「復讐の相手」

著恋凛

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33話

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「俺とファッサは幼なじみだ。いつも一緒にいて、軍に入った当初は互いに互いを高め合いながら切磋琢磨していた。でも、もうアイツは変わった。昔のアイツじゃない。でも・・・それでも俺はアイツを殺せないんだよ」
悪い方向に変わった幼なじみを自分では救えないから俺に任せるか・・・・ここで「自分で殺せ」なんて言うつもりは毛頭ない。だって、俺も分かるから、その気持ちが。幼なじみを殺す・・・・快知と拓斗を俺は殺すことが出来ない。カノッシュにとってはそれがファッサなのだろう。
「わかった。任せろ」
「頼んだぞ、前村歩希。アイツは強い。模擬戦後の戦いの時の3倍は厄介だ。でも、平気。お前なら出来る」
そう言い残し、下山しようとするカノッシュの背中はどこか悲しそうだ。だから、俺はカノッシュに訊く。
「お前、今後どこに行くんだ?」
「今後?・・・どっかの部隊のトライアウトを受けるか、のほほんと平和に過ごすよ」
その言葉を聞いて俺は間髪入れずに言う。
「合格!お前は俺らDESTROYERSに合格した。よって、お前はもうDESTROYERSの一員だ。拠点はカルフォルニアにある山!」
ここでカノッシュをDESTROYERSに入れたら戦力は何倍にも跳ね上がる。この戦いで俺が死んでもその穴を簡単に埋めてくれるだろう。
「エントリーしてないんだけど・・・ま、いいや!わかったよ、ありがたくいれてもらう」






「ここに来るまでに隊員全員を配置した。時には5人同時に配置する場所もあった。なのに・・・なのにどうして君はここにたどり着くことが出来た?前村歩希」
「んなもん、お前の仲間全員殺したからに決まってるだろ」
ファッサの後ろには大きめの牢屋があり、そこにはエマが入っていた。
エマは俺に気づくと目を見開き、驚いた表情で叫んでくる。
「師匠、何故ここに来たのですか!?私の事はもういいので、帰ってください!もし、この戦いで師匠に何かあったら、私は・・・・私は・・・・」
「エマは・・・」
エマの言葉を遮るようにして俺も言葉を放つ。
「エマはこの組織に必要不可欠だ。いなきゃいけない存在。俺の手足一二本と引き換えにしても絶対に連れ戻す」
「なんで・・・無能力者の私なんかにそこまで・・・・」
消え入るような声でエマはそう言う。
日本刀を抜き、切っ先をファッサに向ける。ファッサの後ろにエマがいるので銃は絶対に使わない。
ファッサも剣を抜く。
王者の風格、圧倒的な殺意、この前戦った時とは桁違いだ。カノッシュは俺を殺す気は無かったので殺意はしなかった。だから、ここまですごい殺意を向けられるのは初めてだ。
その圧に俺は思わず半歩下がってしまう。けど、カノッシュとの約束を守るため、俺は足に・・・・手に・・・・身体全身に力を入れる。
地面をエグり、ものすごい風と共に繰り出さられる攻撃をファッサは受け止める。
身体を限界まで捻り、回転させ、常人では出せない程の威力と手数でファッサに攻撃する。
大きく横に剣を振るがファッサは身体を反り躱す。回転し、右手にナイフを逆手持ちで突き刺す。その寸前で西洋剣に弾かれた。
大きく後ろに跳び、距離を取る。
「クッソが」
さっきまでの戦いでこちとりゃ疲労困憊。2式も使い切って無茶なことは出来ない。
万事休す・・・どうする?
「もういい・・・期待外れだ。前村歩希」
その言葉と同時にファッサとエマを囲むようにして炎の円が現れた。
「タイムリミットは10分。それまでにこれを攻略しなきゃエマ・ジョンソンを殺す」
その言葉が耳に入ると同時に脳をフル回転させる。
どうすれば、この炎の円を攻略できる?考えろ。じゃなきゃ、エマが殺される・・・・
完全に戦うことをやめ、考えるていると炎の円の1箇所に穴が開き、銃弾が飛んでくる。
ギリギリで避ける。
考えながら避けろってか?つれぇな。
3式を使い、一か八かでファッサの能力を1つ破壊するが意味はなかった。
炎の円は自由自在に操れると見た。その時点で上からの侵入は無理だ。
銃弾を斬り、考えているが1つの策しか思いつかない。と言ってもその策の成功確率は多く見積って20%。だが、成功すればファッサも殺せるだろう。
どうするか・・・・残り2分を切った瞬間、俺の頬に何かが当たった。
「あぁ、そうか。神は多少なりとも俺に味方してくれたのか・・・・」 
微笑を浮かべ、俺は声を大にしてエマに話しかける。
「なぁ、エマ。戦いにおいて重要なのは技術と知識、あともうひとつはなんだと思う?」
「えぇーと・・・能力?」
「違う。運だ」
俺がそう言うと雨が降る、それも滝のように。山は天候が変わりやすい・・・・本当だったんだな。
このおかげで策の成功率は格段に上がった。
「ふふっ、この程度で炎が消えるとでも?」
俺の髪には水が当たり、服は水分を大いに吸い込んで気持ち悪い。でも、それでいい。
コピーで大鎌を生み出し、フルスイング。風のおかげで切り開かれた小さな通り道。横にはもちろん炎。
ダッシュをしてその通路を通る。切り開かれたと言ってもその通路はすぐに消える。
身体全体に炎が当たり、皮膚が少し溶けるのを自覚する頃には炎の内側へと入れていた。炎が身体に燃え移るが、雨のおかげで直ぐに消される。
ダッシュしたままファッサの間合いに入り、首を斬り落とす。
こんなゴリ押しで来るとは思ってもいなかったのでいとも簡単に俺の策は遂行された。
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