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オーディアス攻略作戦
鳥居をくぐるタイプのJK
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トラップの張り巡らされたダンジョンを慎重に進んでいくと、開けた部屋へと辿り着いた。
部屋の隅には数珠を掛けた小さな祠があって、そこから微かにお香の香りが漂っている。壁面には古びた絵巻や掛け軸が飾られていて、戦っている忍者の姿が描かれていた。
「あの奥が、ボス戦という事でしょうか?」
そう言って、シュクレが部屋の奥の方を指差す。彼女の指し示す先には赤い鳥居の並ぶ回廊が見えた。
「見るからにそれっぽい雰囲気だよね」
私が答えると、シマーズさんが首を傾げた。
「ボス戦はさっき話していた"悪魔付き"とダンジョンに入った時、戦った人型モンスターが出てくるのかな?」
シマーズさんの言葉に、シュクレが首を左右に振る。
「いいえ、8割ぐらいの確率で単独ボスです」
「ほう、どうしてだ?」
「通称が"悪魔付き"だからです」
シュクレの回答に、その場にいる全員が首を傾げる。アニメなら頭上にクエッションマークが出ていただろう。一呼吸おいて、シマーズさんが小さく咳払いをする。
「もうちょい人類にわかる言語で」
「あっ……えっとシマーズさんは"悪魔"という単語にどういうイメージを持っていますか?」
「え、そりゃなんとなく悪そうなイメージ? 後は、西洋風な感じ?」
「そうですね。今の私たちが話している言葉と、当時の人類が話した言語には大きな隔たりがあります。"悪魔付き"という単語も、おそらくは現代へ伝わる間に変わってしまったか、意訳に近いでしょう」
シュクレちゃんが得意分野を説明されたマニアの如く高速で言葉を紡ぐ。まるで詠唱加速のスキルを使っているみたいだ。
「それがどうしたんだ?」
「"悪魔付き"という単語は情報が圧縮されすぎているんです。これを分解すると"人間とは異なる悪性の上位存在が乗り移っている"という事になりますよね?」
「ま、まぁそうかな?」
「人はどうしたって主観的な生物です。まだ文明が進んでいない時代ならそれは特に顕著になるでしょう。人は嫌いな対象を劣っていると見做しがちですし、自分を正義だと思いがちです」
シュクレの言葉に、シマーズさんがウンウンと頷く。だけど彼はまだ、彼女の伝えたい事には辿り着いていない。
「現代ですらそういうのはあるからなぁ……」
「普通、一族で最強の忍者に対して"悪魔"なんてニュアンスの単語を使いますか? 仮に"憑依"という点が特徴として重要だったとしても"神懸かり"とかでも良いじゃ無いですか」
「え、えーっと?」
シマーズさんが困った表情でヨイニの方へ視線を向けた。私もつられて彼女の方へ視線を送ると、半笑いで見つめ返される。
「要は現代において"悪魔付き"と翻訳される存在は一族からも忌み嫌われる様な存在だったってことだよ。共闘の可能性は低い」
「あ、あぁ! そういうことか!」
私がシュクレの話を元に彼女が言いたい結論を言うと、シマーズさんは納得した様に頷いた。
それはそうとここまでの会話と説明を"通称が悪魔付きだからです"で要約するのは中々の圧縮言語だったね。
先ほどまでシュクレがしていたボスの"悪魔付き"に関する考察を聞いて、思いついたことがある。
もしかしたら……私は現代における風間家の"悪魔付き"に該当する存在だと考えられないだろうか。
「……」
そんな事を考えたからか、鳥居を1つくぐる度に幼少期の記憶がフラッシュバックのように脳内を這いずり回る。
まだ善悪の区別も分からない様な子供の頃に道場で稽古を受けた時、私は……すごく、楽しみすぎた。あの時は気が付かなかったけど、その時、家族が私へ向けた表情はまるで、怯えているよう。
「あの……アニーさん、大丈夫ですか?」
歩みを進めながら、シュクレが心配そうな表情で私へ声をかけた。私はそれに首を傾げて聞き返しす。
「え、どうして?」
「今日はなんだか、アニーさんが静かなような……」
「うーん、そうかもね」
1つ鳥居をくぐる度に、過去の記憶がフラッシュバックする。私の認め難い考えを肯定するシーンが蘇る。
「あの、もしかして私、何か……」
「あはは、違うよ」
私は笑いながら、不安そうにするシュクレの頭へ手を乗せて、軽くポンポンと叩く。
「別に、シュクレは何も悪く無いよ。まぁなんて言うか、ちょっと色々考えることがあるだけ」
「そ、そうですか……私にできることがあったら言ってください!」
「僕も忘れないでくれよ」
話を聞いていたのか、前方を歩くヨイニが軽く腕を挙げ声をかけた。私は小さく笑ってそれに答える。
「もちろん」
やがて連なった鳥居は終わって、眼前に紋章の描かれた大きな門が現れた。この紋章は見たことがある。
風間家の家紋にちょっとアレンジが入ったデザインで……私の部屋の前にも同じものがあった。
「よぉし、じゃあボス戦だ!」
言うてここはゲームの世界だ。身バレの危機には注意しないといけないけど、それ以外に関してあまり考えてもしょうがない。
ゲームは楽しむものだもんね!
部屋の隅には数珠を掛けた小さな祠があって、そこから微かにお香の香りが漂っている。壁面には古びた絵巻や掛け軸が飾られていて、戦っている忍者の姿が描かれていた。
「あの奥が、ボス戦という事でしょうか?」
そう言って、シュクレが部屋の奥の方を指差す。彼女の指し示す先には赤い鳥居の並ぶ回廊が見えた。
「見るからにそれっぽい雰囲気だよね」
私が答えると、シマーズさんが首を傾げた。
「ボス戦はさっき話していた"悪魔付き"とダンジョンに入った時、戦った人型モンスターが出てくるのかな?」
シマーズさんの言葉に、シュクレが首を左右に振る。
「いいえ、8割ぐらいの確率で単独ボスです」
「ほう、どうしてだ?」
「通称が"悪魔付き"だからです」
シュクレの回答に、その場にいる全員が首を傾げる。アニメなら頭上にクエッションマークが出ていただろう。一呼吸おいて、シマーズさんが小さく咳払いをする。
「もうちょい人類にわかる言語で」
「あっ……えっとシマーズさんは"悪魔"という単語にどういうイメージを持っていますか?」
「え、そりゃなんとなく悪そうなイメージ? 後は、西洋風な感じ?」
「そうですね。今の私たちが話している言葉と、当時の人類が話した言語には大きな隔たりがあります。"悪魔付き"という単語も、おそらくは現代へ伝わる間に変わってしまったか、意訳に近いでしょう」
シュクレちゃんが得意分野を説明されたマニアの如く高速で言葉を紡ぐ。まるで詠唱加速のスキルを使っているみたいだ。
「それがどうしたんだ?」
「"悪魔付き"という単語は情報が圧縮されすぎているんです。これを分解すると"人間とは異なる悪性の上位存在が乗り移っている"という事になりますよね?」
「ま、まぁそうかな?」
「人はどうしたって主観的な生物です。まだ文明が進んでいない時代ならそれは特に顕著になるでしょう。人は嫌いな対象を劣っていると見做しがちですし、自分を正義だと思いがちです」
シュクレの言葉に、シマーズさんがウンウンと頷く。だけど彼はまだ、彼女の伝えたい事には辿り着いていない。
「現代ですらそういうのはあるからなぁ……」
「普通、一族で最強の忍者に対して"悪魔"なんてニュアンスの単語を使いますか? 仮に"憑依"という点が特徴として重要だったとしても"神懸かり"とかでも良いじゃ無いですか」
「え、えーっと?」
シマーズさんが困った表情でヨイニの方へ視線を向けた。私もつられて彼女の方へ視線を送ると、半笑いで見つめ返される。
「要は現代において"悪魔付き"と翻訳される存在は一族からも忌み嫌われる様な存在だったってことだよ。共闘の可能性は低い」
「あ、あぁ! そういうことか!」
私がシュクレの話を元に彼女が言いたい結論を言うと、シマーズさんは納得した様に頷いた。
それはそうとここまでの会話と説明を"通称が悪魔付きだからです"で要約するのは中々の圧縮言語だったね。
先ほどまでシュクレがしていたボスの"悪魔付き"に関する考察を聞いて、思いついたことがある。
もしかしたら……私は現代における風間家の"悪魔付き"に該当する存在だと考えられないだろうか。
「……」
そんな事を考えたからか、鳥居を1つくぐる度に幼少期の記憶がフラッシュバックのように脳内を這いずり回る。
まだ善悪の区別も分からない様な子供の頃に道場で稽古を受けた時、私は……すごく、楽しみすぎた。あの時は気が付かなかったけど、その時、家族が私へ向けた表情はまるで、怯えているよう。
「あの……アニーさん、大丈夫ですか?」
歩みを進めながら、シュクレが心配そうな表情で私へ声をかけた。私はそれに首を傾げて聞き返しす。
「え、どうして?」
「今日はなんだか、アニーさんが静かなような……」
「うーん、そうかもね」
1つ鳥居をくぐる度に、過去の記憶がフラッシュバックする。私の認め難い考えを肯定するシーンが蘇る。
「あの、もしかして私、何か……」
「あはは、違うよ」
私は笑いながら、不安そうにするシュクレの頭へ手を乗せて、軽くポンポンと叩く。
「別に、シュクレは何も悪く無いよ。まぁなんて言うか、ちょっと色々考えることがあるだけ」
「そ、そうですか……私にできることがあったら言ってください!」
「僕も忘れないでくれよ」
話を聞いていたのか、前方を歩くヨイニが軽く腕を挙げ声をかけた。私は小さく笑ってそれに答える。
「もちろん」
やがて連なった鳥居は終わって、眼前に紋章の描かれた大きな門が現れた。この紋章は見たことがある。
風間家の家紋にちょっとアレンジが入ったデザインで……私の部屋の前にも同じものがあった。
「よぉし、じゃあボス戦だ!」
言うてここはゲームの世界だ。身バレの危機には注意しないといけないけど、それ以外に関してあまり考えてもしょうがない。
ゲームは楽しむものだもんね!
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