同級生を亡くした人の話

猫島 涙

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ただの同級生だった

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本当にただの同級生だった。特に仲がよかったとか親友だったとか、そうゆう理由もなくてただただたまに話す程度の仲であった。

小学1年で同じクラスだった。少しおしゃべりはしたけど、仲は良くなかった。小学2年生からはボクは山の中の全校生徒10人前後の小さな学校に転校してしまった。だから君のことをすごく知ってるわけでは無かった。同級生。ソレが僕とキミをつなぐ単語だった。

そんな君の死を知ったのは齢10の小学4年生のもう夏が終わろうかという日だった。
君が事故にあったのは知っていた。ショックだったし、ただでさえ人数の少ない小さな小学校に通っていたが、全校生徒に手伝って貰って千羽鶴を折っていた。それも、千羽も折らないうちに君は逝ってしまったが。

まだまだ蒸し暑く蝉の声がうるさい時期だ。ボクの大きな泣き声はセミの鳴き声の中に溶け、混じり合い、やがて聞こえなくなるのだった。

君の死を知ってからボクは君の葬式に連れて行ってもらった。お人好しな君を慕う人は物凄く沢山いて、お葬式の会場も沢山の人で溢れかえっていた。君の顔を見てサヨウナラを言うためにボクは列に並んだ。

列は物凄く長くて、でもボクは何も考えられなくて母の手を握ったまま呆然と立ち尽くし虚空を見つめるばかりだった。
しばらくそうしていればとても大きな泣き声と、大きな物音がした。ボクは驚いてその泣き声と物音のした方を見た。

君のお母さんだった。君のお母さんは泣き崩れ椅子を倒しその場に膝をついて何度も君の名前を叫んでいた。それからなんで、どうしてとしきりに言っていた。君のお父さんがそんな君のお母さんを支えて椅子へともう一度座らせていた。

ボクは思わず目を逸らした。どうしても、見ていられなかった。特に仲が良くなかったボクでさえ悲しんでいるんだ、それが君のことを産んで育ててくれた母親ともなればその辛さや悲しさはボクの想像をゆうに超えていくものなのだろう。

ボクはじっと床を見つめていた。どうしても顔を上げられなくなって、母に手を引かれるまま列を少しずつ進んで行った。ボクはどうしてもその列が断頭台に繋がっているように感じれた。

君の事故の話を聞いてからボクは君に会うことは無かった。そもそも、途中で転校してしまったから会うことなんて滅多になかったのだ。

でも、君が棺桶の中にいるのなんて見てしまえば君の死を受け入れなくてはならなくなる。だからボクにとってこの列は断頭台への列に見えたのだ。

ついにボクの番が来てしまってボクは君の顔を見るため、少し高いところに置かれた棺桶の中を除くため、1段高くなった床の上へと右足を乗せた。ゆっくりと左足にも力を入れ、床を蹴りあげ、左足も1段上へと上げた。

1歩踏み出せばもう君の顔が見えた。眠っているかのような綺麗な顔だった。しばらく、呆然と眺めていれば母がボクの肩に手を置いた。後ろから棺桶を覗き込み、綺麗ね、眠ってるみたいね、なんてドラマでも漫画でもよく聞くようなセリフを吐いた。でも実際そうだった。彼は眠っているかのように穏やかな顔をしていたのだ。

不思議と涙は流れなかった。でも喪失感だけが胸の中を支配していった。家に帰れば誰かが消し忘れたのかテレビがついていた。テレビにはニュースが流れていてニュースキャスターは悲しい事故、転落死、小学校、それから君の名前を言った。そこでやっとボクは涙を流した。

君のお母さんの気持ちが少しだけ、ほんと少しだけどわかった気がしたんだ。なんで、なんで、なんで。…なんで、君だったの?

ボクの目から溢れた涙は後から後から床に落ちていって、リビングの床に小さな小さな水溜まりを作って行った。
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