魔獣使役で魔界生活~転生した先は魔王軍幹部の悪魔族でした~

UMA未確認党

文字の大きさ
41 / 67
第6章 ラクサスの牧場生活編

二人のネクロマンサー

しおりを挟む
アルファ帝国の廃塔の上に望遠鏡を持った影がある。見張りかと思うかもしれないが真実は否である。
フードを取ったところに現れたのは化粧をした青髪の女の頭である。首元に記された刻印はこの塔の所有者であるアルファ帝国ではなく、ベータ帝国の者であることを示していた。
ネクロマンサー
それは死体を自由自在に操る禁忌を用いる魔術師のことである。人の死体に魔法をかけることで理論上は世界的大英雄の死体まで操れる代物である。
ベータ帝国はその存在を公的に認めてはいない。当然であるそもそもむやみやたらに使えるようなら禁術などと言う名はつけられていない。古来より人の死体を用いることは生と死の概念を深く浸食するとされ忌むべきものであったのがこの世界の少なくともアルファ帝国とベータ帝国の風習である。

「ったく白骨死軍が半壊っていったい何が起こってるのよ…」
女はガムを悔しそうに噛みながら通信機を付ける。通信機に出てきたのは男だった。
「あ?何だよ。俺ちゃんは今忙しいんだよ。」
「イライラしてるじゃないわよ!白骨死軍デスパレードが全滅してるじゃない!アンタ早く応援を呼びなって!」
女はまたイラついてガムを噛み潰す。そうして双眼鏡を上に上げると、ネクロマンサーの女はまた別の恐ろしいことに気付く。今からこの塔に向かって爆速で翔けてくる怪物がいるではないか。
「あ、あれは…グリフォン!何であんなところに!」
グリフォンなど神話でしか聞いたことのないような怪物だ。体の大きさだけで何トンもあるだろう。猛々しい爪や巨大な翼もより恐怖心を煽って来る。そんなものが空気を切り裂いて急に目の前に近づいて来ようものなら悲鳴を上げずにはいられないだろう。更にグリフォンの上にコートをなびかせた男が乗っかっている。
「まさか…あのグリフォンを操っているというの…っては?!アンタ!どうかしなさいよ!」
女はそう言って向こうの通信機の向こうの男に声をかける。しかし…
「悪い、姉ちゃん…俺ちゃんもだわ。」
「は?」

ラクサスが塔に着く数分前
「お前が件のネクロマンサーか!」
ネロはそう声を上げて言う。片手にサーベルを持ち相手の首に突き付ける。
「へっへっへ…まさかね…俺ちゃんたちの白骨死軍デス・パレードを超えて来るとは…あれでも結構な精鋭そろえてたんだぞ…」
「残念だったな。あんなシンプルな白兵戦は朝飯前なんだよ!目をつむってでもお前らの軍は抜けられる。ハッハッハ!」
ネロはそう言って大笑いする。彼の身体には多数の傷がついていたがそれはいずれ治るだろう。ネロはたった数分で馬を走らせ、街の遥か奥にあるこの塔に行き着いたのである。道中には倒れて白骨がバラバラに並んでいた。
「ベータ帝国の差し金だろう?もう勝手に当国にちょっかい掛けるのを止めてくれとの魔王陛下からのお達しだ。とっとと尻尾巻いてお家に帰ることを勧めるよ。まぁ…」
ネロは腰の刃を抜き放った。
「俺は戦いたいだけだから、どっちかと言うと君には俺と戦って欲しいんだけどね!ネクロマンサーさん!」
「や、止め…俺そんなに身体能力高くないんだよ!」
しかしネロは…
「うるさぁぁぁぁい!」
と言ってネロが男をぶった切ろうとしたところで後ろの兎の獣人が止めに入る。
「ネロさん!待ってください。」
「ん?どうかした?ラビちゃん。」
ラビと呼ばれた女性は通信機を手に取る。
「これが通信機ならばきっと相手にも繋がっているはず。適当に偽情報でも吐かせましょう。」
「ん?あぁならそうする?タイガ!この男縛り上げてくれ。」
「うす!」
そう言ってネロたちが男を縛り上げて電話をしているのである。
「は?バカじゃないの!?何でそのバトルジャンキー野郎に負けてるのよ!」
情けなく思った女は怒ってガムを吐き捨てる。

ラクサスの乗ったグリフォンはそのまま塔に突っ込んでいき、ラクサスは矛を持って飛び移る準備をする。すると、コートの内側が動いている。
「行くか…お前ら!」
ラクサスはコートをはぎ取ると中から大量の短剣が出てきた。短剣はものすごい勢いで吹き飛んで行って、塔の窓ガラスを突き破っていく。
「きゃあ!何よ!」
「やっと会えたな。ネクロマンサーの女!とっとと倒れてもらうぞ!」
ラクサスはグリフォンを置いておくと、そのまま矛を構えて塔の中に乗り込んだ。
 
「ちょ、ちょっと待ってよ…アタシだってやりたくてやった訳じゃ…」
「そんな理屈が通じると思ってんのか!ガイコツ連中で街を荒らしやがって!責任は取ってもらうぞ?」
ラクサスはそう邪悪な笑みを浮かべると矛に雷のエネルギーを溜めた。彼にとっては既に彼女は敵としか認識していなかった。
「喰らいやがれ!」
ラクサスが矛の一撃を食らわせようとした瞬間…

「待て!」
ラクサスの矛をとある大剣が受け止めた。
「ん?!」
大剣の持ち主は仮面を付けており、さほど高い服を着ているわけではなかったが、神々しい雰囲気を保っており、ラクサスのような悪魔が踏み入れば一瞬ですべて吹き飛ぶだろうオーラだ。
「な、何だよお前!」
ラクサスは慌てて聞き返す。
(どう考えてもおかしいだろ…潜在的なオーラがおかしい。前に戦ったヴェールの比じゃねぇぞ…)
悪魔族であるラクサスはある程度オーラを感知できるようになっていたが、この男のオーラはどう考えてもおかしい。
大剣を持っている男は小さくつぶやいた。
「俺は勇者だよ。」
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

ゲームの悪役パパに転生したけど、勇者になる息子が親離れしないので完全に詰んでる

街風
ファンタジー
「お前を追放する!」 ゲームの悪役貴族に転生したルドルフは、シナリオ通りに息子のハイネ(後に世界を救う勇者)を追放した。 しかし、前世では子煩悩な父親だったルドルフのこれまでの人生は、ゲームのシナリオに大きく影響を与えていた。旅にでるはずだった勇者は旅に出ず、悪人になる人は善人になっていた。勇者でもないただの中年ルドルフは魔人から世界を救えるのか。

転生したら『塔』の主になった。ポイントでガチャ回してフロア増やしたら、いつの間にか世界最強のダンジョンになってた

季未
ファンタジー
【書き溜めがなくなるまで高頻度更新!♡٩( 'ω' )و】 気がつくとダンジョンコア(石)になっていた。 手持ちの資源はわずか。迫りくる野生の魔物やコアを狙う冒険者たち。 頼れるのは怪しげな「魔物ガチャ」だけ!? 傷ついた少女・リナを保護したことをきっかけにダンジョンは急速に進化を始める。 罠を張り巡らせた塔を建築し、資源を集め、強力な魔物をガチャで召喚! 人間と魔族、どこの勢力にも属さない独立した「最強のダンジョン」が今、産声を上げる!

ギャルい女神と超絶チート同盟〜女神に贔屓されまくった結果、主人公クラスなチート持ち達の同盟リーダーとなってしまったんだが〜

平明神
ファンタジー
 ユーゴ・タカトー。  それは、女神の「推し」になった男。  見た目ギャルな女神ユーラウリアの色仕掛けに負け、何度も異世界を救ってきた彼に新たに下った女神のお願いは、転生や転移した者達を探すこと。  彼が出会っていく者たちは、アニメやラノベの主人公を張れるほど強くて魅力的。だけど、みんなチート的な能力や武器を持つ濃いキャラで、なかなか一筋縄ではいかない者ばかり。  彼らと仲間になって同盟を組んだユーゴは、やがて彼らと共に様々な異世界を巻き込む大きな事件に関わっていく。  その過程で、彼はリーダーシップを発揮し、新たな力を開花させていくのだった!  女神から貰ったバラエティー豊かなチート能力とチートアイテムを駆使するユーゴは、どこへ行ってもみんなの度肝を抜きまくる!  さらに、彼にはもともと特殊な能力があるようで……?  英雄、聖女、魔王、人魚、侍、巫女、お嬢様、変身ヒーロー、巨大ロボット、歌姫、メイド、追放、ざまあ───  なんでもありの異世界アベンジャーズ!  女神の使徒と異世界チートな英雄たちとの絆が紡ぐ、運命の物語、ここに開幕! ※不定期更新。最低週1回は投稿出来るように頑張ります。 ※感想やお気に入り登録をして頂けますと、作者のモチベーションがあがり、エタることなくもっと面白い話が作れます。

​【マグナギア無双】チー牛の俺、牛丼食ってボドゲしてただけで、国王と女神に崇拝される~神速の指先で戦場を支配し、気づけば英雄でした~

月神世一
ファンタジー
「え、これ戦争? 新作VRゲーじゃなくて?」神速の指先で無自覚に英雄化! ​【あらすじ紹介文】 「三色チーズ牛丼、温玉乗せで」 それが、最強の英雄のエネルギー源だった――。 ​日本での辛い過去(ヤンキー客への恐怖)から逃げ出し、異世界「タロウ国」へ転移した元理髪師の千津牛太(22)。 コミュ障で陰キャな彼が、唯一輝ける場所……それは、大流行中の戦術ボードゲーム『マグナギア』の世界だった! ​元世界ランク1位のFPS技術(動体視力)× 天才理髪師の指先(精密操作)。 この二つが融合した時、ただの量産型人形は「神速の殺戮兵器」へと変貌する! ​「動きが単調ですね。Botですか?」 ​路地裏でヤンキーをボコボコにしていたら、その実力を国王に見初められ、軍事用巨大兵器『メガ・ギア』のテストパイロットに!? 本人は「ただのリアルな新作ゲーム」だと思い込んでいるが、彼がコントローラーを握るたび、敵国の騎士団は壊滅し、魔王軍は震え上がり、貧乏アイドルは救われる! ​見た目はチー牛、中身は魔王級。 勘違いから始まる、痛快ロボット無双ファンタジー、開幕!

スライム10,000体討伐から始まるハーレム生活

昼寝部
ファンタジー
 この世界は12歳になったら神からスキルを授かることができ、俺も12歳になった時にスキルを授かった。  しかし、俺のスキルは【@&¥#%】と正しく表記されず、役に立たないスキルということが判明した。  そんな中、両親を亡くした俺は妹に不自由のない生活を送ってもらうため、冒険者として活動を始める。  しかし、【@&¥#%】というスキルでは強いモンスターを討伐することができず、3年間冒険者をしてもスライムしか倒せなかった。  そんなある日、俺がスライムを10,000体討伐した瞬間、スキル【@&¥#%】がチートスキルへと変化して……。  これは、ある日突然、最強の冒険者となった主人公が、今まで『スライムしか倒せないゴミ』とバカにしてきた奴らに“ざまぁ”し、美少女たちと幸せな日々を過ごす物語。

旧校舎の地下室

守 秀斗
恋愛
高校のクラスでハブられている俺。この高校に友人はいない。そして、俺はクラスの美人女子高生の京野弘美に興味を持っていた。と言うか好きなんだけどな。でも、京野は美人なのに人気が無く、俺と同様ハブられていた。そして、ある日の放課後、京野に俺の恥ずかしい行為を見られてしまった。すると、京野はその事をバラさないかわりに、俺を旧校舎の地下室へ連れて行く。そこで、おかしなことを始めるのだったのだが……。

魔王を倒した勇者を迫害した人間様方の末路はなかなか悲惨なようです。

カモミール
ファンタジー
勇者ロキは長い冒険の末魔王を討伐する。 だが、人間の王エスカダルはそんな英雄であるロキをなぜか認めず、 ロキに身の覚えのない罪をなすりつけて投獄してしまう。 国民たちもその罪を信じ勇者を迫害した。 そして、処刑場される間際、勇者は驚きの発言をするのだった。

処理中です...