51 / 149
幻夢境街戦略バトル
ディザスター・カドル
しおりを挟む
翌朝、眠い目を擦りながら寝室から出る。
「アニーさん、おはようございます」
丁度、入れ違いになる様にシュクレちゃんとすれ違った。
「おお、シュクレちゃん早いね!」
「いえ、私はこれから寝ます」
よく見るとシュクレちゃん、目が据わっている。
「へ?」
「アニーさんが寝た後、他の方と詠唱に関する談義が白熱しちゃって……」
おぉ……。
普段のフワフワした雰囲気でついつい忘れちゃうけど、シュクレちゃんって結構ギークな子だよね。
生活リズムに注意した方が良いのかな? でも彼女が好きでやっているなら止める理由も無いか。
「じゃ、おやすみー」
寝室へ入っていくシュクレを見送り、クランチャットを起動する。ざっとログを漁って理解するのを諦めた。
「だれかー私が寝ている間にあったことを簡潔に教えてー!」
クランチャットからバラバラと返信が返ってくる。皆が楽しいのは良いけど、完結という言葉の意味は理解してほしい。
「だーいたいわかった! ありがとうー」
皆の話を要約すると、近辺のリスポーン地点は無秩序に狩ってたらそのうち最適化されて24時間体制でポイントを稼いでいるらしい。
トヨキンTVとの境界線は攻防を続けている。PK反対連合とは現状維持、まぁちょっと目障りではあるけど二正面戦闘になるよりは良い。
うーん、もうちょっと温存しておきたかった気もするけどそろそろ盤面を動かそうかな。
「これから遊べる範囲攻撃が大好きな魔法職の人々ー!」
「「はーい!」」
「爆撃機になってー」
「「は??」」
「カドルー」
アイテムボックスからドラゴンの石像を取り出して名前を呼ぶ。石造は一気に巨大化し、本来の姿を取り戻した。
「キュー! ご主人、呼んだ?」
カドルが長い首を折り曲げて私に視線を合わせて聞いてくる。前回のイベントでゲットし、喫茶店dreamerで孵化したドラゴンのカドルは今や、翼を広げれば12メートルを超える立派な成体になっていた。
全身は空色の鱗に覆われ、それぞれが緻密に重なり合って光を受けて輝きを放っている。
頭部は重厚な角に守られ、緑色の瞳は知性と好奇心を湛えている。規模感を他の言葉で表現するなら、空飛ぶキリン。
「10人ぐらい乗せて飛んでー」
「キュー! わかった! 何しにいくの?」
カドルが純真な目で私を見つめてくる。
可愛い。
「遊びにいくんだよー」
「キュー! やったー!」
カドルが翼をバタバタとさせて喜んでいる。
やはり可愛い。
クランチャットへ再び呼びかける。
「魔法使いの人は拠点前に集合ー! 一方的に相手を惨殺したい人はトヨキンTV山の近くに集結しておいてー」
「キュー!」
カドルがご機嫌に鳴き声を上げる。カドルに乗って件《くだん》のリスポーン地点へ魔法使いと一緒に移動する。
彼らの内、1人が話しかけてきた。
「アニーさん、最初からこの手段を使っていればMAP埋めとかもっと効率的にできたんじゃ無いですか?」
「これじゃモンスターのリスポーン地点がわからないじゃん? 地形だけ分かってもあんまり意味無いじゃん?」
お、そろそろ目的地点が見えてきたね。
「カドル、もうちょっと高度下げて」
「キュー! ご主人、わかった!」
眼下にはトヨキンTVのクランメンバーとメメントモリのメンバーがお互いに牽制しながら睨み合いをしている。
まあ、長距離攻撃があって特定の地点を奪い合うなら必然的にそういう戦局になるよね。これはもう歴史が証明していた。それなら私がやる事の効果だってもう証明されている。
「魔法使い隊の皆、ここから相手クランのメンバーをバリバリ攻撃しちゃって」
「アニーさんよくこんなエグいアイディア思いつきますね」
「私が考えた案じゃ無いよ」
最初にこれを思いついたのが誰かは知らないけど、きっと悪魔に魂を売っていたんだろうね。
「キュ? ご主人、何するの?」
「カドルはそのままこの地点を旋回していてねー」
魔法職の人たちが躊躇いがちに魔法を放ち始める。
わぁ、人がゴミの様だ!
「ご主人! 下の人、痛そうだよ?」
「わー、カドルは目が良いんだねー」
高度を下げてはいるけど、この位置からだと人の姿は豆粒も同然だ。最初は遠慮していた魔法使いの人たちも、今はノリノリ魔法をぶっ放している。まあ現実世界でも人間はそうなるんだから、ゲームの世界なら尚更だよね。PKは経験値の入りも美味しいし、一方的に攻撃できるのは実に効率的だ。
「キュー! ご主人! ご主人! どうして?」
「領地を狙って戦争するより、人を標的にして戦争をする方が効率的なんだよ」
結局、人がいなくなったら領地を守りようがなくなるからね。頭と力とリソースを使って陣取り合戦をするのは面倒臭い。
「キュー……」
カドル、可愛い。ナデナデ。上空からの範囲攻撃でトヨキンTV側の陣形がグダグダになってる。
クランチャットで皆へ語りかける。
「トヨキンTV山にいるメメントモリのメンバーへー、今だぞー! このまま本陣までいくぞー!」
「うぉー!」
「やってやらぁああ!!」
私の号令で状況を理解したメンバー達が続々と山を登っていく。道中にいるトヨキンTVの残党は蜘蛛の子を散らす様に逃げ惑う。
「カドル、もっと高度下げて山頂の方に移動してー」
「キュー……」
カドルは一声鳴くと私の指示に従って移動を開始した。やっぱり空を自由に飛べるって偉大だよね。
「アニーさん、おはようございます」
丁度、入れ違いになる様にシュクレちゃんとすれ違った。
「おお、シュクレちゃん早いね!」
「いえ、私はこれから寝ます」
よく見るとシュクレちゃん、目が据わっている。
「へ?」
「アニーさんが寝た後、他の方と詠唱に関する談義が白熱しちゃって……」
おぉ……。
普段のフワフワした雰囲気でついつい忘れちゃうけど、シュクレちゃんって結構ギークな子だよね。
生活リズムに注意した方が良いのかな? でも彼女が好きでやっているなら止める理由も無いか。
「じゃ、おやすみー」
寝室へ入っていくシュクレを見送り、クランチャットを起動する。ざっとログを漁って理解するのを諦めた。
「だれかー私が寝ている間にあったことを簡潔に教えてー!」
クランチャットからバラバラと返信が返ってくる。皆が楽しいのは良いけど、完結という言葉の意味は理解してほしい。
「だーいたいわかった! ありがとうー」
皆の話を要約すると、近辺のリスポーン地点は無秩序に狩ってたらそのうち最適化されて24時間体制でポイントを稼いでいるらしい。
トヨキンTVとの境界線は攻防を続けている。PK反対連合とは現状維持、まぁちょっと目障りではあるけど二正面戦闘になるよりは良い。
うーん、もうちょっと温存しておきたかった気もするけどそろそろ盤面を動かそうかな。
「これから遊べる範囲攻撃が大好きな魔法職の人々ー!」
「「はーい!」」
「爆撃機になってー」
「「は??」」
「カドルー」
アイテムボックスからドラゴンの石像を取り出して名前を呼ぶ。石造は一気に巨大化し、本来の姿を取り戻した。
「キュー! ご主人、呼んだ?」
カドルが長い首を折り曲げて私に視線を合わせて聞いてくる。前回のイベントでゲットし、喫茶店dreamerで孵化したドラゴンのカドルは今や、翼を広げれば12メートルを超える立派な成体になっていた。
全身は空色の鱗に覆われ、それぞれが緻密に重なり合って光を受けて輝きを放っている。
頭部は重厚な角に守られ、緑色の瞳は知性と好奇心を湛えている。規模感を他の言葉で表現するなら、空飛ぶキリン。
「10人ぐらい乗せて飛んでー」
「キュー! わかった! 何しにいくの?」
カドルが純真な目で私を見つめてくる。
可愛い。
「遊びにいくんだよー」
「キュー! やったー!」
カドルが翼をバタバタとさせて喜んでいる。
やはり可愛い。
クランチャットへ再び呼びかける。
「魔法使いの人は拠点前に集合ー! 一方的に相手を惨殺したい人はトヨキンTV山の近くに集結しておいてー」
「キュー!」
カドルがご機嫌に鳴き声を上げる。カドルに乗って件《くだん》のリスポーン地点へ魔法使いと一緒に移動する。
彼らの内、1人が話しかけてきた。
「アニーさん、最初からこの手段を使っていればMAP埋めとかもっと効率的にできたんじゃ無いですか?」
「これじゃモンスターのリスポーン地点がわからないじゃん? 地形だけ分かってもあんまり意味無いじゃん?」
お、そろそろ目的地点が見えてきたね。
「カドル、もうちょっと高度下げて」
「キュー! ご主人、わかった!」
眼下にはトヨキンTVのクランメンバーとメメントモリのメンバーがお互いに牽制しながら睨み合いをしている。
まあ、長距離攻撃があって特定の地点を奪い合うなら必然的にそういう戦局になるよね。これはもう歴史が証明していた。それなら私がやる事の効果だってもう証明されている。
「魔法使い隊の皆、ここから相手クランのメンバーをバリバリ攻撃しちゃって」
「アニーさんよくこんなエグいアイディア思いつきますね」
「私が考えた案じゃ無いよ」
最初にこれを思いついたのが誰かは知らないけど、きっと悪魔に魂を売っていたんだろうね。
「キュ? ご主人、何するの?」
「カドルはそのままこの地点を旋回していてねー」
魔法職の人たちが躊躇いがちに魔法を放ち始める。
わぁ、人がゴミの様だ!
「ご主人! 下の人、痛そうだよ?」
「わー、カドルは目が良いんだねー」
高度を下げてはいるけど、この位置からだと人の姿は豆粒も同然だ。最初は遠慮していた魔法使いの人たちも、今はノリノリ魔法をぶっ放している。まあ現実世界でも人間はそうなるんだから、ゲームの世界なら尚更だよね。PKは経験値の入りも美味しいし、一方的に攻撃できるのは実に効率的だ。
「キュー! ご主人! ご主人! どうして?」
「領地を狙って戦争するより、人を標的にして戦争をする方が効率的なんだよ」
結局、人がいなくなったら領地を守りようがなくなるからね。頭と力とリソースを使って陣取り合戦をするのは面倒臭い。
「キュー……」
カドル、可愛い。ナデナデ。上空からの範囲攻撃でトヨキンTV側の陣形がグダグダになってる。
クランチャットで皆へ語りかける。
「トヨキンTV山にいるメメントモリのメンバーへー、今だぞー! このまま本陣までいくぞー!」
「うぉー!」
「やってやらぁああ!!」
私の号令で状況を理解したメンバー達が続々と山を登っていく。道中にいるトヨキンTVの残党は蜘蛛の子を散らす様に逃げ惑う。
「カドル、もっと高度下げて山頂の方に移動してー」
「キュー……」
カドルは一声鳴くと私の指示に従って移動を開始した。やっぱり空を自由に飛べるって偉大だよね。
21
あなたにおすすめの小説
異世界召喚に条件を付けたのに、女神様に呼ばれた
りゅう
ファンタジー
異世界召喚。サラリーマンだって、そんな空想をする。
いや、さすがに大人なので空想する内容も大人だ。少年の心が残っていても、現実社会でもまれた人間はまた別の空想をするのだ。
その日の神岡龍二も、日々の生活から離れ異世界を想像して遊んでいるだけのハズだった。そこには何の問題もないハズだった。だが、そんなお気楽な日々は、この日が最後となってしまった。
スーパーの店長・結城偉介 〜異世界でスーパーの売れ残りを在庫処分〜
かの
ファンタジー
世界一周旅行を夢見てコツコツ貯金してきたスーパーの店長、結城偉介32歳。
スーパーのバックヤードで、うたた寝をしていた偉介は、何故か異世界に転移してしまう。
偉介が転移したのは、スーパーでバイトするハル君こと、青柳ハル26歳が書いたファンタジー小説の世界の中。
スーパーの過剰商品(売れ残り)を捌きながら、微妙にズレた世界線で、偉介の異世界一周旅行が始まる!
冒険者じゃない! 勇者じゃない! 俺は商人だーーー! だからハル君、お願い! 俺を戦わせないでください!
間違い召喚! 追い出されたけど上位互換スキルでらくらく生活
カムイイムカ(神威異夢華)
ファンタジー
僕は20歳独身、名は小日向 連(こひなた れん)うだつの上がらないダメ男だ
ひょんなことから異世界に召喚されてしまいました。
間違いで召喚された為にステータスは最初見えない状態だったけどネットのネタバレ防止のように背景をぼかせば見えるようになりました。
多分不具合だとおもう。
召喚した女と王様っぽいのは何も持っていないと言って僕をポイ捨て、なんて世界だ。それも元の世界には戻せないらしい、というか戻さないみたいだ。
そんな僕はこの世界で苦労すると思ったら大間違い、王シリーズのスキルでウハウハ、製作で人助け生活していきます
◇
四巻が販売されました!
今日から四巻の範囲がレンタルとなります
書籍化に伴い一部ウェブ版と違う箇所がございます
追加場面もあります
よろしくお願いします!
一応191話で終わりとなります
最後まで見ていただきありがとうございました
コミカライズもスタートしています
毎月最初の金曜日に更新です
お楽しみください!
病弱少年が怪我した小鳥を偶然テイムして、冒険者ギルドの採取系クエストをやらせていたら、知らないうちにLV99になってました。
もう書かないって言ったよね?
ファンタジー
ベッドで寝たきりだった少年が、ある日、家の外で怪我している青い小鳥『ピーちゃん』を助けたことから二人の大冒険の日々が始まった。
癒し目的で始めたVRMMO、なぜか最強になっていた。
branche_noir
SF
<カクヨムSFジャンル週間1位>
<カクヨム週間総合ランキング最高3位>
<小説家になろうVRゲーム日間・週間1位>
現実に疲れたサラリーマン・ユウが始めたのは、超自由度の高いVRMMO《Everdawn Online》。
目的は“癒し”ただそれだけ。焚き火をし、魚を焼き、草の上で昼寝する。
モンスター討伐? レベル上げ? 知らん。俺はキャンプがしたいんだ。
ところが偶然懐いた“仔竜ルゥ”との出会いが、運命を変える。
テイムスキルなし、戦闘ログ0。それでもルゥは俺から離れない。
そして気づけば、森で焚き火してただけの俺が――
「魔物の軍勢を率いた魔王」と呼ばれていた……!?
癒し系VRMMO生活、誤認されながら進行中!
本人その気なし、でも周囲は大騒ぎ!
▶モフモフと焚き火と、ちょっとの冒険。
▶のんびり系異色VRMMOファンタジー、ここに開幕!
カクヨムで先行配信してます!
「キヅイセ。」 ~気づいたら異世界にいた。おまけに目の前にはATMがあった。異世界転移、通算一万人目の冒険者~
あめの みかな
ファンタジー
秋月レンジ。高校2年生。
彼は気づいたら異世界にいた。
その世界は、彼が元いた世界とのゲート開通から100周年を迎え、彼は通算一万人目の冒険者だった。
科学ではなく魔法が発達した、もうひとつの地球を舞台に、秋月レンジとふたりの巫女ステラ・リヴァイアサンとピノア・カーバンクルの冒険が今始まる。
異世界召喚された俺の料理が美味すぎて魔王軍が侵略やめた件
さかーん
ファンタジー
魔王様、世界征服より晩ご飯ですよ!
食品メーカー勤務の平凡な社会人・橘陽人(たちばな はると)は、ある日突然異世界に召喚されてしまった。剣も魔法もない陽人が頼れるのは唯一の特技――料理の腕だけ。
侵略の真っ最中だった魔王ゼファーとその部下たちに、試しに料理を振る舞ったところ、まさかの大絶賛。
「なにこれ美味い!」「もう戦争どころじゃない!」
気づけば魔王軍は侵略作戦を完全放棄。陽人の料理に夢中になり、次々と餌付けされてしまった。
いつの間にか『魔王専属料理人』として雇われてしまった陽人は、料理の腕一本で人間世界と魔族の架け橋となってしまう――。
料理と異世界が織りなす、ほのぼのグルメ・ファンタジー開幕!
俺得リターン!異世界から地球に戻っても魔法使えるし?アイテムボックスあるし?地球が大変な事になっても俺得なんですが!
くまの香
ファンタジー
鹿野香(かのかおる)男49歳未婚の派遣が、ある日突然仕事中に異世界へ飛ばされた。(←前作)
異世界でようやく平和な日常を掴んだが、今度は地球へ戻る事に。隕石落下で大混乱中の地球でも相変わらず呑気に頑張るおじさんの日常。「大丈夫、俺、ラッキーだから」
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる