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第1章 オームの大災害
第19話 悲劇の始まり
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「ぼ、僕が本当に……?」
騎士学校入学試験から半月後、僕の元に騎士団長のアランさんがやってきた。
「インヒター王国騎士団学校入学試験のバルト・クラストを合格とし、騎士学校への入学並びに騎士団への入団を認める」
彼は懐から書状を取り出し仰々しく読み上げると、にっこりと微笑んで一言「おめでとう」と声をかける。その言葉を聞いてもなお僕はまだ信じられず、団長を見つめることしかできない。
「バルトおめでとう」
「おめでとう」
母さんと兄さんから抱きしめられ、ようやく“受かったんだ”と認識することができた。
正気に戻った僕はお礼を言い、アランさんに気になっていたことを尋ねる。
「どうして団長さんが直々に?」
「それはな、お前さんが逃げないようにだよ。近頃では試験に合格しても入学当日に来ない奴がいる。こちらとしてはなんとしてもバルトに入団してもらいたいからな」
アラン団長の顔が怖い。
聞いたと頃によると入学試験における僕の評価はかなり高かったらしく、騎士団の上層部は「団長が直々に赴けば断ることも、逃げ出すこともしないだろう」と考えたようだ。
理由はどうあれ、団長が来たことで僕のモチベーションは爆上がりだ。これからの厳しい騎士学校での生活もなんとか乗り越えられそうな気がしている。
「入団式は1週間後だ。それまでに荷物をまとめるように」
「はい!」
その晩は町を上げてのお祭り騒ぎであった。屋台や出店、出し物などが催され、そこまでしなくてもと引いてしまうくらいだ。実際、主催者であるピグレット伯爵も「張り切り過ぎて大変なことになってしまった」と苦笑していた。
「やあバルト、入団おめでとう」
「副隊長! ありがとうございます」
「もし君が落ちていたら警備隊に幹部候補で入れようと思っていたのだがね。まあ、今からでも遅くはないけど」
「何を戯言を言っているんだダグラス」
僕が苦笑しているとウィリアム隊長が現れた。
副団長もそうだが彼女もまた僕にとって大恩人の1人である。団長は試験のことや騎士学校での過ごし方など、自分のことのように心配してくれていたし、誰よりも僕の騎士学校入学を喜んでくれた。
「寂しくなるな」
「そんなに遠くないですからまた会えますよ」
平静を装っていた隊長の涙腺が緩み始めた。わずか1ヶ月という短い期間ではあったが、弟のように接してくれていた隊長との思い出を振り返ると涙が溢れそうになる。
「騎士学校にはどれくらい行くんだ?」
「1年もないくらいですよ」
「そうか……」
団長は伏し見がちになって言葉を詰まらせた。本当に寂しいのだろう。それは僕も同じだ――と思ったら。
「……なあ、バルト。学校を卒業して立派な近衛騎士になったら、私と……」
「団長、団長おおおお!! 門番のザンジリから海岸線沿いに魔物大量発生との報告です!」
「クソ! 良いところだったっていうのにいいい!」
祭りは中止。
警備隊、冒険者が顔色を変えて武器を取った。
「悪いねバルト。またゆっくり話をしよう」
「はい、副団長。お気をつけて」
彼は爽やかな笑顔を向けると、町を守るために走り去って行った。
祭囃子は戦々恐々とした足音に変わり、会場に灯された魔法ランプは暗闇へ帰る。
この魔物大発生が後に悲劇の始まりと呼ばれる“オームの大災害”であった。
騎士学校入学試験から半月後、僕の元に騎士団長のアランさんがやってきた。
「インヒター王国騎士団学校入学試験のバルト・クラストを合格とし、騎士学校への入学並びに騎士団への入団を認める」
彼は懐から書状を取り出し仰々しく読み上げると、にっこりと微笑んで一言「おめでとう」と声をかける。その言葉を聞いてもなお僕はまだ信じられず、団長を見つめることしかできない。
「バルトおめでとう」
「おめでとう」
母さんと兄さんから抱きしめられ、ようやく“受かったんだ”と認識することができた。
正気に戻った僕はお礼を言い、アランさんに気になっていたことを尋ねる。
「どうして団長さんが直々に?」
「それはな、お前さんが逃げないようにだよ。近頃では試験に合格しても入学当日に来ない奴がいる。こちらとしてはなんとしてもバルトに入団してもらいたいからな」
アラン団長の顔が怖い。
聞いたと頃によると入学試験における僕の評価はかなり高かったらしく、騎士団の上層部は「団長が直々に赴けば断ることも、逃げ出すこともしないだろう」と考えたようだ。
理由はどうあれ、団長が来たことで僕のモチベーションは爆上がりだ。これからの厳しい騎士学校での生活もなんとか乗り越えられそうな気がしている。
「入団式は1週間後だ。それまでに荷物をまとめるように」
「はい!」
その晩は町を上げてのお祭り騒ぎであった。屋台や出店、出し物などが催され、そこまでしなくてもと引いてしまうくらいだ。実際、主催者であるピグレット伯爵も「張り切り過ぎて大変なことになってしまった」と苦笑していた。
「やあバルト、入団おめでとう」
「副隊長! ありがとうございます」
「もし君が落ちていたら警備隊に幹部候補で入れようと思っていたのだがね。まあ、今からでも遅くはないけど」
「何を戯言を言っているんだダグラス」
僕が苦笑しているとウィリアム隊長が現れた。
副団長もそうだが彼女もまた僕にとって大恩人の1人である。団長は試験のことや騎士学校での過ごし方など、自分のことのように心配してくれていたし、誰よりも僕の騎士学校入学を喜んでくれた。
「寂しくなるな」
「そんなに遠くないですからまた会えますよ」
平静を装っていた隊長の涙腺が緩み始めた。わずか1ヶ月という短い期間ではあったが、弟のように接してくれていた隊長との思い出を振り返ると涙が溢れそうになる。
「騎士学校にはどれくらい行くんだ?」
「1年もないくらいですよ」
「そうか……」
団長は伏し見がちになって言葉を詰まらせた。本当に寂しいのだろう。それは僕も同じだ――と思ったら。
「……なあ、バルト。学校を卒業して立派な近衛騎士になったら、私と……」
「団長、団長おおおお!! 門番のザンジリから海岸線沿いに魔物大量発生との報告です!」
「クソ! 良いところだったっていうのにいいい!」
祭りは中止。
警備隊、冒険者が顔色を変えて武器を取った。
「悪いねバルト。またゆっくり話をしよう」
「はい、副団長。お気をつけて」
彼は爽やかな笑顔を向けると、町を守るために走り去って行った。
祭囃子は戦々恐々とした足音に変わり、会場に灯された魔法ランプは暗闇へ帰る。
この魔物大発生が後に悲劇の始まりと呼ばれる“オームの大災害”であった。
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