105 / 105
5年目 飛躍の時?
第105話 ダブルヘッダー(僕だけ?)
しおりを挟む
4月下旬、シーズンが開幕して、一ヶ月が過ぎた。
僕は今日、二軍の試合に出場した。
と言っても、二軍落ちをしたわけではない。
今シーズンはここまでしぶとく一軍に生き残っていた。
ここまで一軍で13試合に出場し、9打数2安打、ホームラン0、打点2、盗塁2。
スタメンは2試合で、後は代走か守備固めでの途中出場だった。
それなのになぜ僕が二軍の試合にでているのか。
今日はたまたま二軍がデーゲーム、一軍がナイターでそれぞれの本拠地で試合があり、最近一軍で打席に立つ機会が少なかったので、志願して二軍の試合に出場したというわけだ。
二軍の川崎監督は、僕に少しでも打席を与えるために、1番打者で起用してくれた。
こういう配慮をしてもらえることも、一軍の戦力として認められた気がして嬉しい。
僕はこの二軍の試合で、3打数で右と左に1本ずつシングルヒットを打ち、途中交代した。
(後の1打席もライトライナーになったが、内容は悪くなかった)
そして試合の途中に球場を出て、一軍の試合前練習に合流するために、泉州ブラックスタジアムに向かった。
「少し気分転換になったか?」
「はい。やはり結果が出ると、嬉しいですね」
泉州ブラックスタジアムに到着すると、早速、釜谷打撃コーチに声をかけられた。
「そうだろ。
じゃあ、明日も二軍の試合に出るか?」
「いえ、遠慮します」
二軍の本拠地は寮の近くにあり、泉州ブラックスタジアムからは電車で40分の距離である。
両方の試合に出ると、さすがに疲れる。
「2試合にでると疲れるもんな」
「はい」
「じゃあ、明日からは二軍の試合だけに出るか?」
「嫌です」
一軍での生活に慣れると、もう二軍には戻りたくないと思うようになる。
遠征時のホテルのランクも、試合前の食事のメニューも、遠征時の交通機関も一軍と二軍では待遇が異なる。
例えば、二軍は遠征時の移動も球団保有のバスを使用することが多い。
さすがに熊本での試合は飛行機を使うが、岡山や高松への移動は大体はバスである。
これが結構体に応えるのだ。
後は給料。
僕はまだ一軍最低年俸1,600万円には到達していない(1,100万円)ので、その差額を150日で割った分、約3万円を1日あたり貰える。
僕はまだ妹の学費を払っているし、来年は寮を出て一人暮らしになるので、少しでも貯金しておきたいところだ。
(妹は自分の学費がどこから出ているか分かっているのだろうか?)
「高橋」
「はい?」
トーマス選手とキャッチボールをしていたら、朝比奈監督に後ろから声をかけられた。
「俺、今日、スタメンで使うって言ったっけ?」
「いえ、初耳です」
「あれ、そうか?
まあそういうだから。
今日もホームラン頼むぞ」
すみません。
誰かと間違っていませんか?
僕はまだ今季1本もホームランを打っていません。
どういう事にせよ、今季3回目のスタメンだ。
今日の泉州ブラックスのスタメンは、以下のとおりである。
(相手は新潟コンドルズ)
1 岸(センター)
2 水谷(サード)
3 トーマス(セカンド)
4 岡村(ファースト)
5 ブランドン(指名打者)
6 山形(ライト)
7 金沢(レフト)
8 高台(捕手)
9 高橋隆(ショート)
先発 児島
金沢選手は僕よりも1歳年上で、高卒6年目の長打力が売りの選手である。
人的補償で入団してから、親しくさせて貰っており、一緒にスタメンで出られるのは嬉しい。
新潟コンドルズの先発は、北前投手。
僕のプロ初打席の対戦相手だ。
あの時は敗戦処理のような役割だったが、少しずつ実力をつけ、今季は開幕から先発ローテーションに入っている。
試合が始まった。
両チームとも先発投手が素晴らしい立ち上がりで、2回が終了するまで、お互いに三者凡退に抑えていた。
3回の表に試合が動いた。
泉州ブラックスの児島投手が突然コントロールを乱し、ツーアウトから三者連続でフォアボールを与えてしまった。
ここで迎えるのは、3番の神保選手。
児島投手は力んでしまったのか、初球のスプリットを指に引っかけてしまい、ワイルドピッチ。
新潟コンドルズは労せずして、1点を奪った。
だが児島投手はすぐに立ち直り、神保選手を三振に切って取り、ピンチを脱した。
3回の裏は、僕に打席が回る。
北前投手は絶好調のようで、7番の金沢選手、8番の高台選手から連続三振を奪った。
これで打者8人から5三振を奪ったことになる。
僕が打席に向かおうとすると、釜谷打撃コーチに呼ばれた。
「いいか、三振が続いているからって、当てに行こうとするなよ。
当てに行くと、向こうの術中にはまってしまう。
ここは三振しても良いから、思いっ切り振ってこい」
「はい、わかりました」
釜谷打撃コーチに言われなければ、僕は三振を恐れて、小さなバッティングをしてしまうところだった。
ツーアウトであるし、僕が凡退しても次の回は1番の岸選手からだ。
ここは思い切って行こう。
僕はそう思って打席に向かった。
僕は今日、二軍の試合に出場した。
と言っても、二軍落ちをしたわけではない。
今シーズンはここまでしぶとく一軍に生き残っていた。
ここまで一軍で13試合に出場し、9打数2安打、ホームラン0、打点2、盗塁2。
スタメンは2試合で、後は代走か守備固めでの途中出場だった。
それなのになぜ僕が二軍の試合にでているのか。
今日はたまたま二軍がデーゲーム、一軍がナイターでそれぞれの本拠地で試合があり、最近一軍で打席に立つ機会が少なかったので、志願して二軍の試合に出場したというわけだ。
二軍の川崎監督は、僕に少しでも打席を与えるために、1番打者で起用してくれた。
こういう配慮をしてもらえることも、一軍の戦力として認められた気がして嬉しい。
僕はこの二軍の試合で、3打数で右と左に1本ずつシングルヒットを打ち、途中交代した。
(後の1打席もライトライナーになったが、内容は悪くなかった)
そして試合の途中に球場を出て、一軍の試合前練習に合流するために、泉州ブラックスタジアムに向かった。
「少し気分転換になったか?」
「はい。やはり結果が出ると、嬉しいですね」
泉州ブラックスタジアムに到着すると、早速、釜谷打撃コーチに声をかけられた。
「そうだろ。
じゃあ、明日も二軍の試合に出るか?」
「いえ、遠慮します」
二軍の本拠地は寮の近くにあり、泉州ブラックスタジアムからは電車で40分の距離である。
両方の試合に出ると、さすがに疲れる。
「2試合にでると疲れるもんな」
「はい」
「じゃあ、明日からは二軍の試合だけに出るか?」
「嫌です」
一軍での生活に慣れると、もう二軍には戻りたくないと思うようになる。
遠征時のホテルのランクも、試合前の食事のメニューも、遠征時の交通機関も一軍と二軍では待遇が異なる。
例えば、二軍は遠征時の移動も球団保有のバスを使用することが多い。
さすがに熊本での試合は飛行機を使うが、岡山や高松への移動は大体はバスである。
これが結構体に応えるのだ。
後は給料。
僕はまだ一軍最低年俸1,600万円には到達していない(1,100万円)ので、その差額を150日で割った分、約3万円を1日あたり貰える。
僕はまだ妹の学費を払っているし、来年は寮を出て一人暮らしになるので、少しでも貯金しておきたいところだ。
(妹は自分の学費がどこから出ているか分かっているのだろうか?)
「高橋」
「はい?」
トーマス選手とキャッチボールをしていたら、朝比奈監督に後ろから声をかけられた。
「俺、今日、スタメンで使うって言ったっけ?」
「いえ、初耳です」
「あれ、そうか?
まあそういうだから。
今日もホームラン頼むぞ」
すみません。
誰かと間違っていませんか?
僕はまだ今季1本もホームランを打っていません。
どういう事にせよ、今季3回目のスタメンだ。
今日の泉州ブラックスのスタメンは、以下のとおりである。
(相手は新潟コンドルズ)
1 岸(センター)
2 水谷(サード)
3 トーマス(セカンド)
4 岡村(ファースト)
5 ブランドン(指名打者)
6 山形(ライト)
7 金沢(レフト)
8 高台(捕手)
9 高橋隆(ショート)
先発 児島
金沢選手は僕よりも1歳年上で、高卒6年目の長打力が売りの選手である。
人的補償で入団してから、親しくさせて貰っており、一緒にスタメンで出られるのは嬉しい。
新潟コンドルズの先発は、北前投手。
僕のプロ初打席の対戦相手だ。
あの時は敗戦処理のような役割だったが、少しずつ実力をつけ、今季は開幕から先発ローテーションに入っている。
試合が始まった。
両チームとも先発投手が素晴らしい立ち上がりで、2回が終了するまで、お互いに三者凡退に抑えていた。
3回の表に試合が動いた。
泉州ブラックスの児島投手が突然コントロールを乱し、ツーアウトから三者連続でフォアボールを与えてしまった。
ここで迎えるのは、3番の神保選手。
児島投手は力んでしまったのか、初球のスプリットを指に引っかけてしまい、ワイルドピッチ。
新潟コンドルズは労せずして、1点を奪った。
だが児島投手はすぐに立ち直り、神保選手を三振に切って取り、ピンチを脱した。
3回の裏は、僕に打席が回る。
北前投手は絶好調のようで、7番の金沢選手、8番の高台選手から連続三振を奪った。
これで打者8人から5三振を奪ったことになる。
僕が打席に向かおうとすると、釜谷打撃コーチに呼ばれた。
「いいか、三振が続いているからって、当てに行こうとするなよ。
当てに行くと、向こうの術中にはまってしまう。
ここは三振しても良いから、思いっ切り振ってこい」
「はい、わかりました」
釜谷打撃コーチに言われなければ、僕は三振を恐れて、小さなバッティングをしてしまうところだった。
ツーアウトであるし、僕が凡退しても次の回は1番の岸選手からだ。
ここは思い切って行こう。
僕はそう思って打席に向かった。
0
この作品の感想を投稿する
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
百合ランジェリーカフェにようこそ!
楠富 つかさ
青春
主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?
ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!!
※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。
表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。
天才天然天使様こと『三天美女』の汐崎真凜に勝手に婚姻届を出され、いつの間にか天使の旦那になったのだが...。【動画投稿】
田中又雄
恋愛
18の誕生日を迎えたその翌日のこと。
俺は分籍届を出すべく役所に来ていた...のだが。
「えっと...結論から申し上げますと...こちらの手続きは不要ですね」「...え?どういうことですか?」「昨日、婚姻届を出されているので親御様とは別の戸籍が作られていますので...」「...はい?」
そうやら俺は知らないうちに結婚していたようだった。
「あの...相手の人の名前は?」
「...汐崎真凛様...という方ですね」
その名前には心当たりがあった。
天才的な頭脳、マイペースで天然な性格、天使のような見た目から『三天美女』なんて呼ばれているうちの高校のアイドル的存在。
こうして俺は天使との-1日婚がスタートしたのだった。
貞操逆転世界で出会い系アプリをしたら
普通
恋愛
男性は弱く、女性は強い。この世界ではそれが当たり前。性被害を受けるのは男。そんな世界に生を受けた葉山優は普通に生きてきたが、ある日前世の記憶取り戻す。そこで前世ではこんな風に男女比の偏りもなく、普通に男女が一緒に生活できたことを思い出し、もう一度女性と関わってみようと決意する。
そこで会うのにまだ抵抗がある、優は出会い系アプリを見つける。まずはここでメッセージのやり取りだけでも女性としてから会うことしようと試みるのだった。
中1でEカップって巨乳だから熱く甘く生きたいと思う真理(マリー)と小説家を目指す男子、光(みつ)のラブな日常物語
jun( ̄▽ ̄)ノ
大衆娯楽
中1でバスト92cmのブラはEカップというマリーと小説家を目指す男子、光の日常ラブ
★作品はマリーの語り、一人称で進行します。
俺を振ったはずの腐れ縁幼馴染が、俺に告白してきました。
true177
恋愛
一年前、伊藤 健介(いとう けんすけ)は幼馴染の多田 悠奈(ただ ゆうな)に振られた。それも、心無い手紙を下駄箱に入れられて。
それ以来悠奈を避けるようになっていた健介だが、二年生に進級した春になって悠奈がいきなり告白を仕掛けてきた。
これはハニートラップか、一年前の出来事を忘れてしまっているのか……。ともかく、健介は断った。
日常が一変したのは、それからである。やたらと悠奈が絡んでくるようになったのだ。
彼女の狙いは、いったい何なのだろうか……。
※小説家になろう、ハーメルンにも同一作品を投稿しています。
※内部進行完結済みです。毎日連載です。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる