「復讐の相手」

著恋凛

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25話

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弾を避けながらスライディングをして木の陰に隠れる。
どうするか?
木の上に居られるのは不利・・・・かな?正直どっちでもいいけど俺よりも高い所にいる感じでウザイから下に引きずり下ろしてやるか・・・
ナイフを2本生みだし、木の陰から1本は右から1本は左から出す。それと同時に俺も出る。
MAT49から放たれる銃弾は俺が生み出したナイフで弾く。俺自身は少女のいる木の枝に突っ込むのみ、迫り来る銃弾は全て頭の中でナイフを操作すれば弾けるから。
少女までの距離が2mを切った時、地を蹴り少女がいる木の枝までジャンプした。
剣を思いっきり振り下ろす。空を切った剣は特に何にもならない。ただ振りおりした瞬間、すごい風と共に少女のいた木の枝は折れた。
どうせ普通に切ってもMAT49で防がれるのがオチだと思った俺は過去、俺と夕貴が誘拐された時の事を思い出した。あの時、春樹が一気に敵を殺した方法を今回はこっちでやった訳だ。
木の枝から落ちた少女は慌てている。だって、切ってないのに約80cmもある木の枝が折れたのだから。
すかさず、その少女の心臓部分に優しく剣先を当てた。
エマの方も見ると、銃剣の剣の部分を少女の首に突きつけていた。
「やったな、エマ」
「はい!」
日本刀をしまうと同時に、
「師匠!」
と、言いながら俺に覆いかぶさってくるエマ。その表情は嬉しさではなく、何かを見てしまったような感じだった。
人造人間が現れ、「ネッツ、ライル、エマ、負け」と、言って消えていった。
え?なんでエマが?・・・・・あぁ、今のでか。
「師匠、すみません」
「いや、あれは俺が完全に悪い。ありがとな、エマ。仇は絶対に討つ」
そう言うと、エマは下山した。
「んで、戦うんだろ?出て来いよ」
1度収めた日本刀をもう一度抜き取る。
「いやぁ、君とはサシで戦いたかったんだよね」
木陰から出てくるそいつは888部隊の大将にして、俺らに模擬戦を提案してきたやつだった。
「正直、こっちはクタクタなんだ。ほとんど気配がないやつやカノッシュ、さっきの双子との戦いでね。だから、1番楽な方法で倒す」
オーバースモールを発動させながら言う。敵の武器は剣一本、銃などの飛び道具は見当たらない。
「1番楽な方法ねぇ。ま、いいや。そこにいる君も一緒に戦おうよ。てか、戦って。ずっとそこにいると気が散るから」
「・・・ック、バレてたのか」
そう言ってできたのは春樹。春樹の目は既に純赤に染まっていた。
「サシで戦いたいって言ってたやん、お前」
「まぁね。でも、最終的にはサシになると思うし、別にいいでしょ?あと、俺の名前はファッサ」
「んまぁ、なんでもいいや。この模擬戦に終止符が打たれるなら」
コピーで氷の矢を作り、天高く上げてから雨のようにしてファッサの立っている所に突き刺さる。それを最小限の動きでファッサは避けた。
「はい、お前の負けは確定した」
俺がそう言うと同時にファッサの背中に銃弾が当たる。
「その自信が仇となったな。俺の予想通りだったよ」
どこからともなく人造人間が現れ、「ファッサ、負け」と、言う。
さっき撃ったのは蓮兎。なのに、どうして俺が負け確かわかったって?
そんなの全部俺が予想した範囲内だったからだ。氷の矢を天高くあげたのも蓮兎に合図を送るだけのためだ。ま、ここまで上手く行くとは思っていなかったけどな。
「888部隊は大将が敗れたため勝者、DESTROYERS。これにて、模擬戦を終了する」
そして人造人間は消えていく。
「やりましたね!歩希さん!」
笑顔を浮かべる春樹とは違い、俺はまだ喜べない。
「春樹、先に下山してみんなと集合してろ。今は15時だから、16時になっても俺が戻ってこなかったら先に帰ってていいから」
「え?なんで?」
「いいから早く!」
叫ぶようにして言うと春樹は下山する。
俺はファッサを注視しながら、未だに日本刀を鞘に戻さない。ファッサのあの表情・・・こんな呆気ない終わり方で納得の言ってない様子だ。だから、まだ不安なのだ。
葉が音を立てながら一気に揺れると同時に俺は日本刀を水平にしてファッサの攻撃を受ける。
「・・・・ック、真剣か・・・」
後ろに大きく跳び、レプリカの日本刀を捨てて真剣の日本刀を作り出し、手に取る。
「888部隊が負ける訳ない・・・」
ファッサはそう呟き、俺との距離をまた詰めてくる。その速さは常人のそれじゃない。能力で強化している。
日本刀と西洋剣、2本の剣が混じり合い火花を散らす。
「合格だ。もう1つの能力を使ってやろう」
「上から目線だな」
突如、ファッサは姿を消す。が、気配は確かにそこにあった。
俺は直感的に大きく後ろに跳んだ。
これは透明になる能力か・・・・
確か使った事はあるが、使われた事はなかったな。
「タイムリミットは3分。耐えれるかな?」
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