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王都・近衛騎士団編
第75話 招かれざる者たち
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「そうですか、君がバルトくんですか」
近衛騎士団へ配属されてから一週間が経とうとしていた。
今日も今日とて、僕はシュリアの身辺警護の任務に着く。
重い瞼をこじ開けつつ、近衛騎士団本部から彼女の待つ王宮へと向かおうとした矢先、黒いタキシードにシルクハットの紳士が僕の前に立った。
「えぇっと、僕に何か御用でしょうか?」
「これは失礼致しました。私の名はユーグ・ドリシャンと申します。本日は勧誘に参った次第でございます」
彼は至って紳士な振る舞いで頭を下げると、にこやかに笑いかけた。
「勧誘……とは?」
「回りくどい言い方は得意ではありませんので、単刀直入に申しますと――」
ユーグと名乗る男は一本踏み出し、僕の耳元で囁いた。
「我々、魔族の配下《なかま》になりませんか?」
魔族!?
僕は瞬時に距離をとり、戦闘態勢に入る。この男は確かに「我々」と言った。しかも、それが魔族とは。
「どういうつもりだ」
「深い意味はありませんよ。ただの勧誘ですので断っていただいても構いませんし」
「断る!」
「即答ですか……いやはや、こうもあっさり拒絶されては悲しいですな」
ガックリと肩を落とす魔族。見た目は人族となんら変わらないその姿に背筋が凍る。
先の魔物襲来のおり、王都に現れ、民間人を多数殺したという魔族――まさか、コイツが?!
「おや? 何かご質問でも?」
「……ああ、王都で虐殺を行ったのは貴様か?」
その問いに少々顔を強張らせると、ユーグは拳を握った。
「アレは我々の意図したところではございません。ご安心下さい。奴は魔王様の計画に水を差したことで処刑されましたので」
「それを信じろと?」
「まぁ信じられないでしょう。しかし、我々は人族の皆さんと交友関係を持ちたいと思っておるのですよ」
相手は魔族。人を欺き、人を殺して楽しむ野蛮な一族だ。
もはや交友関係などあり得ない!
「そうそう。バルト様があの港町にいた時、大災害級の魔物に会ったでしょう?」
「……何故それを知っている」
「何故も何も、アレらは私の部下ですからね。報告は受けておりますよ」
そんなことがあり得るのか。いやしかし、魔族は魔物の上位互換であるというのが世間一般の常識。だとするならば、彼らと繋がっていてもおかしくはない、か。
「この場で即答せよ、というのも酷でしょう。しばらく考えてみて下さいな」
「逃すと思っているのか」
「バルト様と戦って勝てる見込みはありませんが、逃げ足だけは自信がありますから。まぁ、だからこそ私が選ばれたのですがね」
「待て!!」
空間に現れた黒い靄《もや》。それは一瞬で膨張すると、次の瞬間には男を呑み込んで消えていった。
◇◇◇
「それは本当の事ですか?」
僕は急足で王宮に向かい、シュリア王女に事の顛末を伝えた。彼女は酷く困惑し、更に怒りを抱いているようだった。
「すぐに国王陛下へお伝えしましょう。そして、王家の命で国内全ての領主に緊急招集をかけます」
「それが一番かと」
「念の為聞いておきますが、魔族に与《くみ》するつもりはありませんよね?」
「当然、あり得ない事です」
思わぬ彼女の質問に僕は一瞬だけ嫌悪感を抱いてしまった。
オームでの一件があったとはいえ、魔物も魔族も人族の敵であることに変わりは無い。僕の師匠であり友人でもある警備隊の二人を奪った罪は許されるものではない。
「気を害してしまったのなら謝罪します。しかし、バルトを疑っている御方もおりますので……」
そうか、そうだよな。訳の分からないスキルを所持しているのは事実だし、何より僕は本来この世界の住民では無いのだから。
「ほぉ、君が噂のバルト・クラストかい?」
「お前は?!」
シュリア王女の視線の先「兄上」と呼んだ彼は、先ほど出会った魔族と瓜二つであった。
近衛騎士団へ配属されてから一週間が経とうとしていた。
今日も今日とて、僕はシュリアの身辺警護の任務に着く。
重い瞼をこじ開けつつ、近衛騎士団本部から彼女の待つ王宮へと向かおうとした矢先、黒いタキシードにシルクハットの紳士が僕の前に立った。
「えぇっと、僕に何か御用でしょうか?」
「これは失礼致しました。私の名はユーグ・ドリシャンと申します。本日は勧誘に参った次第でございます」
彼は至って紳士な振る舞いで頭を下げると、にこやかに笑いかけた。
「勧誘……とは?」
「回りくどい言い方は得意ではありませんので、単刀直入に申しますと――」
ユーグと名乗る男は一本踏み出し、僕の耳元で囁いた。
「我々、魔族の配下《なかま》になりませんか?」
魔族!?
僕は瞬時に距離をとり、戦闘態勢に入る。この男は確かに「我々」と言った。しかも、それが魔族とは。
「どういうつもりだ」
「深い意味はありませんよ。ただの勧誘ですので断っていただいても構いませんし」
「断る!」
「即答ですか……いやはや、こうもあっさり拒絶されては悲しいですな」
ガックリと肩を落とす魔族。見た目は人族となんら変わらないその姿に背筋が凍る。
先の魔物襲来のおり、王都に現れ、民間人を多数殺したという魔族――まさか、コイツが?!
「おや? 何かご質問でも?」
「……ああ、王都で虐殺を行ったのは貴様か?」
その問いに少々顔を強張らせると、ユーグは拳を握った。
「アレは我々の意図したところではございません。ご安心下さい。奴は魔王様の計画に水を差したことで処刑されましたので」
「それを信じろと?」
「まぁ信じられないでしょう。しかし、我々は人族の皆さんと交友関係を持ちたいと思っておるのですよ」
相手は魔族。人を欺き、人を殺して楽しむ野蛮な一族だ。
もはや交友関係などあり得ない!
「そうそう。バルト様があの港町にいた時、大災害級の魔物に会ったでしょう?」
「……何故それを知っている」
「何故も何も、アレらは私の部下ですからね。報告は受けておりますよ」
そんなことがあり得るのか。いやしかし、魔族は魔物の上位互換であるというのが世間一般の常識。だとするならば、彼らと繋がっていてもおかしくはない、か。
「この場で即答せよ、というのも酷でしょう。しばらく考えてみて下さいな」
「逃すと思っているのか」
「バルト様と戦って勝てる見込みはありませんが、逃げ足だけは自信がありますから。まぁ、だからこそ私が選ばれたのですがね」
「待て!!」
空間に現れた黒い靄《もや》。それは一瞬で膨張すると、次の瞬間には男を呑み込んで消えていった。
◇◇◇
「それは本当の事ですか?」
僕は急足で王宮に向かい、シュリア王女に事の顛末を伝えた。彼女は酷く困惑し、更に怒りを抱いているようだった。
「すぐに国王陛下へお伝えしましょう。そして、王家の命で国内全ての領主に緊急招集をかけます」
「それが一番かと」
「念の為聞いておきますが、魔族に与《くみ》するつもりはありませんよね?」
「当然、あり得ない事です」
思わぬ彼女の質問に僕は一瞬だけ嫌悪感を抱いてしまった。
オームでの一件があったとはいえ、魔物も魔族も人族の敵であることに変わりは無い。僕の師匠であり友人でもある警備隊の二人を奪った罪は許されるものではない。
「気を害してしまったのなら謝罪します。しかし、バルトを疑っている御方もおりますので……」
そうか、そうだよな。訳の分からないスキルを所持しているのは事実だし、何より僕は本来この世界の住民では無いのだから。
「ほぉ、君が噂のバルト・クラストかい?」
「お前は?!」
シュリア王女の視線の先「兄上」と呼んだ彼は、先ほど出会った魔族と瓜二つであった。
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