【野生の暴君が現れた!】忍者令嬢はファンタジーVRMMOで無双する【慈悲はない】《殺戮のパイルバンカー》

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オーディアス攻略作戦

ボス戦に挑むタイプのJK

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 門の先に広がるのは、ここが地下ダンジョンだとは思えない光景だった。広大な庭園が広がって、中央には池がある。

 池の水面は綺麗に透き通っていて、紅色のこいが泳いでいた。池の周りには色とりどりの花が咲き乱れ、甘い香りが漂っている。

「これは、ちょっと予想外でしたね」

 シュクレが周囲を見渡しながら呟く。庭園ていえんの各所には大小様々な石灯籠いしとうろうが立ち並び、夕暮れ時の柔らかな日差しが灯籠を照らし出し、その影がゆらゆらと動いて不思議な雰囲気をかもし出していた。

「こう言う演出はゲームだからできることだよなぁ、まぁ……地下ダンジョンの到着視点がどう考えても外っていうのはリアリティという面では違和感があるが」

 シマーズさんが頷く。

「それより、ボスは……?」

 ヨイニが盾を構えて、周囲を警戒しながら言葉をこぼす。その声へ答える様に、クダンちゃんが地面へ耳をくっつけた。

「あっちです!」

 クダンちゃんがバッと顔を上げて広間の一方を指差す。池を挟んだ向こう側、茶室の様な小屋から人型の何かが姿を現した。

 私たちがそれを認識したのと同時に、相手も私たちを認識したようだ。大きく跳躍して、私たちの前まで飛んでくる。

「鬼……?」

 シマーズさんが呟く様に言葉を溢した。

  頭上に"悪魔付き"と表示された小柄な人形モンスター。それはクダンちゃんの様な忍者装束に身を包み、顔には鬼の様な面を被っていた。

「……あっヨイニ!」

「カバームーブ!」

 ほとんど直感の領域で何かを感じてヨイニの名前を呼んだ。彼女は即座に答えて、スキルによって盾を構えたままシマーズさんの正面へ瞬時に移動した。直後、火花と共に金属音がひびく。

「シャドウバインド!」

 クダンちゃんが悪魔付きの影へ向かってクナイを投げた。悪魔付きはそれを飛び上がって回避する。

「アトラクト・ボール!」

 飛び上がった瞬間を見逃さず、私はスキルによって右腕から光球を放つ。このスキルはダメージが無い代わりに、スタン効果と私の方向へ吹き飛ぶという効果を持っている。

 悪魔付きから無機質な声が放たれた。

「"影踏み"」

「まじかコイツ!」

 黒い霧の様なエフェクトと共に、悪魔付きの姿が空中から一瞬で消滅する。このエネミー、プレイヤーのスキルを使ってきた。驚愕の声を上げるシマーズさんを他所に、私は即座に後へ振り返る。

「キヒッ……面白くなってきたね!」

 振り下ろされる刀に向かって軌道を合わせる様に拳を突き出す。インパクトの瞬間に拳を捻る。

「なんっ」

 "白刃流し"によってカウンターを決めいようとしたのに、突き出した右腕が悪魔付きのもう1つの武器によって弾かれる。

「あれは……」

 隊列の前後を入れ替えながら、シュクレが疑問をつぶやく。彼女の視線は悪魔付きの左腕に注がれていた。

 そこには禍々しく、異形の武器が握られている。それは握り手の前後、両方から刃が伸びていた。

金剛杵こんごうしょ、密教における法具の1つで……神話の時代に神々が使った武器らしいよ」

「あんなに禍々しかったか?」

 私の解説に、ゴングマンさんが疑問を浮かべる。

 彼のいう通り、本来の形からはかけ離れた形状をしていた。順手側は突き刺す事に特化した形状をしていて、逆手側はカランビットナイフの様に危険な歪曲をしている。

「まあ、ゲームだし」

「それもそうか」

「それで、対策はあるっすか?」

「万能であると同時に中途半端な武器だから、純粋に物量で押しつぶす!」

 ムエルケさんの質問に答えると同時に、私は悪魔付きへ突撃していった。牽制する様に金剛杵が突き出される。

「それはもう見た!」

 悪魔付きの攻撃を万年寒鉄のガントレットで弾く、 ワンテンポ遅れて迫る刀も同様に弾く。

 防御に徹すれば、悪魔付きの攻撃は防ぎ切れる。私の意図を察したヨイニが皆へ指示を飛ばした。

「クダンは隙を見てシャドウバインドで牽制して! ゴングマンさんはアニーの援護に! シマーズさんとムエルケさんは射程外から攻撃して! 僕はシュクレちゃんを守る!」





 30分間、私たちは戦い続けた。

 私が回避タンク、ゴングマンさんがサブタンクで、シマーズさんとムエルケさんがアタッカー。"影踏み"で移動されたらヨイニが"カバームーブ"でケアして、その間に私が追いついて同じことを繰り返す。

「シャドウバインド!」

 偶然なのか、減り続けるHPにAIが行動パターンを変えたのかはわからないけど、クダンちゃんのクナイが悪魔付きの影に刺さる。

「キハ! パイルバンカァー!」

 拘束時間はおよそ12フレーム、だけどこの瞬間においてはその時間は決定的な物になった。

 スキル発動と共に悪魔付きの腹部へアッパーカットを叩き込む。インパクトの瞬間に魔力で構成された釘が突き出された。

「トンズラ! アトラクトボール!」

 直後、トンズラで真上に飛び上がりアトラクトボールを放つ。悪魔付きがスタンしながら私の方、上空へ吹き飛ぶ。

「**********************!」

 斜線が通った瞬間、聞き取れない程高速で風の様な詠唱が紡がれる。"詠唱加速スペル・ブースト"を使ったシュクレの詠唱だ。

「プロミネンス・バーン!」

 直後、灼熱の光球が悪魔付きを包む。エフェクトの向こう側で、悪魔付きのHPゲージが削れてゼロになるがわかった。
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