【野生の暴君が現れた!】忍者令嬢はファンタジーVRMMOで無双する【慈悲はない】《殺戮のパイルバンカー》

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剛輪禍産業革命-3:シティ・リビルド・チャレンジ

西側を防衛するタイプの教祖

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*「シュクレ! 私が向かうまで西側の防衛して!」*

 アニーさんからのクランチャットが表示されました。どうやら、彼女はすぐに来られない状況のようです。

*「了解です!」*

 私はアニーさんへクランチャットの返信を行い、今度はパーティーチャットへ表示を切り替えます。

*「レッドバロン各位、西側の状況を教えてください」*

 西側に配置された戦力は私と、シュクレ教の人達、それとレッドバロンの皆さんです。メメント・モリの戦力の凡そ3分の1ぐらいでしょうか。

*「盾を持った前衛と、銃を持った後衛に分かれて隊列を組んで橋を渡ってきてる! 数は1000以上!」*

 私はレッドバロンのプレイヤーから送られてきた情報を元に、一度状況を整理します。

「……」

 メメントモリが建設しているこの建物、通称"バビロン"は東と西に橋を持つ海上都市です。確か、大昔に東京で立案された夢物語みたいな都市計画を流用してゲームで再現するとアニーさんが言っていました。

 復興イベントで海上にもう一個、都市を作ってしまうという計画は荒唐無稽こうとうむけいに見えて、実に効果的に機能しています。

 ウォーランドを取り込んで得た鋳造技術で素材強度の問題を解決し、大型重機までも導入し、莫大なポイントを獲得しています。

 つまり、アニーさんが出て来られない理由は……。

*「おおい! シュクレちゃん! どうするんだ!」*

 思考に潜る私を、クランメッセージのアラート音が私を現実へ引き戻しました。まだ考えがまとまっていません。

 私はアニーさんみたいに、必要な部分だけを抜き出して考えるのが苦手です。考えをまとめる為に、最初から考える必要があります。

 ですが、今はそんな事を言っている余裕は無いようです。

*「えっえっと……橋の下にインフラ整備用の小さな足場と管があります。レッドバロンの皆さんはソレをつたって潜んでいてください」*

 レッドバロンの皆さんは高速戦闘を軸とした近接戦闘が主体のプレイヤーです。実夢境街の魔銃による攻撃に晒されてしまえば、戦いになりません。

*「マジかよ……!」*

*「おもしれぇじゃん!」*

 レッドバロンの皆さんが早速、行動に移っていただいたようです。外が確認できないのはもどかしいですね。

*「しゅ、シュクレ教の皆さんは物陰に隠れながら、散発的な迎撃を行なってください」*

 自分で"シュクレ教"と言うのはやはり恥ずかしくて慣れないですね。もっと適切な表現もあると思います。

*「おい、このママじゃせっかく作った建物が壊されちまうぞ!」*

 パーティーチャットに焦ったようなメッセージが並びます。現在の作戦では、相手の数に対してとても対抗できません。

 メニューを確認すると、被害状況に比例してメメント・モリのポイントが減じていくのが分かります。普通に全力で戦えば、一時的にこの減少を抑える事は可能でしょう。

 ですが、それでは最終的に防衛ラインを突破されてしまいます。都市部へ被害が及ぶ事態に比べれば、この程度は必要経費です。

*「敵戦列、橋の中央地点を突破!」*

 シュクレ教の人から、パーティチャットで状況が報告されます。状況を直接見る事ができませんが、チャット欄の遷移を見るだけでその場の緊迫感がひしひしと伝わっています。

*「おい、まだか!」*

 まだです。

*「橋の3分の2を踏破!」*

*「今です!」*

 次の瞬間、パーティーチャットが静かになります。誰1人として、チャットをする余裕が無くなったのでしょう。

 やがて、遠くから巨大な爆発音が響き渡り、私のいる場所まで空間の振動が伝わってきました。

*「レッドバロンの皆さん、あとは好きにしてください」*

*「もう始めてるぜ!」*

*「シュクレちゃん、中々やるじゃねぇか!」*

*「ヒャッハー!」*

 またパーティーチャットが賑やかになってきました。情報によると、シュクレ教の皆さんが放った一撃は盾持ちを含めて前線を崩壊させたようです。

 陣形が崩れた所に、橋の裏に隠れていたレッドバロンの皆さんが背後から襲い掛かります。

*「何方どなたか、彼我の残存戦力を教えてください」*

*「敵方、凡そ半数がロスト! シュクレ教は3分の1がロスト! レッドバロンは良く分かりません!」*

 シュクレ教のプレイヤーが教えてくれました。レッドバロンの皆さんは今、お楽しみ中でそれどころでは無いようでした。

 シュクレ教の皆さんに出た被害は、魔法の発動時に射撃された物による被害でしょう。残念ですが、やはり必要経費です。

 しかし、彼らにはまだ使い道があります。予想される今後の展開から、今は温存するべきでしょう。

*「シュクレ教の皆さんは1度、身を隠してください」*

 次に、レッドバロンの皆さんへ指示を出すべきか、少しだけ悩みました。もしアニーさんなら、どの様な判断を下したでしょうか。

 彼らにも、まだ果たして欲しい役割があります。しかし、その為に私が取るべき行動にはいくつかの選択肢が有るように感じられました。

「……」

 私は深呼吸をして、一時的な沈黙を選びました。アニーさんなら、そのように判断すると考えたからです。
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