同世界連続転生EX〜自分を殺した相手の能力を得て最凶の魔王になろう!!

小林一咲

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第2話 死んでいくもの

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 死んだ。

 ――いや、また死んだ。

 喉元を裂かれ、肺が潰れ、骨が折れ、内臓が焼かれた。
 そのたびに視界は暗転し、次に目を開けると、決まってあの森の一軒家のベッドの上だ。

「……はぁ」

 何度目かのため息をつきながら、天井を見上げる。
 もう、“死ぬこと”そのものには慣れてきてしまった。

 最初に殺してきたのは、コボルトだった。

 森を徘徊する犬頭の亜人。素早く、集団で狩りをする厄介な相手だ。
 一対一なら勝てる――そう思った慢心が、死因だった。

 背後から噛みつかれ、動脈を断ち切られる。

 ――暗転。

【ステータス更新】

《継承倍率》
 コボルト系:1.0倍

《新規スキル》
 ・《嗅覚強化Lv1》
 ・《俊敏性補正Lv1》
 ・《群れ連携感覚Lv1》

「……次」

 次はオーク。

 筋骨隆々の豚頭。
 一撃が重く、正面からの殴り合いでは勝てない。

 罠を張り、奇襲を仕掛け――
 それでも最後は、力負けした。

 頭を掴まれ、地面に叩きつけられ、
 首の骨が折れる感覚と共に、また闇。

【ステータス更新】

《継承倍率》
 オーク系:1.0倍

《新規スキル》
 ・《怪力Lv1》
 ・《肉体耐久Lv1》
 ・《恐怖耐性Lv1》

「……次は」

 さらに奥へ。
 さらに強敵へ。

 オーガ。

 二メートルを超える巨体。
 棍棒一振りで木が折れる。

 三回、殺された。

 一回目は、正面から挑んで粉砕。
 二回目は、距離を取ったつもりが投擲で即死。
 三回目は、勝ったと思った瞬間のカウンター。

 それでも、四回目。

《継承倍率》
 オーガ系:1.3倍

《怪力Lv3》《骨格強化Lv2》《耐久皮膚Lv2》

 ――ようやく、倒した。

「……強く、なってる」

 確実に。
 だが同時に、俺は理解していた。

 まだ全然、足りない。

 ◆◆◆

 そして――転生して初めて、“夜”を迎えた。

 生きたまま、日が沈む。
 それだけで、胸の奥に奇妙な達成感が込み上げる。

「……夜か」

 森の一軒家に戻り、ランプに火を灯す。
 今日は、久しぶりに“食事”をする気になった。

 解体したオークの肉。
 脂が多く、臭みもあるが――工夫次第だ。

 塩代わりに、森で採れた岩塩。
 香草を刻み、焚き火でじっくり焼く。

「……うまい」

 正直、驚いた。
 噛むほどに肉汁が溢れ、野性味のある旨味が広がる。

「異世界、悪くないじゃん……」

 そう思ってしまった瞬間だった。

 ――ぬちゃ。

 音。

 窓の方から。

「……?」

 視線を向けた瞬間、
 半透明の影が、ランプの光を歪めた。

「スライム……?」

 だが、違う。

 色が濃い。
 形が不安定。
 内部で、赤い光が脈打っている。

 特殊個体。

 気づいたときには、遅かった。

 背後から、冷たい感触が首を覆う。

「――っ!?」

 締め付け。
 呼吸が、止まる。

 だが――

「あ……?」

 痛く、ない。

 圧迫感はある。
 骨が軋む感覚もある。

 それなのに――痛覚が、存在しない。

「……これ、は」

 理解した瞬間、
 スライムが一気に収縮し、首を切断した。

 ――暗転。

 ◆◆◆

 目を覚ます。

 また、森の一軒家。

 だが今回は、思わず笑ってしまった。

【ステータス更新】

《新規スキル》
 ・《痛覚無効》

「……最高じゃん」

 痛みがない。
 恐怖が、半減する。

「これ、死にやすくなるぞ……!」

 デウス・マルスの声が、脳裏で嗤った気がした。

 ――いいねぇ。
 ――どんどん壊れてきた。

 俺は、ベッドに仰向けになり、天井を見つめる。

「次は……」

 もっと強い相手に。
 もっと、派手に殺されよう。

 そう考えている自分を、
 もう、止めようとは思わなかった。

 次に俺を殺すのは、
“痛みすら感じさせない敵”か、
 それとも――俺自身か。


◇◆◇◆

朝だった。

森の空気はひんやりしていて、肺に入るたび頭が冴える。
転生してから、朝を迎えられる回数が増えてきたことに、俺は密かな手応えを感じていた。

「……今日は、生き残る」

自分に言い聞かせるように呟き、家の外へ出る。

――直後。

「ブォォォッ!!」

茂みを突き破り、オークが飛び出してきた。
昨日解体した個体と同種。だが、明らかに筋肉量が違う。

「朝イチからかよ……!」

だが、もう逃げ腰にはならない。

「来い!」

オークの拳が唸りを上げて振り下ろされる。
俺は半歩横へ。紙一重。

《ゴブリンの集団戦闘Lv2》が、相手の重心と次の動きを予測する。

「――今だ!」

オーガ系スキルで底上げされた怪力を、拳に乗せる。

「はぁっ!」

鈍い衝撃。
オークの肋骨が砕ける感触が、痛覚無効のおかげで“情報”としてだけ伝わる。

「ギ、ブォ……!」

倒れたところに、もう一撃。

【オークを討伐しました】
【オーク系スキルの熟練度が上昇しました】
【継承倍率:オーク系 1.1 → 1.2】

「……よし」

息を整え、ステータスを確認する。

【ステータス更新】

《基礎能力値》
腕力:10
器用:8
頑丈:3
俊敏:5
魔力:1
知力:2
運:11

《継承倍率》
スライム系:1.1倍
ゴブリン系:1.3倍
コボルト系:1.1倍
オーク系:1.2倍
オーガ系:1.3倍

《主要スキル》
・《怪力Lv2》(オーク系1.2倍反映)
・《肉体耐久Lv2》
・《骨格強化Lv2》
・《痛覚無効》

「……数値は動かないけど、安定感が違うな」

朝からオークを仕留められる。
最初の頃を思えば、雲泥の差だ。

◆◆◆

午前中は、森を散策することにした。

「この森、資源は多いんだよな」

昨日覚えた薬草知識――正確には、ゴブリンとコボルトの雑多な能力を頼りに、葉の形や匂いを確認する。

「これは……止血用。こっちは、食える」

赤い実。
甘酸っぱく、エネルギー補給に良さそうだ。

「異世界サバイバル、順調すぎて怖いな……」

そんなことを考えながら歩いていると、
木々が途切れ、開けた場所に出た。

そこに――

「……石像?」

苔むした、古びた石像が立っていた。
剣を掲げる騎士の姿。
かつては、相当立派だったのだろう。

だが今は、腕にヒビ、台座は傾き、今にも崩れそうだ。

「修復スキルとかあったら、直してやれたのにな」

思わず苦笑する。

「《石像修復Lv1》とか……いや、いらねぇか」

一人ツッコミしながら、石像の周囲を見る。
雑草が生い茂り、せっかくの威厳が台無しだ。

「せめて、これくらいは」

短剣で雑草を刈り、周囲を整える。
見違えるほど、すっきりした。

「……うん。ちょっとは報われた顔になったな」

そのとき。

――かすかに。

「……おい、急げ」

人の声。

「……人?」

心臓が跳ねる。

異世界に来て、初めて聞く、人語。
ゴブリンやオークの唸り声とは、明らかに違う。

「人間……?」

好奇心が、恐怖を上回った。

「話ができる相手、か……」

慎重に、音のする方向へ近づく。

――次の瞬間。

ヒュッ

乾いた音。

視界が、ぐるりと回転した。

「……え?」

衝撃は、なかった。
ただ、世界が傾く。

【致命傷:頭部貫通】

理解したときには、意識が落ちていた。

◆◆◆

目を覚ます。

また、森の一軒家。

「……ああ、そうだよな」

苦笑が漏れる。

【ステータス更新】

《新規スキル》
・《射的Lv1》
・《弓術Lv1》
・《隠密Lv1》

「……なるほど」

つまり、弓で狙撃されたわけだ。

「人間、怖すぎだろ……」

だが、愚痴っても仕方ない。

「今度は、慎重に行く」

◆◆◆

再び、石像の近く。

今度は、物陰に身を潜める。

《隠密Lv1》。
完璧ではないが、**足音と気配を殺す感覚**が分かる。

少しずつ、少しずつ。

――見えた。

盗賊らしき男が五人。
粗末な革鎧、弓、短剣。

そして――

「……エルフ?」

一人、長耳の男が混じっている。
だが、表情は冷酷で、盗賊達の中心に立っていた。

さらに。

檻。

中には――エルフの少女が三人。

怯えた目。
汚れた服。
明らかに、囚われている。

「……そういうことか」

俺は、無意識に拳を握り締めていた。

人と出会えた。
だがそれは、優しさの象徴じゃなかった。

「この世界……」

思っていたより、ずっと分かりやすく、
ずっと、クソだ。

「……さて」

盗賊五人。
弓を使う奴もいる。

正面からは、無理。

「どう殺されるか……いや」

俺は、静かに息を吐いた。

「どう“殺すか”を考える段階に、来たみたいだな」

その瞬間、
俺の中で何かが、はっきりと変わった。

次に死ぬとしたら、
それは――
“誰かを守ろうとした結果”か、
“完全な失敗”のどちらかだ。

どちらにせよ、
この出会いは、俺をさらに深く――
この世界に、縛りつける。
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