【野生の暴君が現れた!】忍者令嬢はファンタジーVRMMOで無双する【慈悲はない】《殺戮のパイルバンカー》

オモチモチモチモチモチオモチ

文字の大きさ
123 / 149
オーディアス攻略作戦

ホットサンドを提供するタイプのJK

しおりを挟む
「それに! 影響力とか強さで言うならアニーさんの方がとんでもないことになってるじゃないですか!」

 話題を自分から逸らそうと必死のシュクレがそう言って私の方を指差す。咄嗟とっさのことに私は首を傾げて聞き返した。

「私?」

「そうです! IAF内最大規模のクラン"メメント・モリ"のクランマスター! "暴君"や"バロンロード"など数多の異名を持つアニー・キャノンさんです!!」

「確かにメメントモリは数だけは多いけど……多分私が号令かけても50人ぐらいしか集まらないよ?」

 シュクレの言う通り、メメントモリのメンバー数はそろそろ300名を超える勢い。それだけ聞けば凄そうだけど、コンセプトは"各自が好きなことを好きなようにやる"だ。

 指示系統とか、統率という概念がそもそも無い。一応、呼び掛ければ興味がある人は顔出すだろうけど……。

「いいや、それは過小評価だな。多分、150人ぐらいはいけるだろ」

 声の方へ視線を送ると、筋骨隆々のスキンヘッドなマッチョの男が立っていた。メメントモリの内部組織、PVPガチ勢を集めた"ブルーバロン"の取りまとめをしてくれているゴングマンさんだ。

「おかえり、ゴリラマンさん!」

 私は椅子に座ったまま、小さく手を振る。

「ゴリラじゃねぇ! ゴングだ!!」

 私の返事にゴングマンさんがいつもの様にツッコミを入れる。その後ろから、今度は恐ろしく着崩した修道女の風の小柄な女性が現れた。

「というかボスが号令をかけるならシュクレ師匠が動くわけだし、そしたらもう200人以上は確実っすよ?」

 やたらと後輩ムーブが似合う、ムエルケさんだ。彼女のシュクレ教の1人なんだけど、メメントモリでは貴重な回復担当でもある。

「後は、クダンちゃんかな?」

 それぞれが挨拶をすると、ヨイニが視線を右端へ移しながら口を開く。私たちには見えないけど、彼女の視界にはその位置に時計か何かが表示されているんだろう。

「あ、あの……もういます……」

 ヨイニの言葉に、どこからともなく声が返ってくる。皆で周囲をキョロキョロと見回すと、ヨイニの背中からちょこっと顔を半分だけ見せた。

「えっいつから……?」

「アニーさんの次ぐらいです」

 しかも、結構最初の方からいたらしい。プレイヤーはログインすると光リングのエフェクトがあるはずなんだけど、全然気が付かなかった。

「全然気が付かなかった!」

 ヨイニが驚いて椅子から立ち上がり、クダンちゃんの姿がやっと見える。黒髪ボブカットの少女で、忍者装束に身を包んでいる。

「わっわ」

 一瞬だけ姿を見せてくれたクダンちゃんだけど、またすぐヨイニの背中へと隠れてしまった。

「俺らはともかく、真後ろにいたヨイニが気が付かないのは流石にどうなんだ……?」

 困惑した様子で問いかけるゴングマンさんに、ヨイニが苦笑いを浮かべながら頬をポリポリとかく。

「ま、流石は"フォートシュロフ神聖騎士団"のお庭番ってことで」

 クダンちゃんは、ヨイニがクランマスターを務める"フォートシュロフ神聖騎士団"のお庭番という役職になっている。

 実際にはダンジョン攻略をする時に索敵、罠感知と解除なんかを専門に担当するプレイヤーだ。なんで騎士団にお庭番があるのかと言うと、その場のノリで決まったらしい。

「あっご飯できたよー」

 タイミングよく、さっきから焚き火で暇つぶしに作っていたホットサンドが完成した。

「お、具材はなんだ?」

 私は黙々とホットサンドメーカーを取り出したあたりから何の料理かは分かっていたであろうシマーズさんが具材を聞いてくる。

「灼熱ウィンナーをメインにチーズとか野菜とか色々」

 灼熱ウィンナーにはMP回復、野菜にはAGI上昇、チーズには効果総量上昇、パンには効果時間延長の作用がある。

 私がホットサンドメーカーをシマーズさんへ向けると、彼はそれを一枚取って口へと運ぶ。

「お、やっぱり美味いな」

 ホットサンドを口にしたシマーズさんが嬉しそうに頷く。現実では料理人をしているらしい彼からの高評価は嬉しい。

「アニーは料理が上手だよなー」

 今度はヨイニがホットサンドメーカーからホットサンドを一枚取って、美味しそうに頬張る。

「シュクレも、これはそんなに辛く感じないから」

「あ、いえ私は……」

 シュクレが遠慮するように手のひらを見せる、その手は僅かに震えているのが分かった。

 IAFでは辛い料理程MP回復効果が高いけど、彼女は辛い物が苦手だ。特にMP回復量と即効性に優れる反面、相応に理不尽な辛さを誇る灼熱ウィンナーは天敵だったりする。

「ちなみに、もし戦闘中にシュクレのMPが亡くなった場合は灼熱ウィンナーの現物を無理やりお口にじ込むけど?」

 私は真顔で、冷静かつ合理的な事実を伝える。ちなみに、もしホットサンドを食べた上でMPが足りなくなっても同じだ。

 シュクレには悪いけど、彼女の魔法攻撃はそれだけ変えの効かない重要な戦力なんだよね。

 伊達に教祖やってない。

「た、食べます!」

 シュクレはか細く、しかし決意を持って答える。彼女が震える手でホットサンドを受け取ると、私たちの視線が彼女へ集中した。

 そしてちょっと、いやだいぶ警戒しながらそれを口へ運ぶ。一口食べると、彼女の顔の緊張が和らいて、ほっとした表情に変わった。

「あっこれ美味しいです!」

 シュクレの驚いた声が焚き火の周りに響いた。彼女の笑顔を見て、全員が安堵の笑みを浮かべる。

「やったね! シュクレ!」

「よく頑張った!」

「流石は師匠っす!」

 ヨイニ、ゴングマンさん、そしてムエルケさんが口々にシュクレを褒めちぎった。

「このホットサンド、灼熱ウィンナーの辛さをチーズと野菜、そしてパンで極力和らげているんだな」

 料理人のシマーズさんが、関心したように解説してくれる。私は自慢げに胸をそらして頷いた。

「えっへーん!」
しおりを挟む
感想 13

あなたにおすすめの小説

異世界召喚に条件を付けたのに、女神様に呼ばれた

りゅう
ファンタジー
 異世界召喚。サラリーマンだって、そんな空想をする。  いや、さすがに大人なので空想する内容も大人だ。少年の心が残っていても、現実社会でもまれた人間はまた別の空想をするのだ。  その日の神岡龍二も、日々の生活から離れ異世界を想像して遊んでいるだけのハズだった。そこには何の問題もないハズだった。だが、そんなお気楽な日々は、この日が最後となってしまった。

スーパーの店長・結城偉介 〜異世界でスーパーの売れ残りを在庫処分〜

かの
ファンタジー
 世界一周旅行を夢見てコツコツ貯金してきたスーパーの店長、結城偉介32歳。  スーパーのバックヤードで、うたた寝をしていた偉介は、何故か異世界に転移してしまう。  偉介が転移したのは、スーパーでバイトするハル君こと、青柳ハル26歳が書いたファンタジー小説の世界の中。  スーパーの過剰商品(売れ残り)を捌きながら、微妙にズレた世界線で、偉介の異世界一周旅行が始まる!  冒険者じゃない! 勇者じゃない! 俺は商人だーーー! だからハル君、お願い! 俺を戦わせないでください!

間違い召喚! 追い出されたけど上位互換スキルでらくらく生活

カムイイムカ(神威異夢華)
ファンタジー
僕は20歳独身、名は小日向 連(こひなた れん)うだつの上がらないダメ男だ ひょんなことから異世界に召喚されてしまいました。 間違いで召喚された為にステータスは最初見えない状態だったけどネットのネタバレ防止のように背景をぼかせば見えるようになりました。 多分不具合だとおもう。 召喚した女と王様っぽいのは何も持っていないと言って僕をポイ捨て、なんて世界だ。それも元の世界には戻せないらしい、というか戻さないみたいだ。 そんな僕はこの世界で苦労すると思ったら大間違い、王シリーズのスキルでウハウハ、製作で人助け生活していきます ◇ 四巻が販売されました! 今日から四巻の範囲がレンタルとなります 書籍化に伴い一部ウェブ版と違う箇所がございます 追加場面もあります よろしくお願いします! 一応191話で終わりとなります 最後まで見ていただきありがとうございました コミカライズもスタートしています 毎月最初の金曜日に更新です お楽しみください!

病弱少年が怪我した小鳥を偶然テイムして、冒険者ギルドの採取系クエストをやらせていたら、知らないうちにLV99になってました。

もう書かないって言ったよね?
ファンタジー
 ベッドで寝たきりだった少年が、ある日、家の外で怪我している青い小鳥『ピーちゃん』を助けたことから二人の大冒険の日々が始まった。

癒し目的で始めたVRMMO、なぜか最強になっていた。

branche_noir
SF
<カクヨムSFジャンル週間1位> <カクヨム週間総合ランキング最高3位> <小説家になろうVRゲーム日間・週間1位> 現実に疲れたサラリーマン・ユウが始めたのは、超自由度の高いVRMMO《Everdawn Online》。 目的は“癒し”ただそれだけ。焚き火をし、魚を焼き、草の上で昼寝する。 モンスター討伐? レベル上げ? 知らん。俺はキャンプがしたいんだ。 ところが偶然懐いた“仔竜ルゥ”との出会いが、運命を変える。 テイムスキルなし、戦闘ログ0。それでもルゥは俺から離れない。 そして気づけば、森で焚き火してただけの俺が―― 「魔物の軍勢を率いた魔王」と呼ばれていた……!? 癒し系VRMMO生活、誤認されながら進行中! 本人その気なし、でも周囲は大騒ぎ! ▶モフモフと焚き火と、ちょっとの冒険。 ▶のんびり系異色VRMMOファンタジー、ここに開幕! カクヨムで先行配信してます!

「キヅイセ。」 ~気づいたら異世界にいた。おまけに目の前にはATMがあった。異世界転移、通算一万人目の冒険者~

あめの みかな
ファンタジー
秋月レンジ。高校2年生。 彼は気づいたら異世界にいた。 その世界は、彼が元いた世界とのゲート開通から100周年を迎え、彼は通算一万人目の冒険者だった。 科学ではなく魔法が発達した、もうひとつの地球を舞台に、秋月レンジとふたりの巫女ステラ・リヴァイアサンとピノア・カーバンクルの冒険が今始まる。

異世界召喚された俺の料理が美味すぎて魔王軍が侵略やめた件

さかーん
ファンタジー
魔王様、世界征服より晩ご飯ですよ! 食品メーカー勤務の平凡な社会人・橘陽人(たちばな はると)は、ある日突然異世界に召喚されてしまった。剣も魔法もない陽人が頼れるのは唯一の特技――料理の腕だけ。 侵略の真っ最中だった魔王ゼファーとその部下たちに、試しに料理を振る舞ったところ、まさかの大絶賛。 「なにこれ美味い!」「もう戦争どころじゃない!」 気づけば魔王軍は侵略作戦を完全放棄。陽人の料理に夢中になり、次々と餌付けされてしまった。 いつの間にか『魔王専属料理人』として雇われてしまった陽人は、料理の腕一本で人間世界と魔族の架け橋となってしまう――。 料理と異世界が織りなす、ほのぼのグルメ・ファンタジー開幕!

俺得リターン!異世界から地球に戻っても魔法使えるし?アイテムボックスあるし?地球が大変な事になっても俺得なんですが!

くまの香
ファンタジー
鹿野香(かのかおる)男49歳未婚の派遣が、ある日突然仕事中に異世界へ飛ばされた。(←前作) 異世界でようやく平和な日常を掴んだが、今度は地球へ戻る事に。隕石落下で大混乱中の地球でも相変わらず呑気に頑張るおじさんの日常。「大丈夫、俺、ラッキーだから」

処理中です...