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第3章
第37話 初代雪はスズランの香り
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――山梨県に広がる樹海。
この世界の樹海も人を拒むように自然が支配した地。否、ここを支配しているのはモンスターだ。
「さすがにこの辺は強いモンスターが多いな……」
たった今頭を切り落としたハイオーガもランクBだ。
Bと言えば熟練の戦闘経験者がどうにか倒せるくらいの強さ……まさか『魔力武装』中の俺の初撃に反応されるとは思わなかった。防ごうと構えた棍棒ごと斬り伏せたが。
「……前方100メートル程、複数の敵対反応あり。恐らく『フォレストウルフ』の群れ」
「了解! 先手打ってくる!」
ウルフ系は単体ではランクCに位置するが、群れるとランクB以上とされる。
彼らが連携する前にこちらから打って出ようという目論見だ。
「ガウッ!? ――ギャンッ!」
「……」
不意打ちをする時は静かにね。
ということで、猛スピード同士での会敵はウルフが反応するよりも早く終わり、3体の死体が出来上がる。残り、5!
「グルルルル……!」
「ガァァアッ!」
「お?」
運良くその死体の中に群れのリーダーがいたか、様子を見る者と正面からこちらに飛びかかってくる者とに分かれてくれた。
「お前らの本当に恐ろしいのは連携らしいからね。助かるよ」
「ギャンッ!?」
「ガッ!」
「ガァァ!」
ある意味では連携取れた動きで3体同時に飛びかかって来てくれたものだから、一太刀で済む。助かる。
「グルルル……ガゥ!」
「……ワフッ!」
敵わないと悟ったか、残りの2体は後ろを振り返って走り去っていく。
俺も無益な殺生をしようとは思わないから――。
「――『トム・ザ・キャット』」
「ワフゥゥッ!?」
「ギャォォォ~ン!?」
と思っていたのだが、雪さんの超小型戦闘機で蜂の巣に……。
「1度敵対したモンスターは逃がしちゃダメ、特に仲間を殺した後は。他の仲間を連れて復讐に来るかも知れない」
「はい、すみませんでした! 雪先生!」
「ふふ、なぁにそれ」
え……?
「な、何? 急に黙って……」
ここで『不意に笑った顔が可愛すぎたんです』と言ってしまえば、恥ずかしがり屋さんの彼女は2度と笑ってくれないかもしれない。
「いや笑顔が可愛すぎて」
「……」
ほら! ほらぁっ! 『スン……』ってなっちゃったぁー! 俺のばかぁーーー!
「……ダンジョン、見えてきたよ」
「……うん」
そう、俺達は今樹海の中にあるダンジョンの1つを破壊するためにここまで来た。
ランクは脅威のA、出現モンスターは蜘蛛型。もう嫌な予感しかしない。
「蜘蛛かぁ~……正直嫌過ぎる」
「虫、嫌いなの?」
「蜘蛛は昆虫ではなく、正式には節足動物門鋏角亜門クモガタ綱クモ目という動物である。昆虫との主な区別点は、脚の数が8本であること、体は前体と後体の2部のみによって構成されることなどがある。あの小さい体に脚が複数あるということだけでも悍ましいのに、それが8本だ。わかるかね、蜘蛛の恐ろしさが」
「く、詳しいのね、凜音先生……」
敵であるからこそ、詳しく知らねばならぬのだよ。
「……大丈夫なの? そんな苦手なモンスターのところで」
「まぁ、いつかは通らなきゃいけない道だろうし……ある意味では俺と相性がいいんだ」
前回から続く検証の一環。
“難易度によってコア・ビーストの強さは変わるのか”ということでここが選ばれた。まぁ……ランクEで神話の生物である鳳凰なんて出たんだ、ほとんど答えは出てるようなもんだけど。
「蜘蛛ダンジョンなんて資源として優秀かと思いきや、その糸による事前予測不能の活きたトラップや単純なランクAとしての蜘蛛の強さから割に合わな過ぎて政府も管理を諦めるほど。それを――」
「そ、それを……?」
「無理やり突破する。力ずくで」
力ずく……何て素敵な言葉!
「え……?」
「つまり、『魔力武装』で身を守りつつ剣を振り回しながら猛ダッシュするってこと!」
ん~、シンプル!
「そ、それは……本当に大丈夫なの?」
「ダメだったら、雪さんだけでも逃げておくれ。俺にはダンジョンを破壊する使命がある」
実際は問題ないだろうと確信してるけど。いくらランクAといえど、鳳凰やミスリルゴーレムの攻撃よりは痛くないはず。あれは死ぬほど痛かった。
「い、いやだ! 置いてなんて行けない!」
「必死な顔もかわいい――はっ!?」
またやってしまった!
「そんな――」
「でさ! そういう攻略をする訳で! 申し訳ないんだけど、雪さんを抱っこして行く必要がありまして!」
誤魔化すように捲し立てる。もっとひどいこと言ってる気がするけど。
さすがにランクAという高難易度に1人で挑むのは心配ですわぁ~~~、ということで雪さんに白羽の矢が立って来てもらった訳なんだけども。
「――へっ?」
「事情を知ってるかつ俺の外套にすっぽり入れるかつ頼りになるかつかわ――こほん」
危ない危ない、俺は同じミスを犯す男ではないのだ。
「……ミコが言ってた『うらやま』ってこのこと……」
「え? 何か言った?」
ボソッと何かを呟いた雪さん。さすがに嫌だってことかな……。
「……ん」
「そ、それじゃあ失礼して……」
恥ずかしそうに両手を広げる雪さん――かわよ――を抱き上げる。
「うぅ……やっぱ恥ずかしいぃ~……」
「……大丈夫、これはダンジョン攻略のための必要な行動だ。雪さんには負担を強いてしまい大変申し訳ないがこの行動に羞恥や他の後ろめたい感情を抱く必要はない。例え雪さんがいい匂いだとしてもそこに良からぬ感情を抱くことはないしあってはならないなぜならばこれはダンジョン攻略のために必要な行動だからだ」
よし、冷静さをアピールできたぞ!
ここで『いい匂い』などと口を滑らせようものなら軽蔑されてしまうからね!
「……ばか」
何で!?
この世界の樹海も人を拒むように自然が支配した地。否、ここを支配しているのはモンスターだ。
「さすがにこの辺は強いモンスターが多いな……」
たった今頭を切り落としたハイオーガもランクBだ。
Bと言えば熟練の戦闘経験者がどうにか倒せるくらいの強さ……まさか『魔力武装』中の俺の初撃に反応されるとは思わなかった。防ごうと構えた棍棒ごと斬り伏せたが。
「……前方100メートル程、複数の敵対反応あり。恐らく『フォレストウルフ』の群れ」
「了解! 先手打ってくる!」
ウルフ系は単体ではランクCに位置するが、群れるとランクB以上とされる。
彼らが連携する前にこちらから打って出ようという目論見だ。
「ガウッ!? ――ギャンッ!」
「……」
不意打ちをする時は静かにね。
ということで、猛スピード同士での会敵はウルフが反応するよりも早く終わり、3体の死体が出来上がる。残り、5!
「グルルルル……!」
「ガァァアッ!」
「お?」
運良くその死体の中に群れのリーダーがいたか、様子を見る者と正面からこちらに飛びかかってくる者とに分かれてくれた。
「お前らの本当に恐ろしいのは連携らしいからね。助かるよ」
「ギャンッ!?」
「ガッ!」
「ガァァ!」
ある意味では連携取れた動きで3体同時に飛びかかって来てくれたものだから、一太刀で済む。助かる。
「グルルル……ガゥ!」
「……ワフッ!」
敵わないと悟ったか、残りの2体は後ろを振り返って走り去っていく。
俺も無益な殺生をしようとは思わないから――。
「――『トム・ザ・キャット』」
「ワフゥゥッ!?」
「ギャォォォ~ン!?」
と思っていたのだが、雪さんの超小型戦闘機で蜂の巣に……。
「1度敵対したモンスターは逃がしちゃダメ、特に仲間を殺した後は。他の仲間を連れて復讐に来るかも知れない」
「はい、すみませんでした! 雪先生!」
「ふふ、なぁにそれ」
え……?
「な、何? 急に黙って……」
ここで『不意に笑った顔が可愛すぎたんです』と言ってしまえば、恥ずかしがり屋さんの彼女は2度と笑ってくれないかもしれない。
「いや笑顔が可愛すぎて」
「……」
ほら! ほらぁっ! 『スン……』ってなっちゃったぁー! 俺のばかぁーーー!
「……ダンジョン、見えてきたよ」
「……うん」
そう、俺達は今樹海の中にあるダンジョンの1つを破壊するためにここまで来た。
ランクは脅威のA、出現モンスターは蜘蛛型。もう嫌な予感しかしない。
「蜘蛛かぁ~……正直嫌過ぎる」
「虫、嫌いなの?」
「蜘蛛は昆虫ではなく、正式には節足動物門鋏角亜門クモガタ綱クモ目という動物である。昆虫との主な区別点は、脚の数が8本であること、体は前体と後体の2部のみによって構成されることなどがある。あの小さい体に脚が複数あるということだけでも悍ましいのに、それが8本だ。わかるかね、蜘蛛の恐ろしさが」
「く、詳しいのね、凜音先生……」
敵であるからこそ、詳しく知らねばならぬのだよ。
「……大丈夫なの? そんな苦手なモンスターのところで」
「まぁ、いつかは通らなきゃいけない道だろうし……ある意味では俺と相性がいいんだ」
前回から続く検証の一環。
“難易度によってコア・ビーストの強さは変わるのか”ということでここが選ばれた。まぁ……ランクEで神話の生物である鳳凰なんて出たんだ、ほとんど答えは出てるようなもんだけど。
「蜘蛛ダンジョンなんて資源として優秀かと思いきや、その糸による事前予測不能の活きたトラップや単純なランクAとしての蜘蛛の強さから割に合わな過ぎて政府も管理を諦めるほど。それを――」
「そ、それを……?」
「無理やり突破する。力ずくで」
力ずく……何て素敵な言葉!
「え……?」
「つまり、『魔力武装』で身を守りつつ剣を振り回しながら猛ダッシュするってこと!」
ん~、シンプル!
「そ、それは……本当に大丈夫なの?」
「ダメだったら、雪さんだけでも逃げておくれ。俺にはダンジョンを破壊する使命がある」
実際は問題ないだろうと確信してるけど。いくらランクAといえど、鳳凰やミスリルゴーレムの攻撃よりは痛くないはず。あれは死ぬほど痛かった。
「い、いやだ! 置いてなんて行けない!」
「必死な顔もかわいい――はっ!?」
またやってしまった!
「そんな――」
「でさ! そういう攻略をする訳で! 申し訳ないんだけど、雪さんを抱っこして行く必要がありまして!」
誤魔化すように捲し立てる。もっとひどいこと言ってる気がするけど。
さすがにランクAという高難易度に1人で挑むのは心配ですわぁ~~~、ということで雪さんに白羽の矢が立って来てもらった訳なんだけども。
「――へっ?」
「事情を知ってるかつ俺の外套にすっぽり入れるかつ頼りになるかつかわ――こほん」
危ない危ない、俺は同じミスを犯す男ではないのだ。
「……ミコが言ってた『うらやま』ってこのこと……」
「え? 何か言った?」
ボソッと何かを呟いた雪さん。さすがに嫌だってことかな……。
「……ん」
「そ、それじゃあ失礼して……」
恥ずかしそうに両手を広げる雪さん――かわよ――を抱き上げる。
「うぅ……やっぱ恥ずかしいぃ~……」
「……大丈夫、これはダンジョン攻略のための必要な行動だ。雪さんには負担を強いてしまい大変申し訳ないがこの行動に羞恥や他の後ろめたい感情を抱く必要はない。例え雪さんがいい匂いだとしてもそこに良からぬ感情を抱くことはないしあってはならないなぜならばこれはダンジョン攻略のために必要な行動だからだ」
よし、冷静さをアピールできたぞ!
ここで『いい匂い』などと口を滑らせようものなら軽蔑されてしまうからね!
「……ばか」
何で!?
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