上 下
105 / 145

EPISODE99

しおりを挟む
劇の練習を終えた俺は家に帰り、ソファーでぐったりしていた。 
「7時までの練習はキチィよ」
あの後俺はただひたすらに人前で演じる練習をし続けた。クラスメイトも俺に付き合ってくれて、実はホントに良い奴説が浮上している。 
「頑張らなきゃな・・・」
今までの文化祭は適当に過し、適当に出し物に参加し、適当に終わらせてきた。でも、今年は違う。ひょんな事からではあったが、俺は劇のツイン主人公の片側。クラスの代表(仮)みたいなもんだ。クラスのみんなも謎に協力的だし、真面目にやるしかないな・・・
多分、俺が真面目に参加する最初で最後の文化祭だろうだからな。
そう思うとなんだか劇の練習したくなってきた・・・あれだ、運動部の奴らがワールドカップとかオリンピックでプロの選手が活躍すると部活やりてぇってのと同じ気分だ。
ま、俺はやった事ないけど・・・
ソファーから立ち上がり、階段を上がって、実莉の部屋の扉を勢いよく開ける。
すると、珍しくメガネをかけ、机に向かって何かをしている実莉が、
「わああぁ、びっくりした」
と、驚いた様子でこちらを見る。
「あ、ごめん。今なんかしてたの?」
「今? ちょっとだけ勉強」
「悪い、邪魔した」
そうして俺が扉を閉めようとすると、実莉は小さな声でポツリと一言。
「待って、何か用があったんでしょ?」
しおりを挟む

処理中です...