「復讐の相手」

著恋凛

文字の大きさ
上 下
18 / 35

18話

しおりを挟む
アメリカに来て1ヶ月が経った。
新たな仲間にはまだ出逢えていないが、今いる戦闘要因の9名はペルーにいた時よりも格段にレベルが上がった。あれもこれも訓練所のおかげだ。あそこなら銃を使った訓練もできるので、元対能力者撲滅局の銃を使ったことが無かった夕貴や拓斗、快知も実践で使えるぐらいには狙撃の腕を上げた。
今は7月後半、夏が本格的にやって来た。アメリカの夏は日本よりも暑く、アスファルトで目玉焼きが作れるんじゃないのかと思うぐらいの暑さだ。そんな中、俺は夕貴とエマと買い物に来ていた。
「暑すぎて溶ける・・・」
変な生物がいっぱいいる人身売買所では冷凍食品の気持ちとか言ってたけど、これは冷凍食品超えてる。いや、マジで。例えるとするならば、快知のギャグがスベった後に松岡○造が隣に来た時レベルだ。
「そうね。ホントに暑いわね。」
夕貴も相当ヤバそうだ。日本はなんて快適な国だったんだ。俺らを追い出した自衛隊とそのトップの防衛大臣はまじで許さん!
「師匠とボスのいた日本じゃ暑いかも知れませんが、オーストラリアと同じぐらいですよ。」
エマは別に普通にしている。暑くないわけではないだろうが、普通にすごい。
そんな雑談をしながら俺らは目的の店に向かう。
その道中、俺は足を止め呆気に取られる。夕貴とエマはまだ気づいていない。てか、エマに至っては気づいてもわからないだろう。
俺の視線の先には迷彩服を着た1人の男がいる。その時、俺はそいつと目が合った。瞬間、風を切り裂く轟音と共にそいつは俺たちの近くまで詰め寄って来る。その手にはナイフが握られていた。そいつがナイフを大きく横に振るう寸前の所でエマと夕貴の襟を掴んで俺は後ろに下がる。
「なんでだよ・・・・なんでお前がここにいるんだよ。・・・・陸上自衛隊能力部隊隊長・・・花房寛二。」
俺と夕貴は花房を睨めつける。エマはまだこの状況がわかっていないみたいだ。禁忌の能力者2人に睨めつけられても花房は涼しい顔をしている。民間人は花房の手に握られたナイフを見て悲鳴をあげながら逃げている。
「ただ、アメリカには米軍との合同演習をしに来てただけだよ。でも、これはこれ好都合だ。ここで君たち第一級危険人物を殺せるからね。てか、そこの君はオーストラリア秘密警察FOAのエマ・ジョンソンじゃないか。どうやって仲間に引き入れたんだ?」
「そんなのどうでもいいじゃねぇか。わざわざ日本に戻る手間が省けたぜ。ここでお前を殺してやるよ、DESTROYERSがな。」
そう言うと俺らは武器を手にする。一応持ってきておいて良かった。
「DESTROYERS?組織の名前か。まぁ、いい。殺ろうか。」
もう民間人は誰一人としていない。暴れても平気だ。
日本刀を左手に持ち、グロックを持つ。エマの発砲で戦いが始まる。
花房はヒラりと躱し、肩にかけていた袋からショットガンを取り出した。そのまま連射してくる。俺は銃弾を躱したり、斬り落としたりして、徐々に花房に近づく。
もう刀を振れば届くという場所まで近づいた。後ろからはエマと夕貴の援護射撃がある。あと、少しで復讐の相手を殺せる。
刀を大きく振りかぶった瞬間、俺を左手に激痛が走る。花房が放った銃弾が被弾してしまった。至近距離で被弾する。それはとんでもなく痛く、日本刀を落としてしまった。左手は痛いが俺らの目標が目の前に居るんだ。でも、日本刀を拾うことも作り出すことも出来ない。出来なくはないが、そんなことをしていたら逃げられるか撃ち殺される。だから、と言って利き手は銃弾が被弾して風穴が空いている。こんな手で殴っても痛くも痒くもないだろう。なら、残る選択肢は一つ。
俺は思いっきり花房にミドルキックを喰らわす。強烈な一打、一般人・・・並の能力者なら気絶する程の威力だ。なんのこいつは少しよろめいただけだ。てか、こいつの腹筋はやばい。下手したら蹴った俺の方がダメージを受けた。まるで鉄の壁を蹴っているような感覚に陥った。
とりあえず、花房と距離を取る。今はアドレナリンなどが放出されているので左手の痛みはさほど無い。だから、今のうちに2式で治しておいた。
「久しぶりにモロに食らったぜ。流石に禁忌の能力者2人にオーストラリアの秘密警察の1人を相手にするのは分が悪い。ここは引かせてもらうよ。」 
その言葉に俺は間髪入れずに返す。
「逃がすわけねぇだろ。絶対に今お前を殺す。」
その言葉を後目に花房は一言だけ残し、どこかに消えていった。
「DESTROYERSか・・・・覚えておく。いつかまた戦う時が来るだろう。」
民間人が誰もいない街はとても静かで、殺風景だ。
逃した。俺のせいで絶好のチャンスを逃した。ちゃんと注意していたら避けれたかもしれない。クソ、なんで俺は毎回毎回大事な所で・・・・
「歩希、エマ警察が来る前に逃げるわよ。」
そう夕貴が言い、歩き出そうとした時、さっきまで誰もいなかった場所から人が9人現れ、俺らに話しかけてきた。
「ブラボーブラボー!さっきの戦い見せて貰ったよ。君たち相当強いね。」
「お前ら誰だよ。」
急に現れ、話しかけてくる。これは一般人ではないだろう。下手したらまた戦うことになる。
「僕達は米軍特殊部隊、888部隊です。」
しおりを挟む

処理中です...