「復讐の相手」

著恋凛

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4話

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※ここからは基本的に日本人以外と話す時は英語です。
2日後、俺は運営側で支給されたナイフを手でクルクルと回しながら、他の人の試合を見ていた。
出場者は24人。聞いた話では、相当強い人しか出ないから人はあまり集まらないらしい。けど、見ていてあまり強いと思う人はいなかった。夕貴と同レベルかそれ以下だ。
そんなことを思っていたらいつの間にか自分の試合の時間が来ていた。相手の情報は無い。でも、能力無しの戦いならそんなのいらないだろう。
そして、俺はフィールドに上がる。フィールドはボクシングのリングに似ているが、普通のリングよりも大きく、隠れるための障害物のようなものが数個ある。
俺がフィールドを眺めていると俺の対角に相手が現れる。見た目は黒髪で青色の目、歳は春樹と同じくらいに見える。太ってなく、どちらかと言うと痩せていた。
いやぁ、油断は出来ないな。決して体格が良くなくても、相手の目は俺に敵意をむき出しになっていた。
そして、ゴングが鳴った。
互いに見つめ合いながら、様子を確認する。そして、俺と相手の息が合った瞬間、相手が攻撃を仕掛けてきた。ナイフは一直線に俺の腹へと向かうが、何とか躱せた。
躱しながら、俺は相手の背中に攻撃するが、しゃがんで躱される。
その後一進一退の攻防が続き、10分は経過した。初戦でここまで苦戦するとは思っていなかった。
相手は相当疲れたらしく、障害物の後ろで息を整えている。
俺はいつ来てもいいようにナイフを構え、待っている。そして、その時が来た。障害物から一瞬にして出てきた相手は俺に連撃を与える。何とか避けるなりしてナイフが当たらないようにするが、さっきまでとは違う点を見つけた。
さっきまでは両手に2本ナイフを構えていたが、今は右手に1本だけだ。置いてきたという説もあるが、可能性は低いだろう。攻撃を躱しながら周囲を確認すると、上空に放物線を描くようにして回転をしているナイフがあった。それを確認した俺は大きくバックステップで後ろに下がる。さっきまでいた場所にナイフが刺さっていた。
相手は俺をそこに誘導するための攻撃をしていたことになる。俺はその作戦を理解した時に少し懐かしみを感じたが、その思いを消し、障害物に身体を隠した。そして、俺はある作戦を実行するために下準備をする。



準備を終えた俺は障害物から飛び出し、攻撃を仕掛けた。ここまでは相手と全く同じ。
相手が俺の腹を狙った攻撃で腕を大きく横に振る。それをしゃがんで躱し、相手に向かって前転をする。
そんな事をしたら好きだらけだって?ノンノン。これで俺の勝ちは確定した。
前転した事によって、俺の靴の後ろから突き出ていたナイフに相手の腹部に当たる。そしてゴングが鳴り、俺が勝った。
作戦の下準備とは、余ったナイフを靴の内側から刺し、刃の部分だけ出すことだ。そうすれば、前から見たら刃の部分が見えないので、相手にのしかかるようにして前転をすれば、ほぼ確定で勝てるという作戦だ。
と、まぁ、上手くいって良かった。初戦で躓いてたら優勝なんてできないしな。
夕貴の方は確認してないが、勝っているだろう。
その後、2回戦、3回戦と勝っていき、決勝まで来た。



「すーはー」
と、1度大きく深呼吸する。これで勝てば1000万。俺たちの未来がかかっている。そう思うと少し緊張してきた。
「歩希、緊張してるの?」
後ろから声が聞こえた。その声の主は見ずともわかる。
「まぁな。そっちはどうだったんだ?夕貴。」
「もちろん優勝したに決まってるでしょ。」
そう言い、ドヤ顔でアタッシュケースを見せてくる夕貴。
「1000万はゲットしたんだから、気楽に戦ってきていいのよ。」
その言葉で俺の緊張が少しばかり解れたので、フィールドに向かう。
フィールド上には既に相手がいた。軍人かってレベルで身体が鍛えられていて、腕なんてもう丸太みたいだ。
「アジアンボーイ。ここまで来たのは褒めてやるが、ここでお前は負ける。」
悪役のようなセリフを相手が放った瞬間、戦い開始のゴングが鳴った。
その合図で相手は持っていたナイフを地面に突き刺し、こちらに全速力で走ってくる。
そうゆう戦い方か、俺もそっちの方が好きだし、いいけどな。ナイフをポケットにしまい、防御と言う意味で両腕を交差させる。
「受け止めれるかな?」
そう言われ、全速力のまま大きく振りかぶった右ストレートを俺の腕に叩き込んでくる。
「痛ってぇ。」
ついつい言葉を漏らしてしまうほどには強い右ストレートだった。骨までは逝ってないが、痣はできるな。
続いて、顔を目掛けて来るパンチを寸前で躱し、足払いをするがジャンプをして躱される。
着地と同時に蹴りが来る。それを躱せずに腹部に喰らう。宙に浮き、数回地面にバウンドしてから横たわる。意識が飛びそうだったが、下唇を噛み、何とか堪える。クッソ、これは辛いな。でも、勝てない相手じゃない。
そして俺は立ち上がり、相手に向かって走る。1番厄介なのはその丸太のような腕。それさせ奪えば勝てる。
相手の左ストレートを右手で受け止め、離さない。その後来た右ストレートも左手で受ける。相手は必死に両腕を振り、引き剥がそうとするができない。レッドハンド時代に死ぬほどハンドグリップしたからな。必死に両腕を振っていたので俺は右手だけ離してあげた。
俺ってやっさしー。
そして背負い投げをして、大きな身体の相手を投げ飛ばす。受身を取っている相手の隙を見逃さず、俺は1回戦の時のままにしていた靴から出た刃を相手の脇腹に当てた。
その直後、戦い終了のゴングが鳴った。
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