【野生の暴君が現れた!】忍者令嬢はファンタジーVRMMOで無双する【慈悲はない】《殺戮のパイルバンカー》

オモチモチモチモチモチオモチ

文字の大きさ
52 / 149
幻夢境街戦略バトル

トゥレイター・カドル

しおりを挟む
「カドルは上の方で旋回していてねー」

 山の中腹付近にトヨキンTVの物と思われる天使像を中心とした拠点を発見した。カドルへ指示を出して飛び降りる。

「ヒャッハー!」

 重力に従ってグングンと落下していく。

「トンズラ!」

 トンズラの目測を誤り、慣性が殺しきれなくて着地地点に巨大なクレーターを作ってしまう。

「なんだ、何が起きた……!」

「そ、空から何か黒いのが……」

 土煙つちけむりの中、プレイヤーたちがクレーターを覗き込んでくる。そのうちの1人が私と視線が合って腰を抜かした。

「ひぃ!」

「で、出たぞ!」

「アニーキャノンが出たぞぉぉぉぉおお!!!」

「キヒヒヒッ」

 クレーターを駆け出して手近なプレイヤーの頭を鷲掴みにする。

「パイルバンカー!」

 ぐしゃり。
 頭が潰れて崩れ落ちる。

「キヒッキヒヒヒヒヒヒヒヒヒッ」

「うわぁぁぁぁあぁぁぁぁあああでっでたぁぁぁあああ妖怪頭潰しだぁぁぁあぁああ!」

「誰が妖怪じゃ!」

 近くで叫び出したプレイヤーの横っ腹へ回転蹴りを叩き込む。トゲトゲなスパイクが彼の鎧を砕き、肋骨を粉砕し、内臓を突き破る。

「ひぎぃ!」

「縮地ッ四頭竜閃しずりゅうせん!」

 間髪入れずに白武者が突っ込んでくる。スキルは強力だけど発声が必要なのはちょっと難点だよね。

 風間流裏秘技其乃八かざまりゅううらひぎそのはち撃雷八方陣げきらいはっぽうじん

「アハッアハハハハハハ!! アヒャヒャヒャヒャ!!!」

「ば、馬鹿な!!」

 ほぼ同時に放たれる四閃の斬撃を私は腕の鎧で全て弾き返す。

「キヒヒヒッ。その技はもう一度、見ちゃったから」

 攻撃を弾いた際に金属の摩擦で周囲に帯電が発生し、周囲に小さな放電が生まれる。この現象がこの技の由来だ。

「ば、化け物がぁぁぁぁぁぁあああ!!」

 完全に同じ動作を再現するスキルでは無意味であることを悟ったシマーズさんが刀を構えて切り掛かってくる。

「セット、リボルビングパイル」

 私は発声によって6連式パイルバンカーを装備して、シマーズさんを迎え撃つ。彼はIAF内で屈指の実力者だ。
 だけど、私と正面から戦って勝てるほどでは無い。

「キヒヒヒッ」

 一の太刀を交わして脇腹へ一発。

「アババババッ」

 続いてパイルから流し込まれた電流へ怯んだ瞬間にもう一発。

「ちくしょー! 覚えてろー!!」

 シマーズさんがダメージエフェクトを迸らせながら崩れ落ちる。

「うおー! 暴君ー!」

「いけ、いけぇぇぇぇぇぇぇえええ!」

 後方から歓声が聞こえる。
 地上から上がってきた他のメンバーも追いついた様だ。

「よーし、このままトヨキンTVの天使像を破壊するぞー!」

「おー!」







「キュー! ご主人、教えて」

 トヨキンTVの天使像を破壊した帰り道、私を乗せたカドルが神妙な面持ちで話しかけてくる。

「うん? どうしたの?」

「ご主人はどうして、同じ人間を攻撃するの?」

「天使像を破壊すれば相手のポイントを半分も奪えるし、大量キルで経験値もがっぽりだし、相手の戦力が低下すればモンスターのリスポーン地点の占拠もやりやすくなる。そして、何よりその方が楽しい」

「でも、そうしなくても良いんだよね?」

 確かに、無理に相手から狩場を奪わなくたってポイントは稼げる。それで1位になれるかっていうと分からないけど。

「たとえ生産的じゃ無くてもやるから遊びは楽しいんだよ?」

「キュー……」

「カドル?」

 カドルが悲しそうな声を上げる。

「ご主人は、間違ってる!!」

「えっうわっちょっと!」

 突如として、カドルが空中で大暴れを始める。特に鞍とかもなく首元に乗っていた私はそのまま空中へ投げ出された。

「ガァァァァァァァアアアア!!」

「わっうっそ……!」

 落下中の私へ向かって、カドルは大きく口を開ける。そこからは、幾つものスパークが迸り、今にも解き放たれようとしていた。

「アンチライトニング!」

 カドルの口から放たれた雷が私へ直撃する。直前に雷耐性を上げるスキルを発動した上で、雷を右腕の鎧で受け止める。

「くっ」

 投げ返してやろうと思ったけど、思いとどまる。基本的に雷は上から下へ落ちるもので、VRMMO特有の物理法則を都合よく無視するスキルの恩恵が受けられない雷返しはここでは使えない。

「えいやっ!」

 しょうがないので適当な地面へ向かって雷を捨てる。種族的な耐性とアンチライトニングのスキルのおかげでかなり軽減されたけど、多少はダメージを受けてしまった。

「空の王が生み……ってうわわっ!」

 雷を直撃させてやろうと思ったけど、追加の攻撃が飛んできる。悠長に詠唱をしている時間は与えてもらえない。

「アニーちゃーん! もしかしてだけどー! ペットに裏切られて困ってるぅぅぅぅぅううう!?」

 私が空中で四苦八苦しくはっくしている時、唐突に全体チャットが送られてくる。相手は1時間とちょっと前にキルしたシマーズさんだ。ぐぬぬぬ煽られてる気がするけど今はそれ所じゃない。
 私も全体チャットで答える。

「たーちーけーてー!!! ρ(;ェ;`○) 」

「どーしよーかなー!」

 周囲を見渡すと、すぐ近くを白いドラゴンが飛んでいる。私のカドルがケツァルコアトルス風なら、アレはもっとワイバーンに近いディティールをしていた。

「がぁぁぁぁぁぁぁああああああああ!」

 ひぇぇええ! そうこうしている間にもカドルの雷撃が私へ襲い掛かる。雷返しでそれを逸らしながら、ウィンドウを高速タイプして返信を返す。

「のーぞーみーをーいーえー!」

「山のふもとまでの領土を確約しろー!」

 麓っていうか、要するにゴ○ーニャのリスポーン地点が欲しいって事だろう。よし分かった、このまま落下死してリスポーンする。
 私の残機はあと4つもあるし、あのゴロー◯ャのリスポーン地点がもたらす理点とは比較にならない。

「いーやーだーーーー!」

「じゃあ、アニーちゃんのペットと一緒にこれからメメントモリの拠点を強襲するねー!」

 それは話が変わってくる!!

「やーめーてー! 分かったからたちけてー!」

「交渉成立ぅ!」

 ワイバーンにまたがったシマーズさんが落下中の私へ通り過ぎざまに手を伸ばす。それをなんとかキャッチ。
しおりを挟む
感想 13

あなたにおすすめの小説

異世界召喚に条件を付けたのに、女神様に呼ばれた

りゅう
ファンタジー
 異世界召喚。サラリーマンだって、そんな空想をする。  いや、さすがに大人なので空想する内容も大人だ。少年の心が残っていても、現実社会でもまれた人間はまた別の空想をするのだ。  その日の神岡龍二も、日々の生活から離れ異世界を想像して遊んでいるだけのハズだった。そこには何の問題もないハズだった。だが、そんなお気楽な日々は、この日が最後となってしまった。

スーパーの店長・結城偉介 〜異世界でスーパーの売れ残りを在庫処分〜

かの
ファンタジー
 世界一周旅行を夢見てコツコツ貯金してきたスーパーの店長、結城偉介32歳。  スーパーのバックヤードで、うたた寝をしていた偉介は、何故か異世界に転移してしまう。  偉介が転移したのは、スーパーでバイトするハル君こと、青柳ハル26歳が書いたファンタジー小説の世界の中。  スーパーの過剰商品(売れ残り)を捌きながら、微妙にズレた世界線で、偉介の異世界一周旅行が始まる!  冒険者じゃない! 勇者じゃない! 俺は商人だーーー! だからハル君、お願い! 俺を戦わせないでください!

間違い召喚! 追い出されたけど上位互換スキルでらくらく生活

カムイイムカ(神威異夢華)
ファンタジー
僕は20歳独身、名は小日向 連(こひなた れん)うだつの上がらないダメ男だ ひょんなことから異世界に召喚されてしまいました。 間違いで召喚された為にステータスは最初見えない状態だったけどネットのネタバレ防止のように背景をぼかせば見えるようになりました。 多分不具合だとおもう。 召喚した女と王様っぽいのは何も持っていないと言って僕をポイ捨て、なんて世界だ。それも元の世界には戻せないらしい、というか戻さないみたいだ。 そんな僕はこの世界で苦労すると思ったら大間違い、王シリーズのスキルでウハウハ、製作で人助け生活していきます ◇ 四巻が販売されました! 今日から四巻の範囲がレンタルとなります 書籍化に伴い一部ウェブ版と違う箇所がございます 追加場面もあります よろしくお願いします! 一応191話で終わりとなります 最後まで見ていただきありがとうございました コミカライズもスタートしています 毎月最初の金曜日に更新です お楽しみください!

病弱少年が怪我した小鳥を偶然テイムして、冒険者ギルドの採取系クエストをやらせていたら、知らないうちにLV99になってました。

もう書かないって言ったよね?
ファンタジー
 ベッドで寝たきりだった少年が、ある日、家の外で怪我している青い小鳥『ピーちゃん』を助けたことから二人の大冒険の日々が始まった。

癒し目的で始めたVRMMO、なぜか最強になっていた。

branche_noir
SF
<カクヨムSFジャンル週間1位> <カクヨム週間総合ランキング最高3位> <小説家になろうVRゲーム日間・週間1位> 現実に疲れたサラリーマン・ユウが始めたのは、超自由度の高いVRMMO《Everdawn Online》。 目的は“癒し”ただそれだけ。焚き火をし、魚を焼き、草の上で昼寝する。 モンスター討伐? レベル上げ? 知らん。俺はキャンプがしたいんだ。 ところが偶然懐いた“仔竜ルゥ”との出会いが、運命を変える。 テイムスキルなし、戦闘ログ0。それでもルゥは俺から離れない。 そして気づけば、森で焚き火してただけの俺が―― 「魔物の軍勢を率いた魔王」と呼ばれていた……!? 癒し系VRMMO生活、誤認されながら進行中! 本人その気なし、でも周囲は大騒ぎ! ▶モフモフと焚き火と、ちょっとの冒険。 ▶のんびり系異色VRMMOファンタジー、ここに開幕! カクヨムで先行配信してます!

「キヅイセ。」 ~気づいたら異世界にいた。おまけに目の前にはATMがあった。異世界転移、通算一万人目の冒険者~

あめの みかな
ファンタジー
秋月レンジ。高校2年生。 彼は気づいたら異世界にいた。 その世界は、彼が元いた世界とのゲート開通から100周年を迎え、彼は通算一万人目の冒険者だった。 科学ではなく魔法が発達した、もうひとつの地球を舞台に、秋月レンジとふたりの巫女ステラ・リヴァイアサンとピノア・カーバンクルの冒険が今始まる。

異世界召喚された俺の料理が美味すぎて魔王軍が侵略やめた件

さかーん
ファンタジー
魔王様、世界征服より晩ご飯ですよ! 食品メーカー勤務の平凡な社会人・橘陽人(たちばな はると)は、ある日突然異世界に召喚されてしまった。剣も魔法もない陽人が頼れるのは唯一の特技――料理の腕だけ。 侵略の真っ最中だった魔王ゼファーとその部下たちに、試しに料理を振る舞ったところ、まさかの大絶賛。 「なにこれ美味い!」「もう戦争どころじゃない!」 気づけば魔王軍は侵略作戦を完全放棄。陽人の料理に夢中になり、次々と餌付けされてしまった。 いつの間にか『魔王専属料理人』として雇われてしまった陽人は、料理の腕一本で人間世界と魔族の架け橋となってしまう――。 料理と異世界が織りなす、ほのぼのグルメ・ファンタジー開幕!

俺得リターン!異世界から地球に戻っても魔法使えるし?アイテムボックスあるし?地球が大変な事になっても俺得なんですが!

くまの香
ファンタジー
鹿野香(かのかおる)男49歳未婚の派遣が、ある日突然仕事中に異世界へ飛ばされた。(←前作) 異世界でようやく平和な日常を掴んだが、今度は地球へ戻る事に。隕石落下で大混乱中の地球でも相変わらず呑気に頑張るおじさんの日常。「大丈夫、俺、ラッキーだから」

処理中です...