!

「じゃあ、その手って何か教えろ」

――教えてくださいでしょ?

「はぁ?! なんで、お前にそんなっ!」

――相変わらず面白いなぁ雄介くん♡ まぁいいや、あのキモ親父に逆転する方法はぁ~。

「方法は?」

――この場で、芳川真尋ちゃんと公開セックスすることでぇ~す!

「はぁぁぁぁぁぁぁぁぁあああああああああっ?! おま、頭湧いてんの??」

 こんな周囲を何十人もの女の子たちに囲まれた中でセックスしろっていうのか?
 AV撮影だって、周りにこんなに人は居ないぞ!

「さぁ、どうするんだね猪狩君?」
「わかった、真尋ちゃんをこちらに」
「猪狩先生?!」

 目を丸くして驚いている真尋ちゃんを僕は見つめ返す。
 安心して、絶対に君の洗脳を解いて見せる。 

「ん? 良いのかね、彼女は人質としては」
「承知してるよ。でも……」
「でも、なんだね?」
「彼女なら、いくらセックスしても構わないだろ?」
「ほほほっ! 確かにそうだね! そんなに彼女の具合が気に入ったのかね猪狩君?」

 僕は奴の質問に言葉じゃなくて微笑みで返す。
 やっと僕はサクラの考える打開策、その真の意味を理解した。
 見せてやるよ! 僕の実力をみんなに!
 そうすればきっと、学園長は破滅するだろう。

「わかった猪狩君。真尋君を連れて行きなさい」

 学園長の指示で真尋ちゃんの持っていたナイフが氷室伊に渡され、彼女は僕の方へ恐る恐る近づいてきた。

「ああ、それと……」
「なんだね?」
「僕、真尋ちゃんとセックスしたくてたまらないんだ! 今、ここでしても良いだろ?」
「見られながらするのが趣味なのかね猪狩君?」
「さぁね」
「まぁ、良かろう……但し」
「なに?」
「今日は私もまだ真尋君とセックスしていなかったんだ。先に私がヤッてからにしてくれるかね?」
「なっ……?!」

――雄介くん! ここは堪えて! そうすれば彼女を助けられるんだから!

「わかった……」
「猪狩先生……なんで?!」

 あと少しで僕の元へたどり着いたはずの真尋ちゃんを後ろから抱きかかえた学園長。
 彼女の顔が絶望に染められていくのが僕にも判るほどだった。
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