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電脳暴君はまだまだ夢の中
バズろう!
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「いいえ、そんなはずありません!」
私の言葉を、シュクレが声を荒げて否定する。目尻は吊り上がり、瞳には大粒の涙を浮かべていた。
「何か考えがあるの?」
私が無力感と共に答えると、シュクレは首を左右へブンブンと振った。彼女の動きに沿って、涙が左右へと散るのが見える。
「私には、わかりません。で、でも! アニーさんは今まで、私が考えもしない方法で、問題を解決していました!」
「それは、ゲームだからだよ。ゲームのイベントだったり、ゲームの中の話し。どれだけゲームで活躍したって、現実の私はただの女子高生だよ」
「関係ありません!」
いつも鈴が鳴る様な声音のシュクレから、信じられない程の怒気のこもった声が帰ってくる。
「確かに、ゲームでどれだけ数値上のステータスが高くなっても、強くなっても、現実でも強くなれるわけではありません」
シュクレが悔しそうに俯きながら、両手の拳を強く握って吐き出す様にそこまで告げる。
ゲームでは教祖の様に崇められる彼女も、現実では多分、不登校の中学生だ。ゲームでどれだけ強くなって、名声を得ても、現実は変わらない。その事実は、彼女にこそ、深く刺さっている。
彼女は強い意思で顔を上げて、私の目を見つめた。
「だけどアニーさんがこの世界で感じ、学び、成長し、実現してきた事は。それがゲームだからって……無価値にはならないじゃないですか!」
シュクレの言葉を聞いて、ヨイニが優しく微笑む。
「言いたい事、先に言われちゃったな」
ヨイニはシュクレの頭を優しく撫でると、私の方へ向き直った。
「僕は、アニーをこのゲームに誘ってよかったと思っている。君はこのゲームで多くの壁にぶつかって、その度に成長してきたんじゃないか?」
ヨイニの言葉に、私はこれまでにあった事を思い出す。最初のイベント、ゴブリン防衛戦、カタンの裏切り、第2回イベント。
数えればキリがない。確かに私はその度に不可能だと思って、でも、乗り越えてこられた。
不安定で危うい私の心が、それらの思い出によって補強、補修され、私に今までに無い力を与えてくれる。
カタンが腕を組んで、渋々と告げた。
「俺はお前みたいな人格破綻者を認めねぇ! ……だが、壊れた物が全くの無価値というわけでもない」
カタンに続いて、シマーズさんも真剣な表情で口を開いた。
「俺は、アニーちゃんを怖いと思ったことが結構ある」
「そりゃそうだろ」
うんうんと大きく頷くカタン。
「まぁ、そうですよね」
シュクレも小さく、しかしはっきりと頷いた。
「だってアニーだしな」
ヨイニ、お前もか!
確かにPKとかしている時はその感覚に酔いしれて奇声とか上げちゃってることがごく稀に、時々、何度か……比較的頻繁に、可能性が微粒子レベルで存在したかもだけど!
「でも今はその怖さが、頼もしいよ。アニーちゃんには、周りに"こいつは何かやってくれそうだ"って思わせる特別な力がある」
皆のそれぞれの言葉が、私に力を与えてくれる。心がスッと軽くなって、視野が広がっていく様に感じた。
「アニーさん、次は何をすれば良いですか?」
シュクレが力の籠った瞳で私を見つめ返す。
私はそれに大きく頷いた。
「バズる動画を作ろう!」
「……はぇ?」
私の回答に、シュクレが素っ頓狂な声を上げる。
「おいおい、こんな時に……」
カタンが何か常識的な事を言おうとするのをサクッと遮って、私は言葉を続ける。
「大規模な作戦ってどれだけ知恵をこねくり回したところで、結局は数が用意できなきゃお話にならないんだよね。だから、まずはプレイヤーをどれだけ集められるかが重要。集まった数と内容を見て、作戦はそれから決定しよう」
名付けて、難しい事は後で考える作戦だ。
「それで、バズ動画か……」
シマーズさんが納得した様に頷き、カタンが渋い顔で苦言を呈する。
「だが、そういうのってバズらせようとしてバズれるものじゃ無いだろ? それができれば苦労しないっていうか……」
「まぁ、そうだよね。でも、その確率を高める努力はできるわけじゃん? とにかくやるだけやってみて、最終的に集まった人数を見てまた考よう。というかそれ以上にできる事ないし」
「えらい割り切り方だな……」
「まぁ、努力でコントロールできない部分に頭悩ませていてもしゃーないじゃん? あんまり時間もないし」
私の言葉に、ヨイニがフッと笑顔になった。
「ま、そりゃそうだな」
「じゃ、配信は俺のチャンネルで良いんだよな? 告知ポストはどうする?」
シマーズさんがニカっと笑ってサムズアップをする。
「わ、私はひとまず、前線のメメントモリのメンバーにできうる限り前線を維持するようにお願いしてみますね」
ウィンドウを起動して、テキパキを動き出すシュクレ。
「お前と共闘するのは癪だが、今回ばかりはそうも言ってられないしな」
カタンが渋々と言った風に自らの後頭部をガシガシと掻きながら、吐き捨てるように頷いた。
さあ、イベント再開だ。
私の言葉を、シュクレが声を荒げて否定する。目尻は吊り上がり、瞳には大粒の涙を浮かべていた。
「何か考えがあるの?」
私が無力感と共に答えると、シュクレは首を左右へブンブンと振った。彼女の動きに沿って、涙が左右へと散るのが見える。
「私には、わかりません。で、でも! アニーさんは今まで、私が考えもしない方法で、問題を解決していました!」
「それは、ゲームだからだよ。ゲームのイベントだったり、ゲームの中の話し。どれだけゲームで活躍したって、現実の私はただの女子高生だよ」
「関係ありません!」
いつも鈴が鳴る様な声音のシュクレから、信じられない程の怒気のこもった声が帰ってくる。
「確かに、ゲームでどれだけ数値上のステータスが高くなっても、強くなっても、現実でも強くなれるわけではありません」
シュクレが悔しそうに俯きながら、両手の拳を強く握って吐き出す様にそこまで告げる。
ゲームでは教祖の様に崇められる彼女も、現実では多分、不登校の中学生だ。ゲームでどれだけ強くなって、名声を得ても、現実は変わらない。その事実は、彼女にこそ、深く刺さっている。
彼女は強い意思で顔を上げて、私の目を見つめた。
「だけどアニーさんがこの世界で感じ、学び、成長し、実現してきた事は。それがゲームだからって……無価値にはならないじゃないですか!」
シュクレの言葉を聞いて、ヨイニが優しく微笑む。
「言いたい事、先に言われちゃったな」
ヨイニはシュクレの頭を優しく撫でると、私の方へ向き直った。
「僕は、アニーをこのゲームに誘ってよかったと思っている。君はこのゲームで多くの壁にぶつかって、その度に成長してきたんじゃないか?」
ヨイニの言葉に、私はこれまでにあった事を思い出す。最初のイベント、ゴブリン防衛戦、カタンの裏切り、第2回イベント。
数えればキリがない。確かに私はその度に不可能だと思って、でも、乗り越えてこられた。
不安定で危うい私の心が、それらの思い出によって補強、補修され、私に今までに無い力を与えてくれる。
カタンが腕を組んで、渋々と告げた。
「俺はお前みたいな人格破綻者を認めねぇ! ……だが、壊れた物が全くの無価値というわけでもない」
カタンに続いて、シマーズさんも真剣な表情で口を開いた。
「俺は、アニーちゃんを怖いと思ったことが結構ある」
「そりゃそうだろ」
うんうんと大きく頷くカタン。
「まぁ、そうですよね」
シュクレも小さく、しかしはっきりと頷いた。
「だってアニーだしな」
ヨイニ、お前もか!
確かにPKとかしている時はその感覚に酔いしれて奇声とか上げちゃってることがごく稀に、時々、何度か……比較的頻繁に、可能性が微粒子レベルで存在したかもだけど!
「でも今はその怖さが、頼もしいよ。アニーちゃんには、周りに"こいつは何かやってくれそうだ"って思わせる特別な力がある」
皆のそれぞれの言葉が、私に力を与えてくれる。心がスッと軽くなって、視野が広がっていく様に感じた。
「アニーさん、次は何をすれば良いですか?」
シュクレが力の籠った瞳で私を見つめ返す。
私はそれに大きく頷いた。
「バズる動画を作ろう!」
「……はぇ?」
私の回答に、シュクレが素っ頓狂な声を上げる。
「おいおい、こんな時に……」
カタンが何か常識的な事を言おうとするのをサクッと遮って、私は言葉を続ける。
「大規模な作戦ってどれだけ知恵をこねくり回したところで、結局は数が用意できなきゃお話にならないんだよね。だから、まずはプレイヤーをどれだけ集められるかが重要。集まった数と内容を見て、作戦はそれから決定しよう」
名付けて、難しい事は後で考える作戦だ。
「それで、バズ動画か……」
シマーズさんが納得した様に頷き、カタンが渋い顔で苦言を呈する。
「だが、そういうのってバズらせようとしてバズれるものじゃ無いだろ? それができれば苦労しないっていうか……」
「まぁ、そうだよね。でも、その確率を高める努力はできるわけじゃん? とにかくやるだけやってみて、最終的に集まった人数を見てまた考よう。というかそれ以上にできる事ないし」
「えらい割り切り方だな……」
「まぁ、努力でコントロールできない部分に頭悩ませていてもしゃーないじゃん? あんまり時間もないし」
私の言葉に、ヨイニがフッと笑顔になった。
「ま、そりゃそうだな」
「じゃ、配信は俺のチャンネルで良いんだよな? 告知ポストはどうする?」
シマーズさんがニカっと笑ってサムズアップをする。
「わ、私はひとまず、前線のメメントモリのメンバーにできうる限り前線を維持するようにお願いしてみますね」
ウィンドウを起動して、テキパキを動き出すシュクレ。
「お前と共闘するのは癪だが、今回ばかりはそうも言ってられないしな」
カタンが渋々と言った風に自らの後頭部をガシガシと掻きながら、吐き捨てるように頷いた。
さあ、イベント再開だ。
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