凡夫転生〜異世界行ったらあまりにも普通すぎた件〜

小林一咲

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騎士学校編

第34話 謙虚も過ぎれば

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「闘技大会に僕が?!」

 卒業試験前日、僕は担任のライアン先生に呼び出され、各国の騎士学校、冒険者養成所などが参加する〈世界闘技大会〉にインヒター王国騎士学校の代表として出場してほしいと頼まれたのだった。

 世界闘技大会は有事が無い限り2年に一度行われ、優勝校に多額の賞金が入るだけでなく、観客は合法的に賭けができるというなんとも魅力的な大会なのだ。しかし一方で、試合中は一対一の勝負であるが故に実力差があり過ぎると命を落としてしまうことも。

「卒業試験が終わったらすぐ隣国のアジバロイド共和国に向かってほしい。他のメンバーは既に選出済みだ」
「誰々が行くんです?」

 そんな危険な大会には選出されるのも嫌なはず。となれば貴族ではなく平民の出で参加しそうな奴は――。

「ボクだよおおん!」

 やはりダリオンだった。
 闘技大会は個人戦と団体戦があるわけだが、一番の見どころ、盛り上がるところは団体戦だ。男女混合で先鋒、次鋒、中堅、大将の4人で戦う。それぞれの勝利数によってチームの勝敗が決まる。

「あと、2人か……」
「女子枠はイシュクルテと、補欠枠でエリシアだよ」

 なるほど、エリシアは貴族出身だけど補欠枠なら安全というわけか。

「残る男子枠だが……」

 ライアン先生は顰《しか》め面を窓の外へと向けた。そこには窓の縁に掴まり、至って真剣な顔で懸垂をするアレクともう1人の姿があった。彼らは僕と目が合うと「出番だ」と言わんばかりに窓を開けて入ってきた。

「よろしくねバルト」
「よ、よろしく」

「きちんと顔を合わせるのは初めてだな。俺はAクラスのフィンリス・サルヴェールだ」
「ど、どうも」

 素晴らしい筋肉からパワー系なのだろうというのが窺える。頼り甲斐がありそうだ。

「男子の補欠を決めたいんだが、立候補するものはいるか?」
「はいはーい! ボクに決まっているでしょう」
「そうだな、男子の補欠枠はダリオンとする。以上、解散!」

 彼はなぜ自分から参加して補欠枠に回ったのか。皆のスキルが分からない以上はなんとも言えないけど。

 その日からは卒業試験に向けての勉強と、闘技大会へ向けての計画を練った。相手チームの情報が無いとなんとも言えないので、とりあえず順番を考えることにした。

「バルトは大将で決まりだろう?」
「「「「うん」」」」

「ええ……」
「当たり前じゃないか。相手は1番強い奴を大将にもってくるんだぞ」
「大将の前に相手より勝ち星を増やして、それでバルトが引き分けてくれたらチームとしては勝ちでしょ」

 かなり理に叶った作戦だ。

「でも、引き分けた時は?」
「代表戦になるな」
「その時は誰が出るのさ」
「そうなったら私にお任せくださいまし」

 自信満々に手を挙げたのはエリシアだった。
 作戦を練るに当たって、それぞれのスキルの大まかな説明をした。

 アレクは【ドラゴンの力】古代ドラゴンの力を一部だけ借りることができる。
 ダリオンは【時間操作】2秒間だけ時間を自由に動かせるが、発動してから1週間のクールタイムが必要。
 フィン(フィンリス)は【精霊召喚】自然界の精霊と契約し、その力を借りることができる。
 イシュクルテは【闇に堕とす者】対象のスキルや能力を一時的に封じ込めることができる。
 
 そしてエリシアのスキルは――

「私の【星の予言者】で占って差し上げますわ。誰が出れば勝てるのかをね」

 【星の予言者】それはその辺の易者などとは格が違う。その的中率はほぼ100パーセントという予言とは名ばかりの、未来視に近いスキルなのだ。
 このスキルのことを聞いて、ようやく彼女が補欠枠に入ったのを納得した。

「エリシアがいるなら、今作戦考える意味なくね?」
「まあ、確かにそうですわね。占いに回数制限があるわけでも無いですし」
「最強ではないか」
「貴女に言われると何だか癪ですわ!」

 確かに、この中で誰が最強かと聞かれれば間違いなくイシュクルテだろう。敵じゃなくて良かった、と心の底からそう思える。
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